真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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気がつけば、日間二次ランキング18位までいく日がありました。UAも2万3千を突破。
突然バズった状態でしたので驚きました。どこかで話題にでもなったのでしょうか?

そんなことはさて置き、誠にありがとうございます。戦々恐々としておりますが、これからも頑張ります。


何進〈3〉

「臍の右下腹部、マックバーニー点を中心に交差切開する」

 

 移動した先の部屋。板張りの台に何進は寝ていた。火箸の準備も整い、霞が燭台に火を灯す。

 

 

 

 何進の肌にメスが入る。開創器で術野を拡げると筋肉質の筋が見えた。

 

「これが外腹斜筋腱膜。これを切開し、内腹斜筋を露出させる」

 

 さすがは大将軍と言うべきか、よく鍛えられていて筋肉の層が厚い。

 

 何太后は肉の焼ける臭いに顔を顰めながらも、部屋の片隅にいる。てっきり、穢れといったものを恐れて部屋から出ていくものだと思っていたが、それも杞憂で姉を見守っていた。流石、その度胸は元々屠殺業を行なっていた肉屋なだけある。

 

 しかし、冥琳と霞は状況に慣れるのが早すぎると思う。

 

 

「冥琳、真っ直ぐで鈎の無い鉗子(かんし)を」

 

「……これだな」

 

 

 ペアン鉗子で腹斜筋に裂け目を入れて開く。

 

「筋肉の下に腹膜がある。これをつまんで切開すると…………これが盲腸だ」

 

「ほう……こうなっているのか」

 

「いや、冥琳は冷静すぎんで……てか分からん言葉が多すぎるわ」

 

「私も半分は分かっていないぞ?」

 

 半ば解剖学の授業となっているが、冥琳は興味津々に術野を見る。自分でも始めて見たときは気分を悪くしたものだが……この時代の為せる技と言うべきか。ホントに慣れるのが早いと思う。

 

 しかしまぁ、いずれしっかりと授業形式で教えていくのも良いかもしれない。今後の戦乱に備えるためにも必要だろう。

 

 

「盲腸の先、ヒモみたいなのが見えるな? この収束点に虫垂根部がある……で、これだ。何進殿は長く耐えていた。虫垂が腫れ、破れて膿が出ている。この状態が穿孔性腹膜炎と呼ばれる状態だ。少々難しくなるが、まぁ問題はない」

 

 

 虫垂動脈を結紮切離する。これで内容物は通らなくなる。

 

「一気に終わらせるぞ。虫垂切断!」

 

 

 膿が漏れていた分、よく洗浄をしてから穿孔部を縫合する。

 

「あとは盲腸を戻して、腹水を確認して、縫合すれば終了だ」

 

「あ、あの……傷は残るの……?」

 

 

 何太后は恐る恐る聞いてくる。確かに、今後の生活を考えれば当然の問いだった。

 

 

「ご安心を。縫合の跡を目立たなくさせますから」

 

 縫合の際に、皮膚ではなく皮下組織に糸を通して行う皮下埋没縫合を行う。最後はサージカルテープで固定すれば抜糸の必要もなく、縫合の跡はほとんど残らない。

 何太后は安心したようにホッと息を吐いた。

 

 

「虫垂炎摘出手術を終了する。冥琳、霞、お疲れ様」

 

 

 どれだけ時間を掛けずに手術を終えられるか、これをずっと己に課してきた。手術を集中力を切らさずに継続させる体力も勿論だが、それより先に患者の体力が尽きてしまえば意味がない。

 

 スピーディーかつ、正確に。最後の皮下埋没縫合も、とにかく丁寧に行わないと、結局は違和感の原因になることもある。

 

 

 

「おう杏林。終わったか?」

 

「炎蓮さん、今までどこに…………えぇ、無事成功しました。後は目が覚めるのを待つだけです」

 

 

「おや孫堅、貴様の部下が治療したのか」

 

 炎蓮さんの背後から、何やら不気味な雰囲気をまとった色白の女性が現れた。この人も病気なのだろうか。

 

「……申し遅れた。江夏太守の黄祖だ」

 

「ど、どうも……」

 

 今まで、炎蓮さんや冥琳たちから射抜かれる視線というものを感じたことはあるが、この黄祖のものは別物だった。鋭利な刃を思わせる冷酷なものだ。

 

 ちなみに、何太后は手術の立ち会いに疲れ果て、既に雷火さんと共に退室していた。

 

 

「天が江東の虎を選んだという噂、本物のようだな」

 

 その視線は値踏みをするような、ねっとりとしたものに変わる。非常に不愉快極まりない。

 

「黄祖殿、でしたか……よくご存知で。太守となるとその辺りを知るのに、さぞかしお時間が掛かったでしょうな?」

 

「…………劉杏林だったな。我が主、劉表に代わり礼を言いに来たのだ。大将軍の治療に感謝する。それだけだ」

 

 

 礼を言ったと思えば、すぐに立ち去る黄祖。

 

 ダメだわ、ちょっとイラッとするとお国の言葉(京言葉)が出てきてしまいそうになる。詮索しないでほしい。

 

 周りを見れば少し驚いた顔をする各々方。霞だけが普通の顔をしている。

 

「……すみません、大人気もなく」

 

「い、いや……慶も軽くとはいえ皮肉めいたことを言うのだな」

 

「太守に“暇なんですか”と訊くとはな、面白かったぞ慶!」

 

 

 やめてよ二人共、恥ずかしい。

 

 

 

「とりあえず片付けしていいですか……何進殿もこのままなので」

 

 術後そのままの状態のため、何進が身体を冷やしてもいけない。

 

 

 このまま経過観察期間となるため、洛陽に泊まることとなったのだった。




いや、ホントに難産。
すみません、遅くなりました。

とある「就職成功したランボー」さんのお話を見ていました。マジで泣けた。
あと、日本で2番目に有名な鬼退治の話も見てました。これも泣けた。

最初は慶が皮肉るシーンを京言葉で書いていたのですが……霞もいるしで違和感ありまくりで、それに相まって手術シーンも闇鍋並にとっ散らかっていました。
長すぎても専門用語乱発するので、少しだけ端折ってます。ご了承ください。
今はある程度まとめていますが、もしかしたら書き直すかもしれません。

では、また次回。
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