「(ここまで来れば友軍勢力範囲内だ) 分隊各員、アクティブ迷彩を解除しろ敵だと誤認されたらマズイ。」
─その場に居た全員が透明化を解除した。
「ついでに彼女の拘束を解いたらどうなんだ? その担ぎ方は女性にはキツそうだ。」
─猿轡と結束バンドで拘束されているケルシーがノーバディーに俵担ぎで担がれている姿を見たソープがそう呟いた。
「確かにそうだな。(ピコピコ動く猫耳はモフモフしてるだろうな…)」
─頭上を砲弾や銃弾が通過する中、ノーバディーは手早くケルシーの拘束を解きつつもピコピコ動く猫耳をガン見していた。
「アーミヤ!」
─拘束を解かれたケルシーが不時着するバッドガイ号を見るとそう叫んで、その方へ向かって走って行った。
「マジかよ······ ホテル0-3から付近の全部隊へ、発砲禁止!繰り返す、発砲禁止!識別不明機にロドスのアーミヤCEOが搭乗している!」
「※英語スラング※民間機を撃墜しちまったのか······」
─バッドガイ号を貫通したシャドウカンパニー側からの流れ弾がロスモンティスのアーツユニットに命中し甲高い音を響かせていた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。アーミヤ代表こそお怪我は有りませんか?」
「私は大丈夫だよ。アーミヤちゃん。」
「大丈夫だよ。」
─ノーバディーの命令に従いシャドウカンパニーの部隊は発砲を中止した。
「攻撃が止んだ?」
「あっちからケルシー先生が走ってきてるよ。でも、後ろに追っ手が4人いるね。」
「武器を捨てて投降してください!」
「このチェーンソーで真っ二つにされたくなかったら、さっさと投降しちゃって!」
「降参すれば怪我しなくて済むよ。」
─ケルシーを追いかけているノーバディーたちに気付いたアーミヤ達が戦闘態勢に移行する。アーミヤがアーツをチャージするのに合わせて、ブレイズがチェーンソーを構え、ロスモンティスがアーツユニットを展開する。
「※英語スラング※ロドスのアーミヤCEOが載っている機を撃墜しちまった時点で薄々こうなる気がしてたんだ。」
─バリスティックシールドを展開したノーバディーの後ろにサプレッサー付きBryson 800を構えたソープ、サプレッサー付き短銃身仕様のM13Cを構えたゴースト、サプレッサー付き標準仕様のM13Cを構えたプライス大尉の順に並び、ソープがブレイズに、ゴーストがアーミヤに、プライス大尉がロスモンティスに照準を付けて、睨み合っていた。
「アーミヤ、全員に武器を下ろさせろ。彼らは敵ではない。」
「ケルシー先生!」
─ケルシーがアーミヤを静止するとアーミヤが構えを解き、続けてブレイズとロスモンティスが構えを解いた。最後にノーバディーたちも武器を下ろした。
「とりあえず自己紹介をしておこう。私はシャドウカンパニー隊長のノーバディーだ。最近この近辺で騒がしいのはシラクーザマフィアのリイナファミリーを相手に私の部下が戦っているからだ。」
「2週間前、君はロドスへ外勤オペレーター4名の殺害と護衛対象の拉致がリイナファミリーの手によって行われた事実を伝えるために、外部からロドスの業務ネットワークへアクセスし、私とアーミヤの端末に証拠をアップロードした。」
「そうだな、間違いなく私が実行したことだ。だが、バックドアの用意をしたのはクライアント。いや、ケルシー医師、あなただろう?」
「······いつから私がクライアントだと気付いていた?」
「最初の依頼を受けた時だ。匿名で高額報酬を前払いする依頼主なんて胡散臭いからな、裏を調べさせて貰った。もっとも、我々がロドスと接触しようとする目的を探っているだけだと分かったが。」
「2週間ぐらい前にあった艦内ネットワークへの大規模な不正アクセスって······」
─警報が鳴り響き、寝ているクロージャが飛び起きる。
「未登録の通信機器が艦内ネットワークに接続しようとしてる!?」
─クロージャが対応を始めるも凄まじい勢いで攻撃が進行し、瞬く間にファイヤーウォールが突破された。
「ファイヤーウォールが突破された! 外部からの不正なアクセスを多数確認! よしっ、外部との通信回線を全て切断!」
─ クロージャが外部との通信回線を全て切断するが迂回路が作られており意味を成さなかった。
「あれっ、不正アクセスが遮断できてない? うわっ、こっちを一切経由しないバックドアが作られてる!」
─ケルシーとアーミヤの端末にアクセスされそうになったクロージャが艦内全ての電源を落とそうとする。
「マズイ、相手がケルシーとアーミヤの端末にアクセスしようとしてる。権限記録にアクセスされたらケルシーに今月の給料を没収される! ············よし、こうなったら電源を」
─けれども、電源を落とす前にクロージャの端末が過負荷で火を吹いた。
「私の今月の給料が!」
「それで、ケルシー医師が知りたがっていた我々がロドスと接触しようとする目的だが、社会的信用や安定した収入が得られる真っ当な所。つまりロドスと専属契約を結びたいからだ。」
「それは2番目の目的であって、君がロドスと接触したい1番の目的とは違うだろう?」
「まあ、1番の目的はリサを助けたいのさ。自分の部隊はマフィアの相手は出来ても、鉱石病はTAK-5やメディカルステーション、スティムショットを使って感染の進行を止めるだけしか出来ないからな。」
「どうやら、君はマフィアの相手をしただけだと思っているようだが、マフィア側の見方は違うと言うべきだろう。マフィアたちは莫大な富と権力を手にしているが、その過程で自分達の障害となる存在を武力を用いて排除してきた。莫大な富と権力は万人が欲する物だと考えているがゆえに彼らは君が簒奪を行い莫大な富と権力を自分たちから奪おうとしていると勘違いしている。」
「なるほど、だからあそこまで連中が執拗に攻撃して来るのか。マフィアと癒着していたとはいえ正規軍所属の部隊との戦闘が起きてしまった以上、もう後の祭りだが。(そろそろリサを乗せたヘリがリップコード前線基地に到着する時間だな。)」
─前線基地へ4機のMi-35Mと8機のMH-60Lが着陸し、兵士とリサが降りてきた。
「······へドリー、ターゲットの少女を発見したわ。今着陸した飛行機械の側よ。」
「······イネス、護衛の数は?」
「今のところ兵士120人と車両が180台よ。」
─敵を殲滅して前線から引き上げてきた戦車と歩兵戦闘車、自走対空砲が周囲へ展開し、防衛体制を整えていた。
「······W、ターゲットの拉致は出来そうか?」
「無理よ。あの全員が銃で武装してる連中と殺り合うのは命がいくつ有っても足りないわ。」
「だが、命知らずな馬鹿があの基地に攻撃を仕掛けるらしい。」
「その馬鹿がターゲットの拉致に成功したらソイツからターゲットの身柄を奪うわけね。」
「あの防御陣地を突破するのは無理でしょうね。期待するだけ無駄よ。」
─マフィア側の兵士が放った野砲の着弾で戦闘の幕が切って落とされた。
「ホテル0-3、こちらリップコード、敵の攻撃を受けている。支援を要請する。」
「ホテル0-3からリップコードへ、了解した。対応可能な部隊全てを急行させる。アウト。ホテル0-3から作戦中の各員へ、現在の任務を中止しリップコード前線基地へ支援に向かえ。内容についてはリップコードに確認しろ。ホテル0-3アウト。」
「リップコード、こちら火力支援基地ベルリン。30両のVIDARが待機中。目標指示を要請する。」
「ベルリン、こちらリップコード。座標を送信した。敵野砲を黙らせてくれ。」
「了解した。砲撃開始。」
「リップコード、こちらレイヴン4-1。現場に到着した。後続のガンマン隊は5分後に到着する。指示を要求する。」
「レイヴン4-1、こちらリップコード。前線の友軍部隊から指示があるまで上空で待機しろ。」
「了解した。レイヴン4-1アウト。」
「撃······」
─155mm榴弾が正確に着弾し野砲を吹き飛ばした。
「火力支援基地ベルリン。こちらリップコード、全ての野砲が破壊された。支援感謝する。リップコードアウト。」
「おい!砲撃支援はどうした?」
「······」
「野砲が殺られた!全員突撃!繰り返す、全員突撃!」
「ありったけ迫撃砲を撃ち込め!」
「※英語スラング※まるでケサンだな。」
─リップコード前線基地へ到着したノーバディーは迫撃砲が雨のように降り注ぐ中でも足を止めずに前進し続ける敵軍とそれを迎え撃つ味方を見てそう呟いた。
─塹壕内へ複数の迫撃砲が着弾し、付近に居たフランカとリスカム、プロヴァンスが重傷を負った。
「フランカ先輩!リスカム先輩!プロヴァンスさん。しっかりしてください!」
「3名ダウン。衛生兵!」
「どうやらスティムショットの出番らしい」
─ノーバディーがフランカとリスカム、プロヴァンスにスティムショットを打つとすぐに3人の傷が塞がった。
「後はベッドでしばらく寝ていれば治る。レイヴン4-1、こちらホテル0-3。敵の迫撃砲を排除してくれ。」
「了解した。攻撃開始。」
─Harrier GR.7がマフィア側の兵士へAGM-65Gを発射し迫撃砲と操砲要員を粉々にした。
「防御陣地が突破できねえ」
「今はどうやって連中から逃げるかを考えろ!」
「そもそもマフィアに関わらなければ良かったのにな」
「コイツらどこから来やがった!」
「※シラクーザスラング※やっちまえ!」
「捕虜を扱う手間が省けてラッキーってヤツだな…」
─ソープはサプレッサー付きBryson 800で敵兵士を射殺した。
「ホテル0-3、こちらゴースト7-1。最後のターゲットを始末した。」
「ゴースト7-1へ、了解した。基地へ帰投しろ。」
「ホテル0-3。了解した。ゴースト7-1は基地へ帰還する。」
「久しぶりに敵襲がない夜だな······うわっ」
─ノーバディーは久しぶりの敵襲がない夜を過ごそうとしていたが、瀕死の重症からスティムショットによっていきなり回復したことにより発情状態になっていたフランカとリスカム、プロヴァンスに襲われていた。