真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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冥琳たちに会うのは、リアル時間で2週間以上振りになりますね。


何進〈6〉

「それにしても、洛陽の医者は皆が匙を投げたというのに、慶は即座に治してしまったな。今頃、十常侍共の(はらわた)も煮えくり返っておろうよ」

 

 かっかっかっ、と小気味良さそうに笑う傾は、本当に気分が良さそうだ。

 

「大将軍も大変だな……下手すりゃ宦官に暗殺されるかもしれない毎日とは、恐ろしい」

 

「……瑞姫(れいちぇん)がいるから、頑張れるのだ。妹が綺麗になればなるほど、感じられる喜びも一入(ひとしお)さ」

 

 傾は患部をさすりながら、少し俯いている。

 

 

「私は、この洛陽で随分と専横した。本当に好き勝手して恨まれることを多くしてきた。この病は罰だったのやもしれんな」

 

「……気を付けるんだぞ。せっかく病気を治しても、これで傾が殺されちゃたまったもんじゃない。それに、これから償えるチャンスだってあるさ」

 

「……ちゃん、す?」

 

「機会ってことだよ」

 

 

 その通りだなぁ、と傾は呟いた。まるで憑き物が落ちたような、吹っ切れた表情を見せる。

 

「……もし都落ちをすることがあれば、瑞姫と共に肉屋にでも戻ろう。心配あるまい、妹と私の美貌で大きく儲けてやる」

 

 ニヤリと笑う傾だが、吹っ切れすぎやしてないか。でも、これからは善政を敷こうと考えているのかもしれないが、今までの罪が消えることはないのだ。

 

 いま、心を入れ替えたとしても、破綻を迎えようとしているこの国ではとてもじゃないが厳しい結果が待っているだろう。

 

 

「洛陽で肉屋は厳しいだろうなぁ。顔が割れてるんだし」

 

「その時は建業に転がり込んで店を開けば良いではないか。安心しろ、今のところは都落ちなぞさせん。色々と考えてはおるのでな」

 

 

 サラリと洛陽の都落ちという恐ろしい話を言ってのけるが、これが本当の漢王朝の斜陽、その一歩が刻一刻と近付いていることは、口が裂けても言えなかった。

 

 傾はこれからどうなるのだろう。董卓も、あのような美少女が奸雄として跋扈(ばっこ)するとは考えにくい。むしろ巻き込まれて酷い目に合うような、か弱そうに見える人だった。

 

 

「董卓や賈駆はどうなんだ、何か策が?」

 

 二人の名前を出すと、少しだけ顔を強張らせる傾。明らかに何かがあると顔が語っていた。

 

「……慶よ、どこまでこの策が見えているのだ?」

 

「ホントに何も分かってないし見えるワケがないよ。そもそも軍師なんてガラでもないし」

 

 

 自分の知っている三国時代じゃないって何度も脳内で言いまくってる。これからの流れすらよく分かっていない。

 

 史実なら、黄巾の乱から何進暗殺、反董卓連合の流れだが、果たしてその通りになるのか。

 

 

「なら、余計な詮索するのは止めておけ。……だが、霞は私の元部下なのでな。我が軍に復籍してもらうことになる。そして、(ゆえ)(したた)かだぞ」

 

「霞のことは……文台様に聞かないと、俺じゃ判断出来ないから」

 

 むしろ、炎蓮さん抜きでこのような話をして大丈夫なのかが不安過ぎる。追々、冥琳辺りに相談しておこうと決めた。

 

 

 

 

「それと、慶。いつ洛陽を発つのだ?」

 

「術後の経過を()て……と思ったけど、かなり良さそうだから、明後日頃には戻るように進言するよ」

 

 本来なら一週間は経過を見たいところではあったが、目覚めてからの数時間で驚異的な回復を見せている。明日の予備日はむしろ自分のために充てたいと思っていた。主に睡眠時間として。

 

「そうか、なら褒美は明日にでも用意させよう。楽しみに待っていろ」

 

「ありがとう。それじゃ、俺もそろそろ部屋に戻るよ。流石に夜更しし過ぎた……」

 

 

 欠伸が止まらず、堪らず大きく口を開けてしまう。

 

「うむ、よく休め」

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻ったのはいつだったのか、記憶すら定かではない。

 

 ただ、早朝に叩き起こされて不機嫌だったのは覚えている。恐らく三時間も寝ていない。

 

「慶、起きているか?」

 

「冥琳……いいよ、入って」

 

 部屋に入ってくる冥琳は変わらず黒髪美人で、凛々しい顔付きを見るのは久し振りかもしれない。

 

「久し振り冥琳」

 

「寝惚けているな。昨日も会っているだろうに……寝不足か?」

 

「そんなに酷い顔かな」

 

「隈も酷いし、顔色も悪そうだ」

 

 そりゃ、ほとんど寝ていないため、身体も本調子ではない。もう少し時間が経てば身体も起きてくるはずだ。

 

「昨晩、何進の意識が戻ったから、様子を見に行ったんだよ……とにかく眠い」

 

「だが、起きてもらわんとな。褒美のことで呼ばれているんだが……さすが大将軍だな。凄いことになっているから早く行くぞ」

 

 

 朝ごはんも食べず、身なりだけを整えて炎蓮さんたちと合流して謁見の間に行くと、あのか弱い美少女の董卓や、その他見たことのない女性たちがいた。

 

「杏林、いえ……劉仁殿。この度は何進大将軍の手術、誠にありがとうございました。一同、御礼申し上げます」

 

 そう董卓に言われ、差し出された大きな木箱には金銀、玉が(うずたか)く積まれていた。

 

「いや、こんなに……ですか?」

 

 間違いなく褒美としては貰い過ぎな額であろう。確かに手術道具を作るための資金として考えてもいたが、それでも自分の手に余る程のものに違いない。

 

「劉仁殿、貴方のお陰で姉様は助かりました。どうぞお納めくださいませ」

 

 何太后は半ば押し付けるように金品を持たせてくる。まさか、金に綺麗も汚いもないとは言うが、都の増税で召し上げられたものだったらどうすると邪推してしまう。

 

「ご安心を。これらは全て、姉様の私物ですわ。国庫からは出しておりません」

 

 それはつまり、賄賂だったものでは? マネーロンダリングされた結果のものだと言いたいのだろう。

 

「受け取っておけ。ここで断ると余計に面倒になる」

 

 冥琳は悩む自分の顔を見て(たしな)めてきた。

 

「……分かりました。ありがたく頂きます」

 

「では……()(しょく)将軍、その他の目録を」

 

 何太后の背後に控えていた女性が返事をした。あれが盧植。劉備や公孫賛の先生と言われた人物だ。これはまた綺麗な人物である。

 

「承知しました。今の金品の他に、この洛陽における技術者を自由に使っていただいて構いません」

 

「……すみません、技術者ですか?」

 

「劉仁殿の道具を作る際には、この洛陽で自由にして頂いて構わないということです」

 

 建業から距離があるため、洛陽の技術者に作ってもらうことも少ないだろうが、ありがたいことには間違いない。

 

「続けて……馬を一頭、こちらは西方から取り寄せていた軍馬です。お納めください」

 

 そして馬である。西方ということは、涼州の駿馬(しゅんめ)なのだろうか。目下の問題は乗馬が苦手というところだが。

 

 目録を受け取り、城外に出てみれば一頭の馬が出迎える。

 

 

「おおっ、すごい綺麗だ……!」

 

 出迎えたのは金色の毛並みの馬だった。西方は西方でも、涼州よりもさらに西の生まれであることは間違いない。とにかく美しい。眩しいほどに輝く毛並みは見事の一言に尽きる。

 

「こ、こんなに良い馬、頂いてもいいんですか?」

 

「構いません、それぐらいに何進殿は礼を尽くしたいということです」

 

 そう答えたのは(こう)()(すう)将軍だった。

 

「それよりも、名付けてあげてくださいませんか?」

 

「名前、そうですね……」

 

 過去に活躍した名馬たちの名前が浮かんでは消える。この貴婦人のような姿に、かの三冠馬の娘を想起させるが……その気持ちを抑えて……。

 

「じゃあ、帝大帝(テイダイテイ)ぐはッ!」

 

「ならぬならぬ! ダメに決まっておろうが!」

 

 名前を言い切る前に、雷火さんから一発良い蹴りを尻に、そして炎蓮さんからも脳天に手刀を食らった。

 

「もう少し空気を読め、空気を。もっと呼びやすい名前にしろ」

 

「え、実況しながら呼んだらダメ?」

 

「ならん。どこで走らせるつもりだ貴様」

 

 冥琳からも怒られてしまった。しかも貴様にランクを下げられた。良いと思ったんだけどなぁ。帝大帝王(テイダイテイオー)

 

 

「仕方ない……じゃあ、この毛並みの美しさから……『(あさひ)』にしよう」

 

 名前の落差に疑問を持ってはいけない。朝日のような輝きを持つ毛並み、文句ないだろう。旭も納得したのか、一回だけ(いなな)くと自分の顔に頬ずりするのだった。




トウカイテイオー(東海帝王)→東大帝王→帝大帝王ってことです。

なんか言われそうだったので。

恋姫で一番好きなキャラ(トップ編)

  • 劉備/桃香
  • 曹操/華琳
  • 孫策/雪蓮
  • 孫権/蓮華
  • 孫堅/炎蓮
  • 霊帝/空丹
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