WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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戦闘ログが埋まらない。


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「物資は確かに受け取ったよ。しかしMSの方はこんなのしか無いのかい?」

 

フォン・ブラウン、アナハイム社のオフィスでシーマ・ガラハウは胡散臭い作り笑いを浮かべるオサリバンに対しそう尋ねた。真面な生産拠点を持たないデラーズフリートにとって稼働するMSは極めて貴重だ。だから動く機体が手に入るだけマシではあるが、それでもザクⅡ、それも初期のA型では一言言いたくもなる。寧ろこんな機体がよく残っていたものだ。

 

「連邦の監視が厳しくなっておりまして、なかなか…」

 

「嫌だねえ、後先考えない奴らってのは」

 

アナベル・ガトー少佐は英雄気取りで凱旋したが、その行動の影響は深刻だった。当初予定されていなかったアナハイム内の内通者を機体奪取に参加させた事でアナハイムへの監視が強化されたのだ。これによってデラーズフリートの軍需物資調達は大幅に制限されることとなる。それこそシーマが個人的に構築していた伝手すら頼らねばならないほどに。

 

「港に入っている連邦の艦、あれは明日出るんだったね?」

 

「はい、時間は多少前後するでしょうが」

 

「へぇ…」

 

「積み込みを急がせますか?」

 

脛に傷のある身であるシーマは当然ながらフォン・ブラウンに軍艦で乗り付けなどしない、今回も事前に用意してあるペーパーカンパニーの輸送艇で入港していた。この輸送艇は戦前から広く使われているモデルであり、積載量は優秀であるもののエンジン周りは効率優先のため軍艦に比べれば速度も小回りも利かない船である。万一にも連邦軍と鉢合わせて臨検などされれば逃げ切れるものではない。故にオサリバンは今日中に出て行けるようにと提案してきたのだ。だが、それに対しシーマの返事は真逆のものだった。

 

「いや、寧ろ気取られないよう慎重にやっておくれよ。そうさね、こちらはあちらが出た後で良い」

 

「宜しいのですか?」

 

オサリバンがそう怪訝そうに聞き返してきた。停泊している連邦軍の部隊はこれから暗礁宙域、つまりデラーズフリートの本拠地へ向かう事を彼は知っていたからだ。つまり後発すれば補給物資を拠点へ運び込むのに敵の目を掻い潜る必要が出てきてしまう。だがシーマは笑いながら応じる。

 

「慌てて出て行った方が怪しいだろう?それに暗礁宙域の道は幾らでもあるからねぇ、目を盗むくらいどうってことないさね。まあ、デラーズ閣下には多少遅れるのを我慢して貰うことになるけどねぇ」

 

「…成る程、承知致しました」

 

シーマにしてみればデラーズの為に危ない橋を渡るなど冗談では無かった。またこれ以外のスケジュールを鑑みればここで少しばかり遅れた方が都合が良いのも事実だった。

 

「さて、私はもう一件野暮用を済ませて来る。積み荷は頼んだよ」

 

「ええ、お任せを」

 

粘着質な笑顔で頷くオサリバンに手を振りながら退出したシーマは自らエレカを運転しフォン・ブラウンの下層へと向かう。次第に人通りは少なくなり機械製品を扱う特有の匂いが鼻を擽る中、彼女は目当ての場所に着く。

 

「…ラトーラ、すまんが少し外してくれ」

 

体格の良い隻腕の男がこちらを見るなりそう隣にいた娘に告げる。不安気にこちらを何度も確認しながら歩いて行く娘が視界から消えるのを待ってシーマは口を開いた。

 

「邪魔をして悪いね、ケリィ・レズナー大尉」

 

「は、いいえ中佐殿。問題ありません、本日はどの様な?」

 

「頼まれていたパーツが手に入ったからね、野暮用ついでに届けに来たのさ。…例の放送は見たんだろう?」

 

「はい」

 

そう頷く男にシーマは内心で哀れみを感じた。自分のことをあの悪名高い海兵隊の人間と知りつつも礼節を以て対応出来る人間は少ない。シーマにしてみればケリィ・レズナーはそれだけで価値のある人間である。そんな男があの狂信者共に誑かされてテロリズムに加わるかを悩んでいると言うのだから余計な世話の一つも焼きたくなると言うものだ。

 

「進捗はどんな具合なんだい」

 

言いながらシーマは倉庫の中へと進んでいく。適当な廃材の奥には重厚な輝きを放つMAが鎮座していた。

 

「大凡の部分は完了しています。作戦までには必ず」

 

少しだけ早口で告げてくるケリィに対し、シーマは手すりに身を預けながら口を開く。

 

「作戦には、か。それに関して悪い話だ、大尉。ガトー少佐が少し派手にやってくれたおかげでこいつを回収するのが難しくなってしまった。合流すると言うなら今日中にここから運び出して修復は本拠地でして貰いたい」

 

「なっ!?」

 

「今なら私が乗ってきた輸送艇に積んでいけるが、次は恐らく無い。例の演説以降連邦軍の監視が厳しくなっていてな。特にアナハイムが目を付けられている手前、フォン・ブラウンへ部隊を派遣するのは自殺行為に近い状態だ」

 

尤もこれはシーマの都合が多分に含まれている発言だ。彼の参戦を心待ちにしているガトーとその取り巻きならば後先など考えずに決死隊気分で連れ出す位はするだろう。迷惑な話である。

 

「そこでな、大尉。一つ提案がある」

 

「提案、ですか?」

 

ケリィの逡巡を鋭く見抜いたシーマは真剣な表情で彼に伝える。

 

「急な話だ、大尉も踏ん切りがつかないだろう。だが、我々としてもこの機体には少なからず投資をしているし、戦力としても期待している。だから手前勝手な申し入れとは重々承知だが、こいつを大尉から買い取らせて欲しい」

 

「じ、自分は…」

 

「そう構えるな大尉。別に私は貴様を捨てると言っているんじゃない。先に機体だけ預かると言っているんだ。作戦までに改めて貴様も合流すればいい、人一人なら軍艦を動かす必要も無いから簡単な話だ」

 

ゆっくりと諭すようにシーマは言葉を続ける。

 

「購入代という言葉が嫌なら支度金とでも思えば良い。これまでの生活を清算するとなればそれなりに入り用だろう?」

 

「生活の、清算、ですか」

 

呻くようにそう繰り返すケリィに対し、少しだけ微笑みながらシーマは口を開く。

 

「そうだ。こちらの思いはどうであれ、連邦からすれば我々は立派なテロリストだ。当然参加した場合連邦から追われる立場になる。共和国にも喧嘩を売っている手前あちらに助けを求めることだって不可能だ。つまり今回の作戦が成功し、生き残っても私達は一生お尋ね者になるわけだな。…そしてこちらも当たり前の話だが、そんな人間と関わっていた者にも相応の追及が待っている」

 

「違う!ラトーラは関係ない!」

 

シーマが何を言いたいのかケリィは正確に理解したようで、大きく目を見開き声を荒げた。それに対し小さく息を吐くとシーマは咎めるように言い返した。

 

「それを決めるのは大尉じゃなければ私でも無い」

 

そして表情を和らげて諭す様に続ける。

 

「だからこその金だ。纏まった金の一つも押しつけておけば多少は罪悪感も和らぐだろう?」

 

「…っ」

 

自らがテロリストになる事で彼女へ被せることになる不義理を、端金を押しつけて無視しろ。シーマはそうケリィにこれから彼がやろうとしていることを丁寧に教えてやる。そして肩を震わせ葛藤する彼に全く気にした風もなく言葉を投げかけた。

 

「どちらにせよ機体はこちらで預からせて貰う。後で迎えをよこすから準備を済ませておいてくれ。ああ、そうそう」

 

今更思い出したように彼女は手に持っていたアタッシュケースをケリィに押しつける。

 

「代金は先払いさせておいて貰うよ。それじゃあね、ケリィ・レズナー大尉」

 

言い終えるとシーマは返事を聞かずにエレカへと戻りさっさと出発してしまう。バックミラーからケリィの姿が消えた辺りで彼女はエレカの速度を緩めるとタブレットを操作しオサリバンへ機体を搬出するよう手配した。

 

「あんなものを後生大事に抱えてるからつけ込まれるんだ」

 

ケリィ・レズナーは元ジオン公国宇宙攻撃軍の兵士である。シーマが調べた限りでは優秀なパイロットであったらしい。しかしソロモン防衛戦の際に左腕を失う大怪我を負い後送、本国の病院で終戦を迎える。そんな彼がどんな経緯であの試作MAを手に入れ、このフォン・ブラウンに流れ着いたのかは解らない。だがその胸に燻っているであろう思いは容易に想像がついた。

 

「折角新しい居場所が出来てるってのに、馬鹿な奴だ」

 

ア・バオア・クー防衛戦。ジオンの敗北が決定的となったあの戦場に居なかったが為にケリィは負けたという事実を受け入れつつ、まだ納得出来ていないのだ。そしてその最大の原因は直るかもしれないあの試作MAである。これが直れば自分はまだ戦えるかもしれない。そうすれば卯建の上がらないジャンク屋の親父ではなく、輝いていたパイロットの自分に戻れるかもしれない。事実未だに自分の力が必要だと戦友が言っているではないか。

苛立ちを紛らわせる様にシーマはバッグから煙草を取り出すと、火を点けて紫煙を胸一杯に吸い込む。

 

「胸くそが悪いったらないよ」

 

力を必要としている?当然だ。後方という基盤を持たないデラーズフリートはあらゆる物が不足している。それこそ共に戦うと言えば連中は嬉々として子供にすら銃を握らせるだろう、そんな奴らが以前の戦友に声を掛けないはずがない。

更に気に入らないのはその態度だ。仲間だ戦友だと親しい間柄を強調しながら、その実相手の事など一切考慮していないことだ。

 

「本当に仲間だ親友だなんて思っている奴をテロになんか誘うかい」

 

再度紫煙を深く吸い込みシーマは苛立った思考を鈍らせる。そうしなければヒステリックに叫んでしまいそうだったからだ。

 

「まあできる限りの事はしてやったんだ。それでも来るってんならもう知ったこっちゃないよ」

 

手元から戦える力を奪えば少しくらいは冷静に今を見つめ直す事も出来るだろう。そして少しでも考えれば自分がどれだけ馬鹿げた事に付き合えと誘われているかも見えてくるはずだ。尤もあの大尉は義理堅そうな男であるから、頼って来た馬鹿を無下に出来ずに今を台無しにしてしまう可能性はゼロではない。だがこれだけ忠告した上で選んだのであればそれはもうシーマの知ったことではない。無限に手を差し伸べられる程のリソースをシーマは持ち合わせてなどいないのだから。




Q:ここのシーマ様キレイ過ぎません?

A:シーマ様はどんなにいい人にしてもガノタは喜ぶってばっちゃが言ってた。
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