鹿目まどかは自称特別捜査隊   作:鳩胸な鴨

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ペルソナは出ないけど、番長は出るよ。


特捜隊、再始動

「…ってことがあったの」

『魔法少女…。俄には信じ難い話だな』

 

その日の夜。

帰宅したまどかは、自宅の固定電話から、鳴上悠の携帯電話に通話をかけていた。

単なる近況報告もあるが、自分一人では胸につっかえた違和感を言葉にできず。

悩んだ結果、特捜隊含めた多くの人の悩みを解決へと導いた悠へと相談することにした。

受話器越しに聞こえる声は、変わらず元気そうだ。

積もる話もあるが、今はキュゥべえが話した「魔法少女」と「魔女」について、少しでも判断材料が欲しかった。

 

『まどかは、どう思ってるんだ?』

「どうって…、んー…。分からないことが多すぎるっていうか…。

直斗くんみたいに推理ができるほど頭が良いわけじゃないし、カンみたいなモノだから、間違ってるかもしれないよ?」

『構わない。まどかの意見を聞きたい』

「…何かが隠されてるって感じがする。もちろん、私の気のせいかもしれないけど…」

『いや。俺も情報の少なさが気になった。

ペルソナ能力が干渉できるということは、イザナミやヒノカグツチに近い存在が裏にいる可能性もある。

最悪、キュゥべえとやらがその駒として動いていることも、あり得なくはないだろう。

…俺たちだけじゃ足りないな。特捜隊の皆にも共有しておこう』

「うん。お願い」

 

荒唐無稽な話ではあるが、特捜隊の皆なら信用してくれるだろう。

浮上した可能性に不安を覚えながらも、取り敢えず悠に相談できたという事実に、まどかは胸を撫で下ろす。

 

『しかし、一人で大丈夫か?

ヒルメは単独戦闘向けのペルソナじゃないだろう?』

「流石に『こっちに来てー』なんてワガママ、皆に言えないよ」

 

まどかのペルソナ…「ヒルメ」は、多彩なサポートスキルに、高火力の光属性の魔法攻撃を得意とする。

その一方で耐久面は非常に頼りなく、魔法にも物理にもかなり打たれ弱くなっている。

正直なところ、単独で動くにはあまり向かないペルソナである。

それ以前に、まどかはまだ中学二年生になったばかりである。

誰かと組んで動きたいのは山々だが、相手にも生活がある。

無闇矢鱈と巻き込みたくないとまどかが尻込みしていると、悠が優しい声音で告げる。

 

『俺たちのことは心配しなくてもいい。自分の予定の管理くらいはこなしてるさ』

「でも、八十稲羽から見滝原って結構遠いし、申し訳ないなー…って」

『安心しろ。「近いうちに見滝原に行く」って言ってたヤツがいる。

まどかの家にも挨拶に行くつもりだって言ってたから、ソイツに頼れば良い』

「ホント!?誰!?」

『内緒だ』

 

受話器越しだが、悠がしたり顔を浮かべているであろうことはわかった。

まどかは安堵に破顔し、「ありがとう」と見えもしないのに頭を下げる。

特捜隊の仲間がいるのならば心強い。

 

「それじゃあ、悠さん。また今度。

菜々子ちゃんによろしくね」

『ああ。また困ったことがあったら連絡してくれ。相手になる。

タツヤくんによろしくな』

 

悠に別れを告げ、受話器を戻す。

不安は多いが、仲間がいるから大丈夫。

そう自分に言い聞かせながら、まどかはよちよちと自分に歩み寄る弟へと屈んだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「テレパシー…?そんなの出来ないけど」

「えー?おっかしーなぁ…。

アタシとマミさんは出来てんだけどなぁ…?」

 

翌日の昼休み。

学校の屋上にて、まどかは頬張ろうとした唐揚げを弁当箱に戻し、首を傾げる。

聞いたところ、さやかとマミはキュゥべえが仲介したことにより、テレパシーのように言葉を発さずとも会話できるのだとか。

自分は出来ないのか、と興味津々に聞くと、キュゥべえは平坦な声音で答える。

 

「まどかが心を『ペルソナ』として具現化しているからかな。僕の干渉がかなり阻害されてしまうんだ」

「…最終的にグロテスクな見た目になって『きゅっきゅっきゅっ!僕はお前たち人間が生んだ神なんだよ!』とか言わないよね?」

「神というのは、人間が作り出した偶像のことだろう?僕はそんなものになった覚えはないかな」

「あ、うん…。ならいいの」

 

彼女が相対した神は、心から生まれたが故に心に干渉する能力を持っていた。

同じような能力を持つキュゥべえを相手に、まどかがそんな不安を覚えてしまうのも仕方のないことだろう。

しかし、神の存在を知らない二人は「おかしなことを言う」と笑い、呆れる。

まどかは途端に赤面し、話題を変えようと声を上げる。

 

「そ、そういえば!魔法少女って、協力したり、チーム組んだりとかしないんですか?」

「……どういう意味かしら?」

 

マミが少しばかり言葉に詰まる。

デリケートな話題だったのだろうか。

まどかは慎重に言葉を選びながら、たどたどしくその疑問に至った理由を説明する。

 

「私のペルソナ…ヒルメはサポートや遠距離攻撃に長けている一方で、すぐガス欠になるし、相手の攻撃にすごく弱いんです。

どっちかというと、ほかのペルソナ使いと組んで戦うことばかりで…。

マミさんの魔法も私と同じで、単独の戦闘には向かないと思うんです。すっごく」

「そ、そこまでわかるのね…?」

「シャドウっていう…えっと、その、魔女によく似た怪物と戦ったりしてたので。

それに、仲間といた方が、もっと大きなことができるって言うか…。

一人でやれることって、どうしても限られてるって、教えてくれた人がいたんです。

命懸けのことなら尚更、仲間を作るって大事だと思います」

「……ええ、そうね。皆が皆、そう考えてくれたらいいのだけど…。

でも、それは理想論。綺麗事でしかないって切り捨てる子もいるわ。

魔法少女は、そういう生き方しか出来ない子たちが殆どだもの。

魔女を倒した見返りも、魔法少女には必要不可欠だから…。皆、争ってばかりいるわ」

 

まどかの言葉に眉を下げ、困ったような笑みを浮かべるマミ。

その姿が何処となく、かつて対峙した足立透のものと重なった。

 

「いいじゃないですか、綺麗事!

勿論、現実を見ることもすっごく大事です!だけど、辛い現実だけを見て諦めるなんて、勿体無いです!」

 

甘ったるいほどの綺麗事。

そんな理想を掲げた男によって世界が救われたことを、まどかは知っている。

マミがはっとしたように顔を上げる。

そこには、朗らかな笑みを浮かべるまどかの顔があった。

 

「……そう…、そうよね。綺麗事が悪いってわけじゃ、ないものね」

「はい!」

「…ありがとう。ちょっと、楽になったわ」

「え?なんでですか?」

「こっちの話よ。あんまり気にしないで」

 

まどかたちは知らぬことだが、マミの魔法少女としての在り方はかなり特殊である。

魔女の放った使い魔は、育つと魔女へと変貌する。

使い魔を見逃し、魔女へと育ったソレを倒すことで見返りを手に入れようとする魔法少女が殆どである。

そんな中で、マミは魔女から放たれた使い魔すらも見逃さず、被害が出ないように殲滅している。

無論、その活動に見返りはない。

他の魔法少女からすれば、否定的な意見が多いのが現状だった。

魔法少女で構成された社会の中でも、日常生活を謳歌する人間社会の中でも限りなく孤独に近いマミ。

そんな自分に寄り添うなまどかの言葉に、マミは救われたような気持ちになった。

 

「鹿目さんったら、のほほんとしてるようで、しっかりしてるのね」

「うぇひひ…。『憧れの人』と見つけ出した答えなんです。

これだけは絶対に曲げたくない。これこそが『鹿目まどか』なんです」

 

はにかんだ笑みを浮かべ、再び弁当に向き直ろうとするまどか。

さやかはそんな彼女の肩に手を回し、戯れつくようにまどかの頬を突いた。

 

「カッコいいこと言うじゃん、まどか!

さやかさんの知らない間に、こーんなイケメン女子になっちゃって…」

「く、くすぐったいよぉ…」

「……予鈴、鳴ってるわよ」

「「……あ!?」」

 

二人が盛り上がるのも束の間、無情にも予鈴が校舎に響く。

あと十分で授業が始まってしまう。

まどかたちは慌てて半分ほど残った弁当箱に口をつけ、中身をかきこみ始めた。

 

「はぐっ、むぐっ…、むぐっ!?」

「んくっ、はふっ…、ぐっ!?」

「ああもう、急ぐから…」

 

ほぼ同時に喉を詰まらせた二人に呆れ、マミは肩をすくめた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…少しいいかしら?」

 

放課後。

まどかがマミに誘われていた「魔法少女体験コース」に参加しようと荷物をまとめていると、声をかけられた。

そちらを見ると、目元にクマの出来た暁美ほむらの姿があった。

先日、キュゥべえを撃ち殺そうとしていた前科もあってか、表情が固くなってしまう。

 

「ほむらちゃん、どうかしたの?」

「…少し、言いたいことがあるの」

「……わかった」

 

敵意はなさそうだ。

まどかは警戒しながらも、視界の隅にいたキュゥべえに「ちょっと遅くなるって伝えておいて」と告げる。

ペルソナ能力にもテレパシーのような能力があれば良かったのだが、ないものねだりをしても仕方がない。

大きな歩幅で歩くほむらに、まどかは若干駆け足でついて行く。

軈て着いたのは、屋上前の扉。

この時間帯では近づく者はおらず、キュゥべえを介さないのならば、内緒話にはもってこいの場所だろう。

ほむらはまどかの方へと振り返ると、ひどく冷たい表情で告げた。

 

「これは忠告よ。これ以上、こちら側に首を突っ込むのはやめなさい。

例え、貴女がどれだけ強い力を持っていたとしても、よ」

 

ほむらの言葉に、まどかは先日、ほむらに投げかけられた言葉を想起する。

 

────今とは違う自分になろうだなんて思わないことね。さもなければ全てを失うことになる。

 

彼女のこの言葉と、先日の出来事。

このことから、ほむらが指し示しているのは、魔法少女や魔女のことだろう。

その結論に至った瞬間、まどかは首を横に振った。

 

「ごめんなさい。それは無理」

「…理由を聞いてもいいかしら?」

 

ほむらの表情が険しくなる。

まどかは慎重に言葉を選びながら、ほむらの忠告を拒絶した理由を話す。

 

「なんていうか…、すっごく違和感があるっていうか…、そこになにか、大きなモノが隠れてるような気がするの。

さやかちゃんが興味を持っている以上、私はそれを解き明かさなきゃいけない。

さやかちゃんには魔法少女になる動機だってあるから、きちんと知ってから決めてほしい…っていうのが理由」

「………っ!?」

 

まどかの言葉に、ほむらが目を丸くする。

その様子を言語化すると、「予想外の言葉に驚いている」といったところだろうか。

まどかが疑問を抱いていると、ほむらは咳払いし、問いかけた。

 

「そう。…貴女自身は魔法少女になるつもりはないのね?」

「うん。情報が足りない今の時点で、進んでなろうとは思わないよ」

「…全て知れば、なる気も失せるわ」

 

ふと放たれたほむらの言葉に、まどかは弾かれたように彼女に迫った。

 

「ほむらちゃんは知ってるの!?」

「…ごめんなさい。それは、答えられない」

「……そっか。じゃあ、自分で探してみる。

こう見えても私、連続殺人事件を解決したことだってあるんだよ!」

 

えっへん、と、誇らしげに胸を張るまどか。

ほむらは少しばかり複雑な表情を浮かべたのち、まどかの横の通り抜け、階段を降り始めた。

 

「気をつけなさい。貴女が思っている以上に、こちらの世界は残酷で、理不尽よ」

 

その言葉の真意を聞く暇もなく、ほむらの背中が消えて行く。

違和感が増したような気がする。

なにかまではわからないが、自分の想像を超えたモノが蠢いていることは確かだろう。

まどかは下げた鞄の紐を強く握り、階段を駆け足で降り始めた。




このまどかさん、番長にものすごーく影響受けてるから、そのうち七股とかできそうなくらいモテそう。
ちなみにこの番長が『特別な関係』になってる女は、まどか以外の誰か一人だけ。ここの番長は一途なのだ。
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