マミは呆然と目の前の光景を見つめ、ひどい自己嫌悪に陥っていた。
あれだけまどかの前で格好つけておいて、なにもできなかった。
それだけではない。まどかが庇うことがなければ、今頃は魔女の腹に収まっていた。
苦痛に悶えるまどかを前に、死の恐怖にただ放心しているだけだった。
助けなきゃ、という義務感は確かにあった。でも、体が動かなかった。
仕方がない、で済ませれば、どれだけ気が楽だったか。
魔女を倒したのは、他の魔法少女どころか、細身の男性だった。
恐らくはペルソナ使いなのだろう。
まどかに羨望の眼差しを向けられる男…鳴上悠と比べ、自分はひどくちっぽけな存在なのではないか、という疑問が湧いた。
そんなマミの気持ちを知ってか知らずか、まどかが年相応に朗らかな笑みを浮かべ、悠を連れてこちらへと歩み寄る。
「マミさん、紹介しますね。私の憧れの人、鳴上悠さんです!
悠さん、魔法少女の巴マミさんです!」
「まどかの面倒を見てくれていたんだな。ありがとう」
「………っ」
差し伸べられた悠の手を、マミは反射的に払ってしまった。
そんな目で彼を見ないで。
そんな目で私を見ないで。
叫びたくても、声が出ない。視界がぶれる。喉が震える。ぐらぐらと脳が揺れている。
────ああ、私、最低だ。
そんな言葉が、ふっ、と頭をよぎる。
その瞬間だった。ぱきん、と音を立てて、何かが砕けたのは。
「……ぁ、え…?」
「マミさ…、それ…!?」
ころん、と、ぶれる視界に、それが映る。
ソウルジェム。魔法少女としての証。それの破片が、自らの手に散乱している。
その中心には、見慣れたモノが転がっていた。
「…………キュゥべえ、あなた…」
唯一の拠り所すら、自分を騙していた。
無機質な顔でこちらを見つめるキュゥべえを睨め付ける気力すら、今のマミにはない。
彼女の手に散乱したカケラの中心。
そこには、孵化寸前のグリーフシードが転がっていた。
「あっ…」
マミの体が、糸が切れてしまったかのように崩れ落ちる。
あまりに残酷な現実は牙を剥き、魔女の結界としてまどかたちに襲いかかった。
「マミさん!?マミさん!!」
崩れ落ちたマミを受け止め、まどかが必死になって声をかける。
メシアライザー。数多の戦いで仲間の補助、果ては自分にしかできない光属性のアタッカーという役割のために多くの技を捨て、今や唯一残った最強の回復魔法。
まどかは必死になってマミを蘇生させようとするも、息を吹き返すことはない。
さやかはあまりの現実に、キッ、とキュゥべえを睨め付けた。
「どういうこと…!?ソウルジェムって、ただの変身アイテムのはずでしょ…!?」
「僕がいつ、そんなこと言った?」
「っ…、こんの……っ!!」
さやかがキュゥべえを、巴マミだった魔女に向けて蹴り飛ばす。
これが、ほむらが隠していた真実。
恐らくは先程倒した魔女も、魔法少女となった誰かだったのだろう。
魔女の攻撃を受け、ボロボロになったキュゥべえを前に、まどかは拳を握る。
「今、ようやくわかった。この世界がテレビの中の世界に似てるって理由。
この結界は魔女の…、ううん。マミさんの『心の中の世界』なんだよね?」
「よくわかったね、まどか。
君は学業は奮わないのに、こういうことだけは勘が鋭いんだね」
「余計なお世話だよ」
道理で、ペルソナが使えるはずだ。
魔女として覚醒し、すっかり小さくなってしまったマミを見上げる。
「絶対、助けます…!」
まだ、救えるはず。
わずかな希望を胸にまどかたちが武器を握ると、キュゥべえが平坦な声で問いかける。
「巴マミは魔女として生まれ変わった。
彼女を止めるには、倒す他ない。
これが魔法少女の宿命だ。
いくら僕の知らない理の存在…ペルソナ使いとは言え、君たちにこれを覆せるわけがない。
そもそも、先ほど君たちを襲った魔女を倒すという対応で済ませた君たちに、そんなことができ…」
「ごちゃごちゃうるさい!!奇跡なんて、起こそうと思ったら起こせるんだよ!!」
まどかがそう意気込むも、キュゥべえは首を傾げ、「わけがわからないよ」と呟く。
と。悠が前に出て、まどかの肩に手を置いた。
「俺も背負う。今は、彼女を」
「うん…!」
方法はわからない。しかし、それでも救わねばならない。
赤い髪の使い魔にストラップのようにくっ付いた魔女は、使い魔を操り、悠へと迫った。
ペルソナを顕現すれば、倒してしまうことは容易だろう。
しかし、それではマミは戻らない。
悠はペルソナを出すことなく、刀で使い魔の操る槍を受け止める。
「……っ!!」
悠には、世界のアルカナが宿っている。
あらゆる虚飾を打ち払い、真実を見通す眼。
数多の絆を積み重ねた悠の元へと宿り、神をも打ち砕いたその権能は、心の中の世界…それも、魔女の結界という特殊な状況下において真価を発揮した。
魔女となったマミが、ずっと感じていた孤独や使命感。
自らの来訪により、まどかが離れてしまうのではないかという不安に、自分自身を殺してしまいそうなほどの自己嫌悪。
そして、マミがその何もかもに絶望していることすらも。
悠が攻撃を受け止めるたびに、マミの隠したかった本心、その絶望が流れ込んでくる。
しかし、それを救うのは自分じゃない。
悠は使い魔と距離を取ると、口を開いた。
「まどか。耳を澄ませ。目を凝らせ。
彼女はお前を見ている」
悠の言葉を疑う理由は、ない。
まどかは槍を構えた使い魔の脳天を穿ち、離れた魔女へと手を伸ばす。
いくら元がマミとはいえ、その行いは自殺行為にも等しい。
しかし、まどかを求めていた深層心理が表層化しているのか、魔女はあっさりとまどかの手を受け入れた。
「マミさん、聞こえ…!?」
まどかが言葉を紡ごうとするも、その口を魔女のリボンがまるで操り人形のようにまどかの四肢を縛り上げ、自分のものだと言わんばかりにくっつく。
それに抗おうとするも、それは叶わず。
まどかはもがくことしか出来なかった。
「ちょっと、マミさん!まどかが…」
「今は見てろ」
「あ、アンタが焚きつけたんでしょ!?ちょっとは責任を…」
さやかが魔女となったマミに叱責しようとするも、悠がそれを制す。
まどかは唯一自由を許された口で、マミに向けて叫んだ。
「弱くてもいいんです!情けなくてもいいんです!完全無欠の正義の味方なんかじゃなくていいんです!!
私、そんな色眼鏡なんてなしに、ただのマミさんと友達になりたい…!
憧れがどうとか、魔法少女がどうとか、そんなの関係ない!絆を繋ぐ尊さを…!絆が起こした数々の奇跡を知ってるから…!!
だから、私、マミさんと一緒に学校に行ったり!一緒に愚痴を言い合ったり!一緒に弱音を吐いたり!一緒にご飯を食べたり!
そんなふうに、ただの『見滝原中学三年生の巴マミ』さんと仲良くなりたい!!」
『………』
いくら言葉を紡ごうと、マミだった魔女は首を傾げるだけ。
しかし、まどかは諦めず、言葉を続ける。
「大っ嫌いな自分と向き合わなきゃいけない時は、いつか絶対に来ます…!それに絶望なんてしてたら、『自分』なんて、その闇に簡単に殺される…!
私、ヤだよ…!マミさんがそんなふうに死んじゃうの、ヤだよっ!!」
『……』
「受け止めて…!苦しくても、悲しくても、辛くても、死にたくても!
そんな自分を受け止めてあげないと、かっこいいマミさんも、寂しがりなマミさんも…、どっちのマミさんも可哀想だよっ!!」
咆哮と共に、まどかの胸から希望のタロットカードが顕現し、砕ける。
勝手に飛び出してしまったペルソナを前に、まどかがそれに目を白黒させるのも束の間。
その意識は暗転した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「……あれ?」
意識を取り戻したまどかを出迎えたのは、魔女の結界ではなかった。
深い青で包み込まれたリムジンの中。
先日訪れたばかりの、夢と現実、精神と物質の間に位置する場所…ベルベットルーム。
まどかの眼前には、イゴールとマーガレット、そして自分と瓜二つの少女が佇んでいた。
「ようこそ、ベルベットルームへ…。
と、申し上げたいところではありますが…」
「此度、あなた様を呼び寄せたのは、私どもではありません」
イゴールとマーガレットが揃って、席の隅にちょこんと座る少女へと目を向ける。
見れば見るほどそっくりだ。
髪が伸びていることを除けば、双子だと言われても違和感がない。
あの両親からは考えられないが、生き別れのお姉ちゃんとかかな、などと思っていると、マーガレットが一枚のカードを差し出す。
「あなたのペルソナを通じて、彼女とあなたの間には、大きな絆が紡がれておりました。
こことは違う、『概念そのもの』となった彼女との絆…。彼女を除けば、そこに到達した者は、かつて私の妹が担当した者のみ。
彼女の力は今、あなたに共有されました」
そのカードには、なにも刻まれていない。
いや、違う。刻まれてはいるのだが、まどかの目には霧がかかったように、そこにある絵柄が見えなかった。
「無論、全て…というわけではありません。
現にあなたのアルカナは変わらず、『希望』のままでございます」
「彼女を本当の意味で理解し、受け入れたその時…。
あなた様に宿ったその力は、完全に開花する。
あらゆる絶望を受け止め、その先にある希望を掴み取る覚悟はお有りですかな…?」
言葉の意味はよくわからない。
しかし、まどかは自分の意思で、その問いに頷いた。
「なら、結構。理となろうと、彼女が果たせなかった希望…。
あなた様の意志の力がそれを成す時を、わたくしどもも楽しみに待っております」
意識が再び暗転する。
と。座っていた少女の口が、ゆっくりと動くのが見えた。
────頑張れ、■■■!
♦︎♦︎♦︎♦︎
「………」
目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
広がるのは、テレビの世界によく似た、赤と黒のマーブル模様の空。
焼け焦げたアスファルトに、潰れた車とその破片、さらには血飛沫が散乱する。
事故現場なのだろうか。凄惨な光景だ。
「………」
その場所を呆然と見つめ、へたり込む小さな背中が見える。
それに見覚えがあることに気づくと、まどかは駆け足で彼女へと向かった。
「…マミさん」
「………こんなところまで来たのね」
まどかがその名を呼ぶと、震える声でマミが振り返る。
その瞳は、シャドウのように光っている。
しかしながら、シャドウが纏う独特な雰囲気は感じられない。
どちらかと言うと、サギリと呼ばれる神に侵食された生田目太郎と足立透に似ている。
魔女となった影響が出ているのだろう。
まどかはへたり込むマミに、手を差し伸べる。
「マミさん、帰ろ?こんなところにいたら、おかしくなっちゃう」
「…帰れるわけ、ない。…もう、とっくの昔におかしくなってるもの」
自覚が進むたびに、マミの体から漏れ出る瘴気が色濃くなる。
ここにいるマミは、シャドウというよりも『巴マミの心そのもの』なのだろう。
それが今、己の心の闇であるシャドウに飲み込まれようとしている。
「放っておいて」と、凄惨な事故現場へと向き直ろうとしたマミの手を、まどかは反射的に掴んだ。
「まだ、話せてる。まだ、奇跡は起こせる。だから、諦めないで」
「そんな口当たりのいい言葉だけで、この現実が覆せるわけないでしょ!!」
銃弾がまどかの頬を掠める。
マミの周囲には、見慣れたマスケット銃が漂っていた。
心の中の世界というだけあって、魔法少女としての能力も十全に使えるようだ。
マミは暫しまどかを睨め付けるも、ふと、はっとしたように目を見開き、顔を逸らす。
「……自分勝手なお願いで、大好きだったお父さんとお母さんを見捨てて。勝手に使命感に酔って。勝手に孤独になって。勝手に仲間ができたって浮かれて。勝手に鹿目さんに期待して。勝手に鹿目さんのことを自分のものだって思って。
…それでも、人を助けるために選択してきた。ずっと、助けられなかった人のために足掻いていた。
なのに、いざとなったら何も出来なくて。ずっと心の支えになってたものが、ガラガラと崩れて…。
……挙句、1番の友達と思ってたキュゥべえには、ずっと、ずーっと騙されてた。
ね…?滑稽な女でしょ…?」
マミが隠してきた弱音を吐くと共に、漏れ出る瘴気が強くなる。
シャドウが本格的にマミの体を乗っ取り始めたのだろうか。
この場にりせやクマがいないことを口惜しく思いながらも、まどかは口を開く。
「私だって、滑稽な女でした…。
ずっと、真実を追いかけていたのに…、全部、全部が誰かの手のひらの上で…。
ううん。きっと、誰も彼もが、誰かの意思で、前も見えないままに動くことを良しとしてるんだと思うんです。
だって、そうした方がずっと楽だから…」
「……鹿目さんは、違うでしょう?」
まどかの並べた言葉に、マミが異を唱える。
まどかは少し言葉に詰まるも、必死に声を出し続けた。
「…私、すっごくヤな子だったんです。
優しさを振り撒くことで、誰かから認めてもらいたくて…。自分の中の空っぽを満たすために、誰かを利用していた。
優しくすれば、楽になれる。生きていくってことは、楽をすることなんだって…、そんな最低な私もいたんです」
受け入れた自分の言葉で、マミにぶつかる。
少し、マミの体から瘴気が剥がれたような気がした。
「最低な自分なんて、誰もが持ってる。
それを見て、向き合って、受け入れて…。そうやって前に進まないと、最低な自分が可哀想だなって思うんです。
だって、そんな最低な私も、同じ私だから。受け入れてあげなきゃ、私はどこにも行けなくなっちゃう」
「………最低な自分を、受け入れる…?」
マミの瞳から、怪しげな光が消える。
まどかは優しく彼女の手を取り、とびっきりの笑顔を浮かべた。
「はい!そうすることで初めて、人は前に進めるんです!
それこそ、神さまを倒しちゃうほどの奇跡だって起こすほどに!!」
「───っ!!」
瘴気がマミの体を解放する。その瞳からは、涙は溢れない。
解放されたマミが振り返ると、その瘴気は形を変え、人の影を作り出すのが見えた。
軈て、そのシルエットが明らかになると、マミは目を丸くする。
「………私?」
それは紛れもなく、マミのシャドウだった。
ぱちくりとマミが目を丸くしていると、卑屈な表情を浮かべたシャドウが口を開く。
『あの日、死んでいれば良かった』
「……っ」
その言葉が、心を抉る。
目の前にいるマミのシャドウは、マミにとっての辛い現実そのものだ。
『ずっと孤独だったのもそう。魔女になったのもそう。あの日、助けられなかったのも、全部、全部…。
あの日、死んでいたらずっと楽だった。
真実なんて見たくない。ただ盲目に、誰かに縋っていたい。
結局、私は私が一番可愛いの。
だって、そうでしょう?
でなきゃ、美樹さんと鹿目さん…。2人を魔法少女にしたい、だなんて自分勝手なこと思わなかった』
絶望が突きつけられる。
マミは息が詰まるような感覚を覚えながらも、ぼそぼそと呪詛を漏らすシャドウへと歩み寄る。
「……ええ、そうね。
私はずっと、私が可愛いだけだった。
だから、自分を肯定したくて…、生きててもいいんだって自信がほしくて、魔法少女であることに縋り続けた。
魔法少女であることで、進んで孤独を選んだのに…。それでも、仲間が欲しいって、自分勝手なことを思って…」
そこまで言うと、マミは笑みを浮かべ、シャドウの体を抱きしめた。
「ごめんね、最低な私。ずっと、あなたから目を逸らしちゃった。
私が認めてあげないと、あなたはどこにも行けないのに…」
『………うん』
ふっ、とシャドウが消える。
代わりにその場には、元通りになったソウルジェムが転がっていた。
おそらくは、絶望を受け入れ、乗り越えたことでシャドウが変質したのだろう。
マミはそれを拾い上げると、まどかへと差し出す。
「鹿目さん。あなたが向こうの私に渡してきてくれないかしら?」
「ここ、やっぱり、マミさんの心の世界なんですか?」
「ええ。巴マミの心である私が持っていても、意味がないもの」
と。マミの体すらも、薄らと消えてゆく。
それだけではない。音も立てず、静かに世界そのものが消えていくのが見えた。
まどかは冷や汗を垂らし、マミへと問う。
「え、えーっと、これって…」
「そりゃ、ソウルジェムは私の心みたいなものだし…。
全部がソウルジェムに収まって消えていくのも、自然なことじゃないかしら?」
「『自然なことじゃないかしら』、じゃないですよ!このままだと私も消えちゃうじゃないですか!?」
「あはは…。まぁ、頑張って」
「頑張ってって…!?あーもう!!
カエレール持ってくれば良かったぁ!!」
まどかがそんな泣き言を叫ぶと。
どこからか、笑い声が聞こえてきた。
────大丈夫。私が出してあげる。
そんな声が聞こえると共に、まどかの体が見覚えのある光に包まれる。
たしか、「カエレール」という脱出道具をダンジョンの中で使った時も、こんな光が出ていたはずだ。
まどかはソウルジェムを握りしめ、消えてゆくマミに手を振る。
「マミさーん!帰ったら、おやつとかジュースとか…、いろいろ用意して、打ち上げしましょう!!
辛くて苦しくて…、見たくないこともたくさんあるけど!楽しいこと、嬉しいことも、いっぱいある現実で!!」
「……ええ。楽しみにしておくわ」
その言葉を最後に、世界は消えた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「まどか!!」
その声で、まどかの意識が戻る。
ゆっくりと目を開くと、いやに眩しい夕空と、心配そうに自分の顔を覗き込むほむらの顔が飛び込んだ。
「……あれ?ほむらちゃん…?」
「…よかった、目が覚めたのね…」
「…あ、そうだ!マミさんは!?」
安堵に胸を撫で下ろすほむらを跳ね除け、まどかが起き上がる。
と。ほむらは悲しげに表情を歪め、まどかの隣へと人差し指を向けた。
そこには、糸の切れた人形のように転がっているマミの体があった。
「……もう、手遅れよ。魔女となった巴マミは、あなたとの衝突の後、消滅した。助ける手立てなんて…」
「……コレを渡せば…」
ほむらの言葉を無視し、まどかはいつの間にやら握っていたソウルジェムを、倒れたマミの手に戻す。
と。どくん、と、鼓動が波打つような音が響き、マミが詰まった息を吐き出すかのように、激しくむせた。
「ごほ、ごほっ…」
「……うそ…」
奇跡のような光景。ほむらは愕然として言葉を失い、起き上がるマミを見やる。
マミは生を確かめるように呼吸を繰り返すと、まどかへと微笑んだ。
「…ふふっ。人の心に土足で踏み込むなんて、意外と悪い子なのね」
「昔よりはマシになったんですけど…。うぇひひ…」
地面に転がった2人が笑い合っていると。
様子を見ていた悠が、2人に向けて手を差し伸べた。
「頑張ったな、2人とも」
「うぇひひ…。私、近づけたかな?」
まどかが締まりのない笑みを浮かべ、その手を握る。
残るはマミ。
一度は払い除けた手を見つめ、何を思ったか、マミは薄く笑った。
「巴さん。よろしくな」
「……ええ。よろしくね、鳴上さん」
その手を払うことはなく。マミはがっしりとしたその手を握った。
???…まどかに近い概念的存在。ペルソナを通じて、魔女の心の世界に飛び込む力をまどかに与えた。まだ完全に繋がれた訳ではないので、力を使うための制限として、『魔女となる前の魔法少女と面識がある』必要がある。???が持つアルカナは『■■』。このアルカナを持つのは、彼女を除けば月にある『死の概念』を封じた少年のみ。
巴マミ…???の干渉がなければ死んでた。伝達力MAX番長直伝のまどか決死の説得により、魔女化から回復。メンタルが強くなった。
暁美ほむら…魔女となったマミを倒そうとしたものの、まどかが叫んだ途端に結界ともども消えたことにビックリ。もしや、まどかのペルソナが倒したのかとも思ったが、まどかがソウルジェムを再生させたことにもっとビックリ。
美樹さやか…大きなリスクを知ったけど、それでも魔法少女になる可能性は十分にある。恋は盲目とはよく言ったものである。