ガールズ&パンツァー 鋼鉄の乙女と海の漢達  〜碧き海の世界の物語〜   作:短号司令官

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主に大石長官視点になります。


後日談 託されるは未来

 

照和26年 10月半ば

 

千島列島 宇志知島

旭日艦隊秘密地下基地

 

長官室

 

いつもと変わらず、この日も大石は執務机に向かって仕事をしていた。

大戦終結後、旭日艦隊(主に日本武尊とその乗組員)はここで息を潜めつつ、次の大きな戦いへ向けての備えを行なっていた。

隠れているとはいえ、やるべき仕事は……………大西洋にいた頃に比べれば遥かに減った。

自分も多少の書類の処理を手伝ったりするが、それ以前に暇であった。

強いてと言えば、日本武尊の改装案を練ることがあるが、それもおおよそ固まりつつある。

 

そんなある日、大石の下に一通の手紙が届いた。

 

大石「俺にか?」

 

「はい、長官宛にです」

 

手紙を持ってきた従兵に大石が問いかける。何せ自分宛の手紙など久しぶりだからだ。

 

大石「軍令部からか?」

 

「いえ、軍令部経由…とあります」

 

大石「??……住所は?」

 

「……黒森峰……から送られてます」

 

それを聞いて大石は疑問に思う。黒森峰というと考えられるのはまほぐらいだが、彼女もわざわざ手紙を送ってきたことはない、月に一度会いにくることを除いてそれ以外で連絡はとっていない。

 

手紙を渡した従兵はそのまま退室し、大石は筆跡を見る。

これはまほの字ではない……だが女性のものである。そう大石は思った。

封を開け、中身を取り出し、そのまま黙読する。

 

 

 

 

 

 

翌る日

 

原「出掛ける……のでありますか…?」

 

原が呆気がられた様子で聞いてくる。

 

大石「あぁ、ちょいとな」

 

10月といえどここは千島流石に寒い、大石は外套を着ながら原に言う。

 

大石「だいたい一週間かそこらだ」

 

原「それは構いませんが…何処に行かれるのですか?」

 

大石「あぁ、黒森峰だ」

 

原「黒森…?まほ君の居る?」

 

大石「うむ、それも呼び出した相手は家元公だ」

 

原「家元……西住しほさん……ですか?」

 

大石「前原も行くみたいだが、呼び出されたら理由は一緒らしい」

 

原「一体……なんの理由が?」

 

大石「さぁな、手紙には"お伝えしたいことがあるので、お越し願います"とだけあったよ」

 

原「そうですか……分かりました、留守は自分と艦長らで守ります」

 

大石「あぁ頼むよ」

 

原「ところで長官、変装はどうするですか?」

 

大石「ん?あ、それなら…」

 

すると大石は手に持っていた編笠を出す。

 

大石「僧侶だ」

 

原「僧…侶」

 

そう言い残して、大石は部屋を後にする。

 

宇志知島を出た大石は僧侶に扮し、列島を渡り北海道へ、途中室蘭に居た前原と合流し、本土へと渡る。

特急電車を乗り継ぎ、出発から四日後、横須賀から輸送機で洋上の黒森峰に到着する。

 

黒森峰

 

前原「着きましたな」

 

大石「あぁ、これが船の上とは……信じられんな…」

 

周囲の街並みを見渡しながら大石が言う。

 

前原「長官は、黒森峰には?」

 

大石「いや、学園艦そのものが初めてだ。成程、総長が海上都市と言いたくなる理由が分かるよ」

 

前原「自分も大洗には何度か行ったことがありますが、それとはまた格段に違います」

 

大石「何よりここに住む住人、彼らも何処となく違った雰囲気があるな」

 

色々なものを見ながら、両者は途中でそれぞれ第一種と第二種に着替え、歩いて目的地を目指す。

 

大石「ここだな」

 

前原「来ましたな、遂に」

 

横に広く縦に長い塀で囲まれた大きな屋敷が、住宅地の中に何食わぬ顔で立っていた。

一般人ならここに来て緊張するものだが、この二人の場合は緊張の二文字は無く寧ろ平然としていた。まぁ両者は軍人であり、これよりすごい物は幾らでも見てきた為、この程度では驚かなくなっていた。

 

大石「呼び鈴……何処だ?」

 

前原「ノックすればいいのでは?」

 

大石「馬鹿野郎、こんなデカい正門をノックして気付くと思うか?」

 

前原「ですよね……」

 

しばらく辺りを見渡し、黒い小箱のような物を見つけ、それが呼び鈴だとわかるとそれを押す。

数分すると門が開いて一人の女性が姿を現す。

 

「えっと……どちら様でしょう……?」

 

大石「お手紙を頂いた海軍の大石蔵良という者です」

 

それを聞いて女性はハッと何かに気がつく

 

「あぁ!貴方方が!お嬢さま達からお話は聞いております」

 

前原「お嬢さま…?というと貴方は?」

 

「申し遅れました、私西住家で家政婦をやっている菊代と申します。さっどうぞ」

 

そのまま二人は玄関へと上がる。

荷物を客間に置き、しほが待つという応接間に案内される。

 

菊代「奥様、大石閣下と前原閣下がお見えです」

 

しほ「通しなさい」

 

襖の奥から凛とした声が聞こえ、菊代が開ける。

応接間にしては広すぎる部屋にテーブルが一つ、その奥に西住しほが居た。

 

しほ「お待ちしておりました、大石閣下に前原司令」

 

大石「お久しぶりです、家元公」

 

前原「前原です」

 

腰を下ろし、お茶を出した菊代はその場を後にする。

お茶を口に一口した大石が口を開く。

 

大石「さて…奥さん、俺と前原をここに呼んだ理由をお聞かせ願いたいのですが…?」

 

しほ「はい、分かりました」

 

一つ深呼吸をし、視線を二人に合わせると話し始める。

 

しほ「お二人をこちらにお呼びしたのは、みほとまほ、娘達のこれからの人生についてのことです」

 

前原「ほぉ……?」

 

しほ「お二人は、あの子達がこの世界に来るまでどんな人生を歩んできたか、ご存知で?」

 

大石「はい」

 

前原「おおよそは知っています」

 

しほ「それなら助かります、ご存知の通り、あの子達のこれまでの人生はほぼ戦車道一色でした。あの子達が子供としていられた時間…私が母親としていられた時間というのはほんのごく僅かの時間だったのです」

 

二人はそれを聞きつつもその表情を崩さず無言を貫く。

 

しほ「今思えば、私は可哀想なことをしてしまったと思うんです……でも戦車道の、西住家に産まれた以上仕方のないことだと言い聞かせてきました……ですがあの子達はこれからも戦車道をやって生きて生きていくと思うと………」

 

前原「奥さん……」

 

しほ「そこで……お二人にお願いがあるのです」

 

大石「なんでしょう……?」

 

しほ「……あの子達を……貴方方に託したいのです……」

 

「「‼︎」」

 

しほ「今年の初めに、二人から貴方方のことを聞いたんです。そしたらその時、お二人の事をとても楽しそうに、明るく話すんです。この数年であの子達がここまで変わった要因が、貴方方だとすぐ分かったんです。そしてどう思っているかもおのずと……」

 

それを聞き、大石と前原は顔を見合わせる。

 

しほ「今回、こんな風にお会いして分かりました。あの子達があぁなる理由が」

 

前原「自分らは特に何も話しておりませんが……?」

 

しほは首を振ってこう続けた。

 

しほ「雰囲気で分かるんです、なんとなく」

 

大石「そうでしたか……流石にまほの母親なだけはありますな」

 

しほ「どうも」

 

大石「しかし…それは、我々が軍人である……ということを承知で仰っているのですか?」

 

前原「自分らは仕事上、常に死と隣り合わせです、一度海に出れば絶対に生きて帰ってくるとは限りません…それを分かって聞いているのですか?」

 

しほ「はい……それに、お二人は足の着いた幽霊だと、高野閣下や大高さんから聞いております。"二人は殺しても死ぬような漢ではない"……そう高野閣下からも聞きました」

 

前原「ははっ総長も言うな……」

 

大石「分かりました、それなら我々にも異存はありません」

 

前原「娘さん達の命、預からせてもらいます」

 

しほ「……不束な娘達ですが……どうかお願いします……‼︎」

 

その時、襖の奥で何か倒れるようなガタッという音がし二人の頭には?が浮かぶ。

 

しほ「まさか……」

 

彼女は何かを察したのか音のした方をしばらく見つめる。

 

しほ「あなた達…まさかそこにいるの……?」

 

大石・前原「「???」」

 

すると襖が開くとそこには頬を赤くしたみほとまほがいた。

 

前原「みほぉ⁉︎」

 

大石「まほぉ⁈」

 

しほ「あなた達……いつから居たの⁉︎」

 

みほ「えっと……お母さんが前原さん達にお願いした辺りから…///」

 

まほ「そこから……ずっと聞いていました……///」

 

前原「長官……果たしてこれは……」

 

大石「うむ……伝える手間が省けたのは……まぁ……」

 

そこからしばらくの間、沈黙が流れる。

みほとまほに関しては嬉しさや恥ずかしさが入り混じったような表情で視線を泳がせ、しほは何か話さねばならないと悩む一方、両雄は平静を装いつつ茶を飲んで心を落ち着かせようとする。

 

まほ「あの……お母様」

 

そんな中口を開いたのはまほであった。

 

まほ「先程の話……聞いた限りですと……私とみほは……その………大石さんと…前原さんに……お、およ、お嫁にいくみたいなんですけど…」

 

しほ「えっえぇ……そのままよ」

 

みほ「で、でもいいの………?」

 

しほ「…いいのよ……この世界に、あなた達を束縛する物はないもの…戦車道をやるもやらないも、西住家の家督を継ぐも継がぬも自由よ……結婚する相手もそう」

 

みほ・まほ「「お母さん……‼︎」」

 

それを聞いた二人の目には光るものが、また両雄は互いの顔を見合わせて「これでよかったな」と微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意外にも時間が経っていた事から、二人はそのままそこに泊まることになった。屋敷ということもあってか客間も旅館並であった(何故か別々にされたお二人)

夕方になると父の常夫も帰宅、両雄に挨拶すると「娘達をお願いします」と言われた。

夕飯はまほの好物のカレーになり三人がキッチンで作る中、大石と前原は常夫に二人の幼い頃の写真を見せてもらっていた。

 

常夫「これが二人ですよ」

 

大石・前原「「ほぉ〜」」

 

三号戦車の上に乗った二人のツーショット写真を見ながら雑談を繰り広げる。

 

常夫「前原さん、実はみほこの頃かなりやんちゃだったんですよ」

 

前原「なんと⁈」

 

常夫「想像つきますか?」

 

前原「いや…想像できませんな……」

 

大石「それにしても、この頃から戦車に乗っていたんですな」

 

常夫「はい、外遊びの時には大体三号に乗って出掛けていましたよ」

 

その後カレーが出来上がると食卓を囲む、食事中大石と前原の食の手が止まる。

 

みほ「??前原さん…?」

 

まほ「どうかしましたか……?」

 

大石「……甘いな……」

 

「「えっ?」」

 

前原「甘いですよね…?」

 

大石「うん」

 

大石・前原「「甘いなこのカレー」」

 

曰く、今までカレーは辛いものとインプットされてきた二人にとって甘口のカレーは衝撃的だったと。

 

夕食後、両雄は湯船に浸かり疲れを癒す。

疲れが取れると二人はそのまま部屋に戻る。

 

大石の部屋

 

持参した本を片手に珈琲でも淹れようかと思っていたがそれは流石に馬鹿かと思い、読書に勤しんでいた。

 

まほ「大石さん、いいですか?」

 

襖の向こうからまほの声がする、大石は迷うことなく入室を許す。

 

大石「あぁ、入れ」

 

襖が開くと寝巻き姿のまほが入ってきた。

 

まほ「読書ですか?」

 

大石「あぁ寝る前にちょいとな、ところでどうした?」

 

栞を挟んで閉じ、まほの方に顔を向ける。

 

まほ「いえ、その……大石さん、今夜一緒に寝てもいいですか?」

 

大石「うん…………?」(待て…今一緒に寝ると言ったか、まほは…?)

 

まほ「駄目……ですか?」

 

大石「うん?あっあぁいや……構わんよ」

 

 

 

部屋の明かりを落として二人は寝床に着くが寝付けない。

大石は仰向けで、対するまほは大石に背を向ける形で寝ていた。

お互いに何も言わないが興奮しているのは分かる。

 

まほ「大石さん…」

 

大石「ん?なんだ」

 

寝返りをうって大石に顔を向ける。

 

まほ「私、今すごく幸せです」

 

大石「それは…俺もだよ」

 

それに応えるように彼女の頬を撫でる。まほはその手を両手で握りしめる。

 

大石「なぁ…まほ」

 

まほ「はい」

 

大石「俺はお前よりも歳を食ってる、もしかしたらお前より先に逝くかもしれん……だがそれでも……」

 

その後に詰まるが、はっきりと彼は言った。

 

大石「お前の人生…俺に預けてくれないか…?」

 

まほ「………はい」

 

彼はそのまま自分より小さな彼女の体をゆっくりと抱きしめた、彼女もまた背中に手を回し互い抱擁する。

そして互いに顔を近づけて唇を重ねる。

鼓動が響く。大石は産まれて…いや再び誰かを愛し、まほははじめて異性に愛された。

 

 

 

 

 

翌朝

 

朝日が出るより先に大石は目を覚ました。寝たのに何故か身体が重く感じるし、何故か裸だ。

目元を擦って辺りを見回すと脇には脱ぎ散らかした服がある、それも見慣れた寝巻きと一緒に。

咄嗟に大石は昨晩のことを思い出した。

 

大石「あぁー……そうだった……」

 

やってしまったという表情で頭を抱える。すると横からスゥスゥと寝息が聞こえ、その方へ顔を向けると愛するまほの姿があった。

 

大石はほくそ笑んで、まほの頬に手をあてる。

 

大石「俺の……妻……か」

 

 

 

 

 

 

その瞬間大石は心に誓った、絶対に守る、守り通すと……

 

 

 

 

 

 

後日談 託されるは未来 〜終〜




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