真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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戦闘描写ほど難しいものはないと、そう思うのですよ。めっちゃ難しい。精進します。

この回は重要なのです。まぁ見ててください。

サブタイトルの熟語は造語です。


辿甦(てんそ)〈1〉

「掛かれぇぇぇぇぇェェッ!!」

 

 

 前衛を務めていた雪蓮の部隊が奇襲を仕掛け、突撃していく。総大将が先頭で敵陣に突っ込んでいくのはどうかと思ったが、かの周公瑾の策に狂いはないという信頼感が場を覆っている。まして、相手は烏合の衆。突如として背後を突かれた黄巾党は為す術もなく瓦解していった。

 すぐに敵将の首級を獲り、鬨の声を上げる呉の精鋭たちを、自分はその更に後方にある輜重隊から見ていた。

 

 冥琳が言ってのけたのは自分を輜重隊に編成し、侵入させるというものだった。医療品などは持たずに矢などの最低限に必要なものだけを積み、最軽量で突貫を仕掛ける。

 雪蓮の部隊の脇をすり抜け、街へと滑り込んだ。

 

 

「こっちだよ!」

 

 太史慈の案内のもと、大人数で勢いよく荷車を押していく。大きな力で動かすため、カーブでは車輪を大きく滑らしてドリフトをしながら城壁へと近づいていく。

 

 街のあちこちの壁には大きく『甲子(かっし)』と書かれていた。どうやら『黄巾党参上!』と同じようなノリで書かれているようだが、崩れた壁や家を見ながらその文字をみると不快感が増してくる。そして所々にいる敵兵は太史慈が薙ぎ倒していった。

 

 鎧袖一触という言葉が相応しい。そのまま道を槍で切り開いていく。

 

 

 

「キャアアアアアッ!」

 

 城壁まで最後のストレートというところで女性の悲鳴が聞こえてきた。逃げ遅れた民間人がいたらしく、見れば黄巾党が襲っている。ゲスな顔つきで、戦いの狂気に飲まれて正気を失っていた。

 

「みんな、先に城壁へ! 俺が助ける!」

 

 荷車は自分を置いて城門へと到着する。

 

 

 

 もはや声にならない悲鳴を上げながら、自分の姿を見て逃げる住民。その姿を見て、襲っていた輩が振り返った。

 

「なんだぁ? オレの邪魔をするヤツはゴファッ!」

 

 振り向いた瞬間にその頬へ拳を一撃。目の前の女性に夢中で、自分の気配すら分かっていなかったようである。

 

「俺は医者だ。この狼藉、赦さんぞ」

 

 もう一人の黄巾党は勢い良く地面へと殴り倒され、その身体はボールのようにバウンドした。その音を聞いて周囲にいた仲間たちがわらわらと湧いてくる。

 

 

「せっかく良いオンナがいたってのによォ……何してくれてんだゴラァッ!」

 

「いや、人って殴り倒されて跳ね返らないだろ……ヤベェ、ヤベェって!!」

 

「……男が数人、寄って(たか)って……恥ずかしいと思わないのか? 俺が相手だッ!」

 

 

「良くぞ言った!」

 

 拳を構えたその時、頭上から凛々しい女性の声が聞こえて、自分の隣にその声の主が音もなく降り立った。

 

「単騎相手にこの人数、醜い振る舞いよ。青年よ助太刀する!」

 

 水色の髪をした美女が紅い槍を構えて……飛んだ。

 

 飛んだというのはその美女ではなく、黄色い布とその持ち主だ。槍が陽光を反射した瞬間、綺麗にかっ飛ばされ、壁と熱いキスを交わしている。太史慈の槍とはまた違う流麗な槍捌きだった。

 

 自分も間合いを詰めて敵を殴り倒す。

 

「拳なんざに負けるかよォッ!」

 

 剣を振り下ろされるも、その動きは単調で避けることも容易い。剣の重みに負けて、ガラ空きとなった顔面に膝を勢いよくめり込ませた。メシャッと良い音が鳴り、鼻からボタボタと流れる鮮血と共に宙を舞う。周囲の敵はこれでいなくなっただろう。

 

 見れば女武芸者の方もケリが付いたようで、こちらに振り返る。

 

 

「……手伝ってくれてありがとう」

 

「礼は不要だ。名は何と言う?」

 

 

 女武芸者は握手を求めて手を差し伸べた。

 

「……姓は劉、名は仁、字は杏林。ただの医者だよ」

 

「ただの医者がそれなりに強く、そして患者を増やすとは……江湖(こうこ)には、さも面白き人がいるものよ」

 

 ガッチリと握手を交わす。

 

「それを言われると…………っ!」

 

 

 

『このメンマ丼……とやらは』

 

『この赤い紙で封をしてある酒は、小さな祝いの時に解くものなのですよ』

 

『華蝶仮面、推参!』

 

『随分と長い旅路に旅立たれたのですな、主…………いや慶……』

 

 

 

 

「……君は」

 

「あ、貴方は……」

 

 ヴィジョンはとても鮮明で、洛陽の城で華琳と握手をした時のように脳内に流れてくる。あの時は雷火さんの蹴りによって強制中断されたが、その邪魔もなく無いはずの記憶が掘り起こされていく。

 

 しかし、記憶に対する整合性が不釣り合いで混乱するしかない。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()記憶が構築されていくのだ。

 

「お、俺の……記憶が……?」

 

(あるじ)……また、逢えたのですな」

 

 

 趙子龍――『(せい)』が、誰もいない街の往来で強く抱き締めてきたことも、混乱を強くする要因でしかなかった。

 

 

 それも街の外から再び大きな鬨の声が聞こえてきて、その時間は終わりを迎える。

 

「主、今はこうしている場合ではありませんな。この戦いを終わらせてから、ゆるりと話をしましょうぞ…………主?」

 

「……すまない、何もかも分からないんだ。混乱してて」

 

 頭痛が酷い。頭が割れてしまいそうだ。

 

「でしょうな、私も同感です。ですが主は医者。そのお役目を忘れませぬよう」

 

「……分かった。俺は城壁に行って仲間と合流する。子龍は?」

 

「子龍などと、何を他人行儀な。星とお呼びくだされ。では」

 

 

 星はまた空へ跳躍し、音もなく屋根に降り立つ。

 

「私は、ここが死に場所と思っておりました。ですがこれも運命(さだめ)。後ほどお会いしましょうぞ」

 

 残党狩りに向かう星の顔はとても晴れやかで、戦いの場にはとても似合わないものだった。




あ、お気に入りの数は戻ったどころか増えました。ありがとうございます。
そしていつも感想もありがとうございます。励みになります。
高評価してくださいました方々、貴方達がMVPです。ありがとうございます。

ところで、華琳回に出た楽曲が分かった人はいましたか?

恋姫で一番好きなキャラ(その他・漢軍編)

  • 張角/天和
  • 張宝/地和
  • 張梁/人和
  • 孟獲/美以
  • ミケ・トラ・シャム
  • 董卓/月
  • 賈駆/詠
  • 霊帝/空丹
  • 献帝/白湯
  • 皇甫嵩/楼杏
  • 盧植/風鈴
  • 袁紹/麗羽
  • 文醜/猪々子
  • 顔良/斗詩
  • 田豊/真直
  • 袁術/美羽
  • 張勲/七乃
  • 華陀
  • 貂蝉
  • 卑弥呼
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