慶の名前を決めた夕食の後、冥琳から呼び出されて謁見の間へと来た。
「おう、一慶。来たか?」
早速、炎蓮さんが声を掛けてきた。見知らぬ人が三人いる。紹介されていなかった重臣たち、ということだろうか。
「……この方々は?」
眼鏡を掛けた、物腰の柔らかそうな人と、キリッとした目付きで武人然とした人と、背の低い可愛らしい少女の三人。
そんなに睨みつけないでください。胃の腑に穴が空いてしまいます。
そういえば冥琳の時にもツッコまなかったが、眼鏡が存在しているのね。何でもありか三国時代。
「一慶、近う寄れ」
「は、はい」
重臣たちの隅に並ぶようにして立とうとした。
「そこではない。オレの前まで来い」
炎蓮さんに促されて正面に立つ。余計に視線を集めるため、気圧されそうになった。
雪蓮や冥琳もそう、みんな気の強そうな女性ばかりだったが、他の人もそういう雰囲気を纏っている。乱戦の世であるが故に、そうならざるを得ないのは分かる。この重臣たちも名のある猛将なのだろう。
「よし、揃ったな。夜に悪かった。まずは貴様らに紹介する。先日この地に流れた星……天の御遣い、近藤一慶だ」
より一層、向けられる視線が強くなる。
「これは天がオレに頼ってきた証よ。此奴は医療にも長けている。これから先、我が孫家を強固なものにするためにも、この存在を最大限に利用する!」
「
「御遣いの血を孫呉に入れる。天下にも喧伝し、追い風といたす!」
炎蓮さんはそう言うも、背の低い重臣の一人はなんとも渋い表情で睨んできた。
「……考えは分かりますが、信に足る者か、見せて頂かねば分かりませぬ」
「そこにいる文遠殿と策殿が、見つけて参ったと申しただろう。星がそこに落ちたと、言ったのはお主じゃろうに」
祭さんは既に伝えてはいたようだが、納得には至っていないようだった。
「わしが申したいのは、諸侯に信じさせる方法じゃ。確かに衣服は見慣れぬもの、その純白の衣服は見事じゃ。しかし、それを除けば普通の若者ではないか?」
「確かに、星が運んできたにしても、今の彼は同じ人にしか見えないわ」
続けて、キリッとした目の女性も言った。
まぁ、そう言われてもただの人だからなぁ……怪しまれても仕方ないし、証明できるものと言えば手術道具か……あ。
「おい一慶よ、貴様は言われっぱなしか?」
炎蓮さんに言われるが、これは天の御遣いであることを重臣たちに説明しろということか?
「……近藤よ、その前に紹介しておこう。そちらの方が宿将の
「え!?」
(まさか、この少女が……張昭? 確かに口調はアレだけど)
でも、風格や威圧感は祭さんにも負けないぐらいにある。そして、冥琳はニヤッと自分を見て笑っている。冥琳がわざと言ったのは字。名前を当てろと言うつもりか。
「
「あ、いえ……」
「私は
「
眼鏡を掛けた人が陸遜、キリッとした目の人が程普……やはりと言うべきか、超有名な武将だった。
「……皆さん、手術を行なった報告は聞いておりますか……張昭さん」
「名前もお見通しであるか……無論じゃ。馬に足蹴にされ頭を割り、瀕死であった兵を、見慣れぬ方法で助けたと。そこの公覆から聞いておる」
「それでも、天の御遣いとは信じられないと……?」
「信じられんな」
「……では、これをご覧ください」
自分はポケットからスマートフォンを取り出した。これなら手術を見てもらうよりも早いと思う。
「これはスマートフォンというもので……俺が天の世界で使っている機械です。これがないと何も出来ないぐらいに大切なものなんですが……三人ともこっちを見てください」
はい、パシャリと。
「なに、今の音……?」
スマホで三人を撮影した。良く撮れているが……張昭さんは睨んでいたせいか、半目になっていた。そしてその写真を披露する。
「三人の、絵姿と言えば良いんでしょうか。どうです?」
「……これは、わしか!?」
すみません、半目ですけどね。
「妖術かしら?」
「すごいです〜!」
「妖術じゃないですよ、程普さん。簡単に言うと肖像画を一瞬で作る機械です。他にもこんなことも」
少し操作して、音楽を流す。
「わわっ!? 楽器ですか〜?」
「おい一慶、オレにも見せろ」
「はい、炎蓮さん」
「ッ!?」
スマートフォンは炎蓮さんに取り上げられてしまった。
「……一慶くん、だったわね。君を天の御遣いだと信じるわ」
「え、程普さん?」
「我らが大殿が真名をお許しになった。それだけで私は十分よ。でも、子布殿は手術を見るまでは納得しないわ。一慶くん、お手並み拝見よ」
程普さんが喧嘩っ早い性格なら、炎蓮さんって言ったタイミングで頸が胴体とサヨナラバイバイしていたのかもしれないと、冥琳の言葉を思い出して戦慄したのは、自室に戻ってからのことだった。