WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


107.0083/10/18

「当日の警備状況について少佐は不足を感じる旨の発言をしてるな?何故かな?」

 

「はい、年々減少傾向にありますが未だジオン残党は活動を続けております。そうした中で2号機の特殊性とトリントン基地という条件が揃った状況では襲撃の可能性が高いと考えたからです」

 

「つまり核兵器運用を前提とした2号機がトリントン基地に運び込まれた時点でジオン残党が襲撃してくると考えた、と。しかしそれは些か飛躍した考えにも感じるが?前提条件として少佐の言う襲撃が計画されるならば、2号機が核弾頭を運用することとトリントン基地に弾頭が保管されている事が残党に露見している必要があるように思うが?」

 

アリス・ミラー少佐の質問に俺は堂々と答えた。

 

「小官はその可能性が高いと考えておりました」

 

「ほう、それは何故?」

 

「先ずトリントン基地ですが、過去ジオン軍によって襲撃を受けております。幸いこの時核弾頭が奪取される事態は発生しておりませんが、基地の中枢まで敵コマンドが侵入したと記憶しております。この際に貯蔵施設の情報がジオン側にも渡っている可能性があると考えました。そしてもう一点、2号機についてですが」

 

そこで俺は視線だけをコーウェン中将へ向ける。彼は苦々しい表情で俺の発言を聞いていた。まあ先程から俺の発言は彼を不利に追い込むものばかりだからな。だが俺は躊躇無く言葉を続けた。

 

「アナハイムエレクトロニクス社による建造の時点で情報漏洩のリスクは避けられないと考えておりました」

 

「っ!」

 

「静粛に。少佐、発言を続けなさい」

 

俺の言葉に思わずと言った様子でコーウェン中将が立ち上がり、それを議長が制すると続きを促してくる。正直この先は連邦軍全体への批判になりかねないからあまり言いたくないんだが。

 

「ご存じとは思いますがアナハイム社の軍事部門、特にMSに関係する部署は旧ジオニック社の人材を多数登用しております。その全員が確実にジオン残党と無関係であるとは小官には思えなかったからです」

 

「彼等については連邦軍からも監査が入っているが?」

 

「存じております」

 

「それでも少佐はそう考えた?」

 

「はい、先の大戦において人類は多数の死者を出すと共に多くの個人情報に関するデータも喪失しました。そして戦後もしばらくの間身分不定の難民が保護された事例は多く存在します」

 

実は人類の半数が死亡したとされる一年戦争であるが、この発言は誤りである。開戦初期に行われた各サイドへの攻撃は確かに大多数の住民を殺害したが、一方で文字通りの全滅までは成していなかった。実際戦後のコロニー再建計画において調査が始まると、意外にも多くの崩壊を免れたコロニーが存在し、幸運にもそのコロニーで生き延びた人間も相当数存在した。問題はこの中に別のコロニーから脱出し辿り着いたといった身元不明の人物が大量に発生したことである。何しろ照会するためのデータベースが吹き飛んでしまっているから確認は遅々として進んでおらず、下手をすれば身分証を提示すればそのまま登録されると言うような杜撰な対応もされたと聞く。なにせ大戦によって多数の人死にが出た上に総力戦の直後だ。連邦政府の資金は空っぽで財源はボロボロという状態だったので、多少怪しかろうが一人でも多くの労働者と納税者が必要とされたのである。つまり何が言いたいかと言えばだ。

 

「元ジオン出身者であれば調査も厳しくなるでしょう。ですが全く関係の無い身分を持っている人間なら?そうした人物が友人にいたとして何処まで追跡出来ますか?」

 

答えは出来ないだ。なにせそうした人物の足跡は1年戦争で途切れてしまう。大抵は家族友人も死亡しているから確認のしようもない。つまり全くの別人がなりすましていてもそれを証明する手段が無いのだ。

 

「戦後の救済活動としてアナハイム社ではそうした生活基盤を失ったスペースノイドを多数雇用していると聞いております。その中にジオンのスパイが紛れ込んでいないと確信出来るだけの判断材料を自分は持ち合わせておりません。そうした人間が旧ジオン系の技術者に接触、懐柔を行うことは十分に有り得ると考えました」

 

「…耳が痛いな」

 

実際にニック・オービルという実例が出てしまっている以上、俺の発言を誇大妄想と切って捨てるのは難しい。そうして俺への質疑が終わると、次はコーウェン中将の番になった。彼への質問は始終アナハイムエレクトロニクスに関連したもので、対する回答はあくまで連邦議会でも承認された内容であるというものだった。俺の発言したリスクについてはどう考えていたかというものには、情報部による参加者の身辺調査も行われていたことから問題ないとの認識であったと答えていた。更にそこまでしてアナハイムを選定する理由があるのかとされれば、彼は一瞬こちらへ視線を向けた後こう口にした。

 

「現状連邦軍が運用しているMSの大半はオーガスタ基地にて開発または再設計されたものである。旧来の軍事企業からも多くの出向者を抱えており連邦軍内において既にMSの開発が一極化しているのは明白だった。同時にオーガスタの技術者は性能重視でありコスト意識に欠ける面が見受けられる。故に現段階で早急に競争相手を育成する必要があると認識している」

 

うん、それはあるな。とは言えオーガスタで開発されている機体の多くは概念実証機だ。レイ少佐達が割と好き放題していることは認めるが、アレをそのまま量産しようなんてトンチキな事は考えていない。事実今回競作に出すMkⅡについても現実的な所までコストダウンを行っている最中だ。おかげで未だに実機が出来ないと言う非常に不味い状況ではあるのだが。にしてもよく言うよ、連邦軍のフラッグシップ機を自派閥で開発したって実績で派閥強化を狙っているなんてバレバレだってのに。ただ彼が割と見苦しく動いてくれたおかげでシナプス大佐への追求は緩く終わった。まあ彼の場合問題があったとすれば核弾頭を搭載した機体に見張り員を常駐させなかったという事であるが、そもそもそれに対応するような乗組員が配属されていなかったという事もある。おかげで大体の問題はコーウェン中将の現状への認識不足という形で決着が付きそうだ。まあ他派閥としてもシナプス大佐を更迭したり左遷しても意味は無いからな。狙いはコーウェン中将だということだろう。

 

「お疲れ様です、少佐」

 

嫌味合戦のような査問会から漸く解放されて外に出ると、そう言いながらララァ・スン中尉が近付いてきた。どうやら俺の事を待っていたらしい。

 

「折角の半舷上陸だろうに」

 

ついそう言ってしまった。査問会が終わる時間なんて決まっていないのだ。だからララァは折角の休日を大部分潰してしまったことになる。

 

「誰かさんのせいで待つのには慣れているんです。でも罪悪感を感じるならエスコートを受けてあげても良いですよ?」

 

そう言って笑いながらタブレットを振る彼女に俺は頷きつつも困ってしまう。なにせフォン・ブラウンに来るのは初めてだから、洒落た店なんて何処にあるかも知らないのだ。そんな俺を見かねたようにララァは溜息を吐くとタブレットを操作し始めた。

 

「戦場から離れると本当にポンコツなんですから。はい、ここに連れて行って下さい」

 

「大変申し訳ございません…」

 

苦笑する彼女と連れ立って俺はフォン・ブラウンの繁華街へと向かうのだった。

 

 

 

 

フォン・ブラウンにある地球連邦軍のオフィスの一角で、集まった男達は大きな溜息を吐いた。

 

「何とか最悪の事態だけは免れたか」

 

ボトルに入ったミネラルウォーターで口を湿らせながらジョン・コーウェンは目の前に座った男達を前にそう言った。査問会の内容次第ではコーウェン自身が即時更迭され、アルビオンを含む彼の派閥が追撃から外される可能性もあった。

 

「我々は引き続き2号機の追撃と言うことで宜しいでしょうか?」

 

「うむ、1号機を受領次第再度L1宙域の捜索に戻って貰うことになる。追加の戦力派遣も約束しよう」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

「本来ならば第3地球軌道艦隊の全力で支援と言いたいのだが、残念ながら敵の本拠地が特定出来ていない以上戦力を分散して調べねばならん。済まないがその点は理解して欲しい」

 

「はい」

 

真剣な表情でそう応じるシナプス大佐を見ながらコーウェンは今後のことを考える。今回の失態で間違いなくガンダム開発計画は中止となるだろう、そして自分はその責任を取る事になる。そうなれば彼の派閥も解体されるだろう事は想像に難くない。問題はその解体された後の事だ。

 

「シナプス大佐。今回の一件で私は間違いなく失脚するだろう」

 

「……」

 

彼の言葉にシナプス大佐は沈黙を続ける。大佐は良識的な人間であるから、こうした軍閥政治に忌避感があるのだろうと彼は推察した。しかし今後を考えれば今伝えておく必要があるとコーウェンは考えた。

 

「率直に言って私の派閥は弱小も良い所だ、私が閑職へ回されれば実質的な派閥としての力は喪失するだろう。だから一つ頼まれて欲しい」

 

「なんでありましょう?」

 

「派閥が力を失えば君達実働戦力を他派閥が取り込みにかかるだろう。だからその前に君達には、ある派閥に属して貰いたい」

 

眉を顰める大佐に向けて、コーウェンは真剣な表情で言葉を続ける。

 

「保守派の派閥がこれ以上力を付けるのは率直に言って非常に危うい。特にコリニー提督の派閥はあまりにも危険だ」

 

同じ保守派とされるワイアット大将とコリニー大将であるが、その内実は大きく異なる。ワイアット大将はスペースノイドを弱者と笑う一方で地球連邦の一員であるとは認識しているため、現状の維持、つまりアースノイドによるスペースノイドの支配には同時に庇護も必須であると考えている。対してコリニー大将はスペースノイドを地球連邦市民と考えていない節がある。彼にとってスペースノイドは宇宙へ捨てた員数外の存在であり、都合が良ければ利用はするがそれ以外で考慮する必要の無い相手なのだ。

現在は宇宙艦隊の大半をワイアット閥が掌握しており、コリニー閥が軍政を押さえているためにバランスが保たれているが、仮にコリニー閥がアルビオンの様な使い勝手の良い実働戦力を手に入れればコリニー閥に形勢が傾くことが十分考えられる。その場合将来的にアースノイドとスペースノイドの間に深刻な軋轢を生み出すことは容易に想像出来た。そうなれば人類は今度こそ本当に地球と宇宙に分かれて争う事になるだろう。

 

「もう一度あの大戦を起こさせるわけにはいかん。故にシナプス大佐。君の信条に反することと知っているが、伏して頼む」

 

そう言って彼は頭を下げる。

 

「どうかエルラン中将の下へ行って貰いたい」




体が闘争を求めているのでちょっとルビコンに行ってきます。


阿井 上夫様よりファンアートを頂きました!ありがとうございます!

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