約3年、長かった。
逼迫した医療体制、疲弊するヒーローたち。
様々な価値観がぶつかり合って、本当の正義も見失うほどの混沌とした世の中でした。
そんな日常が、ようやく終わりを迎えるのか、迎えないのか。
K2の作中にありました。「正しく恐れろ」と。
これからも、正しく恐れていきましょう。
最終回のないヒーロー達に感謝を。
慶が硫酸湖攻略を完了し、宿将たちから無理やり祝杯を上げさせられていた頃――。
(何進め、何としてでも葬らねば……)
宦官の一人はイライラしながら、夜の禁中を歩いていた。
このイラつきにはとある理由があった。
今までは専横の限りを尽くしていた、いわゆる同じ穴の狢であった何進。これもこれで自分たちの取り分が減っていたために、非常に憎らしい存在ではあったのだが……。
(あの手術以降、生まれ変わったかのように不正に厳しくなった。いや、厳しいなんてものじゃない。恐らく充分に溜め込んだのだろうと思ったらこれだ……あの医者、何をしたんだ、クソっ!)
禁中の侍医や洛陽の町医者も匙を投げた治療、それを見事にやり遂げた慶に対しても、その矛は向けられていたのである。
(憎い憎い憎いッ! 何もかもが憎いッ!)
舌打ちをした瞬間、背後から女性の声が聞こえた。
「舌打ちとははしたない。ここは主上様が座する禁中ですわよ?」
「か、何太后様……これは失礼致しました」
背後から現れたのは、何進の妹である何太后だった。元より何進が金を溜め込んでいたのは、全てがこの何太后のためと言っても過言ではない。
(肉屋め、貴様らや十常侍がいなければ……ッ!)
「そう言えば、姉さまを見ていないかしら?」
「……何進殿の姿は見ておりませんな。最近は眠れないと言って、夜な夜な城内を歩いていると聞いたことがあります」
黒い感情を胸の奥底に隠しながら、夜中に歩き回る何進の姿を思い出した。思い出すだけで憎々しいが、決して口には出さない。
劉備、孫策、劉仁への伝令役を曹操に取られてからというもの、この状態だ。大将軍が伝令役を買って出るとは何事かと、官軍全体から猛反対を突きつけられたのである。当たり前だ。だが、そこで曹操が出張ってくるもの慣例通りではない。通常であれば文官が向かうのが普通である。
「そう……姉さまったら、また……」
礼を言われることもない。何太后は悩んだ表情をしながら、城壁の方に向かって歩き始めた。一人取り残された宦官も、何太后とは反対の方向に歩み出し、闇夜に消えたのだった。
「姉さま、早く寝ないと身体に障るわよ?」
真夜中の城壁、見張り台に一人で、我が姉は盃を傾けていた。
「あぁ、瑞姫……」
こちらを見ることもなく、空返事をするだけ。ここ最近はずっとこの状態だ。
「姉さま、そんなに曹操に役目を取られたのがイヤだったの?」
「……曹操のあの言い分にしてやられたのに、腹が立っただけだ」
「それで、何日も何日も深酒なわけ? そんな姉さまは芋よ。ただの芋だわ。あと部屋で飲みなさい」
ムッとした顔を返されるが、ごもっともなために何も言い返せないまま、酒を呷っている。
この腑抜けたような姉を見るのは初めてだった。今まで一度もなかった姉の行動に、驚いたのも事実である。
「ふ~ん、そうなんだ……」
無言のまま、再び姉は酒を呷った。
「劉仁殿でしょ」
姉の肩がピクリと動き、酒を飲む手が一瞬止まる。
「命を救けられて、身体の内と外を全部見られて……夜な夜な密会をして、真名を伝えあった、あの劉仁殿でしょ?」
「み、密会などしておらん」
「それに、劉仁殿の鍛えられた身体……。あのような素敵な殿方に激しく抱かれたら、どのような……あら?」
滔々と劉仁のことを喋っていた間に、姉の顔はとても禁中の人間には見せられないようなものになっていた。艶めかしい吐息、紅潮した頬……これは早急に部屋に戻さねばなるまい。
この状態をあの宦官共に見られれば、即座に寝首を掻きに来るだろう。間違いない。
専横と贅沢の限りを尽くした何進は、もう存在しない。
今の姉は、まさしく恋する乙女だ。
その恋する乙女に肩を貸し、まったくもう、と呟きながら部屋へと連れ戻すのだった。
ゴールデンウィーク特別企画の投票、誠にありがとうございました!
雪蓮・冥琳編、炎蓮編、星編と特別編を順次公開していきます!
今回は、ちょっと次のお話しに繋がっていく洛陽第一話でした。
次回から三回、特別編の投稿になります。
たくさんの投票、本当にありがとう!
(短くてごめんなさい)
〜特別編企画〜 いわゆる余談回をやります。どのルートがいいですか?(GW最終日までの投票を受け付けます)投票上位3つを順次投稿します。ルートの文字がゲシュタルト崩壊してきた……。
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炎蓮さんルート
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雪蓮・冥琳ルート
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粋怜・祭さんルート
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雷火先生ルート
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穏ルート
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梨晏ルート
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張三姉妹ルート
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星ルート
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現代幕間ルート【新規クロスオーバー】