鹿目まどかは自称特別捜査隊   作:鳩胸な鴨

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Switchのペルソナが楽しすぎて書くの忘れてた。


佐倉杏子

「もう、なんなのよ、この町!」

「あんまりカリカリしない方がいいよ。

ヒスに見えるから」

 

風見野のハンバーガーショップにて。

報告業務を終えた里中は、人目を憚らずに叫び、積み上がったハンバーガーの一つに大口を開けてかぶりつく。

向かい合う足立はそれに引き攣った表情を浮かべ、三十路の胃には重たいポテトをちびちびとけずっていく。

ここに来て二日。1時間に一回という高頻度で使い魔に出くわした里中たちの精神状態は、早くも限界を迎えていた。

ここにも魔法少女はいるはずなのだが、その恩恵がまるで感じられないほどに使い魔が放置されている現状。

愚痴を吐きたくなるのも無理はない。

 

「職務放棄にも程があるわ!

キャベツですら表向き仕事してたのに、ここまで出くわす!?」

「やめてよ、僕のことキャベツって言うの。

あだ名にしちゃセンスないよ?」

「アンタが起源の悪口よ。

『ロクでもない大人』って意味」

「そりゃどーも」

 

曲がりなりにも殺人犯なのだ。

ロクでもないのは自覚している。

久方ぶりに味わうジャンクな味に、「うへぇ、濃っ」と顔を顰め、指についた塩を舐めとる足立。

すっかり薄い味付けの不味い飯に舌が慣れてしまったらしい。

先日行った焼き肉も、そこまで楽しめなかったな、などと思いつつ、足立はハンバーガーの包み紙を剥がす。

 

「…で。アレ、気づいてる?」

「私、あんたの後釜よ?

気づかなきゃ怒鳴られるの知ってんでしょ」

 

言って、2人は同時に目をやる。

その先には、赤髪の少女がチラチラとこちらをみている光景があった。

 

「アレでバレてないとか思ってんの?

場数踏んでない警官でもおかしいと思うレベルで不自然なんだけど」

「声おっきい」

 

わざとらしく声を張り上げ、なんとも腹の立つ笑みを浮かべる足立。

ぴくり、と赤い髪が揺れる。どうやら向こうも気づかれたことを悟ったらしい。

少女は立ち上がり、シェイクが入った紙コップを手に、2人の座る席へと歩み寄る。

 

「余計なことしてくれたな」

 

不愉快な内心を隠そうともせず、少女が険しい表情で2人に詰め寄る。

里中の眉間に皺が寄り、咀嚼する速度が少しばかり加速する。

足立はというと、「へぇ?」と挑発的な態度で少女に問いかけた。

 

「人命救助が余計なこと、ねぇ?」

「ああ、余計なことだね。アレは果物みたいなモンだ。育ってねーモン採っても意味ねーだろ?」

「その口ぶりだと君、これまで同じ手口で何人も見殺しにしてると取っていいかな?」

「はいはいストップ。

アンタにゃ権限も義務もないでしょうが」

 

お前が言えたクチか、とは言わなかった。

互いに剣呑な態度を取る2人の間に割って入り、強引にクールダウンさせる里中。

こちらを睨め付ける少女の瞳は、かつて対峙した、何もかもを否定し、「世の中クソだな」と喚き散らす足立と似ていた。

 

「…で。お前らが例の『ペルソナ使い』ってヤツか?」

 

ぴくり、と2人の表情が動く。

ペルソナの名称を知っていると言うことは、キュゥべえと繋がった魔法少女である可能性が高い。

2人は一瞬だけ警戒を露わにしたが、即座に雰囲気を霧散させた。

 

「ま、邪悪マスコットにバレてんだもんね。知ってるか」

「…キュゥべえのことか?」

「そそ。そんな名前のやつ。私たちのリーダーにも接触してきたよ」

「ちょっと。僕、君らと敵対関係でしょ?」

「共闘戦線ってヤツ。でなきゃ、アンタなんか駆り出す真似しないし」

 

事件を追っていた側と黒幕。

我ながら面白い組み合わせなのではないか。

愛読していた漫画のような展開に浮き足立ちながらも、里中は少女に詰め寄る。

 

「で、何?ぐりー…、なんちゃらが手に入らないから文句でも言いにきた?」

「グリーフシードだ。

そっちの知識は曖昧なのか」

「違うよ。コイツの頭の出来が悪いだけ」

「ゔっ…」

 

返す言葉もなく、撃沈する里中。

一応、現役合格はできたものの、その大半が女将修行に勤しむ天城雪子や、シャドウワーカーに密偵として所属する白鐘直斗、生き字引と称される知識を有する鳴上悠の3名がかりで知識を詰め込んでギリギリ合格という体たらくだったのだ。

頭の出来を引き合いに出されては、反論できるはずもない。

落ち込む里中を複雑な表情で見やり、少女はため息をついた。

 

「釘刺しにきたんだよ。勝手にナワバリ荒らすなってな」

「そりゃあ出来ない相談だ」

 

里中が口を出す前に、足立が少女の喉元に指を向ける。

ヘラヘラと笑ってはいるが、目尻は下がっていない。むしろ、睨め付けるように吊り上がっていた。

 

「僕らはきちんと権限を与えられ、責任を背負わされたお役人なんだよ?君の個人的な事情を汲み取ったとしても、発生した責任はどう処理するわけ?

まさか、僕たちに背負わすだけ背負わせて、自分は楽々生活しますとか言うの?」

「お前らの事情なんて知らねーよ。

コレはアタシたちの領域の話だ」

「違うね。明るみに出てしまった以上、そこには事実への対応という義務と責任ってのが発生するんだ。そして、社会人ってのはそれに対してなんらかのアクションを取って結果を出さなきゃいけないの。そうしないと生きていけないの。価値がないって社会が決めちゃうの。

君、見たところ14でしょ?

社会に出たこともないクソガキにはわかんない話か?

あははははっ、あははっ、ははっ、待って、お腹痛い…!」

 

心底バカにした足立の言動に、少女のこめかみに青筋が浮かび上がる。

と。黙っていた里中が、目にも留まらぬ速度で手を伸ばし、足立の耳を摘んだ。

 

「あだだだだだっ!?」

「義務も責任もほっとんどアタシのモンでしょうが!」

「千切れる!千切れるから!!」

 

ぐうの音も出ない正論が、暴力とセットで足立の耳に襲いかかる。

里中はそのまま晴れやかな笑みを浮かべ、少女に向き直った。

 

「ごめんねー。

コイツ、社会の荒波に揉まれまくって歪みに歪んでんの」

「お、おう…」

「で、手出しするなって話だったよね。

ごめんだけどさ、コイツの言う通り、私も仕事でやってるの。

魔法少女の事情も多少はわかってるけど…、被害も原因も明確な以上、警察という組織としては見過ごせない。

そこは、わかって」

 

里中の言葉に、少女は頬を膨らませ、目線を逸らした。

 

「……それで駄々捏ねたら、アタシがガキみたいじゃん…」

「あ、ごめん!私も上司っていうか、師匠っていうか…。そういう人から『こう言っとけ』って言われてるだけだから!

まだ二十歳になったばっかだし、アタシだって子供だよ、ぜんぜん!」

 

たはは、と笑う里中に、眉を顰める少女。

彼女は「伝えたかんな」とだけいうと、踵を返した。

 

「……どうする?堂島さんに知らせる?」

「やめといた方がいいよ?ああいう手合い、大人しく捕まんないし」

「じゃ、鳴上くんは?」

「………好きにすれば?あのガキなら、悪いことにゃならんでしょ」

 

そんな会話が背に届くことはなかった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「いやぁ、楽勝楽勝!」

 

軽い足取りで街を歩くさやかを前に、疲労困憊のまどかとマミが渋い表情を浮かべる。

彫りが深い、とでも言えばいいのだろうか。

シワの一つ一つが彫刻のように深く、くっきりと出た二人は、地の底から響くような声で言葉を交わす。

 

「…なんていうか、さやかちゃんの戦い方見てるとますます『猪』って言葉が頭をよぎるんですけど…」

「私もよ…。疲れた…」

 

猪突猛進にも程がある。さやかの戦い方を言語化するならば、その一言だけで事足りるであろう。

まどかのペルソナやマミの魔法が後衛向けということもあり、前衛を担当するさやかの加入に救われた部分もある。

しかし。それをぶっちぎってマイナスにしてしまうほどに、さやかは手がかかった。

慣れていないのだから仕方ない。そう納得してはいるものの、今のさやかはあからさまに浮かれてる。

命懸けの戦いという認識が薄いのか、それとも使命感に酔っているのか、はたまた別の理由か。

あまりにも自分と周りを顧みない行動に何度説得を試みようと、「わかってますって」の一言で片付けられてしまう。

二人が辟易するのも無理なかった。

 

「まぁ、連携を取ろうって言っても、そんないきなりは無理よね…」

「悠さんがいたら楽だったんですが…」

 

そもそもの前提として、まどかは連携どころか、司令塔としての経験がない。

マミは多少なりともあるが、魔法少女は基本的に徒党を組まない。

二人ならばまだちらほらと見る程度にはいるが、三人以上のグループはまず見ない。

見たとしても、なんらかの利害関係の一致か、それとも暴力と恐怖による支配かの二択である。

魔法少女という名前の割には、夢も希望もない。

違う意味で女児号泣待ったなしである。

 

「二人とも、どうしたの?まだパトロール続けるんでしょ?」

 

さやかが笑顔で振り向くのに対し、二人は力無く頷く。

願わくば、魔女が現れませんように。

人類に試練を与えてばかりの神々に祈っても仕方がないのはわかっていたが、祈らずにはいられなかった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『もう大変だったんですよ!?』

「あー…。なんていうか、ごめん」

 

その後。別行動をしていた悠の携帯から、まどかの愚痴が響く。

その声は隣にいる直斗の耳にも届いており、彼女の眉間には少しばかり皺が寄っていた。

 

「…やはりというべきか、浮かれているな。

力を手に入れた経緯が俺たちとは違う。

だからこそ警戒していたんだが…」

「……おそらく、キュゥべえはそう言った『感情の制御ができない少女』を狙って契約を迫っているのでしょう。

美樹さやかが甘言に踊らされたのは、キュゥべえが彼女の事情を十まで把握していたのが大きいかと」

 

その真意は、未だわからない。

敵の全貌が見えない状況を歯痒く思いながらも、悠は携帯の向こう側にいるまどかに神妙な声音で迫る。

 

「まどか。ソウルジェムの調査を任せてもいいか?」

『ソウルジェムの?

もうだいたいの秘密はわかったと思うんだけど、これ以上何を調べるの?』

「『死んだはずの巴が、ソウルジェムを握っただけで息を吹き返した』だろ?あれが引っ掛かってな。今から言うことを巴に協力してもらって試してほしい」

 

憶測だが、ソウルジェムにはまだ悍ましい事実が隠れているはずだ。

出来ることならば当たってほしくないが、そこにある真実は変わらない。

そこから目を背ける弱さは乗り越えた。

悠は覚悟を決めて、告げた。

 

「巴のソウルジェムを持って、出来るだけ巴から離れてほしい。

巴に異変があれば、すぐに手元に戻してくれ。美樹に気づかれないように…、そうだな。暁美に協力を頼め」

『なんでさやかちゃんには内緒なの?』

 

まどかの疑問に、悠の眉間の皺が深くなる。

硬貨を挟めるほど、と言えば、その表情の険しさが伝わるだろう。

悠は伝達力をフル稼働して必死に語彙を振り絞り、申し訳なさそうに告げた。

 

「今の美樹は『調子に乗ったクマ』だと思え。それも、自分についてこれっぽっちも考えてないタチの悪いバージョンだ」

『…そこまで行く?』

「今の美樹はそれくらい不安定だ。

俺の憶測が当たれば、たぶん潰れる。

自分の正体とかが無意識に気になった時期のクマに真実を告げたらどうなるか…。

想像、つくだろ?」

『……それは、うん。ヤバい』

 

すん、とまどかの表情が消えた気がした。

悠は「じゃ、頼んだぞ」と通話を切り、携帯を懐にしまう。

ふと見上げると、鮮やかなオレンジ色に染まっているのが見える。

夕焼け空に焦がされるように、黒く影を落とす廃墟を前に、直斗はため息を吐いた。

 

「なんで魔女事件を追って、ATM破壊の犯人を抑える事になったんですかね…」

「関係者だからだろ。…っと、来たか」

 

ざっ、ざっ、と音を立て、一人の少女が木々の間から姿を現す。

作り物のように淡麗な顔立ち。

長いコートに身を包み、長く伸びる髪を結んだその容貌には、見覚えがあった。

 

「お待たせー。ちぃと調整に時間かかってもぉたけど、遅刻はしてへんよな?」

 

その名は「対シャドウ特別制圧兵装五式ラビリス」。かつてゴールデンウィークに起きた騒動の中心にいた、機械の乙女。

現在はシャドウワーカーにて勤務しており、魔女事件の発覚によって多忙を極めている一人でもある。

 

「いや。時間通りだ」

 

悠が言うや否や、目線を背後に向ける。

そこには、呆然とこちらを見つめる赤い髪の少女が立っていた。

 

「佐倉杏子さんですね。

魔女事件の重要参考人、及び風見野市におけるATMの破壊による連続盗難事件の容疑者として、我々に同行してもらいます」

「………は?」




そーじろー出そうかな。杏子と親戚設定イケそうだと思う。
5の小説も書きたいなーと思ったけど、創作意欲を抑えて仕上げてやったぜ。…ん?これ、抑えていいものなのか?
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