本年もどうぞ宜しくお願い致します。
新年明けてから、UAが50000を突破しました。いきなりめでたい出来事でしたので感無量です。
ここ最近の回は賛否両論と思いますが、エタらず頑張ります!
星と城壁の上にいた。夕陽は落ち始め、空は徐々に紫色に変わりつつある。星は自分の前を歩きながら、手を後ろに回して服を弄っていた。
「主は……思い出しましたかな?」
「主……か。星、良かったら慶って呼んでくれると嬉しいかな……慣れないし」
「むぅ、仕方ありませんな。では、慶殿」
主って言われる立場ではないし。そして、思い出すと言っても、部分的ではあるし未だによく分からないでいる。
「思い出したって言っても部分的だけど……メンマ好きだったよな」
「慶殿! 感動的な再会を前に思い出していたのがまさかメンマですか」
「仕方ないじゃないか、最初に出てきたのが俺の作ったメンマ丼だぞ」
「……そうですか、でも嬉しいですな。私といえばメンマ。メンマ無くして私はありませぬ」
「ふふっ、そうだよな。メンマ園とか懐かしい……。で、星は分かるか? 何で覚えの無い記憶があるんだ、メンマ園の話なんてもっと先の話だろう?」
無言で頭を横に振る星。彼女に分からないのであれば…………あれ?
「なぁ、星……実は洛陽で曹操に会ったんだ」
「曹操……前に
「そう。曹操と握手する時にも星と同じことが起こったんだ。彼女は思い出して…………んん?」
本当に思い出しているのか? 華琳は思い出したなんて言っていなかった。自分が御遣いと言われていることを知っていたのも、間諜を放っていたからだろうし確証がない。
「曹操も思い出したのですか?」
「そのはず……なんだけど自信が無い。孫策や周瑜に握手しても何も起きなかったし……。いや待て、星は曹操のことを覚えてないんだな?」
「思い出したのは慶殿のことだけですな。可能性としては、一部の者だけが記憶を思い出すとか」
顎に手を当てながら思案顔の星は、ふと城下の人だかりを見た。自分も釣られて見てみると、炊き出しのようだった。白い煙に料理の香りが乗って漂ってきている。
「慶殿、腹が減っては戦はできぬと言いますな。空腹では考えもまとまらぬものでしょう」
思い出してみれば、冥琳に報告した時も食事を摂っていなかった。知覚すると、空腹を訴えてくる我が胃袋。
「そうだな、食べに行こうか」
つい先程まで戦闘が行われていた場所も、賑わいとまではいかないが活気を取り戻しつつある。
炊き出しの粥を受け取り、星に手渡した。
「かたじけない」
「いいって」
「ん…………慶殿、誰かが呼んでおりますぞ」
星の耳の良さに驚きながらも耳をすませると、杏林様と呼ぶ声が聞こえる。
「杏林様! 杏林様はいずこかぁっ!!」
呼ぶのは輜重隊にいた兵士だった。担架で傷病者を運んでいた者である。かなりの重労働で疲れていたはずなのに、血相を変えて走り回っている。
「ここです!」
「あぁっ、杏林様! 良かった……!」
「急患ですか!」
「詳しいことは向かいながら……っと、食事中でしたか、失礼しました。ずっと食べてなかったですもんね」
「気にしないでください、慣れてます。あと、様はいらないから…………行きましょう!」
「承知しました、杏林先生!」
勢いよく粥を食べきり、走り出した。
「慶殿、私も…………っ、何だ!?」
星が呼びかけた瞬間、大きな揺れが襲ってきた。
病院で遭った地震を思い出して、一瞬ではあるが身体が硬直してしまう。
「地震だ!」
自分は咄嗟に叫んでいた。叫ぶことで無理矢理硬直を解いて立ち上がる。
揺れは続くがそれほど大きくないように感じる。でもそれは日本人である自分が揺れに慣れているだけのことで、避難をしていた人たちは一斉にパニック状態に陥ってしまう。
震度4クラスの地震であっても、戦闘後のボロボロとなった街には大ダメージだ。街の遠くから物の崩れる音が響く。屋敷を崩した瓦礫で戦っていたぐらいだ、その内の数件が倒壊してしまったのかもしれない。炊き出しの火が引火する可能性もあった。
「緊急医療体制を敷きます! この街にいる医者を全員集めてください! 動ける兵士もお願いします!」
「分かりました! 杏林先生は城の入口に! 急患はそこにいます!」
「了解しました。星、行くぞ!」
「御意!」
正直、緊急医療体制なんて言葉が分かっているはずもなかった兵士は、医者を片っ端から集めるために雑踏の中に消えていくのだった。
これからもう一つ、ずっとこれから付き纏う大きな戦いが始まる。
正月中にもう一本あげます。