真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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明日から仕事始めなんで、書けるところまで書いちゃおうとなりました。


終結〈2〉

 県令の城を野戦病院として使い始めて一週間が経った。街の様子も少しずつだが復興の(きざ)しを見せている。あれからは地震も発生しておらず、平和そのものだった。

 

 

 雪蓮と冥琳は報告のために建業へと一時帰還した。そして現在、指揮を執っているのはというと……。

 

「はーい、みんな押さないでねー! ご飯はちゃんと用意してあるから!」

 

 平原の相、劉玄徳である。最初は暗かった街に笑顔を振りまいて、半ば街のマスコットキャラと化していた。臨時であるものの統治者なのだが……緊張感がないというか、ゆるふわというか。というよりも俺が留守番で良かったのか冥琳さんよ。

 

 

『私達がおらずとも間諜の一人や二人、鎮圧できるだろう。現在、斉を攻める輩もおらん。留守は任せた』

 

 なんて冥琳に言われたら、頑張るしかあるまい。雪蓮は酒を持ってくると言っていたし、楽しみに待つことにしよう。

 

 さて、自分は何をしていたのかと言うと、休憩時間でボケーッと一服していた。

 

「いい天気だなぁ」

 

 城の庭から見える空は青く晴れ渡り、鳶が円を描きながら飛んでいる。黄巾の乱の最中であることも忘れるほどに、この平和な雰囲気を煙と共に噛み締めていた。

 

 

 この休憩時間が終われば、本日最後の回診となる。この回診こそが、この地で留守番をする最大の理由ではあるのだが。

 

 

 

 

「失礼しますよ、回診の時間です」

 

 城内の一角、歌声の聴こえてくる女性用の病室に彼女の姿があった。

 

「あ、杏林せんせ〜」

 

 病室には一人だけ、軽く手を振って応える。妹たちはどこかに出掛けたのだろう。その姿はなかった。

 

「こんにちは天和さん。気分はどう?」

 

 天和は三日前に目を覚ましたばかりで、まだ動けない状態である。

 

「退屈だよぉ。動いちゃいけないって怒られちゃったもん」

 

「元気なのは良いことだよ。じゃあちょっとだけ、この部屋で歩いてみよう」

 

 退屈なのは身体にも良くない。少しぐらいは気分転換にもリハビリにも良いだろうと提案すると、天和の顔がパアッと明るくなった。その笑顔がとても眩しくて、可愛い。

 

「俺が支えるから、ほら、手を取って」

 

「うん、よろしくね…………っ!?」

 

 

 

『普通の旅芸人に戻ります!』

 

『目指すは大陸制覇!』

 

『私たち……数え役満☆姉妹(シスターズ)です!』

 

 

 

「もしかして〜、慶?」

 

「まさか、張角……ぐっ、ぐおぉォァァッ!?」

 

 記憶が組み上がっていくも、驚きが隠せない。彼女が張角で、ファンが暴走して、蜂起したのが黄巾党だなんて。

 

 そして、今までにはそこまで強くなかった頭痛が急激に襲い始めた。

 

 

「天和……ごめん……」

 

 身体から力が抜けていく。倒れる前に、天和をベッドに座らせる。

 

 この街を黄巾党が襲撃した理由も、天和たちを取り返すため……。地和と人和がいないのも、周囲の警戒に繰り出しているからだ……。

 

「慶! 慶、しっかりして!」

 

 天和が自分の身体を強く揺さぶる。その揺さぶりで余計に頭痛が酷くなってくる。

 

 

「慶殿!」

 

 あぁ、この声は星か。もう(まぶた)も重くて周囲の状態が分からない。

 

 何という体たらく。長時間の手術に耐えられるように鍛えたこの身体にも、限界はあるようだ。

 

「主っ! 医者を、医者を早く呼ぶのだっ!」

 

 主じゃないってば。あと医者は俺だって。

 

 

 たくさんの足音が聞こえてきた。おいおい、そろそろ意識を手放したいのに出来ないぞ。何でだ?

 

「担架持ってこい!」

 

「いや、そこの寝台でいいだろ!」

 

「良いから運べ!」

 

 

「ま、待ってくれ……星……」

 

 声は出せた。良かった。

 

「慶殿!」

 

「いいか……天和たちを……絶対に死守だ……彼女たちを、誰にも……」

 

 絞り出した声も、とてもか細い、弱い声だった。分かった、疲労だな。間違いなく疲労だわ。

 

 

「……御意」

 

「うん……ちょっと寝るわ……頭痛いし、ちょっと疲れた」

 

「……おやすみなさいませ」

 

 星、さては泣いてるな? 声が震えてるぞ。あ、でもこれ言ったら俺がホームランされるから黙っておこう。

 

 ようやく意識を手放して、真っ暗な深淵へとその身を委ね……られなかった。

 

 

 

 

「よく来たわねん、ご主人様♪」

 

「うむ、久々の男子(おのこ)でドキがムネムネするぞ!」

 

 

「いや貴方たち誰ぇ!!」




年末のCMでたくさん聞いたよねぇ「いや貴方たち誰ぇ!」ってさ。

次回、お待ちかねの方たちの登場です。
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