鹿目まどかは自称特別捜査隊   作:鳩胸な鴨

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ペルソナはスイッチ版でも楽しいなぁ。


奇跡の対価

「というわけで、魔法少女になりました!」

「………」

「………」

 

翌日、学校の屋上にて。

さやかが高々とソウルジェムを掲げるのに対し、マミとまどかが苦い表情を浮かべる。

恭介の腕は確かに完治した。精密検査のためにまだ入院しているが、何の異常もなければ明日にも退院できるらしい。医者たちも当然、その奇跡を喜んだ。

しかし。その奇跡の代償が形になった宝石を前に、マミがため息を漏らす。

 

「…キュゥべえの狙いがわからない以上、気をつけておきなさい。

世界中でこんなマッチポンプ仕掛けるくらいだもの。ただの好みってわけでもなさそうだし、狙いがあると考えた方が自然ね」

 

私が言えたことではないけど、と付け足し、冷凍食品なのだろう、衣がふやけた唐揚げを頬張るマミ。

起きてしまったことは仕方がない。

叱ったところで、覆水が盆に帰ることはないのだ。

さやかは朗らかな笑みを浮かべ、マミに向けてサムズアップする。

 

「わかってますって!

さやかさんはそんなにバカじゃありませんよ!」

「さやかちゃん。悪いけど言うね。

めっちゃ不安。キュゥべえの掌でワルツでも踊ってるのかってくらい振り回されてそう」

「んなっ!?」

 

まどかの口から到底飛び出さないであろう毒混じりの指摘に、さやかが目をひん剥く。

苦笑すら浮かべていない。真顔である。

足立透に誘導されていた時の自分たちもこうだったのかな、などと思いつつ、まどかは愕然とするさやかに畳み掛ける。

 

「そもそも、私がキュゥべえと接触を避けたのは、キュゥべえが『なにかとんでもなくヤバい情報を隠してる』って思ったから。

さやかちゃんには『上条くんの腕の怪我を治す』っていう動機もあったから、予めそれを知ってもらいたかったの」

「で、でも、魔女化は…」

「魔女化にもたくさん謎は残ってるよ。

そもそも、ソウルジェムはどうやって『人の心』を個別化、固形化してるのかもわかんないし、それをどうやって魔女として変質させているのかもわかってない」

 

シャドウワーカーの指揮を取る桐条美鶴から聞いた話だが、「集合的無意識」といって、人の心とは本来、深いところで繋がっているという。

故に、人は自分の心を完全に知覚することが出来ない。

心の海に潜む「心の下半分」を知覚し、己から発生したシャドウを制御できる者がペルソナ使いと呼ばれるが、彼らが自分の心を完全に把握できているかというと、そうとはいえない。

ペルソナ使いが理解しているのは、あくまで心の一部だけなのだ。

本人ですら曖昧なもの…それも、心の海という膨大且つ概念的な場所に漂う一部をどうやって特定し、切り離し、固形化しているのだろうか。

加えて、それを変質させている要因も、未だはっきりとしていない。

魔女化という特大級の爆弾が落とされた今、これを超える情報が飛び出すとは考えたくないが、可能性は十分にあるだろう。

 

「………まどかって意外と賢い?」

「直斗くんの言ったこと復唱してるだけ。

ほむらちゃんは全部知ってそうなんだけど、詰め寄っても露骨にその話題避けるし…」

「あの子、話しかけようとすると距離を取るのよね。そのくせ、自分の用事にだけは人を付き合わせて…。

人との付き合い方が下手すぎるわ」

「マミさんも手探り感ありますよね」

「……流石にあのレベルじゃないわよ」

 

まどかの悪意なき一言に、マミは文句を言える気にもなれず、再びため息を吐く。

思うようにいかないことばかりだ。

まどかは伸びをするとともに、天を仰いだ。

 

「遠いなぁ…。いろいろと」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃、病院にて。

精密検査を終え、退院を目前にした恭介は、違和感なく動く腕を見つめ、思案に耽る。

この奇跡には、必ず理由がある。そして、それは八つ当たりしたさやかに関係している。

非現実的であれど、そのくらいはわかる。

そうでなければ、「奇跡も、魔法も、あるんだよ」などという台詞が吐けるはずもない。

治ったタイミングも、さやかが病室を出て数分後だった。

どうにも事が出来すぎている。

腕が治ることをあんなにも望んでいたというのに、嬉しさはあまりなかった。

と。恭介の頬に、冷たい感触が襲う。

恭介がそちらを見ると、結露が伝う缶ジュースを差し出す悠がいた。

 

「上条くん、おめでとう。

自販機で買ったものだが、祝い品だ」

「鳴上さん…」

 

見舞い品はありがたく受け取ることにし、恭介は正常に動く手でプルタブを開ける。

違和感がないのに、違和感がある。

そんな矛盾に悶々としながらも、ちびちびと甘ったるいジュースを飲む。

 

「嫌いな味だったか?」

「あ、いえ!そんなことは!」

「なら、よかった」

 

表情に出ていたのだろうか。

恭介は慌てて繕い、残っていたジュースを一気に呷る。

暫しの沈黙が続く。

恭介が言葉を選んでいると、悠が口を開いた。

 

「…あまり喜んでいないようだな」

「……喜び、たいんですけどね。どうしても違和感というか…、不安が拭えなくて」

「不安?」

「なんていうか、都合が良すぎるんです。

それに、さやかに当たってしまった後…。さやかが『奇跡も魔法もある』なんて言い出した後に治ったから…」

 

偶然かもしれない。しかし、根本的な違和感がどうしても拭えない。

頭を悩ませる恭介に、悠は淡々と告げた。

 

「奇跡には、対価が必要だ」

「対価…ですか?」

「ああ。奇跡の大きさに比例して、それは大きく膨らんでいく。

生まれであれば、生き方から死ぬまでが用意された道があるかわりに、自由を手に入れるために大きな困難があるし、才能であれば、周囲の重い期待や好奇、更には嫉妬に常に晒される。

もちろん、生まれ持ったものだけには限らない。難病の治療なら、多くの犠牲の上に確立した医療技術や患者本人の忍耐が必要だし、結果を出すのなら、人生を投げ売った先人たちの知識を元手に膨大な時間をかけて洗練することが不可欠だ。

そうして付いてきた結果を、奇跡と呼ぶ」

「……っ」

 

悠の言葉に、思わず息を呑む。

違和感が少しだけ、解れた気がした。

 

「今回の奇跡も、どこかに大きな対価が発生していると見ていい。

残酷な話だが、そうでなければ『二度と動かないと判断された腕が元通り動く』なんて奇跡は絶対に起きない」

「……やっぱり、さやか…ですか…?」

 

思い浮かぶのは、何かを決心したかのような表情の幼馴染。

自分が払うはずだった対価を、彼女が肩代わりしたのではないか。

決して否定できない可能性が頭をぐるぐると巡る。

馬鹿らしい。ただ一言、そう言ってくれ。

恭介のそんな懇願は、悠の肯定によって否定された。

 

「…可能性はあるだろうな。どんな要因であれ、彼女の言動からして奇跡に関係していると見ていいだろう」

 

やはり、という納得と、なんで、という疑問がぐちゃぐちゃに混ざり、表情がこわばる。

方法はわからない。ただ、どこかで読んだ本のように、願いを叶える代わりに魂を、などと宣う悪魔と契約でもしたのではないか。

そんな現実味が著しく欠落した事象でさえもが否定できなかった。

 

「………その、対価ってなんでしょう?」

「そこまではわからない。ただ、君の腕の障害は誰かの人生を捧げ、君が耐えなければならないものだったことは確かだ」

 

恭介は自嘲気味に笑みを浮かべた。

 

「……僕は、逃げてしまったんですね」

「まだ間に合うさ。

まずは、君がやるべきことを考えることから始めよう」

「………はい」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……どんだけ金に困ってるんだ…?」

 

ため息を吐き、破壊されたATMを確認する刑事…堂島遼太郎。

まるで巨大な刃物を思いっきり叩きつけたような破壊の跡を、まじまじと見つめる。

ここ数ヶ月で、同じ手口の盗みが数え切れないほどに発生している。

それはまだいい。中には重機でATMを引っこ抜いて盗むなどというバカもいたのだ。壊されたくらいでは驚かない。

しかし、問題は「物理的に絶対に有り得ない破壊の跡が残っている」ということ。

鑑識からも聞いたが、「漫画に出てくるようなでかい刃物でぶった斬られなきゃこうはならない」らしい。

そんな凶器を表立って持ち歩けるほど、日本という国家は無法地帯ではない。

遼太郎は難解な事件を前に、眉間に皺を寄せた。

 

「ったく。こういう事件に詳しそうなのが甥っ子とは、我ながら情けない限りだ」

 

そう呆れ、携帯を取り出す遼太郎。

足立透の起こした奇怪な殺人事件を解決に導いたのは、甥っ子とその仲間だった。

テレビに入れる、などという正気を疑うような話だったが、あの甥っ子や自首した足立が意味のない嘘をつくわけがない。

今回のATMの破壊も、それに準ずる何かがあるのだろう。

数度のコール音の後、「もしもし」と、甥っ子…悠の声が響いた。

 

「悠。少し行き詰まってな。

お前からも意見を聞きたいんだが…」

『いいんですか?俺、部外者ですけど』

「いいんだ。俺たちみたく『常識しか見えてない人間』だと難しい事件でな」

 

バイトか何かで見滝原にいるという甥っ子の声は、元気そうだった。

そのことに安堵しながらも、遼太郎は世間話に興じることなく用件だけを伝えた。

悠も寂しさを声音に出すことはなく、少しばかり嬉しそうに言葉を返した。

 

『わかりました。直斗にも共有しますか?』

「頼む」

『じゃあ、詳しいことを教えてください』

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ハラエドノオオカミ!!」

 

風見野に展開された使い魔の結界にて。

人を襲おうとしていたグロテスクな化け物に、天からの拳が叩きつけられる。

ペルソナを駆使する婦警…里中千枝は、気絶した中年男性を庇うように、殺到する使い魔へと目を向けた。

 

「数多すぎ…!」

「あれれ?もうバテちゃった?」

「アンタに言われるの、なんか腹立つ!」

 

銃を構え、へらへらと笑う足立に、里中は苛立ち混じりに叫ぶ。

足立は向かってきた一際巨大な使い魔を前に、にやり、と笑みを浮かべた。

 

「マガツイザナギ」

 

その声とともに、イザナギに酷似した赤黒いシルエットが、逆手に持った剣を振るう。

がぁん、という音と共に叩きつけられた使い魔の顔面を踏みつけ、足立は銃を向けた。

 

「確保。…なーんてね?」

 

ぱん、と乾いた音が響く。

足元の使い魔が崩れ落ちるのを前に、愉快でたまらないのか、くっくっと喉を鳴らす。

と。仲間の仇と言わんばかりに足立に使い魔が殺到する。

しかし、足立は心底腹の立つ笑みを浮かべ、静かに告げる。

 

「お仕置きが必要だなァ?」

 

マガツイザナギが吠えると共に、赤黒い光の奔流が使い魔を飲み込む。

軈て、それらが全て消え去り、結界が崩壊していく。

足立はそれを前に、疲れ切った表情を浮かべ、ポキポキと肩を鳴らした。

 

「あー、痛っ。僕もう三十路なんだから、あんまりコキ使わないでよ。

あちこちガタ来てんだからさ」

「ガタガタ言わない!

堂島さんはまだバリバリ働いてんだから!」

「堂島さんもここにいるんだっけ?

鉢合わせないようにしてよー?」

「聞きなさい!!」

「あたたたたっ!?痛い、痛いって!」

 

足立の耳を摘み、思いっきり引っ張る里中。

と。そんな2人を見下ろす影が、不愉快そうにため息を吐いた。

 

「……なんだ、あいつら?」




鹿目まどか…自称特別捜査隊でいろんな人に影響されたので、ある程度気を許した関係だと天然で毒を吐く。一番被害を受けた陽介曰く「悪意がないので余計タチが悪い」とのこと。

暁美ほむら…まどかの「全部話せ」に対し、過去の惨状とコミュ障が祟って逃げに逃げまくってる人。直斗や悠に話せばだいたいの対策取れることに気づいてない。

上条恭介…流石に察した。番長パワーで精神的成長が促されつつある。流石だ番長。抱いてくれ番長。

里中千枝…足立のお目つけ役。事あるごとに耳を引っ張る。風見野でお仕事中に、赤い魔法少女に目をつけられたことにはバッチリ気づいている。女を捨てた肉食獣、野生のカンは鈍ってない。普段は八十稲羽勤務で、堂島遼太郎にこき使われてる。悠の次くらいの頻度で菜々子ちゃんに会ってる。失恋経験アリ。

足立透…里中のお目つけを鬱陶しく思ってる傍、自身に対する言動から「あ、こいつ堂島さんの相棒枠に入りつつあるな」と後輩を見守るような目で見てる。赤い魔法少女のことを「へー。おもしれー女」的な目で見ていた。

赤い魔法少女…キャベツに目をつけられた。悪いことは言わん。関わらない方がいい。
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