WBクルーで一年戦争   作:Reppu

104 / 156
なんか書けちゃったので投稿。


104.0083/10/16

「こちらペールギュント!前方の艦隊!進入航路に割り込むな!優先権はこちらにある!!」

 

「駄目です!返信ありません!」

 

「っ!緊急回避!総員衝撃に備えろ!」

 

艦長の指示に従い操舵手が素早く操縦桿を捻る。ペールギュントはムサイ級軽巡洋艦の中でも艦齢の若い艦だ。本格的な対MS戦闘も想定されているこの艦は大戦初期の艦や戦時標準艦に比べ小回りが利く。依然として直進を続ける艦隊をギリギリの所で躱していると、通り抜けたザンジバル級リリーマルレーンから通信が入った。

 

『すまないねぇペールギュント。コロニーの残骸と誤認した』

 

落ち着いた女性の声がペールギュントの艦橋に響く。聞き覚えのあるそれにアナベル・ガトーは自然と表情を硬くした。

 

「シーマ・ガラハウ中佐」

 

『だが、惚れ惚れするような回避ぶりだったよ。そうだろ?お前達』

 

彼女の言葉に賛同するように下卑た笑い声が通信に溢れる。それは正しく彼等が破落戸の集団であるとペールギュントの艦橋要員達に印象づける。

 

「海兵隊共めっ」

 

そのまま返信も待たずに切断される通信を聞き、艦長は忌々しげに吐き捨てた。

 

「シーマ艦隊、デラーズ閣下は何故あの様な輩を星の屑作戦に加えたのだ…」

 

モニターの中で遠ざかる艦隊を睨みながら、ガトーはそう呟いた。

 

 

 

 

暗礁宙域外縁で停船した艦隊では指揮官であるシーマ・ガラハウが月とのレーザー回線を開いていた。モニターに映る男に対し、彼女は親しげな笑顔で話しかける。

 

「アンタがアナハイムエレクトロニクスの常務とは、世の中どう転ぶか解らないもんだねえ。オサリバン?」

 

『シーマ様には先の大戦にて何かと融通頂きました恩義がございます。協力は惜しみませんよ』

 

笑顔でそう口にするオサリバンに向かってシーマは皮肉気に口角を上げる。

 

「協力?いい気なもんだねぇ。ジオンと連邦、双方に武器をばらまいている輩が良く言うよ。アンタは碌な死に方をしないよ」

 

『それはお互い様でございましょう?』

 

「あまり舐めた事を言ってると、月にコロニーを落としちゃうよ?」

 

からかうように彼女が告げると、オサリバンは大げさに肩を竦めて見せた。

 

『ご冗談を。ご要望の武器弾薬は用意しておきます。ではまたいずれ』

 

その言葉を最後に通信が切れる。同時にそれまで貼り付けていた友好的な表情を消し去り、シーマは忌々しげに髪を掻き上げた。

 

「タヌキがっ」

 

シーマ海兵隊。彼女達は一年戦争においてジオンの汚れ仕事を請け負った部隊である。彼等の名が歴史上に記されるのは一年戦争初期、ジオン公国によるブリティッシュ作戦、所謂コロニー落としに関する記録だ。弾頭となるコロニーを無傷で確保するために彼等は独断で毒ガスを使用しコロニーの住人を虐殺する。無論そんな事が出来る訳がないのだが、公式記録にそう記載されれば後ろ盾の無い彼女達に出来る事は無かった。目的のためならば平然と外道を行う破落戸部隊。そのようなレッテルを貼られ、味方からも蔑まれ、それでも最後まで国に尽くした彼等に待っていたのは更なる絶望だった。

 

「ジオンの栄光を汚した面汚し共」

 

ア・バオア・クーから味方を逃がす為に決死の経路開鑿を行い辿り着いた合流ポイント、そこで書類上の上官であるアサクラ大佐は彼等を悪し様にそう罵るとアクシズへの同道を拒絶する。祖国へ戻れば戦争犯罪者として全員が極刑となると知りながらだ。そしてその場に集った友軍だった部隊は、彼等の挺身によって逃げ果せながら誰一人として庇う者はいなかった。それどころか上官への直談判へ向かったシーマに対し、軍人ならば上官の命令に従うべきだなどと説教をする者まで現れる始末である。その時点で彼等のジオンへの忠誠心は消え失せる。

 

「極刑でいい。故郷へ帰ろう」

 

誰の口から出た言葉かはわからなかったが、特定する必要などそもそもなかった。海兵隊に集められた連中はジオンでも貧困層を押し込めたコロニーマハルの出身者で占められていた。当然シーマの率いている部隊も例外ではない、だから誰かが口にした言葉は自然と全員の意思になった。マハルへ帰ろう、マハルで死のう。だがそんな末期の望みすらジオンは彼等から奪い去る。

何故なら彼等の故郷マハルコロニーはとっくの昔にコロニーレーザーに改造されて、この世から失われていたからだ。

共にある事を拒絶され、故郷すら奪われ、宇宙での寄る辺を自らが扱う軍艦以外に失った部下達にそのまま朽ちて死ねと言える程シーマ・ガラハウはジオンへの忠誠心を持ち合わせていなければ、無責任でもいられなかった。

 

「誰もが私達に死ねと言う。ならば私達はそいつらを殺してでも生き延びよう」

 

彼等が宇宙海賊として連邦・ジオンの見境無く襲う集団となったのはある意味当然の帰結と言えた。

 

(嫌だね。ここまで身をやつしても、まだ私らは誰かの顎で使われるのかい)

 

オサリバンがシーマ達へ装備を提供するのは善意や義理などでは断じてない。それが彼の会社へ利益を齎し、彼の出世に繋がるからである。利益が見込めなくなれば、オサリバンは平然とシーマ達を切り捨てるだろう事は誰の目にも明らかだった。

 

「シーマ様!こちらへ接近する艦影を確認!例の艦のようです!」

 

暗鬱な思考に浸りかけていたシーマはレーダー手の言葉で意識を復帰させる。

 

「例の、ああ。ガトーを追っているアルビオンとかいう白い艦かい」

 

「艦影は4!同クラスの反応がありやす!」

 

「何?映像は出せるか?」

 

レーダー手の言葉に眉を顰めて彼女はそう指示を出す。入手した情報によればアルビオンは連邦のペガサス級だったと記憶していたからだ。

 

「望遠の静止画像になりやすが」

 

「構わないよ、出しな!」

 

言い終わると同時にメインモニターに映し出された静止画像を見て、シーマは目を見開くと同時に手にしていた扇子を強く握りしめた。

 

「ガトーの奴め、なんて連中を連れてくるんだい!?」

 

冷遇されていたとはいえシーマは歴としたジオン公国軍の佐官である。データベースへのアクセス権限は当然持っている。そしてデータベースには危険な敵部隊に関する情報も登録されていた。

 

「シーマ様どうしたんです?確かに数は4隻と少々多いですが」

 

声を荒げる彼女に副官が戸惑った声を掛ける。最新鋭の敵艦を前にしても余裕を崩さなかったシーマが感情を露わにしたことに驚いたのだろう。故に彼女はその理由を告げる、万一にも部下が馬鹿をしでかさないように。

 

「もう一隻の白い艦、あれはグレイファントムだ!あの木馬艦隊の片割れだよ!」

 

彼女の言葉でリリーマルレーンの艦橋を緊張が支配する。木馬艦隊、一年戦争末期の大規模戦闘で一躍有名となった連邦の部隊である。その戦果はジオン軍に所属していた者ならば耳を疑うようなものばかりである。地球方面軍崩壊の切っ掛けとなったガルマ・ザビの殺害に端を発し、サイド6宙域にてコンスコン少将の率いる機動部隊を撃滅。ソロモン攻防戦では突破口の形成とビグ・ザムの撃墜に加え増援部隊であったマ・クベ大佐率いる艦隊を壊滅させている。そして極めつけはジオンの敗北を決定付けたア・バオア・クー戦におけるドロワの撃沈だ。初めて確認したときはシーマですらプロパガンダを疑ったが、同時にアーカイブされていた記録映像を見ればそんな淡い期待は吹き飛ばされた。そんなジオン兵にとっての悪夢と言うべき部隊を本拠地付近まで引き連れて来たガトー少佐にシーマは苛立ちを覚えた。

 

「何がソロモンの悪夢だ、おふざけでないよ!こっちにまで見せられちゃ笑い話にもなりゃしない!」

 

「如何しますか?」

 

「如何も糞もあるかい!全員死んだように大人しくしな!光一つ漏らすんじゃ無いよ!」

 

幸いシーマの艦隊はデブリの中だ、残留しているミノフスキー粒子も濃く不用意な事をしなければ先ず発見される事は無いだろう。

 

「茨の園へ連絡しますか?」

 

「馬鹿を言うんじゃない」

 

この状況で茨の園、エギーユ・デラーズ中将が率いる武装勢力の本拠地へ連絡をするならばレーザー通信になる。しかしその為には通信経路を確保するために艦から茨の園までの間に存在するデブリを排除しなければならない。勿論そんな事をすれば艦隊は直ぐに見つかってしまうだろうし、最悪デブリを除去した通信用回廊から茨の園の位置まで特定されかねない。連中の拠点がどうなろうとシーマの知ったことではなかったが、エギーユ・デラーズに今死なれるのは困る。

 

「大人しくじっとしているんだよ。嵐に立ち向かうなんざ海賊のやるこっちゃないよ」

 

そんな英雄じみた行いは高い志とやらを持った軍人様に任せておけば良い。彼女はそう言って鼻で笑うのだった。

 

 

 

 

『こっちのガンダムは随分と物々しいなあ』

 

『バックパックのはビーム兵器かな?射角が随分狭いように見えるけど…あれ、分離するのか?』

 

「お前ら集中しろ」

 

グレイファントムから上がったグリーンリバー少尉のガンダムについて雑談をしているキースとウラキを注意する。まだ暗礁宙域に侵入する前だが、決して油断して良い状況じゃない。

 

「腕の良いスナイパーならそろそろ防空圏だぞ。世間話をしていて撃たれましたなんてなりやがったらパープルハートも申請してやらんからな」

 

『『し、失礼しました!』』

 

気持ちは解らなくはないけどな。普段オーガスタに居るせいで感覚が麻痺しているが、そもそも日常的にガンダムを眺めたり乗り回したりしている方が希有な側なのだ。けれど流石に任務中では注意せざるを得ない。

 

『相変わらず引率ですか、少佐?』

 

『こちらの射線にだけは割り込ませないでくださいよ。保証出来かねます』

 

フェン夫婦にそうからかわれ俺は溜息を吐く。

 

「時間が無かったからなぁ」

 

訓練で戦闘技術は多少叩き込んだが緊張感の希薄さは正直如何ともし難い。なにせそうした感覚の部分は常に戦場に居続けて醸成されるものだからだ。ベイト中尉達もその辺りは感じているらしく事あるごとに二人を注意しているのだが、そのせいで新人二人は中尉達に苦手意識を持ってしまっている節がある。原作ではアフリカにおいて数日間ジオン残党とやり合ったことで多少改善されていたのだろうが、こちらではオーストラリアにおける追撃から直ぐに宇宙へ上がった為にどうしてもそうした部分が未熟なようだ。

 

「この状態で暗礁宙域を捜索か」

 

俺は嫌な予感を覚え、思わずそう呟くのだった。




前話でここまで書く予定だったのに思いのほか膨らんじゃったのです。

以下恒例作者の自慰設定。

ガンダムNT-1改(ライト・グリーンリバー少尉のガンダム)

一年戦争終結後ジオン側の研究していたサイコミュ技術を接収した地球連邦軍が技術検証及び吸収を目的として製造したMS。戦中最強の機体であったNT-1をベースにサイコミュ兵装を追加する形で建造されており、1号機は終戦まで残存していたNT-1の1号機を改修する形で製造された。最大の特徴はサイコ・コミュニュケーター及びビットと呼ばれるサイコミュ兵器によるオールレンジ攻撃能力の獲得である。この装備の付与により同機は多目標への同時対処能力を飛躍的に向上させており、戦場におけるNTパイロットの重要性を高める事となる。
当初1号機には接収したサイコ・コミュニュケーターがそのまま使用されており、ビットの操縦もパイロットが直接行う方式だった。しかしこの方式ではパイロットへの負担が極めて大きく短時間の運用でも体調不良が発生する他、そもそも非常に高いNT能力が必要だった。しかしこの問題は意外な形で解決される。それが教育型コンピューターと一年戦争中にWB隊において現地改修されたFAガンダムの運用データの存在である。大戦末期に運用された同機には攻撃ポッドが増設されていたがその制御を教育型コンピューターが学習していたのである。実際に検証したところ、目標の捕捉さえ出来ればビット側の操作はほぼ全てを教育型コンピューターが代替出来る事が判明した。そこで開発チームはサイコ・コミュニュケーターから機体制御に関するシステムを撤去、あくまでパイロットが探知した攻撃目標を機体側に認識させる部分のみに縮小し残る部分を教育型コンピューターに代替させる方式に改めた。これによりパイロットへの負担は大幅に低下し長時間の運用に耐えうる性能を獲得したのである。
一方でビットを教育型コンピューターが制御する都合上、その動きはどうしても事前に学習した動きに限定されることから制御に関する自由度は大幅に低下している。また、パイロットの脳波を介したビットとの相互通信を放棄し、教育型コンピューターが直接制御するため通信ケーブルの存在は必須であり、ジオン公国が大戦末期に実用化した無線式に比べ攻撃可能な範囲が狭い、緊急時にビットの受け渡しが困難など技術的課題も残している。
また特殊な装備を搭載する都合上同機は標準的な高級機が足下にも及ばないと評されるほど高額であり量産化の障害となっている。
因みにグレイファントムには同型機が2機配備されており、ライト・グリーンリバー少尉の機体は2号機である。
元ネタは当然NT-X。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。