WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


109.0083/10/19

「アナハイムから正式に連絡があった。明日の1000標準時にガンダム1号機の宇宙用への換装作業が完了する。我々はこれを受領後に月面でのテストを実施、最終調整を行いその後2号機捜索を再開する」

 

「ガンダムのパイロットは誰がやるんで?」

 

「予定通りウラキ少尉に担当して貰う。いいな、ウラキ?」

 

「…はい」

 

ベイト中尉の質問に答えつつそうウラキにも声を掛ける。あの一件から二日が経ったが、まだ気持ちの整理がつかないらしい。こいつそういうのが苦手そうだもんなぁ。

 

「また機体のオブザーバーとしてアナハイムより技術者が一名アルビオンに乗艦する。と言ってもパープルトン女史だそうだから今更紹介する必要も無いだろう。機体の受領次第ウラキの使っているジムカスタムはバニング大尉に戻す。が、まだ大尉は怪我が完治していない。当てにはするな」

 

「あのぉ、捜索は現在の部隊で行うのですか?」

 

キースがそう控えめに聞いてくる。こっちはあまり堪えてはいないようだ。正直心構えさえ出来ればキースの方がウラキより軍人には向いているかもしれないな。

 

「いや、追加でサラミス1隻とコロンブス級が1隻加わる。このコロンブスは一年戦争中にMS母艦用に改装されたもので、MS2個中隊が搭乗している。おかげで本艦にはMSの増員が無いけどな」

 

「コロンブスですかい」

 

「一応軽空母として最低限の武装はしているが、はっきり言って当てにならん。艦隊はこれの防衛を念頭に動くことになるだろうから、砲撃支援を受けるのは難しいだろう」

 

ビーム兵器の普及とMSの性能向上によって艦隊防空の難易度は飛躍的に向上している。元々単艦で完結した戦闘能力を保有しているペガサス級や純粋な戦闘艦であるサラミスはまだマシだが、輸送艦から改装されたコロンブスでははっきり言って比較にもならない。ならコロンブスだけ後ろに下げていれば、なんて考えるだろうがそう簡単な話でも無いのだ。何故かと言えばミノフスキー粒子のせいでレーダーが使い物にならないため、機動兵器による奇襲が容易に実行出来るからだ。また同時に無視出来ない問題としてあまり戦場から離れすぎると搭載されている部隊がMIAになりやすいという問題がある。宇宙空間では同一の座標に留まり続けると言うのが極めて難しい。そしてレーダーによる位置情報の共有が困難であるため母艦との距離が離れれば離れる程母艦の位置を見失うリスクが高まってしまうのだ。宇宙世紀の艦艇が空母と護衛艦艇に分業されていないのもこの辺りの事情が大きく関わっている。

 

「ま、手数が増えりゃあ何とかなるでしょうや」

 

「あまり気を抜きすぎるなよ、モンシア中尉。折角大戦を生き残ったのにこんなつまらん事で死んだら笑いものだぞ」

 

「当然、宇宙人共相手に手なんか抜きませんよ」

 

「スペースノイドですよ、中尉」

 

そう窘めるアデル少尉を見て俺は笑いながら口を開く。

 

「いやいや、今のは中尉の気遣いだろう。あんな訳の解らない連中と同じ宇宙に住んでいるというだけで一緒にされちゃ他のスペースノイドが迷惑ってもんだ。だろうモンシア中尉?」

 

「へ、へへ。全くでさぁ、少佐」

 

うん、絶対そんなつもりは無かった表情だね。

 

「と言う訳で休暇は終わりだ。ベイト中尉以下第2小隊は艦内待機、ウラキとキースはこのまま残れ」

 

「「了解」」

 

そう言って俺が解散を促すと中尉達は部屋から出て行った。残されたウラキとキースは気まずい表情で席に座っている。

 

「さて、お前さん達には明日のスケジュールも伝えておく。明日は0800時までにアナハイムのリバモア工場へ移動、機体の説明を受けた後実機のテストに移る。先に伝えた通り1号機のパイロットはウラキ少尉だが、体調不良等の場合はキース少尉に担当してもらう。それと俺もついて行く」

 

「少佐もですか?」

 

「一応俺は1号機のアグレッサーとして招聘されてるからな。まあ機体はジムになるが」

 

MkⅡが出せないわけじゃないが、あまりアナハイムの連中に見せたくないというのが正直な所だ。なので模擬戦は持ってきているパワード・ジムでやることになるだろう。

 

「既に操作マニュアルは送られてきているから二人とも目を通しておくように。何か質問はあるか?」

 

「…あの、少佐」

 

俺が聞くとウラキが躊躇いがちにそう口を開いた。

 

「なんだ?」

 

「1号機のパイロットは、自分達が使えないから選ばれたのでしょうか?」

 

「まあそうした一面があるのは否定しない」

 

中尉達とジムカスタムの組み合わせは言ってしまえば安定した戦力だ。どんな状況でも一定の能力が見込めるというのは作戦を行う上で非常に有り難い存在である。対してガンダムは戦力として未知数だ。スペックだけで見れば間違いなくジムカスタムよりも上になるが、それはあくまで性能をしっかりと引き出せればと言う前提になる。そして中尉達が今からガンダム1号機に慣熟するまではベテランとは言えそれなりに時間がかかるだろう。だから戦力外の人員を当てて戦力の低下を防ぐ、という意味の含まれた人選でもある事は間違いない。だが軍はそんなに甘っちょろい所じゃねえぞ?

 

「ただなぁウラキ。お前そんな気持ちでいると死ぬぞ?考えてみろ、お前達をアルビオンから降ろさずに機体を宛がうって事は、お前達に戦力として働く事を期待しているってこった」

 

俺から彼等の現状は報告しているが、シナプス大佐から人員入れ替えの相談や連絡は受けていないし戦闘部隊から外す様にも指示は出ていない。つまりこの部隊はまだウラキとキースに一人前の戦力として戦う事を求めている。

 

「部隊長として多少は配慮してやるが、それでも遊ばせておけるほどの余裕は無い。なあウラキ、お前らの気持ちが解らないわけじゃない。突然実戦だなんて言われて心構えが出来る奴なんてそうはいないからな。だがはっきり言ってそんな心構えが出来た新兵なんて俺は知らん」

 

3年前の戦争だって前線にいた兵士にすれば突然の事だったのだ。連邦の兵士で一体何人の人間が覚悟を決める時間なんて貰えただろう。

 

「厳しい言い方になるがお前達は一年戦争を知っていて、それでも入隊のサインをしたんだろう?戦場に出れば敵は新兵だからと遠慮なんかしてくれん。寧ろ腕の悪い奴ほど狙われる」

 

俺の言葉に二人は表情を曇らせる。実際に先の戦闘ではウラキが狙われたから身に染みているだろう。てか訓練の時も油断した奴から撃墜してたから、そんくらい解っていると思っていたんだが。いかんな、察しの良い連中ばかり相手にし過ぎて俺も感覚が狂ってきている。

 

「バニング大尉にも言われたんじゃないか?この戦いの勝敗はお前達が何時までひよっこのままかで決まる。ウラキ少尉」

 

「…はい」

 

「お前はさっき自分達が使えないから1号機に乗るのかと言ったな?言った通りそれも正しい一面だ。だがな、それだけで乗せられるほどガンダムのシートは軽くない」

 

成る程、確かに1号機は色々と問題もある機体なのだろう。少なくともコンペで提案されている要求は満たしていないように思える。だが一方で確かにカタログスペックはジムカスタムを凌駕しているのも事実なのだ。つまりそれは性能を引き出せるパイロットが乗れば、重要な戦力に化ける事を意味している。

 

「最初に1号機のパイロットに指名したときに俺は言ったぞ。お前達ならあの機体を十全に扱えるとな。その判断は間違っていると思わんし、今でも俺はそう考えている。ウラキ」

 

「はい」

 

「お前はMSに乗りたいだけのガキか?違うだろう、お前は連邦軍の士官だ。だから俺はお前を甘やかさない。そんなのは一人前の男にする事じゃないからだ」

 

タブレットを小脇に抱えて部屋を出る準備をする。まだ戸惑った顔をしているウラキにもう一言だけ口にする。

 

「明日のテスト、俺達の目が節穴で無かった事を証明してくれると期待する」

 

 

 

 

「い、いやあ、まいっちゃうよな!」

 

言いたいことを言って少佐が出て行くと、チャック・キース少尉が取り繕った明るい声音でそう口を開いた。その声にコウ・ウラキも言葉を返す。

 

「ああ、まいるよな」

 

MSに乗れるからという酷く単純な動機でコウ・ウラキは軍の門を叩いていた。それを敵からは未熟と評され、上官からは見透かされたことで彼は今更ながらに自分がどれだけ危うい事をしていたかを理解したのだ。

 

「士官、か」

 

MSに乗りたかった。しかしMSに乗ると言うことがどの様な意味を持つのかまで彼は想像が出来ていなかった。大戦終結から3年、未だ多くの治安出動が発生していることは士官学校でも指摘されていたというのに。

 

「軍人、なんだよな俺達」

 

コウの呟きにキースもそう漏らす。グリーンリバー少尉はコウを庇って被弾した。あと少しでも少尉が遅ければコウは死んでいたかもしれず、当たり所が悪ければグリーンリバー少尉が死んでいたかもしれない。そしてそんな状況に自分がならない保証など何処にも無いのだ。

 

「キース、僕はまだ少佐の言っている事の半分だって解ってないと思う。でも、少佐や大尉が僕に期待をしてくれていると言うならそれに応えたい。いや応えなきゃいけないんだと思う」

 

「…コウ」

 

「ここで応えなきゃ、僕は多分一生後悔する。ずっと半人前で終わる。そんな気がするんだ」

 

拳を握り締めながら、コウ・ウラキが半ば確信した気持ちでそう口にする。その表情には確かな覚悟が宿っていた。




コーラル汚染で脳がちゃんと動いていない気がする。
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