伊達男の貞ちゃんと一途な不動くんに口説かれて困ってます。   作:yuki_leno

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第1話

■近侍当番争奪戦■

 

 

 近侍を当番制にしたのは、この本丸にいるどの刀たちとも、平等に接する時間を持とうと決めていたから。

特に新しく顕現した刀剣男士については、性格や趣味嗜好、刀関係(人間関係ね)とか、まだまだ知らない部分が多いし、会話のきっかけを作るには、傍に控えてもらうことが一番だと思う。

 それに、『予定表』を組んでおけば毎日近侍を選ぶのに迷う必要ないし、贔屓目も入らない。刀剣男士も、それぞれの内番や任務に専念しやすいはず。

(さてと、今日の任務を確認しよう)

 自室の襖を開け放つと、庭先から穏やかな木漏れ日が差し込んできて、本日も良い洗濯日和だった。

そろそろ今朝の近侍当番が部屋に挨拶に来る頃なので、身支度を整えて、布団も押入れに戻しておく。

長谷部には「主の布団とお召し物を畳む仕事は、この長谷部にお任せを」と、言われたけど、そこまでしてもらうのは気が引けてしまう。

さすがに下着類は自分でこっそり洗っているから見られる心配は無いとはいえ、刀剣男士は(仮にも)男性だ。

恋愛経験も男性経験も浅い私からすれば、彼らと共同生活をするのだって正直大変だったりするわけで……身につけるものに触られるのは、まだちょっと抵抗がある。

審神者としての使命をこなすためにも、自分の刀を意識するのは避けたい気持ちが強かった。

 

 

「主!」

「主、失礼するよ…!」

 

 午前七時三十分。

廊下をばたばたと駆けてくる音が聴こえてきて、僅か数秒。

自室の襖が威勢よく開かれたかと思ったら、貞ちゃんと不動君が血相を変えて部屋に飛び込んできた。

リアルに「ズバンッ!!」という音を立てて襖が押し開けられたので、障子紙が破けたり、框が歪んでいないか心配だ。

幣本丸は、政府からの指令・「悲報の里(※誤字じゃない)を探索して玉を10万個集めなさい」任務の後遺症で小判が足りないし、建物が壊れても修理費なんて払えない。

「ど、どうしたの? そんなに慌てて」

とりあえず、二人の気迫が尋常じゃなくて……怖い。

思わずその場から後ずさりすると、競歩のスピードで近づいてきた貞ちゃんに両肩を拘束され、その隙に不動君に背後に回りこまれて、あっという間に退路を絶たれていた。

「「主!」」

「は……い?」

――これが噂の、前門の貞ちゃん・後門の不動君。

織田と伊達の短刀に挟まれて、サンドイッチにされている。いや、もしかしてサンドバック? なんで朝からそんなに殺気立っているんだろう。さっぱり分からない。

「今日の近侍は、行ちゃんじゃなくて俺だよな?」

「いや、ここまで織田の刀で来てるんだから、順当にいけば俺だ。そうだよね、主?」

「近侍? それなら近侍当番表に書……」

「「書いてない!!」」

「……っ?」

――書いてあるよね? そう言おうと思ったら、やや食い気味に全力否定された。二人して怒鳴らなくても……。前後から美少年に怒られる経験なんて早々ないからある意味貴重だけど、こんなドキドキなら遠慮したいかな。

「ほら、よく見ろよ」

貞ちゃんが眉毛を逆八の字に曲げた不機嫌顔で、ジャケットのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出し、広げて見せた。

「やっべー。入れっぱなしにしてたから、ちと破けちまったみてぇだな」

あ、良く見たら、近侍当番表だ。ちり紙かと思った。というか、[[rb:近侍当番表 > それ]]持ち歩いてるんだね、貞ちゃん。

「そんな屑紙みたいな状態で分かるか! 主、俺のを見て」

 すると、今度は不動君が上着のポケットから何かを取り出した。あの紫の布、ハンカチかな? 手ぬぐい? それが丁寧に折りたたまれていて、包みの中から三つ折りにされた近侍当番表が出てきた。だから、どうしてこの二人、当番表を持ち歩いているんだろう。

「不動君、そんなに厳重にしなくていいよ。ただの紙なんだから」

「主から預かった大切な物を、いい加減に扱うことはできないよ」

「う…っ」

まさか、そんなぺらぺらした半紙の切れ端みたいなやつを大事にされてるとは思わなかった。わー、罪悪感。いっそ高級色紙とかで作ってあげれば良かった。

 気を取り直して不動君に差し出された当番表を確認すると、確かに「本日の近侍」部分が空欄になっている。完全に私のミスだ。

「主、まだ近侍決まってねぇんなら、俺でもいいだろ?」

「だから、順番からすると俺なんだよ。太鼓鐘は、燭台切の後だろう」

「みっちゃんはいーんだよ。順番なんて気にしてねぇから。行ちゃんは細かいこと気にしすぎじゃねーの?」

 二人がそこまで当番にむきになる理由はわからないけど、こうなってしまったのは私が原因みたいだ。もうすぐ朝餉の時間が来てしまうし、早めに決めないといけない。

「ごめんね、二人とも。近侍なんだけど」

「「俺!?」」

「……まだ何も言ってないでしょ」

揃いも揃って、私の台詞にシンクロ被りするのはやめてほしい。それに、逃げないようにする為か知らないけど、前と後ろに(私を挟んで)立つのも止めてください。

……ああ、過去の私よ。なぜ、今日を空欄にしてしまったの。我ながら面倒な失敗をしでかしたものだ。……かといって、二人の内どちらも選ばなかったとしたら、もっと面倒なことになりそうだし。

「それなら、午前中は不動君が近侍をやって、午後からは貞ちゃんでどうかな?」

 一方を蔑ろにはできなから、時間帯で区切ることを提案してみる。すると、貞ちゃんがあからさまに不服そうに「ちぇっ」と舌打ちし、不動君が分かりやすく消沈して呟いた。

「午前中なんて、あと数時間しかないじゃないか」

「うーん。確かに不動君のほうが短くなっちゃうか。それじゃあ、午後二時ごろまでにしよう?」

不動君本人に自覚はないかもしれないけれど、そんなに憂いを帯びた眼差しを向けるのは反則です。良心が痛んで堪えられなかった。

「ちょっと待てよ、主。行ちゃんを長くしたら、その分俺が短くなるだろ?」

「たった二時間くらいだから、我慢してよ」

 不動君のご機嫌を取れば、貞ちゃんがむすくれる。あちらを立てればこちらが立たず。

それにしても、貞ちゃんは普段あまり人を困らせるようなワガママは言わないのに、今日はやけに不動君に突っかかってる気がする。別に仲が悪い印象はないのに、近侍にこだわりがあるのかな? そんなに大層な仕事でもないのに。

「じゃあ、夕方も俺でいいよな? 午後に含まれてるもんな! なんなら夜まで付き合ってやっても……」

「なっ、太鼓鐘! 抜け駆けはするなとあれほど――」

「ちょっと、二人ともやめて」

 この分だと、「翌朝まで近侍をやる」と言い出しそうだ。

慌てて割って入ると、取っ組み合い中の二人に生気のこもらないジト目で睨まれてしまった。なに、その不満そうな態度。貞ちゃんと不動君は、何が楽しくてそこまで近侍をやりたいの?

正直、夕方には遠征部隊を出迎えてあげたいし、溜まった雑用を片付けたい。夜は夜でゆっくりお風呂に入りたいと思うし、付喪神とはいえ男性に四六時中見張られると、落ち着かない。

でも、ここまで熱心に仕事をしたがっているところを見ると、断るのも悪い気がする。というか、もう言う事を聞かせるのが面倒になってきてしまった。

「分かった。夕方は忙しいから、ご飯のあとに部屋においでよ。夜なら少し時間あるから」

そんなにタダ働きしたいなら、溜まりまくった書類を綴じるのを手伝ってもらおう。三人でやれば、事務仕事も早く片付く。

半ば投げやりに答えると、貞ちゃんが「は!?」と裏返った声を上げて硬直し、不動君が目を見開いたまま、その場に尻餅をついた。二人して真っ赤なしかめっ面で、私の顔を凝視している。

 何事かとぽかんとしていたら、貞ちゃんに大きな溜息を吐かれた。

「……主。そりゃ俺も、おふざけが過ぎたと思うけどさ。冗談だってわかんだろ、普通。んな簡単に、おなごが男を寝所に招き入れるもんじゃねぇぜ」

「はい?」

「自分をもっと、大切にしろってこと」

今現在、淑女のマナーを男子の貞ちゃんに真剣な表情で説かれているわけですが。あの、言ってることは真っ当ですし、最もだと思うけど……なにゆえ私は、お説教される羽目になっているのでしょうか。

「寝所に招き入れる、とか大げさじゃない? 今だって、私の部屋に勝手に入って来てるのに」

「日中はいーんだよ」

「はあ…」

 とはいえ、貞ちゃんと不動君を招きいれるのは色気の欠片もない書類整理をするためだから、全く問題なし。

うっ、なんか……それって女としてはどうなの? 自分で言ってて、ちょっぴり虚しくなってきた。

「太鼓鐘の冗談は度が過ぎる。主を困らせないでくれないか」

「行ちゃんだって、喜んでたくせにさ。……動揺しすぎじゃねぇ?」

「なっ……そ、そんなわけないだろう! お前と一緒にするな!」

 そうこうしている内に、また貞ちゃんと不動君の間の雲行きが怪しくなって来た。

不動君がお尻をはたいて立ち上がると、貞ちゃんが挑発的な目つきで詰め寄っていく。

額と額がくっつくかくっつかないかの至近距離でメンチ切ってるけど、よくおでこコッツンしないね。器用だなあ。

 

とにかく、午前中は不動君。午後からは貞ちゃん。夜は二人まとめて近侍を任せればいいという結論に至った(私が勝手に決めた)。

そもそも近侍は、『長谷部命名:主お世話係』だったはずなんですけど。これじゃ私が、二人のお世話をしているみたいになっているような……ううん、これ以上考えるのは止めよう。

 

 こうして私は、長い長い今日一日に思い馳せることを、早々に放棄してしまったのでした。

 

 

■酔いどれ狼■

 

「主、庭の掃き掃除終わったよ」

「ありがとう」

 自ら近侍をやりたいと言っただけあって、不動君はてきぱきと雑用をこなしていった。庭の掃き掃除に、縁側の吹き掃除、私の部屋の雑巾がけまでしてもらっては、流石に頭が上がらない。

結局、昼食の休憩以外はほぼすべて『不動行光の本丸お掃除タイム』だった。貞ちゃんと近侍交代の時間まで、あと二時間を切っている。

いくら本人が働きたいと言っても、そろそろ休ませてあげないと可哀想。不動君が健気すぎて、私の胸は張り裂けそうだ。

縁側に出た私は、不動君に向かってちょいと手招きした。

「何、主?」

振り返り様に、艶やかな長髪がふわりと風になびく。

普段はなるべく刀剣男士を意識しないようにしてるけど、ふと見惚れてしまう瞬間は、やっぱりあるわけで……。

首筋の汗を拭う時の精悍な横顔や、前髪に透ける瞳の綺麗さに、悔しいけれどドキッとさせられてしまった。

「他に手伝うことある?」

だって、あんなに爽やかな笑顔を浮かべて、好青年が駆け寄ってくるんだよ? 審神者だって女を捨てたわけじゃないんだから、見惚れるくらいは許してくれるよね。……ああ、額に光る汗が眩しい。長時間ぶっ通しで労働をさせてしまって、罪悪感に押しつぶされそう。明日から暫く、不動君の内番スケジュールはなしにしてあげよう。

「もう働かなくていいよ。お疲れ様、不動君。……飲まない?」

「えっ」

 私が用意しておいたのは、御勝手に隠しておいた甘酒の瓶だった。最近の不動君は自ら禁酒しているので、これは私がこっそり買っておいたもの。金欠で三本しか買えなかったけど、今日のご褒美に丁度いいよね。

「俺の酒癖の悪さ、主も知ってるよね。迷惑はかけられないよ」

不動君は、並んだ甘酒の瓶を見て苦笑いを浮かべている。意外と頑固な性格だから、素直に頷いてくれないのは承知の上。

「私も一緒に飲むから。私が一本で、不動君が二本ね」

「主も?」

「そう。ほら、意外と私のほうが酔うかもしれないでしょ。二人で酔っ払いなら、迷惑とか関係ないよ」

ここまで押せば、不動君も誘いに乗りやすいはず。

正直、私は甘酒一瓶で酔える気がしないけど。実際のところ、甘酒に含まれているアルコール分は(一般的に)1パーセント以下だから、清涼飲料水に分類されるみたいだし。そんなに少ないアルコール量であれだけ豪快に酔っ払える不動君は、よほどお酒に弱い体質なのかもしれない。

まあ、酔ったら酔ったで私が傍についているし、介抱してあげればいいからね。

不動君は私の顔をちらりと見て――それから、甘酒の瓶に視線を移した。

「俺はともかくさ」

「?」

「主が酔ってるところなら、ちょっと見てみたいかな。……きっと可愛いんだろうね」

「……っ?」

――不意打ちで殺し文句きた! 主の生存が削られた! 

そうだった。不動君はナチュラルに気障な台詞を言っちゃう子だった。油断してたら色恋に疎い私など、あっと言う間に重傷になる。

それは、私だって審神者のお役目が与えられる前は、いつか平凡な恋をして結婚して……なんて想像をしたこともあった。

今は使命が最優先でも、女性扱いされているのは素直に嬉しいと思う。

「主が一緒ならいいか。いただくよ」

 不動君は床に置かれた甘酒瓶を手にすると、慣れた手つきで蓋を開けた。

瓶の縁を指先で掴む癖とか、口元を手の甲で拭う仕草とか。当たり前だけど、改めて異性だなと感じる。

傍らの男子を肴に甘酒を啜っていると、私の視線に気づいた不動君がこちらを向いて微笑んだ。

「ああ、そういえばさ…。さっき”酒に酔ったら可愛いだろう”なんて言っちゃったけど、主はそのままでも十分可愛いからね」

「……っ、ごほっ!」

――瓶に口をつけた瞬間に、特大級の爆弾を放り込まないで! しかも時間差攻撃で!

「主、大丈夫!?」

「へ……平気……」

危なかった……。不動君の前で甘酒リバースしてたら、一週間は立ち直れないじゃない。

口元に垂れた甘酒を拭こうとハンカチを探していたら、不動君にサッとてぬぐいを差し出されてしまった。

さっき使ってたのと色が違うから、予備なんだと思う。ハンカチを二枚持ちなんて、自分との女子力の差に傷口が二重に抉られる。

「不動君のが汚れちゃうよ。私は自分のがあるから」

「構わないよ、俺のなんてまた洗えばいい」

「そういう問題じゃ」

みっともないところを見られて恥ずかしい上、不動君の私物まで借りるなんてダメ主丸出し。

意地を張って断ろうとしたら、身を乗り出してきた不動君にそっと肩をつかまれた。

至近距離から熱っぽい目で見つめられて、鼓動がどくんと跳ね上がる。

――これって、酔ってる? 不動君、酔ってるの?? 

赤みを帯びた目元と対照的に、真っ直ぐな眼光に射抜かれて動けなくなった。

「な、……なに……?」

「じっとしてて。すぐ終わるから」

てぬぐいで拭われると思った私は条件反射で瞼を閉じてしまったけれど、乾いた布の感触はいつまで経ってもやってこない。

その代わり、柔らかくてあたたかいものが、一瞬だけ私の唇に触れて離れていった。

羽か花びらが肌を撫でてゆくような、小さくて軽い接触。

「不動君、なにかした?」

「っ、なんでもない。……ほら、綺麗になったよ」

不動君は自分の口元を袖口で押えると、慌てて私から離れていった。

私の膝と彼の膝の間に、はらりと一枚のてぬぐいが落ちる。

 

「……無防備なんだから……参るよなぁ」

 

不動君にそっぽを向かれてしまった私は、暫く自分に何が起こったのか気づけなかった。

でも、彼が半分減った甘酒の瓶を床に置いて、「ごちそうさま」と呟いたとき、初めてその意味を知った。

 

「主。言っとくけど俺、酔ってないからね」

「!」

「男として意識されてないことは分かってる。ただ、刀にも心があるってこと、忘れないで。もう少し……警戒してよ」

 

 不動君の白い肌が、耳朶から項まで真っ赤に染まっている。それが酔いのせいではないとしたら、私のほうが動揺してしまいそう。

――男として意識していない、なんて嘘。

不動君の「警戒して」という忠告に、痛いところを突かれたと思った。刀剣男士にだって心がある。自分の気持ちはともかく、彼等の気持ちがどこを向いているのか。私は主として、もっと考えてあげなければいけないのかもしれない。

 体育座りの膝の上に顔を埋めた不動君は、それきり甘酒の瓶に触れることはなかった。

そろそろ、近侍交代の時間がきてしまう。

「えっと、じゃあ、私これ片付けてくるね……」

私は縁側を立ち上がり、余った瓶をお盆の上に載せる。

内心は不動君を意識しすぎて心臓が煩いけど、変に態度に出してしまったら、『刀と主』の関係が狂ってしまう。

そうでなくてもあの不意打ちキスは、私を悶え苦しませるのに十分すぎるって言うのに。

 

「せっかく用意してくれたのに、ごめん。だけど、俺に残ってる主の感触、酒で消したくないんだ」

「……っ」

 

……って、意識しないようにと思った側から、張本人からのダメ押しボディブロー! 「感触」とか言わないで、思い出しちゃうから!

私は手にしたお盆を、手から取り落としそうになった。だめ。これ以上濃厚な口説き文句を聞いたら、私の理性と審神者としてのなけなしのプライドが、真っ二つに折れる!

逃げるのは卑怯、と自分を罵りながら縁側を去ろうとした時、相変わらず顔を上げてくれない不動君に、浴衣の袂をつかまれていた。

「……行くな」

「でも」

「お願いだからさぁ…。あと少しだけ、俺だけの主でいてくれよぉ」

「不動君」

 不動君は、さっき「酔っていない」と自分で宣言した。

それなのに悪酔いした時みたいなフリをするのは、私を引き止める為の[[rb:演技 > おしばい]]だと思う。

不器用な甘え方が可愛らしくて、胸がちくりと痛い。とても不動君を拒絶する気持ちになんてなれない。

手にしていたお盆を置いて、さっきと同じように彼の隣に黙って腰を下ろす。かすかに触れ合った肩口から、あたたかい温もりが伝わってきた。

すると、袂から離れた不動君の掌が私の手元へ移動して、手の甲を包み込むようにぎゅっと握りしめてくる。

指の付け根に骨ばった不動君の指が滑り込んできたと思ったら、あっと言う間に貝殻つなぎ状態に持ち込まれてしまった。

ここまで密着度の高い繋ぎ方はしたことがない。恋人同士の特権を、付喪神とする日が来るなんて思わなかった。

「主が刀のいう事、そんな簡単に聞いていいのかぁ? ……このまま俺が手を離さなかったら、どうするつもり?」

不動君のズルイところは、私が本気で「離せ」って言わないと知っていて、確認しようとするところだ。私に拒絶されないか、確かめようとしている。子供が親の愛情をねだるみたいに。

”不動行光”が誰より”主”に愛されたがっていると知っているから、私にはこの手を離すことができない。

「じゃあ、『離して』って言ったら離すの? 手を離しなさい、不動」

「やーだね~っと!」

「不動君!」

「……ははっ」

やっと顔を上げてくれたと思ったら、不動君は頬を染めて照れくさそうに微笑んでいた。

この無敵の笑顔を前にしたら、全審神者が白旗を挙げるしかない。

不動君はしばらく愉快そうだったけど、すぐにくしゃっと顔を歪めて呟いた。

「主は刀に甘いよな。信長様も蘭丸もいなくなってさ……。俺なんかを愛してくれる主は、もう現れないって思ってた」

「そんなことないよ。私は、不動君が大切だもの。そりゃ、不動君の前の主みたいに威厳のある振舞いはムリだし、権力だってないけど……」

――不動君は酔うとネガティブになる癖があるから、多少不穏なことを言われるのは慣れてるつもり。

でも、修行前のやさぐれた様子を知っている身としては、弱音を吐かれると心配な気持ちになるわけで。

というか不動君、本当は酔いが回ってたりする? 

疑いの気持ちを抱きつつ、不動君の顔を窺おうと身を屈めると。

「ひゃあっ?」

不動君は、繋いだ私の手を自分の胸に引き寄せて、反対の腕で私の背中を抱きしめてきた。

「ふ、不動君、なに?」

「今、俺の顔覗こうとした? 言ったよね、酔ってないって」

「知ってるけど……。不動君が悲しいこと言うから、心配になったんでしょ」

「違うよ。俺を愛してくれる主はもう現れないと思ってたのに、今の俺には貴方がいてくれて幸せだな……って言いたかったんだ」

 抱き寄せられた胸に顔を埋めて、私の体は石像のごとく硬直した。

自慢じゃないけど、これまで恋愛に縁のなかった私にとって、これは明らかにキャパオーバーの供給。胸が詰まって、息が出来なくなりそう。…って、不動君に密着しすぎて、鼻と口がつぶれてるだけ?? 

なんとか顔を捩って持ち上げると、見上げた先に不動君の澄んだアメジストの瞳があった。

視線が重なった瞬間、背中に添えられた不動君の手の平が私の後頭部へ移動し、髪の間を梳きながら撫でられた。頭ぽんぽん耐性ゼロの私を、致死量のときめきが襲う。

「ま、待ってください……! じゃなくて、やめなさい!」

これ以上は堪えられない。勘弁してくださいとばかりに焦っていると、不動君の嬉しそうな声が私の耳元にこぼれた。

「ははっ……まったくもう。可愛いな、主は。そんな顔が見られるなら、酒を控えた甲斐はあったよ」

「どういう意味…?」

「主に正攻法が効くとは思えないからね。酔わせれば、少しは付け入る隙もあるかなって」

 じゃあ、不動君は始めから、飲む気がなかったってこと? 確かに、一瓶の半分くらいしか量は減ってなかった。自分は酔わないようにセーブして、私が酔っぱらうのを待ってたの?

「本音を言えば、酒よりも俺に酔ってもらえるほうが、嬉しいけどね……」

耳元を擽る吐息に、思わず肩が跳ね上がりそうになる。

まって、まってまずい。やばい。むり、どうしよう。極限状態で語彙力も消失してる。

これはもしかしなくても、不動君は本気で、私を口説き落とそうとしているのでは。

そういえば、彼は以前言っていた。「こう見えてン百年生きてんだー」、と。その発言が、今頃になってじわじわ重みを増していく。少年の姿をしていても、中身が百戦錬磨の手練れだったら、どう対処すればいいの。その可能性は考えたことがなかった。

 

「……今一度、口づけを受け入れて下さい。”俺の”主」

 

この後の展開は文字通りなのに、それでも不動君を突き飛ばせない私は、完全に術中にはまっている。

彼が忠義の下に隠したカオに、どうして今まで気がつかなかったんだろう。

 

素面の不動行光は、私を酔わせる狼だ。

罠にはめられた獲物は、唇に噛みつかれる瞬間を待ちながら、瞼を閉じるしかできなかった。

 

 

■俺の女に■

 

 午後二時十五分。

まだ頬の赤みと火照りが引かないまま、貞ちゃんと万屋に行く時間を迎えてしまった。

ついでに市でも冷かしてこようぜ! と誘われたけど、不動君にあんなことをされた後で貞ちゃんに――というか、誰かに顔を見せるのは恥ずかしくてのた打ち回りそう。

でも、今日の近侍当番を時間で区切ったのは他ならぬ私自身で、こうなったのも自業自得。約束を果さないわけにはいかないよね。

「あーるじ! 支度できたか?」

時間ピッタリ。襖の向こうから、元気な貞ちゃんの声が聴こえてきた。

私はもう一度姿見の前に立ち、着物の帯と髪型を確認する。簪も挿したし、巾着の中には財布とハンカチ、ちり紙も入れた、大丈夫。

「どうぞ」

貞ちゃんに返事を返すと、律儀に「入るぜ」の確認の後に襖が開いた。こういうところも紳士だなあと思う。

「おっ、その着物、この間のやつだな? 主によく似合ってるぜ」

「ありがとう」

 正直、普段の格好をしていても、貞ちゃんのほうが華やかで人目を惹く外見をしてると思うけど……新しい着物を褒めてもらえると、素直に嬉しい。

艶やかな花車柄のこの着物は、先日の私の誕生日、本丸のみんなからプレゼントされたもの。衣装負けしそうだし、外出には派手かなと気が引けていたけど、せっかくの心がこもった贈り物。何かの折に着ようと思っていたから、叶ってよかった。

「へぇ~……」

「どうしたの?」

貞ちゃんは、興味深そうに私を頭からつま先まで観察した後、ぱっと満面の笑みを浮かべた。

「こうして改めてみると、どっかのお姫さんみたいだよなぁと思ってさ!」

「そ、それはさすがに大げさだよ」

屈託がないと言うか、サッパリしていると言うか。物言いがストレートだから気持ちがいいけど、貞ちゃんの美辞麗句をぜんぶまともに受けていたら、こっちの身がもたない。引っ込みかけた熱が戻ってきそうで、私は慌てて頬を手で押えた。

「ん? 主、ほっぺた赤くねぇか?」

そして案の定、貞ちゃんに秒で見破られる。

俯いた顔を下から覗き込まれて、怪訝そうな表情をされてしまった。不動君との事を話すわけにはいかないし、変な心配をかけたくもない。ここは上手く誤魔化そう。

「久しぶりに綺麗な着物を着たから、ちょっと気が昂ぶってるみたいで」

――いろんな意味で動悸が激しいのは、嘘じゃないものね。

「まさかとは思うけど。行ちゃんに、なんかされただろ?」

「えっ? は!? あっ? さ、されてナイデスケド!」

……ってああ! あまりに的を射た質問過ぎて、動揺がそのままモロに出ちゃった! 終わった。今のは我ながら怪しすぎる。

慌てて取り繕おうとしている内に、貞ちゃんがあからさまに肩を落として、大きな溜息を吐いた。

「いや、マジで分かりやす過ぎるぜ」

「あ、あのね、違うの、これは――」

 言い訳を考えようと唇を開いた時、ふと思い至る。

これじゃあまるで、「やましいことをしました」と認めているみたいになってしまう。

不動君とあんな感じになったのだって、元はといえば雰囲気に流されてしまったせいだ。不動君にも貞ちゃんにも、何一つ落ち度がない。誤魔化そうとするなんて、どっちに対しても失礼で最低なこと。……そう考えたら、余計に言葉が浮かばなくなってしまった。

貞ちゃんは難しい表情で考え込んでいたけれど、やがて私の正面に立ち、そっと手の甲に触れてきた。

「貞ちゃん?」

琥珀色の大きな瞳に、目線で束縛されているような気がする。私はつかまれた手を振りほどくことも忘れていた。

「あのさ。俺は行ちゃんが”共同戦線張ろう”って言い出したから、それを守ってやっただけなんだぜ」

「?」

「んで、行ちゃんのほうから約束を破るってーなら、俺も俺で、本気を出していいってことだな」

「……はい?」

共同戦線。約束。本気。私が意味を量りかねている間に、貞ちゃんの中では自己完結していたようだ。

「つーわけで、ほら! 行こうぜ!」

「わっ」

握られた手の平が、力強く引っ張られる。絡まった指と指の間に滑り込む貞ちゃんの長い指先は、やっぱり男の子のそれだった。

身長差はほとんどないのに、手の平は私より一回り大きい。

少し高めの体温にほっとするけれど、どこか後ろ暗い気持ちは消えてくれない。

「貞ちゃん。手、引っ張らなくても歩けるよ」

他の刀たちの目もあるし、本丸内で手を繋ぎ合っているのも恥ずかしい。

それに、粟田口の年少組と手を繋ぐことはあっても、貞ちゃんや不動君、薬研君辺りになると、短刀でも子供扱いは微妙な気がしてしまう。

すると、貞ちゃんが足を止め、真剣な表情でこちらを振り返った。

「主。逢引ってーのは、こうやって手を繋ぐもんなんだぜ?」

「……!」

それじゃあ、貞ちゃんが近侍になりたがっていたのは、私とデートするため?

驚いて返す言葉に詰まっていると、貞ちゃんは唇を吊り上げて不敵に笑った。

「見せつけてやってんだろ。――絶対、離さねぇからな」

 

 

 自分で「逢引」と宣言しただけあって、貞ちゃんのエスコートは完璧だった。

大通りを歩く時も、私が人にぶつかったり転んだりしないよう、さり気なく庇ってくれるし。出店を見て回る時だって、いつも何かしら会話のネタを振ってくれて、退屈を感じる暇がない。

自分が行きたい場所だけじゃなくて、「歩き疲れてないか?」とか、「見たい物はないか?」とか、私の要望を優先してくれる気遣いに対しても、文句のつけようがなかった。

成り行きとはいえ、こんなに居心地の良いデートを経験させてもらえただけで、私は幸せ者だと思う。

 

 ――だけど、空が橙色に染まり始め、最後に万屋によって帰るだけという時になって、”それ”が起こった。

 

 

 

(貞ちゃん、まだかな)

大通りを挟んだ甘味処の店先で行交う人波を見つめつつ、私は貞ちゃんの戻りを待っていた。

いくら刀が主の傍に仕えるものとはいえ、さすがに厠休憩は別々に取るしかない。別れたのは10分くらい前だから、そろそろ姿が見えてもおかしくないかな。

きょろきょろと周囲を見渡していると、不意に後ろからぽんと肩を叩かれた。

貞ちゃんかな、と思って振り返ってみると、

「お嬢さん、一人?」

背後には、見覚えのない男性が立っていた。たぶん年齢的に、私より二つか三つくらい年上だと思う。着流しの着物の前を大胆に開いて肌を覗かせる、ちょっと軽薄そうな雰囲気の人だ。

政府の役人にしても同じ審神者関係にしても、一度会った事があれば覚えているだろうし、初めて会う人で間違いないはず。

「いいえ。連れを待っているんですが」

「良かったらサァ、これから一杯どう?」

「ですから、私は人を待っているので」

変な人に絡まれたことを呪っていると、貞ちゃんの「お姫さんみたい」という言葉が脳裏を過ぎった。

さっきまで人目を気にせず楽しく町を歩けていたのは、貞ちゃんが私を守っていてくれたから。自分で自覚はなかったけれど、この着物姿はかなり目立っているのかもしれない。

「ほらほら……ちょっとだけ、なァ」

あからさまに拒絶しているのに、その人は全然引き下がる気配がない。それどころか、強引に私の手首を握りしめてきた。

「やめて……っ」

「いいから、大人しく来いって言ってるだろ!」

鋭い激痛が走り、頭の中が一瞬真っ赤になる。必死に踏ん張って抵抗したけれど、腕力では男性に勝てない。

「貞ちゃん――……!」

非力な私に残された術は、自分の刀を呼ぶことだけだった。

なす術なく引きずられ、「もうダメだ」と思った時、手首を締め上げていた拘束が忽然と消えた。

(え?)

「おい、てめぇ。舐めたマネしてんじゃねぇよ」

 驚いて顔を上げると、私と男性の間に見慣れた蒼マントの後ろ姿が立ち塞がっている。頼もしい背中に庇われている安心感で、目じりに涙が滲んできた。

貞ちゃんは、男の腕を掴んで締め上げたまま、もう一方の手を腰に提げた刀の柄にかけている。

「……痛ッ、このガキ――」

「てめぇがやったことのお返しだろ。人の女に、汚ねぇ手で触りやがって……」

さっきまで余裕綽々だった男性も、貞ちゃんの並々ならぬ殺気に圧されてジリジリ後退していく。

それもそのはず。刀剣男士として日々戦場を駆け巡る貞ちゃんと一般市民の男性とでは、踏んでいる場数が違う。

「とっとと失せな。……それとも、俺にコイツを抜かせるかい?」

「ぐっ」 

一度刀を鞘から抜いたら、貞ちゃんに斬れないものなんてない。

まして、この状況は”貞ちゃんの間合い”だ。

ここが戦場だったなら、確実に一振りで心臓を突き、敵を仕留めているだろう。

もちろん、貞ちゃんは町中で騒ぎを起こすような人じゃないし、私の指示なしに私情で戦うこともない。

 

貞ちゃんに気迫負けした相手にとっては、十分すぎる脅しになったみたいだけれど。

 

 

 

「主。手、平気か?」

「うん。大丈夫だよ」

「でも、痛かったよな」

 あの軟派男性が立ち去った後、私達は万屋に寄らずに本丸に帰城した。

思った以上に時間が経ってしまった事と、貞ちゃんが私を気遣って「もう帰ろう」と言い出したから。

「すまねぇ。俺がもっと早く戻ってれば、こんなことには」

貞ちゃんは悪くないのに、自室に戻ってからはずっとこの調子だ。何度も謝られてしまい、私のほうが申し訳なくなるほどだった。

「謝らないで。貞ちゃんが守ってくれなかったら、それこそどうなってたか分からないし」

私の手首はしばらく赤くなっていたけど、すぐに元通りになった。

貞ちゃんが、私の手についた痕が引くまで、ずっと冷やしたタオルを宛がってくれていたから。

「あのさ。俺、主に渡したいもんがあってさ」

「え?」

私の手首を拭き終わった後、貞ちゃんは自分の上着の内ポケットから、花柄の包装紙で包まれた小さな箱を取り出した。

「欲しいって言ってたよな」

「あ……」

そういえば。市場の出店を見ている最中、ガラス細工やとんぼ玉をしつらえた髪飾りを扱っている、装飾屋さんに立ち寄ったっけ。

私の髪の毛は肩につくまでの長さだから、普段は邪魔にならないように結わえていることが多い。

髪をくくるゴムや髪留めは幾つあってもいいし、気に入ったのを買いたかったけど……金欠でとても手が出せる値段じゃなかった。

「もしかして、これを買いに行ってくれてたの?」

「あー、まあな。だけど、それで主を危険な目に遭わせてちゃ意味ねぇだろ。最初から一緒に行けばよかったよな。……かっこわりぃ、俺」

「貞ちゃん……」

貞ちゃんはバツが悪そうに顔を歪めて、私に小箱を差し出した。

――贈り物を黙って買いに行ったのは、貞ちゃんが私を喜ばせようとしてくれたから。それだけじゃない。今日のデート中だって、貞ちゃんの優しさや気配りをたくさん受け取っている。文句どころか、感謝の気持ちしかない。

ちょっと気恥ずかしいけれど、貞ちゃんはいつも私のことを褒めてくれるし、今日は素直な想いを伝えよう。

「貞ちゃん、ありがとう。私、一緒に出かけられて楽しかったよ」

「……え……?」

「私を守ってくれた貞ちゃん、すごく格好良かった」

「……っ」

「だから、その。私の手のことは、もう気にしないで」

……う。正直に言ったのはいいんだけど、口に出してから急にこそばゆさが込み上げてきた。貞ちゃんはなにも言ってくれないし。かといって、このままじっと顔を突き合わせているのも気まずいし。

「あと、プレゼントもありがとうね。大事にするから」

とりあえず、貞ちゃんに貰ったプレゼントを化粧台の上にでも置いておこう。

私が畳を立ち上って姿見の前へ立ったとき、

「……わっ…!?」

「主」

――鏡面に、目を見開いて固まる私と、前帯に回った貞ちゃんの腕が映った。肩口に熱い体温を感じて、急速に鼓動が逸る。ちょっと待って。今、私……貞ちゃんに抱きしめられているのでは。

「貞ちゃん……急になに?」

「いや、なんとなく。抱きしめたくなった」

「な、なんとなくって」

抱きしめたいから抱きしめるって。いえ、すごく自分の感情に素直な行いだと思いますけれども! 急に後ろからぎゅっとされた方の心臓のダメージを少し考えて欲しい。

「ちょっと……」 

ダメだ。全力で身じろぎしてるのに解けない。思った以上に強い力で拘束されているみたい。

私と貞ちゃんの身長差はほとんどない。だから、後ろから腕を回されて抱き寄せられたこの状態だと、貞ちゃんの表情は見えなかった。

それをいいことに、貞ちゃんの顔は私の肩から首筋に移動して、肌に口づけながら触れていく。

皮膚に吸い付いた生温かい感触を意識すれば、痛みが鳥肌に変わって私の全身を駆け巡った。

「俺はさ。コソコソすんのは性にあわねぇし、我慢すんのも好きじゃねぇ。好きなモンは好きって言うし、欲しいモンは欲しいっていう」

 貞ちゃんは嘘を嫌うし、自分を誤魔化したりしないタイプだ。

だからこそ、「抱きしめたい」と言ったのはきっと本音で、口に出す言葉はぜんぶ本心からのもの。

いくら恋愛経験値が中学生並に低い私でも、貞ちゃんに「好きだ」と伝えられていることくらいは理解している。

おなかに回された腕が小さく震えているのを感じて、私は彼の手の甲にそっと自分の手を重ね合わせた。

「主を困らせたくねぇし、今の関係もそれなりに気に入ってるよ。だけど、俺が自分の気持ち押し殺してる間に、行ちゃんとか……他の男にかっさらわれたらバカみてぇだろ。そんなの、ぜってぇイヤだ」

耳のすぐ後ろで、貞ちゃんの低い声が鳴っている。

私の脳みそに、直接響いてるみたいに。

 

「主、俺の女になってくれ」

「……っ」

 

夕日の差し込む自室が、真っ赤に染まりかえる中。私の頬にはそれ以上の熱と赤色が咲いてゆく。

 

今夜の近侍当番に、不動君と貞ちゃんを任命してしまった浅はかな私――そんなドン感な私にはあまりに大きすぎる恋のビックウェーブは、果たしていずこの浜へとたどり着くのでしょうか……。

その答えは、まだ誰にも分からない。




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