真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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お久しぶりです。リアルが忙しすぎました。
本当はお盆休み企画とか考えてたんですがね……遅刻して企画を行います。

またアンケートを載せますので、答えてくれたら嬉しいです。


夜宴〈1〉

 一人の男が、灯りを持つこともなく、見慣れた道を歩くように暗闇を進んでいた。

 

「いい加減、この経路も考え直したほうが良いな」

 

 燭台を持つ、ローブを着た大勢の文官俑が佇む通路を、危なげもなく歩いていく。

 その先の巨大な空間。中央の宮殿に掛かる橋も、平均台(皇帝の道)を無視して歩みを進めるが、矢が飛んでくることはない。

 

 嬴政が眠る陵墓の中で、謎の男が物色された形跡を探し回る。このような場所に入れる人間はいないはずだった。

 

「……誰かが入ったか?」

 

 宮殿の中、床に薄く積もっていた埃が二人分の足跡を残していた。そして、木棺の上にあったはずの鏡が消えている。確認してみると、橋に立ってた武官俑の持つ機弩矢(きどし)の矢も減っていた。

 

「そうか……ならば、次の手だ」

 

 男が軽く目をつむり力を込めると、周囲の空気が渦巻いて右手に吸い込むように集中していき、鈍く光る蒼い宝玉が現れた。その宝玉を、背後から現れた影が奪い、渦が解かれるように霧散していく。

 

「今回は一味違うようだな、近藤一慶……さぁ、これはどうする?」

 

 男もまた、暗闇の中に消えていったのだった。

 

 

 

 

 

「劉仁、アンタは何を考えているの?」

 

 董卓の屋敷に向かう途中、賈駆がようやく口を開いた。

 華琳と傾、董卓の三人は自分たちよりも先を歩いている。

 

「……これからの乱世、目の前の患者を全力で助ける。それじゃあ答えになりませんか?」

 

「他に野心は無いのかしら。一国一城の主になるとか、桀紂(けっちゅう)のように酒池肉林の大豪遊をするとか。男の夢ってやつじゃないの? 天の御遣いなら簡単に出来そうじゃない」

 

 嘲るように言うが、彼女の意図がイマイチ分からない。この国を立て直したいのか、潰して更地にしたいのか。

 

「国を私物化して更に荒廃させる気ですか。それなら堯舜(ぎょうしゅん)のように無私の奉公をした方が性に合ってますよ。それに生国に帰る手立てもないのであれば、拾ってくれた文台様の国に恩を返すのが仁義というものかと」

 

「それがアンタの性根からの気持ちなのね。あまり言いたくないけど……この国はもう保たないわ。朝廷の力が衰えていく中、頼れるものには藁でも掴みたい気分よ。その言葉、覚えておくわ」

 

 その後、賈駆から語られたのは、黄巾の乱においても官軍の敗戦が続き、士気が低下したことによって将軍や兵の心が朝廷から離れていく、その現状であった。

 そしてそれは十常侍によって皇帝の耳には意図的に入れていない。それを良いことに最近の霊帝は、高級な反物を購入して着物を(あつら)えたらしい。

 この状況には、流石の傾も頭を抱えたそうで、着物の端材(はざい)を使って自分の着物を仕立てようとした何太后に対して裏で(いさ)めたそうな。

 

 こうして自分が見聞きしている限りは、董卓たちはこの国の未来を憂う、憂国の士のようであった。

 

「賈駆殿……まさか」

 

 董卓たちと何を実行に移そうとしているのか分かったが、想像が付くも口に出すことが(はばか)られるようなものだ。

 

「アンタの想像通りよ」

 

 漢の現状を回復させられるかもしれない、乾坤一擲(けんこんいってき)の一手。

 

 恐らく、不正官僚の粛清及び霊帝崩御による朝廷の血抜きであろう。

 しかしそのようなことが出来るのか。前を歩く董卓を見ていると、到底出来そうにないように思える。あのようにか弱い両腕が受け止めることなど出来ようか。

 

「でも、まだその時期じゃない。まずは貴方に徐州に行ってもらって、建業に戻ってから始めるわ」

 

 

「詠ちゃん、置いていくよ~?」

 

 董卓が声を掛けてきたことで視線を前に向けると、董卓の屋敷が見えていた。その屋敷の門の前には、炎蓮さんも冥琳も立っていた。

 賽は既に投げられている。すでに黄巾の乱で戦火に身を投じて、頭数に数えられているのだ。これから先の戦いにおいて参加の是非など迷う理由は無かった。

 

 

 

「遅かったじゃねぇか!」

「お待たせして申し訳って、うわ酒臭っ!?」

 

 そう言ってバシバシと肩を叩いてくる炎蓮さんからは、既に酒の匂いがしていた。

 どうやら一次会ならぬゼロ次会をしていたようである。

 

「乾杯の練習をしていてな!」

 

 ケラケラと笑う炎蓮さんに毒気を抜かれた自分は、冥琳に振り返るも、何度も止めるように諫言(かんげん)したんだぞと目で返された。そりゃそうだよな。

 ほれ見てみろ、空になった瓶を見て董卓がドン引きしてるぞ。傾も、開いた口が塞がらないと言った表情だ。顎が外れるぞ。

 

「董卓殿、酒代は私が持ちましょう……流石に主の不手際は下が拭わねばなりません」

「いえ、これぐらいは大丈夫ですから……」

 

 

「ところで慶。貴様……オレに何か言うことがあるんじゃねぇか?」

 

 董卓との会話を中断させて、炎蓮さんが自分の肩を抱きながら言ってくる。後ほど徐州に行くことは伝える予定だったが、ドスの効いた声で問われることは無いはずだった。

 

「後ほど、宴会が終わってから報告します」

 

「いや、そうじゃねぇ。どうせ徐州に行くんだろう? そんなこたァ承知済みよ。オレが言いたいのは、青州の城で曹操に振る舞ったという、(フカ)のヒレとかいう食材よ。あれを食わせろ!」

 

 珍品や面白そうな物が好きな炎蓮さん、鱶鰭(フカヒレ)に興味を示すのはごく自然なことだった。無理難題を言い始める大殿にも随分と慣れたものだ。パエリアの一件で忘れてると思ったのだが。

 

「確かに荷物に入れてありますけど……あれは献上品というか、何進殿に渡すためでして!」

 

 決して、屋敷で振る舞うために持ってきたわけではない。後々使う何進との交渉材料である。

 

「ここに来ているのだから問題ないだろうが!」

 

「なんだ騒がしい。私に何だ?」

 名前の呼ばれた何進も会話に参戦してくる。ここまで会話が膨らんで、作れませんというのも申し訳ない気がして、カラッカラになった鱶鰭を取り出した。

 

「董卓殿、厨房をお借りしても良いですか?」

 

「え? はい、良いですけど……」

 

「じゃあお借りします!」

 

 突然、厨房に行くと良い始めた自分にキョトンとしながらも、董卓は許可を出してくれた。

 

「あ、場所も教えますから!」

 

 後ろに董卓と傾を伴いながら、屋敷の門をくぐるのだった。




記憶の甦った者たちについて、簡単な説明を。

曹操/華琳

皆さんご存知、覇王様。
何進〈1〉にて一慶が華琳との記憶の一部を思い出す。華琳はどうやら洛陽城ではなく、恐らく一慶が天から降ってきたタイミングで思い出していた模様。色々と思い出していそうな感の鋭いお方。なんとか魏に取り入れようと画策していたが、水面下で失敗している。


趙雲/星

皆さんご存知、花蝶か…ゴホン。北方常山の趙子龍。
辿甦〈1〉にて両者ともに記憶の一部を思い出す。劉備に付いて行かず、呉軍の将となった。思いつきの小話で始皇帝陵に侵入した話をすると、本当に入ることになってしまった。ちゃっかりハグまでしているため、一番乗りと言っても過言ではない。時折、昔の記憶のまま「(あるじ)」と呼んでしまうことがある。


張角/天和

皆さんご存知、歌姫張三姉妹の長女。
終結〈2〉にて両者ともに記憶の一部を思い出す。黄巾の乱に街を巻き込んでしまったために、心を痛めている。戦後復興の慰問のため歌っていた所、建物の倒壊に巻き込まれた。一時心肺停止の重症を負ったが無事に回復。三姉妹は今日も建業で元気を振りまき、歌っている。ちなみに妹たちは記憶の引き継ぎはなかったようだ。


呂布/恋

皆さんご存知、飛将軍こと三国無双。
洛陽〈2〉にて両者ともに記憶の一部を思い出す。寡黙な少女だが、その心の奥底に秘めた炎は熱い。大食いが原因で胃に穴が開いてしまったため、緊急手術を受けた。その際、咄嗟に「ご主人様」と呼んでしまい、呉の将から冷たい視線を食らってしまったため、「ご主人様」呼びは封印されている。まだ真名の交換をしていない。



さて、次に記憶を取り戻すのは誰でしょうか?
まて、次回!
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