真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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 はじめましての方ははじめまして。
 そうでない方もはじめまして。

 世良緋那太と申します。

 数年振りに筆をとりました。というのも、最近になってようやく恋姫†夢想革命をプレイしまして、消えたはずの創作意欲が復活してしまったためです。


 雑文で、かつ医療知識も全くございませんが、どうぞ温かい目で御覧ください。この作品を機に、恋姫シリーズとDoctorKシリーズに興味を持って頂けると幸いです。


第一章【杏林】
序章〈1〉


 帝都大学。その最高学府の、日本最高峰の技術と規模を誇る総合病院で近藤(こんどう)一慶(かずよし)は研修医をしていた。今日は夜勤で、この時間は同期が巡視を行い、自分は少しだけ横になって仮眠をとっていた。

 

 

 自分の家は、少しばかり特殊な家だった。親族はみな、遥か昔から人並み外れたレベルの医療を行なってきたエキスパート達。そのあまりにも(かみ)()かり的だった医療技術は時に権力者達に命を脅かされることがあったため、一族は歴史の中でその流れを二つに分けた。

 一つは陽の当たる場所で、その腕を振るう表の世界の者たち。もう一つは決して表には出ず、一族の技術を密かに伝え、いざという時の安全装置と保険としての役目を担う裏の者たちである。

 更に、裏の一族は医者であることをも隠し、医大に通わず医師免許も持たないという徹底ぶりであった。

 

 自分はそれが嫌で、表の世界で活躍する医者になりたかった。まず、医療行為がバレてしまえば逮捕待ったナシ。そんなのは御免被る。

 聞くところによると、先代のドクターKがこの世を去った後、遠戚の裏の世界にいた神代(かみしろ)(かず)()が特例で医師免許を取得し、その名を継いで表の世界に出たと言う。別に一族を継ぐつもりなど無かったが、それも後押ししたことにより、今こうしてあるわけだ。大変ではないと言えば嘘になるが、充実した日々を送っている。

 

 

 

 で、こうして仮眠をとっているのだが、なかなか寝付けない。室内灯が眩しすぎるのか、光を避けるために寝返りをうったところで、大きな縦揺れが襲った。

 ソファから全身が浮いた経験は初めてだ。テーブルの上に置かれていたコーヒーカップが飛び跳ねて(こぼ)れる。ナース達の悲鳴で咄嗟(とっさ)に身体を動かそうとしたが、揺れが酷くて微動だにできない。戸棚がガタガタと鳴る。固定していなければ、今頃倒れてきて自分に直撃していただろう。間違いなく今まで経験してきた中で一番酷い地震だった。

 

「地震だ!」

 

 どこかの病室から声が聞こえた。揺れは長く続く。治まったと思えばまた大さく揺れ始め、数分に渡って大きくグラグラと揺れ続け、遂にはこの部屋が暗闇に包まれた。

 しかしすぐに明かりがパッと点く。非常用電源が動き始めたのだ。

 

「おい、地震だ!」

 

「分かってる!」

 

 揺れが収まった瞬間、同じ研修医の伊沢が当直室に飛び込んてきた。

 

「震度6弱、いや6強か?」

 

「いや分からん、分からんが一大事だ。何度も大きく揺れたから、すぐに重傷患者が押し寄せてくると思う」

 

「津波も来るか……? 研究してたのが知り合いにいただろ?」

 

 不安げに言うんじゃない、仮にも自分たちは医者だ。応援が来るまで、出来ることをやらないといけない。

 

「……震源地によるが、地下鉄を伝ってここまで波が来るかもな」

 

 大学で地震学を専攻していた友人の言葉を思い出しながら、そう言ってしまった。同僚の顔は蒼白になる。

 

 かろうじて揺れから生き残ったテレビは、震度7の揺れがあったことと、震源地が海であること、そして一番見たくなかった大津波警報を伝えていた。画面の右下には日本列島が表示され、紫色でそれを示している。

 

「し、首都直下地震……?」

 

 モニターを見て伊沢が膝から崩れ落ちた。

 

「……もう、ダメだ」

 

「しっかりしろ伊沢! 立てッ! 呆けてる場合じゃないだろッ!」

 

 

 

 どのような緊急事態の時でも、人命救助が第一だ。この帝都大学附属病院は7階建て。最悪の場合、この病院が波に飲まれたとしても、上階へ逃げれば守ってくれる箱ぐらいにはなるはずだ。むしろそれぐらいの強さがないと困る。

 

 緊急医療体制を整える間もなく、深夜の病院がざわめき出し、その音量は次第に増してゆく。泣き呼ぶ声、痛みを耐え忍ぶ声、鳴りやまない電話、街全体に響くサイレン、いつまでも終わらない余震。

 暗闇の地震は容赦なく民間人に襲い掛かる。それはまさしく、無差別攻撃が行われた戦場のようだった。

 

 

 

 病院内は瞬く間に患者で一杯になった。エントランスホールも芋の子を洗うようになっている。床で倒れ込むようにして治療を待つ者が多数だった。

 輻輳(ふくそう)となった院内ではトリアージすらまともに出来ない状態だった。既に事切れている患者もいるが、悲しんでいる余裕などない。現場はとにかく慌ただしい。用意していた薬品類や止血用の包帯が湯水のように消費されてゆく。着ていた白衣もかなり汚れ、ところどころ血で染まっていた。

 

 ショックから復活した伊沢も、治療に付きっきりである。

 

「伊沢、俺は抗生剤が無いから取ってくる。ここを任せた」

 

「分かった、気をつけろよ」

 

 言葉少なく要件だけ伝え、床に倒れ込んでいる患者たちを避けながら当直室へ。置いてあった自分の大きなエナメルバッグを手に、薬品庫へ向かった。

 その間も惨状は広がっていた。散乱した部屋が数多く、壁さえ黒く汚れていれば廃病院と見間違えるほどだ。一部のナースたちはパニック状態になった病室を大急ぎで巡回している。

 

「近藤先生、私たちは……」

 

「皆さんは巡回が終わったら、自身の家族の安否も確認してください。私は薬品庫に向かいますから」

 

「分かりました……!」

 

 応援に駆けつけるはずの先輩たちも、半数以上が未だ病院に到着できずにいる。被災して遅れているのか、もしくはもう……。

 

(早く戻らなければ……)

 

 薬品庫は比較的無事だった。散乱した小瓶は多いが、割れずに転がっているだけ。それらをバッグに無造作に詰め込む。包帯、メス等の医療器具、消毒液、すぐにバッグは一杯になるが気にしない。手当たり次第に。入り切らない分はポケットに突っ込んだ。 

 いざ処置室に戻ろうとしたその時、また大きな揺れが襲う。今までの余震とは比べ物にならない、大きなものだ。

 

 

(この余震は、大きい……ッ!?)

 

 

 目の前に、倒れてくる巨大な薬品棚が見えた。

 自分の脚が押し潰される感覚を覚えながら、意識は途絶えたのだった。

 

 

 誰もが慌ただしかったために見ることのなかったテレビ画面には、津波到達の映像と、西日本でも巨大地震が発生したこと、そして富士山が噴火したことを知らせるニュースが映っていた。

スーパードクターKとK2を読んだことは

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