真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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ようこそ2023年!
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

新年明けてから、UAが50000を突破しました。いきなりめでたい出来事でしたので感無量です。

ここ最近の回は賛否両論と思いますが、エタらず頑張ります!


辿甦(てんそ)〈3〉

 星と城壁の上にいた。夕陽は落ち始め、空は徐々に紫色に変わりつつある。星は自分の前を歩きながら、手を後ろに回して服を弄っていた。

 

 

「主は……思い出しましたかな?」

 

「主……か。星、良かったら慶って呼んでくれると嬉しいかな……慣れないし」

 

「むぅ、仕方ありませんな。では、慶殿」

 

 主って言われる立場ではないし。そして、思い出すと言っても、部分的ではあるし未だによく分からないでいる。

 

 

「思い出したって言っても部分的だけど……メンマ好きだったよな」

 

「慶殿! 感動的な再会を前に思い出していたのがまさかメンマですか」

 

「仕方ないじゃないか、最初に出てきたのが俺の作ったメンマ丼だぞ」

 

「……そうですか、でも嬉しいですな。私といえばメンマ。メンマ無くして私はありませぬ」

 

「ふふっ、そうだよな。メンマ園とか懐かしい……。で、星は分かるか? 何で覚えの無い記憶があるんだ、メンマ園の話なんてもっと先の話だろう?」

 

 無言で頭を横に振る星。彼女に分からないのであれば…………あれ?

 

 

 

「なぁ、星……実は洛陽で曹操に会ったんだ」

 

「曹操……前に兗州(えんしゅう)牧となった曹孟徳ですかな?」

 

「そう。曹操と握手する時にも星と同じことが起こったんだ。彼女は思い出して…………んん?」

 

 

 本当に思い出しているのか? 華琳は思い出したなんて言っていなかった。自分が御遣いと言われていることを知っていたのも、間諜を放っていたからだろうし確証がない。

 

「曹操も思い出したのですか?」

 

「そのはず……なんだけど自信が無い。孫策や周瑜に握手しても何も起きなかったし……。いや待て、星は曹操のことを覚えてないんだな?」

 

「思い出したのは慶殿のことだけですな。可能性としては、一部の者だけが記憶を思い出すとか」

 

 顎に手を当てながら思案顔の星は、ふと城下の人だかりを見た。自分も釣られて見てみると、炊き出しのようだった。白い煙に料理の香りが乗って漂ってきている。

 

「慶殿、腹が減っては戦はできぬと言いますな。空腹では考えもまとまらぬものでしょう」

 

 思い出してみれば、冥琳に報告した時も食事を摂っていなかった。知覚すると、空腹を訴えてくる我が胃袋。

 

「そうだな、食べに行こうか」

 

 

 

 

 つい先程まで戦闘が行われていた場所も、賑わいとまではいかないが活気を取り戻しつつある。

 

 

 炊き出しの粥を受け取り、星に手渡した。

 

 

「かたじけない」

 

「いいって」

 

「ん…………慶殿、誰かが呼んでおりますぞ」

 

 星の耳の良さに驚きながらも耳をすませると、杏林様と呼ぶ声が聞こえる。

 

「杏林様! 杏林様はいずこかぁっ!!」

 

 呼ぶのは輜重隊にいた兵士だった。担架で傷病者を運んでいた者である。かなりの重労働で疲れていたはずなのに、血相を変えて走り回っている。

 

「ここです!」

 

「あぁっ、杏林様! 良かった……!」

 

「急患ですか!」

 

「詳しいことは向かいながら……っと、食事中でしたか、失礼しました。ずっと食べてなかったですもんね」

 

「気にしないでください、慣れてます。あと、様はいらないから…………行きましょう!」

 

「承知しました、杏林先生!」

 

 勢いよく粥を食べきり、走り出した。

 

 

「慶殿、私も…………っ、何だ!?」

 

 星が呼びかけた瞬間、大きな揺れが襲ってきた。

 病院で遭った地震を思い出して、一瞬ではあるが身体が硬直してしまう。

 

「地震だ!」

 

 自分は咄嗟に叫んでいた。叫ぶことで無理矢理硬直を解いて立ち上がる。

 

 揺れは続くがそれほど大きくないように感じる。でもそれは日本人である自分が揺れに慣れているだけのことで、避難をしていた人たちは一斉にパニック状態に陥ってしまう。

 

 震度4クラスの地震であっても、戦闘後のボロボロとなった街には大ダメージだ。街の遠くから物の崩れる音が響く。屋敷を崩した瓦礫で戦っていたぐらいだ、その内の数件が倒壊してしまったのかもしれない。炊き出しの火が引火する可能性もあった。

 

 

「緊急医療体制を敷きます! この街にいる医者を全員集めてください! 動ける兵士もお願いします!」

 

「分かりました! 杏林先生は城の入口に! 急患はそこにいます!」

 

「了解しました。星、行くぞ!」

 

「御意!」

 

 正直、緊急医療体制なんて言葉が分かっているはずもなかった兵士は、医者を片っ端から集めるために雑踏の中に消えていくのだった。

 

 これからもう一つ、ずっとこれから付き纏う大きな戦いが始まる。




正月中にもう一本あげます。
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