鹿目まどかは自称特別捜査隊   作:鳩胸な鴨

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P4にコウガ系ないけど許して。


Reach Out To The Truth

「そういえば、願い事については考えたのかしら?」

 

マミの言葉に、甘めの味付けの卵焼きを摘んだまどかの箸が止まる。

期待と不安が入り乱れた眼差しでこちらを見つめるマミに、まどかは言葉を探す。

この三日の付き合いで分かったことだが、巴マミという少女はほむらと同じように、進んで孤立している。

ほむらはどうかはわからないが、マミについては「魔法少女」という特殊な立場がそうさせるのだろう。

その苦労を共有しようにも、魔法少女は互いを倦厭し、時には敵対するのが常。

そういった理由もあって、マミは自分たちに魔法少女となることを薦めているのやもしれない。

しかし。なんと言われようと、まどかは魔法少女になるつもりはない。

キュゥべえに対する不信感もそうだが、魔法少女の裏に潜むという『残酷な真実』を警戒しているのだ。

まどかが難しい表情を浮かべていると、さやかがその頬を突いた。

 

「眉間にシワ寄っちゃってるぞー。

癖になったら美人さんが台無しだゾ♪」

「願いで迷ってるのかしら?」

 

二人がこちらを見つめる。

いくらこの場で誤魔化せど、いつかは言わねばならないのだ。

まどかは意を決して、口を開く。

 

「私、魔法少女になる気ないんです。

私の願いは、私の憧れは、私が叶えなきゃ意味がないんです」

 

言ってしまった。

マミの表情が悲しみと諦めに歪む。

しかし。まどかはマミの手を握り、言葉を続けた。

 

「魔法少女にはならないけど、私、マミさんと一緒に戦いたいと思ってます。

一人で戦うのって、すっごく疲れるし、虚しいし…。

なにより、『自分は独りなんだな』ってヤな気持ちでいっぱいになっちゃいます」

 

少なくとも、まどかはその例に当てはまる大人を知っている。

繋がりを否定、嫌悪し、他者と折り合うことを諦め。挙句、辛い現実から逃げようとして世界すら滅ぼそうとした寂しい大人。

そんな彼が敗れた時に吐いた言葉が、未だに耳に残っている。

 

────戻るとこなんかないし…。

 

彼は進んで孤独になるうちに、自分で自分を追い込んでしまったのだろう。

マミの諦めた顔が彼と重なり、放って置けなかった。

 

「…鹿目さんには、なんのメリットもないように思えるけど…」

 

鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、マミがまどかに問う。

まどかはそれに慌てて首を横に振った。

 

「メリット云々で生きるなんてまっぴらです!キャベツになっちゃいます!」

「きゃ、キャベツ…?」

 

『キャベツになる』。「寂しい大人になる」という意味である。

彼には同情はするし、仲良くしていたのだからそれなりの情はある。しかし、それはそれとして許さないという意志で出来たのが、この造語であった。

当然、彼と面識がなく、その意味を知らないマミは、なんの脈絡もなく飛び出たキャベツの単語に首を傾げた。

しかし、まどかの思いは届いたのだろう。

マミは嬉しそうに笑い、まどかの手を握り返した。

 

「ええ。よろしくね。鹿目さん」

「はいっ!」

 

まどかがマミと笑い合っていると。

パンを頬張っていたさやかが、半目で二人を睨め付けているのが視界に入った。

 

「いーなー。私そっちのけで楽しそうで。

私もそーゆーアオハルしたいなー」

「ご、ごめんなさい…」

「意外と嫉妬深いのね…」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「鹿目まどか。聞きたいことがある」

「ん?なに?」

 

放課後。

惚れた男への見舞いへと駆けて行ったさやかを見送り、マミと行動していたものの、彼女が「お花を摘みに…」と入ったコンビニから出てくるのを待っていたまどかは、キュゥべえの声に視線を下ろす。

あいも変わらず、何を考えているのかよくわからない双眸が自身を捉えている。

まどかは違和感を感じながらも、キュゥべえと視線を合わせた。

 

「君には、自分では叶えるのが非常に困難な願いがあるんだろう?

何故、僕との契約を避けるんだい?」

「聞いてたよね、キュゥべえ。

意味がないからだよ」

 

まどかが魔法少女にならない理由。

それは警戒しているということもあるが、それによって叶った願い事に意味を感じられない、というのが大きかった。

流石に命の危機だったりすれば話は別だが、願いを叶えたとて、それで幸せになれるかは自分次第。

願いを叶えることがゴールではない。幸せを見つけることも、到達点ではない。

悩み、苦しみ、もがき、それでも見つからない真実を、最低な現実の中で探しながら生きていく。

それこそが、神との対峙により見つけ出した、まどかの答えだった。

 

「願いが叶うという結果は同じだ。なら、楽な方がいいはずだ。

人間は『楽』を求める生き物だろ?得られる結果が同じなら、ずっと楽な方を選ぶのが正常なことじゃないかい?」

 

キュゥべえがつらつらと並べる言葉が、かつて投げかけられた言葉と重なる。

この生物はどこかおかしい。

まるで、かつて対峙した神のように、心というものがこれっぽっちも感じられない。

まどかは目を細め、キュゥべえを睨め付けた。

 

「楽な方がいい?楽な方が正しい?

そんなの、病気と変わんないよ。

誰かに決めてもらった、誰かに与えてもらっただけの結果なんて、私はいらない。そこに私は居ないから」

 

その言葉は奇しくも、まどかのシャドウがまどかに突きつけたものとよく似ていた。

 

「…わけがわからないよ。

君ほどの才能があれば、なんだって叶うのに」

 

見た目と仕草だけは可愛らしく、こてん、と首をかしげるキュゥべえ。

こうして真剣に言葉を交わしたことで、まどかの中の疑念が確信に変わる。

ほむらがキュゥべえを撃ち殺そうとしたのには、なにか大きな理由がある。

まどかが情報を擦り合わせていると、慌ててこちらへと駆けてくるマミが見えた。

 

「鹿目さん!美樹さんのいる病院に孵化寸前のグリーフシードが見つかったって!

急がないと大変なことになるわ!!」

「え!?」

 

この会話は、胸にしまっておこう。

キュゥべえに対する不信感を抱きながらも、まどかはマミの後に続いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

マミはかつてない万能感に酔いしれていた。

魔法少女になってからというものの、誰とも接することなく孤立していたマミ。

両親ともども事故に遭い、瀕死の状態だったのをキュゥべえに救われた日から、マミは魔法少女として活動を始めた。

引き取ってくれた親戚からも疎まれ、誰も待たぬマンションに一人暮らし。友はおらず、魔法少女の特性ゆえに仲間もできない。

どこへ行っても逃れ得ぬ孤独に、彼女自身も知らず知らずのうちに追い込まれていた。

 

──── 魔法少女にはならないけど、私、マミさんと一緒に戦いたいと思ってます。

 

その言葉だけで、ひどく救われたような気持ちになった。

孤独は人の心を容易く蝕む。

だからこそ、孤独が消えた時、安堵と高揚を覚えるのは仕方のないことなのだ。

結界に突入すると共に、まどかが胸ポケットに下げていたメガネをかけ、背の弓袋から弓を取り出す。

マミも変身して臨戦態勢を整え、お菓子と医療器具が乱立する結界を進んだ。

 

「待ちなさい」

 

と。そんな彼女らの前に、魔法少女としての装いを纏ったほむらが姿を現した。

その表情はどこか切羽詰まったもので、睨め付けるような、なにかを懇願するような、そんな印象を受けるものだった。

 

「退きなさい。この先にいる魔女は、私が倒すわ」

「それは…」

「せめて理由を答えて。でなきゃ、納得もできないし、受け入れることもできないよ」

 

冷たい態度のほむらに食ってかかろうとしたマミを抑え、まどかが問いかける。

しかし、ほむらはそれに答えず、ただこちらを睨め付ける、或いは見つめるばかり。

この調子では意思疎通などままならなくて当然だ。

まどかが続けて言葉を放とうとした、まさにその時。

マミが放ったリボンが、ほむらの体を拘束し、地面へと固定した。

 

「しまった…!?」

「ちょっと、マミさん!?」

「問答は後よ!今は美樹さんを!」

「ああもう…!なんでこうなるの…!」

 

混迷を極めた事態を前に、まどかはそんな弱音を吐き、駆け出したマミを追う。

視界の隅で、ほむらがなんとか拘束を解こうともがくのが見えた。

 

「ごめん、ほむらちゃん!

あとでほどくから!」

「ぐっ、ま、待ちなさい!行っては…」

 

ほむらの声を遮るように、ぱたん、と、魔女のねぐらへと続く扉が閉まった。

残されたほむらは、二人が消えた扉を見やり、悔しそうに唇を噛んだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

まどかたちが魔女のねぐらに足を踏み入れて目に飛び込んできたのは、人形と変わらない大きさの魔女。

ちょこん、と椅子に座り、なにもないテーブルをただ見つめているだけ。その様子は、おやつを待つ子供のようだ。

まだ生まれたばかりなのか、使い魔らしき影もそこまで見当たらない。

まどかは希望のアルカナが刻まれたタロットカードを顕現させ、それを握りつぶした。

 

「きて、ヒルメ!!」

 

召喚されたペルソナが、指で空を薙ぐ。

と。まどかの背後に幾つもの光が顕現し、弾幕のように魔女へと襲いかかった。

ずずぅん、と音を立てて、椅子とテーブルが崩れ落ちる。

しかし、魔女はその小さな体を活用して避けていたのか、傷ひとつない状態で爆炎の中から飛び出した。

 

「マミさん、強化かけます!」

「ええ、お願い」

 

ヒルメが舞うと共に、マミの体を取り囲むように3色の光が立ち上る。

「ヒートライザ」。味方1人の能力を格段に上昇させるスキル。

マミはかつてないほどの高揚感に溺れながら、魔女に向けて銃弾を打ち込む。

それだけでは終わらない。銃弾の軌跡から顕現したリボンが、魔女へと襲いかかる。

魔女はそれを避けることもせず、無抵抗に縛られた。

 

「……?」

「ティロ・フィナーレ!!」

 

まどかがその違和感に訝しげに眉を顰め、警戒するのも束の間。

マミの放った砲弾が、魔女を穿つ。

その軌跡から生成されたリボンが魔女をくびり殺さんと縛り上げた、その時だった。

その顔が異様に膨れ上がり、凄まじい勢いでその口から異形が放たれたのは。

 

「えっ──」

「ヒルメェ!!」

 

それに気づいたまどかは咄嗟にヒルメを前に出し、飛び出た異形の牙を受け止める。

ペルソナはまどか自身。ペルソナに襲う苦痛は、己の苦痛と同じ。

肉が裂かれ、骨が砕ける音が響く。

まどかはその激痛に顔を歪め、その場に崩れ落ちた。

 

「っ、ぁああああっ!?」

 

痛い。熱い。苦しい。

ヒルメは前衛向けのペルソナではない。それこそ、弱点の一撃をもらうだけで瀕死になってしまうほどに打たれ弱いのだ。

まどかは目尻に涙を溜め、口から垂れる涎を拭くこともままならず、走る苦痛から逃れようともがく。

しかし、ヒルメを戻すことはしない。

戻せば確実に、放心してるマミが食い殺されてしまう。

がじがじと齧り付く魔女に、ヒルメはなんとかその指を向けた。

 

「ヒルメ…、『コウガオン』…!!」

 

光の柱が魔女を穿つ。

しかし、魔女は怯むことなく、更に強くヒルメの体を噛み砕く。

 

「あ、ぁああっ…!!」

「まどか!!」

「まどか、早く契約を!!」

 

さやかが叫び、キュゥべえが迫る。

しかし、まどかは歯を食いしばり、真っ直ぐに魔女を睨んでいた。

と。その時だった。

 

────ペ…ル…ソ…ナ…!!

 

十字の斬撃が、魔女の体に炸裂したのは。

ヒルメから離れた魔女の体が沈み、現れた影がソレを見下ろす。

学ランに、異形の仮面。

応援団長のような印象を受けるそのペルソナが消え、1人の男が注射器のオブジェに立っているのが見えた。

 

「………!」

 

その姿を見たまどかは、疑問よりも先に、安堵を覚えていた。

サプライズなんて、彼らしい。

そんなことを思いながら、まどかは走る苦痛を治癒魔法…「メシアライザー」で癒す。

魔女は標的を彼へと変えると、高速道路を走る大型トラックのような速度で迫る。

だが、彼は至って冷静にタロットカードを降ろし、握りつぶした。

 

「『イザナギ』」

 

魔女の脳天に、ペルソナ…イザナギの持つ剣が振り下ろされる。

真っ二つになった魔女は、彼の体をすり抜け、壁へと激突した。

しかし、魔女は倒れたわけではなく、その体を再生させて再び彼へと向かった。

 

「ヒルメ!!」

 

と。回復し、立ち直ったまどかの放った光が突き刺さり、魔女の軌道を逸らす。

彼はその隙に精神を統一させ、叫んだ。

 

「イザナギ!!」

 

刹那。まどかの放つ数倍の規模と威力の豪雷が、魔女の体を包み込む。

その暴威は最早、神話の域である。

崩れゆく結界の中、男はゆっくりと降り立ち、放心したマミたちへと向き直った。

 

「自称特別捜査隊リーダー兼シャドウワーカーのバイト、鳴上悠だ。よろしく」

 

シャドウワーカーって、バイトOKなんだ。

そんなことを思いながら、まどかは破顔し、悠へと駆け寄った。

 

「…………」

 

彼女の背を呆然と見つめるマミは気づかなかった。

自身のソウルジェムが、急速に黒く染まりつつあることに。




鳴上悠…シャドウワーカーの協力者として見滝原へとやってきた。本人はちょっと長いバイト感覚のため、「バイト」を自称する。その肩書きは奇しくも、彼に力を与えたイザナミと同じであった。大学は桐条パワーで公欠。

イザナギ…お前パラメータ全部MAXの事故ナギやろ!P4GA1話で謎の光でアブルリーの大群消し飛ばしたヤツやろ!!

鹿目まどか…回復できるからってだいぶ無茶した。噛まれた箇所が右腕から心臓にかけてすっぽりだったので、めちゃくちゃ痛い。けど、憧れの人が助けにきてくれた嬉しさとメシアライザーで痛みなんて吹っ飛んだ。ちなみに、巽完二だったら余裕で耐えてた。

暁美ほむら…マミが食われかけたくらいに番長に助けられたけど、番長の方が足が早くて間に合わなかった。なにあいつ人間?

巴マミ…おや?ソウルジェムの様子が…?
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