鹿目まどかは自称特別捜査隊   作:鳩胸な鴨

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まどかがペルソナ使いになってます。

少し修正しました。


アルカナ:希望

「……なによ、これ…?」

 

信じがたい光景を前に、暁美ほむらは呆然と呟く。

その先にいるのは、幾度となく時を繰り返せど、未だ救うことの叶わない最愛の親友。

その手には、可憐な顔立ちに似合わない、神話の中から飛び出したかのような弓が鎮座している。

もしや、間に合わなかったのだろうか。

そんな考えが頭をよぎるも、彼女の出立がそれを即座に否定する。

何度も見た学校指定の制服に、赤いフレームのメガネ。

絶望を振りまく怪物の使いと対峙するには、物足りないという言葉では済まされないほどの軽装備。

しかし、メガネの奥にある彼女の目は、真っ直ぐに怪物を見上げていた。

 

「ちょっと、そんなオモチャで…」

「大丈夫。ちょっと離れてて」

 

少女は怯える友人に促し、目を瞑る。

その顔は、まるで神を降ろす巫女のよう。

しかし。無抵抗で突っ立っている少女など、怪物の使いたちからすればカッコウの餌でしかない。

花から生まれ出たかのような魔女の使い魔たちが少女に殺到する。

このままではまずい。

ほむらが銃火器を取り出そうとした、まさにその時だった。

 

少女の右手に、淡く光るタロットカードが降りてくるのが見えたのは。

そこに刻まれた文字は「HOPE」。

彼女は目を開くと、手元に降りてきたソレを思いっきり握りつぶす。

 

「ペルソナ!!」

 

瞬間。淡い光の奔流が、使い魔を一蹴する。

荒ぶる髪を払い、ほむらは慌てて少女の姿を見やる。

少女の体に変化はない。

変化があるとすれば、彼女の頭上だった。

そこに鎮座していたのは異形。

体躯は女に近いが、ソレは到底、人とは呼べぬ出立をしていた。

神々しさを感じさせる造形の頭部に、華奢などと言う言葉では片付けられないほどに細い四肢。

それを引き立たせるように、太陽を模した装飾が散りばめられた着物が靡く。

 

「いこう、『ヒルメ』!!」

 

少女の声と共に、異形が細い指で空を裂く。

瞬間。夥しい数の光の柱が、使い魔たちを包み込んだ。

まさに鎧袖一触。

消えていく使い魔たちを前に、少女は胸を撫で下ろした。

 

「今の、シャドウでよかったんだよね?

クマくんやりせちゃんがいたら、すぐわかったんだけどなぁ…」

 

ふっ、と淡い光を残し、異形が消える。

前例のない展開。

魔法少女ではない、まったく別の力を行使する「鹿目まどか」。

遡るに差し当たって、なにか致命的なエラーでも起こってしまったのだろうか。

ぐるぐると巡る思考の中で、ほむらは漠然とそんなことを思いながら、無事を喜び合う少女たちを見つめた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

鹿目まどかは三年ほど前、田舎の祖父母の家にて暮らしていた。

理由は「母親の出産」。キャリアウーマンとして働いていた母が妊娠し、腹が目立ってきた頃に「父母の元で出産したい」と申し出たのだ。

十代の仲間入りを果たして一年も経っていなかったまどかからすれば、聞かされた当時は寝耳に水であった。

「もし見滝原から離れたくないのならば、その意志を尊重する」とは言われたものの、まどかは特に意見することはなかった。

というより、できなかった。

なにしろ、母方の祖父母がおいそれと訪れることの出来ない距離に暮らしているのだ。

その二人が「孫と日々を過ごすことを楽しみにしているかもしれない」と一度考えてしまえば、まどかに断る術はなかった。

とは言っても、一年に満たない転校だ。また帰ってくると友人たちに一旦の別れを告げ、胸に期待と不安を抱きながら、祖父母の暮らす田舎町へと向かった。

 

その名は「八十稲羽」。

まどかが初めて抱いた感想は、「よくある田舎町」でしかなかった。

良くも悪くも、発展が進んだ都会で暮らしていた彼女からすれば、全てが未知であり、既知でもある場所。

数日も過ごせば、「自分は前からここに暮らしていた」という気がするのも、無理もない話だった。

 

しかし。実感とは裏腹に、「都会っ子」というレッテルが貼られてしまったまどかは、言うまでもなくクラスで浮いた存在となった。

それこそ、浮きすぎて成層圏にまで飛び出してしまうのでは、などと笑えないジョークが頭をよぎるくらいに。

友だちを作ろうと奮闘してみたものの、価値観の違いなどが原因となり、盛大に空回りするだけ。

結果として、彼女は孤立しかけていた。

とはいえ、完全に孤独だったわけではない。

 

「おじゃましまーす!」

「お邪魔します」

 

近所に暮らす童女…堂島菜々子と、親の都合で越してきた、菜々子の従兄である鳴上悠。

菜々子の複雑な家庭環境を見かねた祖母により、二人は週に一度、夕飯を食べにまどかの祖父母の家を訪れていた。

似たような趣味の菜々子や、同じ境遇にある悠と親睦を深めるのに、そうそう時間はかからなかった。

 

しかし。染物屋の息子が行方不明になるという事件が起きたばかりの、そんなある日。

まどかは「テレビの中に押し込められた」。

 

八十稲羽に流行る噂…マヨナカテレビ。

「雨の日の0時、一人で消えたテレビを見つめると運命の人が見える」などという、地域社会に根付いた都市伝説である。

しかし、その真相は全く違った。

テレビの中には、一寸先も見えぬほどの霧に包まれた異世界が広がっていたのだ。

 

『優しさを振り撒けば、その分誰かが自分を肯定してくれる。その分、なにもない空っぽな自分から目を背けられる。

名前どおり、なにも尖ったところのない優しい女の子。

そんなの…、そんなのまっぴらだ!!

だって、尖ったところがないってことは、「自分がどういう人間かも喩えようがない」、「自分が全くわからない」ってことだもん!!

そんなの、病気とかわんないよ!!』

 

そんな世界に放り込まれたまどかを出迎えたのは、ひどく荒れた病室だった。

その中心に鎮座していたのは、病衣を着たもう一人の自分…抑圧された心の影である「シャドウ」。

自分と全く同じ顔のソレはヒステリックに、或いは冷酷に、心を抉り、掘り返すような言葉を並べる。

否定したくても、言葉が出なかった。

怖いほどに、自分の心を捉えて離さない言葉に、まどかは押し負けた。

 

『ねぇ、認めなよ。私はあなただって』

「ちがう…。ちがう…!

こんなの、私じゃない!!」

『……きゃはははっ!!

うん、そうだよ!私は私!もう、あなたなんかじゃない!!』

 

拒絶された自分は笑い声を上げ、その体躯を歪なものへと変えた。

ソレを打破したのは、駆けつけた鳴上悠とその仲間達で構成された『自称特別捜査隊』。

その一人…大型小売店の店長の息子が「完二を助けたばっかだってのに」とぼやきながらも、彼らはペルソナと呼ばれる能力を駆使し、まどかの影を打ち倒した。

沈み、倒れ伏す自身の影に、まどかは手を差し伸べた。

 

「ずっと、見ないふりをしてた。

誰かに優しくすることで、『私を認めてくれる誰か』が欲しかった。

…ううん。『なんにもない』っていうこの気持ちを拭ってくれる、そんな『何か』がずっと欲しかったの。

ごめんね。あなたも、私だったんだ」

 

自分自身と向き合い、受け入れたことで、まどかは困難に立ち向かうための人格の鎧…ペルソナ「ヒルメ」を手に入れた。

その後は悠たちに無理を言って、特別捜査隊の仲間として時にテレビの中の異世界を駆け、時に仲間が引き起こすバカらしい騒動に巻き込まれ、激動の一年を過ごした。

 

「『幾万の真言』を信じて!!」

 

軈て、真実を暴いた鳴上悠が世界を欺瞞と虚構で満ちたものへと変えようとした神を打ち倒し、迎えた三月。

弟であるタツヤが通う幼稚園が決まったことで、愛着ある土地となった八十稲羽を離れる時が訪れた。

思い出深い仲間たちに、同じ電車に乗る悠と家族に囲まれながら別れを告げた。

大好きな人たちが同じ世界にいる。この真実は変えようがないし、隠すこともできない。

自称特別捜査隊の繋がりは、そんな当たり前の真実だけで十分だった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…じゃあ、今度はあなたの番ね。

さっきの力は何?魔法少女…ではないんでしょう?」

「僕も興味あるなぁ。教えてくれないかい、まどか」

 

迫る一つ上のファンシー且つちょっぴり直視が困難な趣味の先輩と、全てが謎まみれの生物Xを前に、思い出がぐるぐると頭を巡る。

どうしてこんなことになってしまったのか。

二年前のゴールデンウィークでの騒ぎといい、自分は呪われてしまったのか。

まどかはそんなことを思いながら、情報を整理する。

 

先程打ち倒したのは、人の呪いが具現化した存在…「魔女」が放った使い魔。

ソレに対抗するのが、白い生物X…もとい「キュゥべえ」とやらと契約した魔法少女。

彼女たちは一つ願いを叶えてもらう代わりに、魔法少女としての力を行使するのに必要な宝石…ソウルジェムを精製し、魔女との戦いに身を投じなければならない。

キュゥべえに選ばれるのは、決まって第二次性徴期の少女なのだとか。

 

堂島菜々子と共に見ていた女児向けアニメのような、ファンタジックな要素がふんだんに盛り込まれた現実を前に、まどかは困惑していた。

受け入れられない、というわけではない。

受け入れるための処理がとんでもなく遅れている…というのが正直なところだ。

ゆっくりと情報を咀嚼し、飲み込む。

情報の擦り合わせは後回し。

今は、キュゥべえと魔法少女…巴マミにペルソナ能力について説明をしなければならない。

親友…美樹さやかの爛々と輝く目が痛い。

思いっきり格好つけたのは失敗だったかな、などと思いつつ、まどかは口を開いた。

 

「あの能力の名前は『ペルソナ』。

お恥ずかしながら難しいことはよくわからないんですけど…、あの怪物は私の心っていうか、人格っていうか…。

と、とにかく!私の心がそのまま形になって現れて、私の心の強さに比例して強くなるものなんです!

『人の心の海』に近い場所でしか出せない能力…って、…あ、えと、その、同じ力を持ってる友達は言ってました」

 

正直なところ、ペルソナ能力について正しい言葉を述べようにも、ソレを構築するほどの知識をまどかは持たなかった。

そもそも、二年前のゴールデンウィークに巻き起こった騒動以来、ペルソナ能力を行使する機会はなかったのだ。

頭に入れていたとして、ずば抜けて賢いというわけでもないまどかの脳みそでは、三日かそこらで抜け落ちていることだろう。

自分でも「要領を得ない説明だなぁ」と呆れを込めたため息を吐く。

 

「あまり深く考えてこなかったけど、魔女が広げる結界も『人の心の海』に近しい場所なのかしら?」

「僕もペルソナ能力について詳しいことがわからない限り断言できないけど、その可能性は高いね。

なにしろ、魔女は人の負の側面から生まれた怪物だ。広げる領域も、それに近い性質を持っているんだろう」

「バカなさやかさんには、なんのことかさっぱりわかりませんよーっと。あ、紅茶おかわりいいですか?」

「いいわよ。…どうぞ」

 

こぽぽ、と音を立てて、空になったティーカップの中に再び紅茶が注がれる。

願わくば、これ以上は根掘り葉掘り聞かないでほしい。

まどかがペルソナ能力に目覚めたきっかけを説明するのには、かなり時間を要するのだ。

花村が「ゼロから100まで説明しろって言われたら、俺は事情を知ってる誰かに全部ぶん投げて逃げるな」と真顔で言い放つくらいには、複雑怪奇な要因がひっからまっている。

加えて、八十稲羽で起きた2件の殺人の真犯人として起訴された足立透も、「いちいち同じこと説明するのが面倒くさい」と取り調べを行う警官に愚痴をこぼすほどには、荒唐無稽な話題なのだ。

このまま自分への疑問が空中分解してしまえばいいのにな、と期待を抱くも、現実はそう甘くなかった。

 

「まどかって、いつペルソナ?…ってのが使えるようになったの?」

「ぅ…」

 

言えるわけがない。

迂闊に「テレビに突っ込まれて覚醒した」などと言えば、さやかは「テレビに入ろうとしてぶち抜く」などという阿呆が極まった過失を引き起こすだろう。

この女はやる。猪突猛進という言葉が人の皮を被ったような、この女ならば。

さやかの親友を長年務めてきたまどかには、そんな確信があった。

 

「そ、そんなことより!キュゥべえについての説明がほとんどありませんでしたよね!」

 

親友であるさやかを器物破損で犯罪者にしないためにも、まどかは話題の転換を図る。

頭の出来は良くないとは言え、仮にも一つの事件を解決に導いた特捜隊の一人。

ここまででキュゥべえについての情報が最低限にも満たないほどにしか出ていないことにも、無意識ながら気がついていた。

 

「…そういや、コイツのこと、あんまわかってないよね?」

「魔法少女と契約をして世界を守る…って使命の妖精さんだったりするのかな?ほら!アニメとかでよくあるよね!」

「漫画とかでもあるまいし、そんなベッタベタな感じのくる?」

「その認識で構わないよ」

「ベッタベタなの来たわー…」

 

キュゥべえの言葉に、さやかはなんとも言えない表情で視線を向ける。

使命感に溢れるというには、淡白な受け答えしかしないキュゥべえ。

彼は酷くのっぺりとした表情で、まどかたちに迫った。

 

「そういうわけだからさ。世界を守るために、僕と契約して、魔法少女になってよ」

 

その瞳に宿る光は、いつしか見た神のものと酷似していた。




鹿目まどか…アルカナは「希望」。完二の一件が解決する前に、バラエティ番組の街角インタビューを受けたことによってテレビに入れられてしまい、同時並行で捜索されていた。弱い自分を受け入れ、ペルソナが覚醒したことで自信を持つようになり、特捜隊に半ば押し入るような形で参加する。自身のシャドウと対峙したことに加え、妹のように思っていた堂島菜々子が死にかけたり、仲良くしていた刑事である足立透の本性が明らかになったりとショッキングな経験を短期間で積んだことにより、メンタルがバケモノになった。
特捜隊メガネのフレームはメガほむと同じ赤。
召喚モーションで番長を真似するくらいには番長に憧れてる。
特捜隊にて一種の英才教育を受けたため、人を見る目が養われている。それ故に、キュゥべえの言動に違和感を覚えているが、ほぼ無自覚なので「あれ?なんかおかしいな?」くらいなもの。

シャドウまどか…まどかが抑圧していた心の影。「取り柄がない」、「自分を象徴するものが何もない」ということを「病気」と捉えており、医療ドキュメンタリー番組のような世界を作り出した。

ヒルメ…まどかのペルソナ。元ネタは天照大御神の前史。名は天城雪子のコノハナサクヤが変化したアマテラスと近しい存在であるが、本質は全くの別物。得意属性は光。バフや回復によるサポートと魔法攻撃の両刀型。コミュがMAXになっても、なぜか変化することはない。
イゴール曰く、概念的な「なにか」との繋がりを持っているらしい。

鳴上悠…まどかに多大なる影響を与えた人。通称番長。希望のアルカナ、世界のアルカナを得たことにより、本来感じることのできない、まどかに繋がっている「なにか」を認識できている。現在、八十稲羽近くの大学の二回生。

暁美ほむら…繰り返した世界で友達が魔法少女じゃなくてなんか別の力を提げてたので、現在混乱中。とりあえずペルソナのことを手当たり次第調べたものの、心理学用語しか出てこなかった。

キュゥべえ…まどかのペルソナに興味津々。それはそれとして魔法少女になってよ!(意訳:どんな手を使ってでもなるように誘導します)
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