真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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本当に突発的に書いてしまった、現代編補完用ストーリーです。

別に読まなくても大丈夫なように書くので大丈夫です。

慶の事を説明するようなお話しなので、時々挟むと思います。


幕間:転移(うつ)

 蝉の鳴き声が聞こえようが、どれだけ()だるような暑さであろうが、文明の利器には敵わない。地球温暖化が騒がれてもなお、自分たちが暑さで倒れる方が大問題である。

 そう、特にこの真夏の時期と、真冬の季節は。

 

 

 帝都大学構内の総合研究室にその男はいた。

 

 

 研究室と言っても、白衣を着て実験をするような場所ではなく、レポートを作成するために様々な書物が置かれている巨大な部屋である。

 

 言うなれば、雑談をしながら作業のできる図書館のようなところ。クーラーもよく効き、汗だくで入室すれば風邪を引きかねない、そんな部屋。

 

 様々な学生が苦々しいコーヒーを飲んだ上、更に苦虫を噛み潰したような顔をして、パソコンに向かってレポートを書いている。

 

 

「近藤、お前医学部だよな」

 

「そうだけど」

 

「どう見ても考古学のレポートだよな、それ」

 

「そういう伊沢も経済学のレポートじゃねぇかそれ」

 

 互いに膨大とは言えないが、とはいえ少なくない量の資料を抱えている。

 医学部の学生でも、一応、自由選択科目という形で他分野を受講することはできる。しかし、自分の首を締めていることには間違いなかった。

 

「で、考古学で何書いてんのよ?」

 

「秦の始皇帝陵墓について云々」

 

「…………」

 

 

 

 訊いておいて黙るのか伊沢よ。呆けた顔をするな。

 

 

「……ちょっと一服行ってくる」

 

「あぁ、俺も行くわ」

 

 自分が席を立つと伊沢も一緒に来た。

 

 

 正門近くに配された喫煙所には、教授陣も多く詰めている。授業外での情報交換の場としてはかなり有用な場所だ。

 

 いや、医者を志すものが煙草なんて、と思うかもしれないがご容赦願いたい。

 

 ……誰に対して言い訳したんだ俺は。

 

 

 喫煙所は日陰の争奪戦が行われていた。

 既に入れるような日陰もない。照りつける太陽の下、二人して慣れた手付きで煙を肺に満たした。

 

 

「なんで考古学なんて受講したんだ?」

 

「まぁ、興味があったし、医学史も学ぶきっかけになるから、無駄じゃないと思ってさ。華佗って面白いのな。ついでに三国志も色々と調べたわ」

 

「……お前が分からなくなるよ、時々」

 

「その言葉、熨斗(のし)つけて返してやるよ」

 

 経済学も、医療経済学みたいな学問領域があるのだろうか。知らんけど。

 

 

 伊沢は煙草を揉み消して、アイスコーヒーを飲む。この暑さで足元には結露の雫で跡ができていた。

 

 研修医になれば、こんなに時間に余裕を持った動きはできなくなると思う。大学二年の夏、もはや最後の夏と言っても過言ではない。

 

 

「興味があって取った物理学の授業も、まさか夏期講習があるなんてな……」

 

「でも美人が多くいるって噂だろ? 良いじゃねぇか」

 

「先生がイケメンだからな。面白い先生だぞ、一緒に来るか?」

 

 

 荷物をまとめて、伊沢とその夏期講習の大教室へ。

 教室は既に席が埋まりつつあるが、男女比率は2対8とかなり不利。先生目当ての学生ばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 酷い災害が関東地方を襲ってから数週間後のことだった。地震のダメージは凄いが、ボロボロの学び舎でもこの教授は変わらない。

 

 

 伊沢が研究室にやってきた。いつもなら伊沢が来るときは彼もいたはずだ。しかも後ろには、いつか見た顔の刑事も一緒である。

 

 

「近藤君に何かあったのか」

 

「察しが良いな……失踪した。あの震災の時にな」

 

 

 目の前にモニターを置かれる。

 

 防犯カメラには薬剤庫に入る彼の姿が映った。そして場面は室内。部屋の中では余震で倒れた棚に挟まれる近藤と、その瞬間に光に包まれて消えていく様子が映っていた。

 

「彼は突然光に包まれて、忽然と消えてしまったと……そう言いたいのか?」

 

「現状、そう言わざるを得ない」

 

「ほう……」

 

「何か分からないか? 事件に巻き込まれた可能性もある」

 

「災害発生時のパニックに乗じて、大学病院で研修医を拉致したとでも言うのか? その方が非現実的だ。この光の説明もつかないぞ」

 

「じゃあ実験で同じ現象を起こす方法は?」

 

 

 食い入るような顔で見てくる刑事に、思わず笑ってしまった。

 

 

「さっぱり分からない」

 

 

「この……伊沢君からも聞いたんだが、お前が近藤君と仲が良かったと聞いてな。どんなことでもいい。教えてくれるか」

 

 警部はどっかと対面で座った。

 

「……良いだろう。コーヒーをご馳走する」

 

「あぁ……」

 

 人数分、インスタントコーヒーを淹れて差し出した。

 

 

 

「僕は『天才』という言葉をおいそれと使いたくはないが、二人だけ本物の天才がいる。その一人が近藤君だ」




帝都大学って、あの先生がいるんだよなぁ……と思いついてしまったんです。
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