WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


102.0083/10/16

「では2号機は既に行方を眩ませた、と言うことだろうか」

 

『第3地球軌道艦隊の捜索艦隊が所属不明の艦隊と交戦、サラミス2隻が撃沈された。位置的に考えて強奪された2号機を回収するための部隊だろう』

 

その言葉にエイパー・シナプスは自然と握った拳に力が入る。そうしなければ自らの失態によって生み出されてしまった犠牲に対する感情の発露を抑えられなかったからだ。

 

『交戦位置から判断して逃走先はラグランジュ1の暗礁宙域である可能性が高い。シナプス大佐、アルビオンは第13独立部隊隷下グレイファントム及び護衛艦艇と合流後同宙域にて2号機の捜索に当たれ』

 

「了解した」

 

シナプスがそう敬礼と共に返事をすると、通信を送ってきたバスク・オム大佐は制帽を脱ぎ、一度頭を撫でてから口を開いた。

 

『理解しているだろうが、これは我々の派閥にとって大き過ぎる失態だ。挽回は難しくとも傷口は可能な限り小さくせねばならん。その事を肝に銘じておけ』

 

それだけ言うと通信が一方的に切断される。その態度に艦橋の空気が一瞬悪くなりかけるが、それよりも先にシナプスは部下に指示を飛ばす。

 

「少尉、友軍艦隊との合流時間は?」

 

「はい、約30分後にグレイファントムと合流、2時間後に護衛艦艇と合流予定です」

 

「ペガサス級2隻にサラミスが2隻。艦隊としての体裁は整うか、バニング大尉、アレン少佐は?」

 

艦橋を空けているアレン少佐の代わりに待機していたサウス・バニング大尉へ向けてシナプスは問いかける。その質問に大尉は直ぐに答えを返してきた。

 

「合流までに新人達へ空間戦闘のシミュレーションを施すと」

 

新人とはいえ宇宙軍のパイロットである彼等は一応宇宙空間での訓練経験もある。しかし実戦を思えば幾らでも訓練をしてし過ぎという事は無いだろう。疲弊するほど訓練漬けでは問題だろうが、そこのさじ加減は問題ないだろうと少佐の経歴からシナプスは考えていた。だが、そんな彼の判断に全て賛同出来るかと言われればそうでもない。

 

「ふむ、…しかし、あの采配はどう思うね?」

 

「ガンダムのパイロットのことでありますか?」

 

バニング大尉の言葉にシナプスは頷く。

 

「理屈は通っている様に思います。ガンダムは確かに強力な機体ですが、テストも終えていない試作機です。戦力評価の上では未知数と言わざるを得ません。部隊の戦力を維持すると考えればモンシア達ベテランにはジムカスタムを使わせるという判断は不思議ではありません」

 

「それは私も同じ考えだ。だが現状予備機に近い扱いとなるガンダムの専任を決めたのは何故だろうか?しかも迷うこと無くウラキ少尉を指名した様に思えたが」

 

「それは、少佐は我々と何度も模擬戦をしていましたから、その中で適任者を選んだのではないでしょうか?」

 

「ウラキ少尉が大尉や自分よりも適任だと判断したと」

 

「…その、何かあるのですか?」

 

問い返してくるバニング大尉に対し、シナプスは声を潜めて口を開く。

 

「その件に関してはここでは言い辛い。後で私の部屋に来てくれ」

 

眉を顰めるバニング大尉に苦笑を返していると。スコット少尉が眉を顰めながら報告をしてくる。

 

「艦長、アナハイムを名乗る民間船から通信です!接舷許可を求めています!」

 

「なに?」

 

「ああ、来ましたか」

 

言いながら艦橋に入ってきたアリス・ミラー少佐が艦長席の近くまで来て説明をする。

 

「作戦行動中の艦に何時までも民間人を乗せておく訳にはいかないでしょう?我々も一度フォンブラウンに行かねばならないので、そのついでというわけです」

 

「そういう事は一言お伝え願いたい」

 

眉間を揉みつつそうシナプスは伝えるが、聞き入れられることは無いと理解していた。情報部は地球連邦軍総司令部直属の組織であり、その行動の独立性はあらゆる部隊よりも上位に位置づけられている。それは組織の健全性を保つために必要なことではあるのだが、それに振り回されれば小言の一つも言いたくなるのが人間というものだ。案の定ミラー少佐は肩を竦めて苦笑したのみである。呼気と共に不快感を吐き出そうとした矢先、手元の通信機が着信を告げる。何事かと出てみれば、MS整備班長のモーラ・バシット中尉が困惑した声音で報告をしてくる。

 

『シナプス艦長、アレン少佐が1号機を搬出するよう言っていますが』

 

「なんだと?少佐はそこに居るのか?」

 

『はい、あ、ちょっと少佐!?』

 

『失礼します、代わりました。ディック・アレン少佐であります』

 

「説明を頼む。1号機は月に寄港した際にアナハイムへ戻す予定だったはずだが?」

 

『はい、大佐。報告が遅れまして申し訳ありません。その、1号機なのですが重大な問題が発覚しまして』

 

「重大な問題だと?」

 

アレン少佐の言葉にシナプスは嫌な予感を覚える。そしてそれは即座に事実として突きつけられた。

 

『空間戦闘用のプログラムに置き換えてシミュレーションを行ったのですが、全く使い物になりません。あれならザクの方がまだマシです』

 

更に主任設計者に確認した所、換装作業と調整に最低でも4日は欲しいとの懇願をされたとアレン少佐は続ける。更にアナハイムの技術者が全員艦から降りるとなればマニュアルもろくに無い現状では整備もままならないと言うではないか。

 

『このまま格納庫に放置されるのであれば、一度アナハイムへ持ち帰って貰った方が良いと判断しまして』

 

勿論最終判断は自分に委ねる。そう締めくくられ、シナプスはつい人目をはばからず盛大な溜息を吐いてしまうのだった。

 

 

 

 

「よし、許可が出たぞ!やってくれ!」

 

俺がそう言うと整備員達が輸送用コンテナに1号機を押し込み始める。キャットウォークからそれを眺めるパイロット達は皆一様に微妙な表情だ。まあ無理もないけどな。

 

「残念だったなぁ、モンシア。ガンダムに乗れなくってよ」

 

そう言って笑いながらモンシア中尉の肩を叩いているのはアルファ・A・ベイト中尉だ。補充人員の三人組の中では一応リーダー的な立ち位置になっている。尤もアルビオンにはバニング大尉が居るためかモンシア中尉に並ぶ悪童振りを発揮しているが。

 

「へっ、あんなガワだけのモドキになんざ乗った所で自慢出来るかよ」

 

不機嫌な様子を隠そうともせずにモンシア中尉はそう口にした。まあアレでは仕方が無いだろう。1号機を使ったシミュレーションはそりゃあもう酷いものだった。流石に原作の様な醜態はさらさなかったものの、運動性はノーマルのジムと大差ないという有様だ。当初はウラキ少尉の技量の問題じゃないかなんてからかっていたモンシア中尉も試しに乗らせて見たら神妙な面持ちで機体から降りてきた。流石にそこまで来るとちょっと気になってしまって俺も乗って見たのだが、もうなんと言うか酷いの一言に尽きた。

 

「あれで緊急時は使えるって…」

 

ウラキ少尉が青い顔でそう漏らす。地上とはいえ彼もジオンとは一度交戦している。ならば連中が大戦中の機体に乗っていても油断出来ない相手である位は理解出来ているだろう。この場にパープルトン女史が居なくて本当に良かった。絶対パイロット達と険悪な雰囲気になる。

 

「なんであんなに酷いのでしょう?汎用機と聞きましたが」

 

顎に手を当てながらそう疑問を口にしたのはチャップ・アデル少尉だ。常識人の彼にはこの結果が意外過ぎたのだろう。

 

「…それなんだがな。あの機体、恐らく汎用機じゃない。陸戦用だ」

 

タブレットに転送されている1号機のデータを皆に見せつつ俺は自分の予想を告げる。すると全員が目を丸くして俺とタブレットを交互に見る。うん、解るよその反応。

 

「1号機はパーツを換装することで地上と宇宙に最適化して運用する汎用機ってのがアナハイムの言い分なんだが。これをよく見てくれ」

 

タブレットに地上用と宇宙用を並べて表示させて説明を続ける。

 

「換装するパーツなんだが、A・B両パーツとコアファイターを換装するんだ」

 

「あの、それって全部変わってません?」

 

良い所に気が付いたねキース少尉、おじさん花丸をあげよう。上半身であるAパーツは一見ショルダーパーツだけが変更されているだけだから使えそうに見えるが甘い。1号機にはムーバブルフレームの原型となった技術が一部使われていて、そのおかげでショルダーパーツだけの入れ替えなんて事が出来るのだが、その技術に現場サイドと制御系がこれっぽっちも追いついていないのだ。何故なら新機軸の技術を導入したせいで、一年戦争からこちら、今も成長を続けている教育型コンピューターを利用出来ないからだ。まあ駆動概念から変更しているのだから無理もないだろう。だからちゃんと性能を発揮させるためには最低限それ用に調整を終えたAパーツを用意しておかねば戦場で換装なんて芸当が出来ないのだ。てか仮にAパーツは共用したとしてもBパーツとコアファイターを変えるなら構成の7割近くを別途用意する必要がある。もうそこまで来たらコスト的には2機用意するのも大差ないんじゃなかろうか?

 

「なんだそりゃ!?」

 

呆れた声でツッコミを入れるモンシア中尉を見ながらふと考えてしまった。1号機の完成度が低いのって、実は俺のせいではなかろうか?ムーバブルフレームを提唱したM・ナガノ博士は新進気鋭の若者である。史実では両親が元サイド3のスペースノイドだった為に連邦軍の開発機関には招聘されず、アナハイムに身を寄せて百式の生みの親になるのだが、実はこの時点までムーバブルフレームの完成度は連邦軍の方がアナハイムより先行しているのだ。一見不思議に思えるがなんて事はない話で、単純にこれは地力の違いだ。ジオンのMS技術は優れたものであるが、連邦にはそれまでの兵器開発で蓄積した膨大な基礎技術がある。そして金も人も物も巨大とは言え一企業の軍需部門と超大国の開発機関では勝負にならない。そうした背景がある中で、恐らくガンダム開発計画に関わったであろう博士を俺はオーガスタに取り込んでしまったのだ。そりゃ完成度も下がろうというものである。

 

「どうしたんです少佐?」

 

思わずコンテナに詰め込まれる1号機に向けて謝罪の合掌をしていると、不思議そうにキースが聞いてくる。うん、まあそのなんだ。

 

「ちゃんと一人前になって戻って来てくれと祈ったのさ、あれもガンダムだからな」

 

まさか自分のせいでポンコツになったかもしれない、なんて言える訳もなく俺はそうはぐらかすのだった。




以下言い訳

M・ナガノ博士関連の話は完全にでっち上げです。信じると恥を掻きます。
制御系が追いついていないも嘘っぱちです。真に受けると馬鹿をみます。
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