真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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一慶ですが、体格等はKAZUYAや一人、一也のように鍛えてありますが、本人はただ長時間の手術をするための体力を作るためと言い切っています。

これから黄祖戦までに、あの筋骨隆々になります。

おまたせしました。かなり短めですが、よしなに。

頭痛が酷くて文章が書けないってのがツラい。


太祖〈1〉

 謁見の間での評定も終わり、自分は炎蓮さんの自室に呼ばれていた。

「呼び立てて悪かったな。呼んだのは他でもない。一慶、貴様……名前を考えろ」

 

「……すみません炎蓮さん、説明を端折(はしょ)りすぎで何も分かりませんが、誰のですか?」

 

 説明が悪いと分かっているのか、炎蓮さんはため息を一つ。

 

「一慶を二人に分ける」

「もっと分からなくなったんですが」

 

 物理的に真っ二つにしそうな、そんな鋭い目を向けてきた。

 

「何を勘違いしているバカ者。天の御遣いとしての一慶と、医者としての一慶を分けるということだ。さすがにこの屋敷の中でも、何が起こるか分からん」

 

 炎蓮さんは、自分の首を手刀で切るジェスチャーをする。つまり、殺される可能性があるということだ。

 比較的平和な現代日本よりも、もっと物騒な後漢末期……間諜が襲ってくることも当然考えられるわけで……。

 つまり、炎蓮さんの提案は、御遣いとしての自分と、医者の自分の一人二役で分けさせ、安全を図ろうというものだろう。

 

「……漢風、って言っていいのか分からないですけど、皆のような風合いの名前を考えろってことで良いですか? ここで働く医者としての」

 

「そういうこった」

 

 とはいえ、これからずっと使っていく名前にもなる。適当に考えるわけにはいかない。

 

「さすがに悩みますね……」

 

「だろうな、オレも娘の名付けには悩んださ。まぁ時間はある!」

 

 客間を使っていいから、しっかり考えてこいと言われ、最初に目覚めた部屋に戻ってきた。見慣れない、中華っぽい意匠の部屋。ホントに三国志の世界に来てしまったのかと、改めて実感する。

 ここまで、炎蓮さんに会っても冷静だったのは、あまりにも現実から乖離していたからに過ぎないからだ。夢にしてはリアルすぎて、胡蝶の夢というものを考えてしまう。

 

 過去、ホームシックにもならなかった自分であっても、日本と中国の距離とは全く異次元の、1800年という抗いようのない距離は、精神に大きな影響を与えているに違いなかった。

 

 自分という人間を誰一人として知る者のいない、完全な孤独。二度と戻れないのかもしれない。

 

 伊沢はどうしているだろうか。病院は大丈夫だろうか……患者も大勢押し寄せて、凄惨な現場になっていることだろう。

 テーブルの上にはバッグから取り出した薬品の数々と、様々な手術道具を並べた。すぐに戻れても対処できるように……なんて考えるが、ここに来た方法も分からないのだ。戻り方なんて分かるわけがない。意味のない事をしたと思って、すぐにバッグに戻した。

 

 

「なんや、戻ってたんか……って元気ないなぁ……大丈夫か?」

 

 部屋に入ってきたのは霞だった。 

 余程酷い顔なのだろうか、自分の顔を覗き込んできた。

 

「ちょっと考え事……炎蓮さんから、医者のときに使う名前を考えろって……色々と頭の中では考えてるけど……」

 

 これも悩みの種なのは間違いないけど、酷い顔していたのは、嘘なのがバレてるんだろうなぁ。

 

「名前かぁ……アテはあるんか?」

 

 それでいて話に乗ってくるとこが、本当に優しい人なんだろうなと思わせる。これがあの、泣く子も黙る張遼とは……。

 

「元いた時代の遠戚に、劉姓の人がいるから……」

「あとは、名と字と真名っちゅうワケか」

 

「そういうこと。でも、その前に気分転換したいかな」

 

 名を呼んでは失礼だからと字のシステムができたが、親しい者以外が呼ぶと失礼だとか。解釈によって様々な受け取り方がある。でも劉さんなんて沢山いるから余計にややこしい。更に超絶面倒なところに真名ときた。

 習俗に従うと、どうにも難しいものである。

 

 

 とりあえず、霞を連れて外に出た。立派な杏の樹が植えられている。

 

「一慶は、お医者様なんよな……あの治療は凄かったわ。頭に鑿で穴開けるなんて思いつかへんわ」

 

 武官の自分でも、気を失うかと思ったなどと霞は言う。だが驚くべきはその手術に対して邪魔をせずに見ていたことだ。冷静なのも、武将として肝が据わっているからだろう。

 

「天の御遣いっていうよりも、神様みたいなもんや!」

 

「いや、神なんて……そんなもんじゃないよ。全部完璧に成功するなんてこともない」

 

「それでも、助けたことに変わりあらへん! アンタは凄いわ。それでいて牢獄に放り込まれても、全然怒らへん。一慶は、仁の心を持った優しい人なんやな」

 

「いや、牢獄にブチ込まれて怒ってはいたからね……?」

 

 自分の時代のこと、自分の仕事のこと、色んな事を霞に話した。

 自分の孤独を感じ取ったのだろう。霞は静かに聞きながら歩みを進める。

 

 ひとしきり話しきって客間に戻る頃には、窓から陽光が斜めに差し込んで来ていたのだった。

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