WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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「ここは戦場だぞ!遠足気分ならとっとと地球へ帰れ新兵!」

 

アルビオンのブリーフィングルームにリン・フェン大尉の怒声が響く。有り体に言って空気は悪いがそれを止める奴は居ない。掴み掛かられているウラキ少尉の所属するアルビオン側のパイロット達すら渋面でそれを見守っている。

 

「リン、その辺にしておけ。あー、もう一度こちらの状況を言わせて貰うと、グリーンリバー少尉に怪我は無い。機体の方は現在確認しているが今日中には戦線に復帰可能だろうとの事だ。でだな」

 

エドワード・コリンズ少佐が珍しく歯切れの悪い調子で言葉を続ける。

 

「俺達としてはもう少し安全に配慮して仕事をしたい。端的に言えば戦場でベビーシッターをする余裕なんて無いんだよ、どこぞの英雄様とは違うからな」

 

発端は一回目の暗礁宙域捜査のデブリーフィング中の事だった、俺達の所へ緊急の艦内放送が掛かったのだ。何事かとモニターを点ければそこには忌々しいハゲ面と真面目くさった銀髪ロンゲが2号機と共に映しだされる。そしてハゲが浪々と語り出す。

 

『地球連邦軍並びにジオン公国の戦士に告ぐ。我々はデラーズフリート。所謂――』

 

あの有名な演説を見ながら俺は気分がささくれ立つのを感じた。

 

「戦士ね。よく言ったものだな」

 

好戦的な笑顔でモニターを眺めていたリンがそう呟くと即座に隣に居たウォルターが口を開いた。

 

「脱走の挙げ句にテロリズムだ。多少でも恥を知っていれば兵士なんて言えないだろうさ」

 

俺達の冷めた視線の先でハゲが熱弁を振るう。ハゲの主張はこうだ。

なんか戦争終わったとか言ってるけどあれノーカンだから、裏切り者が勝手に言ってるだけだから俺ら認めてねぇから!そんで俺らと同じ事を考えてる若い連中が今も一杯いるからよ、俺らゼンゼン戦えるンだわ!

そもそも俺らが要求した事を呑まねぇ連邦が悪りーし、暴力で抑えつけるとかマジ連邦クソだわ。その証拠がこの核撃てるガンダムな!戦中に取り決めた南極条約ってので核禁止なってなってんのによぉ、連邦の奴ら違反してこんなの造ってやがったんだよ!ワルだぜこれはよぉ?

俺らはこの3年我慢してたけどよぉ、今から本気出すわ。連邦ぶっ潰すわ。ジーク・ジオン!

なんか真面目な口調でほざいていたが大体こんな話だった。高級将校の思考か?これが?

 

「おいやべえぞアレン、連中に話が通じるとは思えねえ」

 

「何言ってんだエド、相手はテロリストだぞ。話の出来る奴がテロする訳がねえだろ」

 

少なくとも真面な教育を受けていれば連中の主張は突っ込み所どころか突っ込むところしかない。あれか?ジオンでは佐官に漫才をさせる訓練でもしているのか?俺は溜息を吐きつつ頭を掻く。そもそもあの主張はなんだ?

一年戦争の終戦協定は当時ジオンの最高責任者であるダルシア・バハロと連邦政府の間で結ばれた正式なものだ。あの段階で公王だとか総帥とか大統領といった別の指導者が居ないのだから彼が代表で間違いない。売国奴呼ばわりしているが寧ろ彼は宇宙世紀100年までの自治権を勝ち取っている。後は本国を蹂躙されて終わりという戦況であの条件を引き出すのははっきり言ってギレンでも無理だと思う。なんせそんな条件を交渉で達成できなかったから戦争なんてしたんだしな。

次に戦争の原因は連邦によるスペースノイドの弾圧。具体的には自治権を認めない事だそうだが、彼の言う自治権とは具体的にはどんな権利を指すのだろうか。言っては何だが地球連邦は各サイドに対し自治権を認めている。無論それは地方自治体程度の権利であり主権国家とまでは行かないが、それでも戦中に中立を宣言して認められる程度の権利はあったのだ。そもそも同じ経済圏に存在しているなら主権国家であっても俺達の好きにさせろ、やることに口出しすんな。などという主張は通らないのだが、統一政体になって100年近く経っている現人類にそれを理解しろと言うのは酷なのかもしれない。

そこから話が南極条約違反に飛ぶが、あれはジオン公国との戦時条約で終戦と同時に失効している。勿論俺達が終戦を認めていないから条約の失効も認めないなんてトンデモ理論は通用しない。連邦軍の認めているジオン公国の後継国はジオン共和国であり、デラーズフリートなる武装勢力ではないからだ。せめて代表面をするならばサイド3住人の支持くらいはとりつけて欲しいものである。そうすれば連邦軍は元気よく今度こそサイド3を制圧するだろう。精々暗礁宙域で指でもくわえて見ていると良い。

極め付けは自分達がスペースノイドの代表面だ。いや、人類史上お前らほどスペースノイドをぶっ殺した組織は存在しねえからな?億単位とかダブルスコアどころか桁が違うわ。意見の違う連中を殺して自分達の意見が総意だとほざくとか独裁者も真っ青な所業である。そんな連中の名誉とはなんだろうかと是非伺ってみたい。絶対俺には理解出来んだろうが。

そんな皮肉を考えながら視線を巡らせれば室内の反応は大体同じ様なものだった。俺と同様に冷めた目で見ているか、あるいは苛立たしげに睨むかのいずれかだった。そんな中で唯一違う反応をしていたのがウラキとキースで、彼等は呆けた表情でモニターを眺めていた。そしてウラキが余計な一言を呟く。

 

「あれが、敵?」

 

それを不幸にもリン大尉が聞いてしまい冒頭に至るという訳だ。オーガスタ組にしてみればコーウェン派閥の尻拭いをしているのだ。その当人の一人であるウラキ少尉がそんなでは苛立ちもするだろう。

 

「今回の件は俺のミスだ。済まないエドワード少佐、リン大尉」

 

「謝れって言ってんじゃねえし、謝って済む問題でもないだろ?」

 

「状況的にパイロットは一人でも多い方が良い。ですがそれは頭数に数えられるのが前提です。私は彼等がそれを満たしているとは思えない」

 

リン大尉の突き放した物言いにウラキ達は反論せずに下を向いたままだ。まあこの状況で反論しても意味が無い事くらい解るのだろう。俺自身としても正直フォローはし辛い。真面な軍事教練も受けていないアムロ達だったならともかく、彼等は士官学校を正式に卒業した軍人なのだ。それも戦中の様な速成でもないのである。一方で戦後世代の気持ちも解らなくはないのだ。彼等は俺達のように明確な敵の居る状態で軍に志願したわけでは無いし、それこそ殴られる事を想定して軍人を選んでいるかも怪しい。そんな彼等に戦中組と同じ覚悟を即座に持てと言う方が難しいだろう。

 

「解った、今後彼等は――」

 

バックアップに回す、それが俺の考えだった。命令を受けている以上アルビオンからは降りられない。それこそ余程の問題を起こしたら別だが、流石に問題が起きるまで放置しては本末転倒というやつだ。だから極力戦闘に参加させない方向で調整しようと考えたのだ。だがそれを告げる前に再び艦内放送が入る。

 

『諸君。突然ではあるが、本艦隊は任務を一時中断しフォンブラウンへ向かう』

 

放送の内容に困惑した表情を浮かべる者が何名かいたが、エドやリン達は理由を察しているからか表情が変わらない。勿論俺もそちら側だ。艦内放送が終わるのを待って俺は再び口を開く。

 

「取り敢えず月に着くまでのローテーションから二人は外す。それ以降は月での状況次第だ。最悪こいつらは追撃部隊から外されるかもしれないしな」

 

「そんな!?」

 

ウラキが思わずといった様子でそう声を上げるが、正直現状だと十分に有り得る。だからそれを今のうちに伝えておくことにした。キースはともかくウラキは無駄に行動力があるからな。

 

「俯瞰的に状況を見てみろウラキ少尉。さっき流れたあの声明は全世界に向けて発信されている。となればこれまでのように陰でこっそりと事態を収拾なんて状況じゃなくなったって事だ。連邦軍としてもあれだけ堂々と喧嘩を売られればちゃんと動く。そうなればコーウェン中将が動員出来る戦力も増えるだろう。つまり臨時で編入したテストパイロットなんて使わず正規の部隊が対応する可能性が高い」

 

新型機を核弾頭ごとテロリストに強奪されたなんて連邦軍全体の不祥事だからな。あんな放送が無ければまだ隠蔽の為に最小限の戦力でなんて考えも働くだろうが、あそこまで挑発されて黙っている程軍は甘くない。月に向かうのも恐らく査問会が前倒しになるのだろう。俺がそう告げるとウラキはまるで裏切られたかの様な表情で口を開く。

 

「アレン少佐は、自分のことを認めてくれていると思っていました」

 

「認めているさ、お前さんもキースもパイロットとしての技能は一人前だ」

 

それは嘘じゃない。地上での訓練もしっかり付いてきたし、模擬戦の成績も中々のものだ。

 

「だが軍人がそれだけじゃ足りないのは今回の事で解ったと思ったんだがな」

 

そしてそうした精神面の事は簡単に切り替わるものじゃないし、無理をした所でどうにかなるものでもない。それどころか最悪味方への被害や自分の命を勉強代として支払う必要すら出てくる。

 

「悪いが少尉、お前さん達の覚悟が決まるまで悠長に待つなんて味方を危険に晒すような判断は、MS部隊長として選択できねえよ」

 

俺の言葉にウラキは何も言い返さなかった。

 

 

 

 

「ふん、所詮テロリスト止まりの能無しか」

 

手にしていた葉巻を忌々しげに灰皿へ押しつけながらオサリバンは吐き捨てた。先程まで流されていたエギーユ・デラーズのご高説を思い返し、苛立たしげに机から酒瓶を取り出すとグラスに注いで呷った。

 

「酒も飲まずによくもまああそこまで酔っ払えるものだな。羨ましい限りだよ」

 

オサリバンはそう皮肉を口にしながらこの先の事を考える。既に連邦軍からはアナハイムへの査察を行う旨が伝えられており、彼自身に対しても取り調べが行われる。尤もそれは形だけの事であり見逃される様に密約は済んでいるが、それでも相応の数の手駒がこれで消える事になるだろう。

 

「…シーマへの物資提供は目零されるだろうが、後は借りになるか」

 

勿論オサリバンはデラーズフリートと直接的な関係は持っていない。だが一方で潜り込んできた諜報員を見逃したり、オービルのような愚か者が感化されるのを放置するなどして物資や情報をデラーズフリートへ自分を介在させること無く送るといった支援を行ってきた。当然それは彼等の崇高な大義とやらに共感した訳ではなく、自身の立場を強化するための布石である。

彼の勤めるアナハイムエレクトロニクス社は複合企業であり、彼の所属する軍事部門は社内でも新興かつ利益も低い部門である。故に彼が社内での発言権を拡大するためには政情的に不安定な世界が好ましかった。デラーズフリートはそうした程々に社会不安を煽る都合の良い道具であり、所詮彼にとっては大量に存在する花火の一つでしかない。

 

「全く、余計なことをしてくれる」

 

言いながらもオサリバンはデラーズフリートが舞い上がるのも無理はないかと考えた。何しろ2号機と核弾頭の奪取は彼等が初めて成功させた戦果なのだ。今までのような民間の輸送船を襲うような海賊行為とは異なり、明確に連邦軍へ損害を与えた成果。敗北を受け入れられぬ負け犬共が気を大きくしても然るべき結果だ。寧ろその点においては、地球連邦市民として本拠地まで2号機を持ち帰られた連邦軍の無能さを嘆くべきだろう。

 

「さて、後はコーウェンだが」

 

彼の耳には既にコーウェン中将が査問会に召喚された事が伝わっている。このままならば良くて更迭、最悪降格もあるだろう。だがここで落ち目と切り捨てるのは三流だと彼はほくそ笑む。

今回の一件でコーウェン中将の派閥が発言権を弱めるのは間違いない。その権勢を回復させる為には大きな功績が必要だ。そして政治力に乏しい彼はその手段を今回と同様にMSの開発に求めるだろう。そうオサリバンが察せる程度にはコーウェン中将の思考は技術者に偏っている。そして追い詰められれば逆転のために危ない橋も渡るのが半端な成り上がりの特徴であることを熟知している彼は、中将が追い詰められるほど高性能なMSを求めて技術を吐き出すだろうと確信している。

 

「精々我が社のために頑張って貰おうじゃないか」

 

彼の呟きは誰に聞かれる事も無くオフィスの空気に溶けて消えた。




デラーズの見せ場を奪っていくスタイル。

コーウェン中将の艦隊について。
軍の予算は各軍(陸・海・空・ガンダムなら多分宇宙)がそれぞれ予算を申請し議会が承認する形です。
間違ってもそれぞれの派閥に予算を放り投げてその中でやりくりしろ、なんて運用はされません。つまり開発計画に幾ら資金が投入されても艦隊運用に必要な資金が不足する事は有り得ません。
まあよっぽど莫大な予算請求をして別の所で削れと言うことで艦隊運用資金が減額される事はあるかもしれませんが、少なくとも第三艦隊の資金だけ減らして機能不全を起こすような予算編成はしません。
また仮に減額を言い出されても、全員宇宙軍ですから、予算を減らせと言われたら他派閥ではなくまず他の軍の予算を奪う方向で動きます。
派閥争いに目が行って足の引っ張り合いをしているからそう考えてしまうのかもしれませんが。
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