真・恋姫†夢想 〜日付のない墓標〜   作:世良緋那太

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大変遅くなりました。ごめんなさい。
気がつけば年が明けてたんですけど……この特別編ってお盆の企画だったよね……?


特別編:少しは御遣いらしく

「貴方、雪豹(ゆきひょう)を保護したって聞いたのだけれど」

 

「やぁ、華琳」

 

 洛陽の医局で、膝の上に乗せて子供の雪豹に構っている慶を見ながら私は溜息をついた。

 

「そうなんだよ。思っていたよりも早く懐いてくれてね」

 

 猛獣を、例え幼体とはいえ保護してしまうとは何事か。禁中に畜生がいることで、気に食わない者も多くいるだろう。

 

「そう……この城から追い出されないようにしなさいよ」

 

 自らの長い尾で遊んでいる雪豹は、クリっとした青く丸い目でこちらを見てくる。

 

 

 ……なかなか可愛いじゃない。この見た目なら追い出されることもないかもしれないわね。

 

 

「その点は大将軍から許可を貰ってきた。最初は断られると思ったんだが、簡単に(ほだ)されてな。その時の顔、見せたかったよ」

 

「そうだったの」

 

「可愛い反応でな? ぐっ、可愛い……良いだろう。だってさ」

 

 にこやかに笑う慶の顔に少しイラついてしまう。私もこの雪豹と一緒に、慶と楽しい時間を過ごしたい。そう思わざるにはいられなかった。

 

「他にも妹の何太后だったか。二人も頭を撫でていったよ」

 

「わ……」

 

「……ん?」

 

「私も、撫でて良いかしら?」

 

「もちろん。優しくな?」

 

 そう言うと慶が雪豹を差し出してきた。かなり撫でられてきたのだろう。また撫でられるのか、と少し嫌な顔をする雪豹。

 

「ところで、名前は何ていうのかしら。ずっと雪豹って言ったり子猫って呼ぶのも大変じゃない?」

 

「あぁ、この子は『(ほむら)』って名付けたよ」

 

 

 この白い身体で、焰……? 名前負けしないかしら。

 

 

「炎に包まれた家から助けられたんだ。強く育ってほしいから、焰にした」

 

「なるほど。いい名前じゃない」

 

 焰の頭に手を乗せて、ゆっくりと撫でる。フワフワの手触りでずっと撫でていたいが、もう何進、何太后に撫でられ過ぎて嫌なのだろう。私の指を甘咬みして、ザラザラと舐め始めた。

 

「ちょっと、くすぐったいわよ……ふふっ」

 

 その後も全身を撫でながら、少しおやつをあげたり、毛で出来た球を転がして運動をさせたりと、医局での時間を楽しんだ。

 

 

「このまま、焰も慶も……私の下に来てくれたら良いのにね……」

 

 言い切って自分で驚いてしまった。言ってしまった。恐る恐る慶の顔を見るが、表情は窓からの逆光でよく分からなかった。

 

「今のは…………今のは聞かなかったことにしなさい!」

 

 私の心の内を見せたくなくて、大きく叫んだ。

 

「あぁ、分かった……」

 

 今ここにいる慶と、(たお)れていった慶は違う。私の陣営ではなく孫堅の庇護下にあり、更に太医令(たいいれい)としての責務もある。

 

 

 私の陣営にいた時は……。

 

 

「私、覚えて……ない?」

 

 

 最期の瞬間は覚えている。燃え盛る楼船、矢を放ち応戦する秋蘭、そして私に向かって飛んできた矢を春蘭が払い損ねて……慶が討たれた。

 その間にあったであろう記憶が、スッポリと抜け落ちている。そもそも、この燃える船は何? どこで戦った記憶なの?

 

 

「華琳、俺も最期の瞬間と、断片的な記憶だけしか覚えていないんだ」

 

「そう、なの……」

 

「覚えていなくたって……華琳は華琳で、俺は俺だ。そして俺はここに存在している」

 

 慶は私の頭に優しく手を乗せた。そのまま、さっき焰を撫でたように動かす。

 

「だから、泣かないでくれ」

 

 そう言われて初めて、自分の頬に涙が伝っていることに気づいた。分かった瞬間から鼻の奥がツンとして、涙がどんどん溢れて止まらない。

 

「俺は、華琳の下に行くことは出来ない。文台様に救ってもらった恩がある。決して裏切ることは出来ない。でもな、今は太医令なんて偉そうな立場を頂いている。華琳が望めば、陳留に行くことも出来るさ」

 

 

 でも、私の下にずっといるわけではない。そうでしょう?

 

 

「これから漢は衰退の道を突き進み、戦乱の世になる。覇王の道を突き進む華琳は一国の(あるじ)になるだろう」

 

「何よ、御遣いらしく予言でもするの?」

 

「さてどうかな……でも、一国の主となるのなら、平和な世の中を望むよ」

 

 慶はフッと笑って手をどける。まだ温度が残っている頭を、私は無意識に触っていた。

 

「さぁ華琳、早く涙を拭いて。そろそろ妙才(みょうさい)殿がここに来るはずだ」

 

 手巾を受け取り、涙を拭った瞬間に医局の扉がノックされる。

 

 

 ノックの習慣を教えておいて正解だったわね。でなかったら、見苦しいところを見せるところだったわ。

 

 

「孟徳様、妙才です」

 

 ……というか、なんでここに来ると分かったのかしら。しかも秋蘭とまで言い当てた。

 

「どうぞお入りください。妙才殿」

 

 

 そして秋蘭も「可愛い……」と言って焰の虜となるのだった。

 

 

 泣いていたことはバレていないと信じたいわね……。




ということで、あけましておめでとうございます。

本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

ゆっくりの更新ですが、楽しんでもらえたら幸いです。
文章量も多くできるよう、精進します。

次回から通常ルートに戻りますよ!

白月の灯火、プレイしたよね?その感想求む。(暴走気味)

  • 漢帝国編の続きはよ!
  • 月と詠、良かったなぁ!
  • 華雄……お前、真名あったんかぁぁぁぁ!!
  • 株爆上りの傾さん最高!
  • 傾さんもだが、瑞姫も良かっただろ!
  • 霞とのローマ(大秦)編まだ?
  • 真紅の呂旗のタイミング最高か!?
  • 他はぜひコメントやツイッターにでも。
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