ガールズ&パンツァー 鋼鉄の乙女と海の漢達  〜碧き海の世界の物語〜   作:短号司令官

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今回もちょっとしたアンケート置いておきます。
そんな大したことないと思いますが……


第15話 時が…近くなって来ました……

 

北海にて独第一航空機動艦隊との激闘を終え、旭日艦隊に別れを告げた亀天号とラ號は、紺碧島へと帰途へついていた。

 

ラ號

 

入江「これより警戒水域へと突入する。南大西洋はUボートの巣と言っても良い、一寸足りとも気を抜くな!」

 

前原「これから大西洋は、益々第三帝国の勢力圏になっていくだろうな…」

 

みほ「でも、大西洋にはお姉ちゃんや大石さん達旭日艦隊がいますよ?今までもずっと戦ってきて、第三帝国を退けたんですよ?この前だって…」

 

品川「しかし、そう簡単なことではないんですよ…」

 

みほ「えっ…?」

 

前原「確かに、旭日艦隊は強力であるし大勝もした…しかし、それは戦術面に於いてだ。戦略的には負けたに等しい」

 

みほ「それじゃあ……」

 

前原「残念ながら、ブレストにおける休戦協定がそれを示している」

 

 

二隻は以降も南下を続け、太平洋を目指す。

 

 

照和25年 初春 日本国 首都 東京都

 

首相官邸

 

大高「ブレストの休戦協定は予想通りの結果でしたな」

 

高野「英国住民を人質にとっての交渉でした…」

 

大高「流石のチャーチル卿も、同胞三千万余の命の前には折れざるを得なかったようです…」

 

高野「はい」

 

大高「英国占領地域の飢餓はかなり酷いようですな、ヒトラーはワルシャワゲットーと同じ状況に南イングランドもなるかもしれない…と脅迫したのでしょう」

 

高野「ワルシャワゲットーの話は私も聞いています」

 

大高「大砲を撃ち合うだけが、戦争ではないということです」

 

高野「あの男に通常の常識は通用しないということです」

 

大高「しかし、アイルランドの中立をヒトラーに認めさせたのは、評価すべきです。米国はアイルランド移民の多い国です、中立を条件にブルターニュ半島から手を引いた……米国にとっては悪い取引ではないでしょう」

 

高野「しかし、これで英国本土は正確に分割されました…」

 

大高「北ブリテンと南ブリテンの境界線は、暫定的に西はマージ河、東はハンバー河を繋ぐ線で結ばれましたが、この線は英国中部要塞線と合致します…つまり、月の兎撃ち作戦は今度のことを見越しての作戦だったのでしょう。今回のアイスランド島攻撃にしても条約交渉を有利にする為の策謀だったのでしょう…」

 

高野「つまり、旭日艦隊は条約を少しでも有利にする為には、役にたったというわけですな」

 

大高「それにしても、ハインリッヒ・フォン・ヒトラーは手強い相手ですな…」

 

高野「ビスマルク以上の政治家であることは、認めねばならんようです」

 

大高「だからこそ、こちらも()()()()は打っておくべきなのです」

 

 

ここで時系列は少し遡る、時は数週間程前

 

 

神聖欧州帝国

 

皇帝宮殿

 

独参謀本部ワルター・G・マイントイフェル大将のデスクの電話が鳴った。

 

マイントイフェル「はい……はっ、ハイルヒットラー!」

 

 

宮殿地下

 

ここではある人物の腹心の部下たちが、独軍首脳部の動きを密かに探っていた。マイントイフェルの電話線盗聴できるように細工が施されていた

 

ヒトラー『いよいよだマイントイフェル君、最新情報によれば、ウラル要塞陥落は時間の問題だ。ロンメルにスターリンを討ち取るように命令を出したまえ』

 

マイントイフェル『はっ!』

 

ヒトラー『それからロンメルの親派を全員拘束したまえ』

 

マイントイフェル『はっ!直ちに』

 

ヒトラー『奴はポルシェビキとの戦闘に於いて、名誉の戦死という訳だ』

 

「「‼︎」」

 

マイントイフェル『はっ!ハイルヒットラー‼︎』

 

交信が終わると同時に、盗聴機の前で聴いていた者の内二人が何処かへと走り出す。

 

マイントイフェル「ロンメル閣下…これで貴方もお終いだ…ご苦労」

 

 

ソ連 ロンメル軍団前線司令部

 

ロンメル「分かった……君たちも気をつけてたまえ…」

 

受話器を下ろしたロンメルは失望していた。

 

「閣下…⁈」

 

ロンメル「これまで…総統閣下を尊敬し、慕ってきた私はなんだったのだ⁉︎それほどまでに、私の存在が目障りだったというのか…⁉︎それほどに……‼︎何故だ‼︎」

 

そう怒りを露わにし、拳を机に叩きつける。

 

「閣下……?」

 

幕僚達にはロンメルの怒る理由が分からず困惑していた、その時…

 

「ロンメル閣下!」

 

「なんだ?今は取り込み中だ…!後にしろ!」

 

「はっ、しかし日本人と称するアジア人が閣下に面会を求めておりますが…?」

 

ロンメル「日本人…?」

 

「は、そう自称しております」

 

「スパイか…?」

 

「何故日本人が…?」

 

「いいから追い返せ!」

 

ロンメル「……よく分からんが、会ってみよう通したまえ」

 

「一応、身体検査をするように」

 

「はっ!」

 

しばらくして防寒着に身を包んだ1人の男が入ってきた。

 

本郷「失礼します。自分は日本陸軍、本郷義昭少佐であります」

 

ロンメル「コンラッド・フォン・ロンメルだ」

 

本郷「早速ですが、私が閣下をお訪ねしたのは…」

 

本郷が鞄に手を延ばした瞬間、憲兵が銃を突きつけ幕僚がロンメルを囲む。

 

本郷「……我が国の首相…大高弥三郎閣下の親書をお渡しするよう、命じられたからです」

 

本郷は鞄から出した手紙をロンメルに渡さす。

 

ロンメル「オオタカが…?」

 

彼は受け取った親書を開封し、中身を黙読する。

大高からロンメルに宛てた手紙に何が書いてあったかは、この際置き、それから2日後の事……

 

 

 

ノイエ・ビルヒデス・ガーデン

 

ヒトラー「何ぃ⁉︎ロンメルが⁈」

 

ヒムラー「はい…揮下の装甲軍団と共に戦場を離脱…行方が分かりません……」

 

ヒトラー「どういう事だ⁉︎ヒムラー長官‼︎」

 

ヒムラー「恐らく…ロンメルの処理計画の情報が漏れたかと……」

 

ヒトラー「何ぃ⁉︎」

 

ヒムラー「!…重要なことのため、詳しく調査したところ、OKRの電話回線が盗聴されておりました…!」

 

ヒトラー「OKRだと…‼︎」

 

ヒムラー「これは陸軍…いや、マイントイフェルの大失態かと…‼︎」

 

ヒトラー「ヒムラー長官!責任の擦りつけ合いよりも、一刻も早くロンメルの行方を掴め‼︎」

 

ヒムラー「はっ!」

 

 

 

ここで時系列は戻り、逆に一気に数ヶ月進む。

 

 

偽りの平和の日々が過ぎ……

 

照和25年 5月1日 ハバロフスク

 

時に照和25年5月、東シベリア共和国が建国され、旧ハバロフスクは初代首相に就任したレオン・トロッキーにちなんで、トロッキー市と改称され首都となった。

建国式典には大高と木戸外相も訪れていた。

 

トロッキー「今日ここに、東シベリア共和国の樹立を宣言できたことに喜びは絶えないところではあるが、これが終着点では無論ない!祖国、全ロシアを解放するまで、断固戦い抜く事をここに誓いを新たに、心をひとつにしなければならない‼︎」

 

木戸「これで、ようやく建国できましたな」

 

大高「これで長年の懸案が解決します。明冶維新以前から我々はロシアの東方進出に悩まされてきました」

 

木戸「はい…!」

 

 

東シベリア共和国 日本領事館

 

祝典行事をこなしたその夜、大高は人民中国の首相 周恩来と会談を行った。

 

 

大高「周先生をわざわざお呼びしたのは、大亜細亜防衛軍を設立するためです」

 

周「了解しております。次回の亜細亜国連総会にて我々人民中国は、閣下の提案なさっている大亜細亜防衛軍の設立を、妨げる者ではありません」

 

大高「宜しくお願い致します」

 

周「…で、閣下は本気で首相の座を降りられるのですか…?あっいや、この場でお答えして頂くのが差しつかえなければ、お答えにならなくてもよろしいのですが…」

 

大高「周先生に伏せる理由などありません。既に実質西郷副総理によって大高内閣は運営されております。満蒙決戦は、私の最後の働き場所と心得ております」

 

周「分かりました。それなら私に異存はありません。亜細亜総軍を率いるなら、その将軍貴方にお任せします」

 

大高「ありがとう存じます…!」

 

 

東シベリア共和国建国を見届けた大高首相は、「亜細亜は一つである」と自信の一言を残して帰国の途についた。

その頃、大西洋では次の戦いへと旭日艦隊が行動を起こしていた。

 

 

大西洋

 

日本武尊

 

大石「カリブ海要塞に集結しつつある米機動艦隊のX DAYは確か……」

 

まほ「7月4日、その日は丁度アメリカの独立記念日です」

 

大石「ならば同様に、独艦隊も動くだろう。我々も手をこまねいているわけにはいかん」

 

大石司令長官は、次なる戦いが南大西洋であることを予測し、北大西洋に於ける旭日艦隊の存在を印象づけるべく行動を起こしていた。

 

この日もノルウェー領スケッツベルゲン島の独海軍根拠地を艦砲射撃や航空攻撃をもって殲滅していた……が

 

 

皇帝別荘

 

マイントイフェル「皇帝陛下、最近旭日艦隊は北大西洋で然りに行動を起こしております」

 

ヒトラー「ほぅ」

 

マイントイフェル「しかし、これは明らかに欺瞞行為であり、程なく南下を開始するでしょう。いよいよ旭日艦隊を撃滅する日が近づいてまいりました…!」

 

ヒトラー「うむ、予測される日米共同作戦の為だな?」

 

マイントイフェル「陛下の読み通り、米国は南米と我が国を分断する腹です」

 

ヒトラー「その計画は分かっているかね?」

 

マイントイフェル「攻撃目標はアルゼンチンでしょう。ここに予測規模30万の兵力を上陸させ、上陸を阻止しようとする我が海軍を旭日艦隊などの日米の艦隊が狙い撃つという狙いかと…」

 

ヒトラー「ふむ、情報収集は?」

 

マイントイフェル「大西洋各所に我が潜水艦と、偽装商船やスパイ商船をくまなく出してあります。そのどれにも発見されずに南下は不可能です」

 

ヒトラー「情報伝達はどうするのだ?敵に知られたら元も子もないぞ」

 

マイントイフェル「極秘の手段が既に…」

 

ヒトラー「ほぅ、どんな手段だ?」

 

マイントイフェル「艦同士の通信は、1000km以上も届くとされる鯨の声を増した音波信号で行います」

 

ヒトラー「ほぉ、鯨か…」

 

マイントイフェル「勿論、各艦ごとに固有の周波数を設定してあります。定時連絡も一定の間隔ごとに行うよう命じてありますので、例え撃沈されても信号が途絶えることで敵の位置が分かります」

 

ヒトラー「流石に抜け目がないなマイントイフェル君、だが相手はあの旭日艦隊だぞ」

 

マイントイフェル「私は無能な前任者とは違います!旭日艦隊を陥れる罠は二重三重に用意されてあります」

 

ヒトラー「兎も角良い報告を期待していよう、マイントイフェル君」

 

 

 

 

東シベリア共和国建国式典から戻り、予想を説いて間も無い大高の下にある一人の人物が訪ねる。

 

東京都 副総理官邸

 

木戸と共に部屋に入ってきたのは、本郷ともう一人、何やら大柄な人物が居た。

 

木戸「総理、お連れしました」

 

大高「おぉ、お待ちしておりましたぞ」

 

本郷「閣下、どうぞ髭をお取り下さい」

 

この人物は口周りに生えた髭…ではなく付け髭を剥がし、帽子を取ったその姿は……

 

大高「おぉ!」

 

「コンラッド・フォン・ロンメルであります」

 

大高「遠路遥々、ご苦労様でした。私は日本国首相の大高弥三郎です」

 

ロンメル「貴方の御公名は聞き及んでいました。お会いできて光栄です」

 

西郷「おいどんは大高殿を補佐しております、副総理の西郷でごわす」

 

ロンメル「ロンメルです」

 

西郷「ここまでよくぞ…ご苦労でしたのぉ」

 

 

 

遡ること数ヶ月前

 

本郷「虜囚としてではなく、ロンメル閣下を我が国の国賓としてお迎えしたいと、大高は申しております」

 

ロンメル「…ホンゴウ少佐…だったな、しばらく待ってくれ」

 

 

ロンメルは幕僚達を集め、話し合いを行い…

 

ロンメル「…ということで、ここは諸君らに判断を仰ぎたい。信頼できるベルリンの同志からの情報によると、ヒトラー総統は我々をスターリン軍に突入させ、全滅させる腹だ。その時には全ての支援を絶たれ、敵中に孤立させられるだろう、あとはPK部隊により、悲劇の奮戦及ばず名誉の戦死……というプロパガンダが打たれる筈だ」

 

「閣下…何故ヒトラーは、我々を葬り去ろうというのですか……⁈」

 

「理由が分かりません…説明をして頂けますか……?」

 

 

ロンメル「諸君らも"血の粛正"によって軍の旧勢力が一掃させられたことは知っているだろう?」

 

「私の父もその1人でした…!」

 

「私の叔父もだ‼︎」

 

「友人もなんの罪も無く処刑された…!」

 

一同が口々に言い出すと、ロンメルが再び口を開く。

 

ロンメル「……実は、この私も粛正の対象にされている…‼︎」

 

「「えぇ⁉︎」」

 

幕僚達からは困惑と怒りの声が上がる。

 

ロンメル「私1人の粛正の為に…諸君らはカモフラージュに利用されるのだ……仮にスターリン軍に勝利したとしても、その瞬間に頭上に友軍の砲弾が降り注ぐだろう……」

 

「……‼︎」

 

「‼︎……」

 

 

ロンメル「苦楽を共にしてきた諸君に殺されろと命令はできん、降伏は軍人として不名誉なことであるが…かかる事情を見ても、プロイセン軍人魂を守るべきかどうか…諸君の意見を聞きたい……‼︎」

 

「祖国…いや!ヒトラーが我々を裏切ったのです‼︎」

 

「プロイセン魂になんら恥じるものではありません!」

 

「忠誠を誓った我々に、この仕打ちは限界を超えています‼︎」

 

 

「閣下ぁ!」

 

「閣下に忠誠を‼︎」

 

「閣下!」

 

 

 

そして時は現在へ……

 

 

大高「聞けば、戦史に残る脱出行だったそうですな…」

 

ロンメル「いやいや、それもホンゴウ少佐をはじめとする貴軍らの手厚い支援があったからこそです!」

 

 

ウラル戦線を離脱したロンメル機甲軍団は、ソ連軍の居るシベリア鉄道沿線ルートを避けアルタイ山脈越えで蒙古へと入った。

総距離2500kmにも及ぶ大長征であった。

これには無論、大高の配慮で蒙古軍が全面協力し食糧・飲料水・燃料さらには車輌の部品まで提供された。

 

 

本郷「ロンメル閣下の軍団は、目下ウランバートル郊外に駐屯しております」

 

大高「私からも閣下の軍団が、軍事顧問団として協力頂けるようお願いいたします」

 

ロンメル「そうしてもらえるなら、我々としても良心の痛みが和らぎます」

 

大高「ならば、一千輌の車輌と軍事資材を蒙古軍に提供して頂けると共に彼らを訓練していただけますか?」

 

ロンメル「喜んで!彼らは実に優秀であります!短期間でロンメル軍団の名を汚さない軍団へと生まれ変わるでしょう!」

 

大高「猛々しい虎の蒙古軍ですな」

 

「「はははw」」

 

大高「ところで閣下の立場について、改めてお確認したいのですが、我が国は既に日独伊三国同盟を脱退しておるのですが、改めて閣下と日独同盟を締結したいと考えております。如何でしょう?」

 

ロンメル「…と言われましても、どういうことでしょう…?」

 

西郷「総理、それは急すぎるのでは」

 

大高「おぉそうでしたか、実はこの大高、貴方を主班とする新国家を考えておるのです」

 

ロンメル「‼︎……」

 

大高「満州には現在一万人のドイツ系住民が住んでおります。彼等は閣下を支持するでありましょう。閣下の部下も加えれば数万のドイツ人による亡命国家ができます!ヒトラーの行動に疑問を抱くドイツ人が多数閣下の下に馳せ参じるでしょう」

 

ロンメル「‼︎……亡命臨時政府、ということですか?」

 

大高「いや、新国家を作るという構想です」

 

西郷「如何ですか?」

 

ロンメル「いや面白い!構想雄大というか実に楽しい話である!しかしそんなことが可能でしょうか?領土が必要です。国民だけでは国はできない」

 

大高「無論です」

 

西郷「大満州鉄道株式会社をご存知ですかな?その満鉄が土地を提供します」

 

ロンメル「‼︎」

 

木戸「現に東シベリア共和国が同じ経緯で、トロッキー氏を主班として成立しました」

 

西郷「閣下…狭い領土ではありますが、世界にはリヒテンシュタインのように小さな国もあります」

 

ロンメル「分かります。ではその場所とは?」

 

大高「大蓮近郊であります」

 

木戸「三方を海に囲まれた土地で、既に開発が進められております」

 

大高「ゆくゆくは仏・蘭他、東欧各国の亡命国家も作られる予定です。我が国や亜細亜諸国は勿論、米・英・加各国も承認する段取りであります」

 

ロンメル「…承知しました。その話、お引き受けしましょう!」

 

大高「ありがとうございます!あぁ…そうそうそういえば…」

 

そう言いながら、大高はソファの横あった紙袋から、ふと色彩を二枚と油性ペンを取り出しロンメルに手渡す。

 

ロンメル「これは…?」

 

大高「実は、私の知人に閣下の熱烈なファンがおられましてな、その方に閣下のサインをお渡ししようかと思いまして…」

 

ロンメル「……あっはははw実に面白いwまさか日本に私のファンがいるとはw分かりました!でその相手の名前は?」

 

大高「松本里子さんと秋山優花里さんという方々です」

 

 

 

その夜、大高は席を設け本郷を労う。

 

都内 料亭 田山

 

大高「明日はもう満州に戻るのか…」

 

本郷「はい、向こうでの仕事が山ほど待っております」

 

大高「今更ではあるが、ロンメル閣下との脱出行ご苦労だった。いつも事だが感謝しておる」

 

本郷「私は総理と志を同じくとし、亜細亜の為に働けることが嬉しいのであります!寧ろ感謝するのは私の方です!」

 

大高「いやぁ、これは恐縮至極だ。いやっまぁぐっとやってくれ」

 

本郷「は!頂きます!…ところで、蒙古平原の戦いはどうなるのでありますか?」

 

大高「うん…ここだけの話、今国会の終了を待って首相を辞任する」

 

本郷「いよいよですか!」

 

大高「人民中国の周氏の了解を取り付けた。次回の亜細亜国連総会で正式に亜細亜防衛軍を発足させ、私が国連総軍総長に選任される予定だ。主力は日満連合軍だが、蒙古平原・バイカル湖以降の防衛中央線を担当し、これにトロッキー軍・蒙古義勇軍が両翼を固める。問題の天山山脈方面は人民中国が固める、近代装備とは言い難いが…予定動員数は一千万人だ」

 

本郷「すごい人数ですな…」

 

大高「そうだ!中国は人民要塞なのだ!前世、我々はこれを骨身に知った…ヒトラーもこの恐ろしさを知る事だろう」

 

本郷「それで総兵力と戦力比は?」

 

大高「後方要員を入れて千三百万人だ」

 

本郷「‼︎」

 

大高「いずれにしても、攻撃の主力は日満連合の機甲師団三十万になる!」

 

本郷「それで勝てるのですか…?独軍は二百万を超えるのでは?」

 

大高「率直に言って勝てるとは思わない。だが強すぎる勝ちすぎるのもいかん」

 

本郷「というと…?」

 

大高「私は米国を気にしている」

 

本郷「米国…ですか?」

 

大高「あの国には黄禍論が燻っておるからな。我々亜細亜人が彼らの予想を覆し強く見えすぎては、外交戦略上まずいことになる」

 

本郷「確かに…」

 

大高「既に本大戦は民族間戦争と言われるほどの様相を呈している。だから難しいのだ…つまりは湯加減だ」

 

本郷「燗加減という事ですか?」

 

大高「はははwそうだな、熱すぎても冷たすぎてもいかんという訳だ」

 

「「はははw」」

 

 

大高の計画も実を結ばんとしていたこの年の夏、成田から首都へこの二人が降り立った。

 

 

 

総理官邸

 

みほ「日向ぼっこですか?大高さん」

 

大高「おぉ、前原少将に西住さん!いや、ブレストの休戦協定のお陰とはいえ、一時の平和を味わっております」

 

前原「お邪魔でしたか?」

 

大高「いやいや、いつ戻られましたか?」

 

みほ「昨日の便です。明日島に帰るので、せっかくなら挨拶に行こうって私が言ったんです」

 

大高「報告は逐次受けておりましたが、会いたいと思っておりました!おぉそうだ、少将久しぶりに一局どうですか?」

 

前原「おぉ、結構ですな。一手御享受お願いします」

 

囲碁の傍、大高は前原・みほの二人に近況を語る。

 

大高「知っていると思いますが、間も無く大蓮にロンメル閣下を主班として新国家ができます」

 

前原「高野総長が仰られていた、亡命国家団地のことですな?これが公表されたら、ヒトラーは怒り狂うでしょうな」

 

大高「無論です」

 

みほ「高野さんから聞いたんですけど、アメリカから旭日艦隊を南大西洋に派遣するように言われてるそうですけど…」

 

大高「その事なんですが……判断しかねています」

 

前原「というと?」

 

大高「問題はヒトラーの出方です。米機動艦隊の南下を阻止する為に、地中海艦隊が出てくるとすれば一大海戦になるのは必定です。お二人はどうですか?」

 

前原「無論、総理のお許しがあれば出撃しますが…」

 

大高「まだ決定したわけではありません」

 

前原「それは、私も心得ております」

 

大高「おぉ嵌め手ですか!腕を上げましたな」

 

前原「太極計画の件ですが、紺碧艦隊の準備は年内に完了…とお約束できそうです」

 

大高「確かですな?」

 

みほ「問題は機密の保持です。できる限り万全を尽くしています」

 

大高「実は太極計画は、高野総長と二人で碁を打っていた際にできた嵌め手なのです」

 

前原「‼︎そのお話は初めて伺います」

 

みほ「お二人で考えたものなんですか…」

 

大高「私と高野総長以外に話すのは、お二人が最初です。太極計画の核心は、世界を超巨大な碁盤に準えてヒトラーを太平洋へ誘い出すのです。つまり、これから始まる南大西洋での戦いは、その序盤ということになります」

 

前原「驚きました…実に級壮大な計画ですな…」

 

大高「つまり嵌め手であるが故に、仕掛けは念入りに…というわけです」

 

前原「すると、謀略・外交も同時に並行して行うわけですか?」

 

大高「というより心理作戦……というべきでしょう。これまでにも、ヒトラーの真相・心理に踏み込んだ布石を多く打ってきました。ブレスト休戦協定以降、奇妙な平和が続いています。平和を望む世界世論を無視する訳にもいきませんが…このまま世界が治るとは思えませんが……」

 

前原「‼︎……参りました、私もまだまだです」

 

大高「休戦はあり得ても長くは続きません。世界にはそれを望まぬ人々・組織・国家があります」

 

前原「はい…」

 

翌日、二人は霞ヶ浦から紺碧島への帰途に着いた。

途中何ヶ所かの中継点を経て……

 

 

紺碧島

 

島内作戦室

 

前原「戻ったぞ」

 

品川「気をつけ!」

 

前原「深夜にも関わらず集合、感謝する。座ってくれ」

 

一同席に座り、前原は話し始める。

 

前原「さて諸君、われわれは近々大西洋へ出撃する可能性がある。軍令部より命令があり次第、直ぐに遠征する」

 

品川「編成はどうしますか?ラ號と亀天の就役によって艦隊編成は変わると思いますが…」

 

前原「編成に変更はない、ラ號を旗艦とし今作戦にはイ701潜も随伴させる」

 

入江「急ぎ、出撃準備に掛かります」

 

前原「うん、可及的速やかに頼む。他に何か質問は?無ければ解散とする」

 

品川「気をつけ!解散!」

 

 

その後、作戦室には入江と品川が残る。

 

前原「入江大佐、俺は先行して大西洋に向かうことになるだろう。よって亀天を持って指揮を任せたいと思う」

 

入江「はっ!」

 

前原「品川中佐、その亀天の艦長を任せたい」

 

品川「はっ!責任重大でありますな」

 

入江「待ってください。それでしたらラ號の艦長は誰が…?」

 

前原「俺が兼任する、いずれにしても第三帝国地中海艦隊が相手とあれば、これ以上のものはない」

 

品川「獲物に不足は無いでありますな」

 

前原「だが聖域地中海から出てくる相手だ。それなりの備えはあるものと考えねばならん」

 

入江「南米南端の制空権が敵に握られていると考えますと、南大西洋侵入には工夫がいります」

 

品川「安全を考えるなら、印度亜洋から入るべきでしょう」

 

前原「うむ」

 

 

翌日、紺碧島に賓客来たる。

それは第一連合航空機動艦隊司令長官 高杉英作と従兵 秋山優花里であった。

 

前原「ようこそ長官、紺碧島一同歓迎いたします」

 

みほ「優花里さん、お久しぶりです」

 

優花里「恐縮であります!」

 

高杉「突然にすまんな」

 

前原「電報は受けておりましたが、長官自らが来てくださるとは…」

 

高杉「一度紺碧島を見ておきたくてな」

 

前原「ご案内しましょうか?」

 

優花里「残念ながら、そうもいきそうにありません。上空で直掩の方々がいて長居してしまうと、帰りの燃料を空してしまいます」

 

高杉「はははwまぁな、だが……()()()()だけは…」

 

前原「はっ…!ご案内します」

 

 

地下ドック

 

高杉「凄いな……これがラ號か……予想以上だな」

 

優花里「これはもはや…怪物ですよ……」

 

高杉「亀天が重巡並ならこいつは空母・戦艦並か…?」

 

みほ「いえ、それ以上の21万tです」

 

優花里「はい……?」

 

高杉「なんと……こいつが、我が艦隊と動くのか」

 

前原「‼︎……では長官」

 

高杉「大西洋への出撃命令が出た、受け取れ」

 

高杉は待っていた鞄を前原に手渡した。

 

前原「これは…?」

 

高杉「命令書と使い捨て暗号欄数表だ。私が預かってきた。直接渡そうと思ってな」

 

前原「はっ、確かに受け取りました」

 

高杉「我が艦隊は既に南下中だ。タスマン海を抜け西進して大西洋へと向かう。詳しいことは書類を読んでもらえば分かると思う」

 

前原「はっ!」

 

高杉「大西洋で会おう……!」

 

みほ「あっ!優花里さん、これ」

 

優花里「はい?」

 

そう言ってみほは、優花里にロンメルのサインの描かれた色彩を渡す。

 

みほ「大高さんが、もし優花里さんに会ったらって」

 

優花里「はぁぁぁ‼︎かのロンメル閣下のサイン……‼︎…うぅぅぅ…‼︎」

 

みほ「優花里さん…?」

 

優花里「イヤッホォゥ‼︎最高だぜぇぇぇぇ‼︎

 

彼女は嬉しさのあまり飛び上がった。

 

みほ「うぇぇ⁉︎」

 

前原「おぉ⁈」

 

高杉「秋山ぁ!静かにせんか‼︎」

 

優花里「あっ……しゅみません、高杉殿……」

 

高杉「嬉しいのは分かるが……兎も角、今度の戦いは世紀の大海戦が予想される、心して出撃してくれ‼︎」

 

そう言い残し、高杉・優花里は紺碧島を後にする。

 

前原「世紀の海戦となる……か…」

 

強者共が幻の戦場を睨む、果たして待ち受ける運命は栄光か敗北か……

 

 

南大西洋 波高し‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第15話 時が……近くなって来ました…… 〜終〜 次回へと続く




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