WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


111.0083/10/20

『これよりGP-01の模擬戦闘試験に移ります。アレン少佐、準備は宜しいでしょうか?』

 

「ああ、問題無い」

 

オペレーターからの通信に俺は短く答えつつ、もう一度システムをチェックする。装備されている弾薬は全てペイント弾、ビームサーベルもテストモードに設定されている。機体各部の状況は全て問題なし、今日もロスマン中尉の整備は完璧だ。

 

『承知しました、では開始して下さい』

 

開始の合図と共に俺は手近な残骸の後ろへ身を隠す。センサーの有効範囲は向こうが上だし、ここまでのテストを見る限り操縦関係の不安もなさそうだ。この数日で入念にコンピューターへ経験を積ませたのだろう。一応あの機体にも教育型コンピューターは使われているから現行機のデータが反映出来なくても模擬戦を通してある程度の吸収は可能だし、稼働時間が増えれば増えるだけ動きも最適化されていく。本来他人が乗っていると癖が付いてしまうからあまりやらないのだが、流石は開発者と言うべきだろうか。見る限りしっかりとウラキ少尉にフィッティングされていたように思える。

 

「MkⅡとは言わんが、せめてガンダムならなぁ」

 

パワード・ジムは悪い機体ではないし、レイ少佐達が徹底して調整してくれたこの機体もそれは同様だ。けれどやはりガンダムを知ってしまっている身としては反応速度やちょっとした動作の重さが気になってしまうのも事実だった。そもそも皆俺に夢見過ぎなんだよ、原作知識持ちがガンダムに乗ってれば誰だってあのくらいは出来るのだ。

 

「来たっ」

 

空間戦仕様に変更された1号機は高い運動性を誇っている反面、大型化したブースターやアポジモーターのせいで隠れる場所が制限される。ウラキの性格も考慮すれば積極的な移動と攻撃は当然の選択と言えた。

 

「はええなおい!?」

 

こちらの頭上を一瞬で飛び越えた1号機が空中で反転、同時にロックアラームが鳴り響く。即座に回避しつつマシンガンを向けるがその頃には既に1号機は近くのクレーターまで移動しており、その中へ飛び込んでしまった。速度自体はMkⅡの方が速いのだが、メインブースターを任意方向に噴射出来る1号機の方が運動性では勝っている。特にその鋭角的な進路変更はこちらの射撃を躱すのにも使えそうだ。

 

「やっぱすげえな、ウラキ少尉!」

 

単純な操縦技術と言う面でなら俺やバニング大尉、それどころかベイト中尉やモンシア中尉達よりも未熟だ。だが彼は非常に大きな才能を持っている、それが高い動体視力と並外れた耐G適性だ。後天的に身に付けている工学的な観察力や知識も侮れないが、彼の高い戦闘能力を支えているのはこの二つだろう。MSに限らず現代の兵器において最も繊細で脆弱な部品はパイロットだ。暴論であるがこの部分が1割多くGに耐えられれば、機体はそれだけで1割性能が向上する。ガンダム1号機は確かにカタログスペックでMkⅡに劣っているし、コアファイターを採用しているからパイロットへの負担も大きい。だがそれでも俺の乗るパワード・ジムよりは遙かに優秀であるし、その上パイロットのフィジカル面で優越されれば勝ち目はほぼ無いと言って良いだろう。

 

「まあだからって簡単にやられてはやらんがな!」

 

こちとらフィジカルモンスター共と模擬戦するのは慣れてんだよ、理不尽な偏差射撃が飛んでこないだけマシというものだ。俺は敢えて機体を高く跳躍させてクレーター全体を視界に収める。案の定クレーターの縁で待ち構えていたガンダムが慌ててこちらへ銃口を向けてくるが、既にこちらは照準に収めている。

 

「遅え!!」

 

トリガーを引くが残念ながら盾で防がれる。更に1号機はブースターを噴かしてクレーターから飛び出して距離を詰めてきた。

 

「ッと!?」

 

ライフルの下から展開されたビームがこちらの盾に接触、判定は両断による盾損傷。即座に俺は投棄すると左腕にビームサーベルを持たせる。原作だと確かサーベルを受けるだけの防御装備的なシステムだったが、どう見ても1号機が握っているライフルの下からは短いながらビームサーベルが伸びている。そういや以前装備についての意見を出せって言われてビームライフルと持ち替えずに近接戦闘が出来たらいいな!とか書いた気がする。

 

「おおお!?」

 

更に1号機の攻撃は止まらない。シールド裏から発射されたロケット弾が至近距離で炸裂して散弾をまき散らす。なんかこいつ原作より重装備になってねえか!?

 

『いけえ!!』

 

「な、ん、とぉ!!」

 

再び向けられた銃口を強引に捻って躱しつつサーベルを振るう。だがその攻撃はブースターを全開にした後退で避けられてしまった。更に追撃でマシンガンを放つもトリッキーな動きに照準が追いつかず当たらない。

 

「バッタかよ!」

 

飛び跳ねるような機動を取りつつビームを放ってくる1号機に思わずそう毒づく。こりゃハードになりそうだ。

 

 

 

 

「凄い」

 

ドローンから送られてくる映像を見つめながら、ニナ・パープルトンは思わずそう呟いた。この四日間で可能な限りの調整を施した1号機は、間違いなく今アナハイムが送り出せる最高の機体である。そして送られてくる実測値からパイロットを務めているコウ・ウラキ少尉がその性能をしっかりと引き出している事も解る。にもかかわらず未だ模擬戦相手のジムは撃墜判定を受けていない。

 

「うーん、仕上がってますね。良い機体です」

 

横に来た小柄な中尉が顎に手を当てながらニナと同じモニターをのぞき込むとそう口にした。

 

「あ、その、光栄です」

 

可憐な外見に反して目の前のエディータ・ロスマン中尉はRX-78に開発段階から関わっているベテランの整備員だ。彼女からの称賛にニナは緊張しながらもそう口にする。だがその内心は複雑だった。何故ならその中尉達が調整した格下の機体に苦戦しているからだ。これでオーガスタのパワード・ジムが改造でもされていれば言い訳も立つだろうが、推力やフィールドモーターの出力調整、そしてOSをアレン少佐用にフィッティングしただけだと言うことは事前の機体チェックで確認している。そして前述したとおりウラキ少尉は1号機の性能をしっかりと引き出しているのだ。

 

「そんなに思い詰める事は無いですよ。アレン少佐は少し特別ですからね」

 

ニナの表情から考えていることを察したのだろう。ロスマン中尉がそうフォローを入れてくるがニナの気持ちは晴れなかった。彼女にしてみればパイロットの技量が上回った程度で、量産機に良い勝負をされてしまう機体しか設計出来なかったということだからだ。

 

「気持ちが解らない訳ではありませんが、その考えは傲慢ですよ」

 

表情を変えないままロスマン中尉がそう口を開く。

 

「所詮私達が造っているのは人殺しの為の工業製品です。世に出ている技術の結晶である以上、絶対無敵のMSなんてものは造れません。そりゃそうでしょう、私達が知っている技術はその殆どが誰かも知っている技術です。そんな人間が敵のMSを造っていても不思議ではありません」

 

「……」

 

「つまり何が言いたいかといえばですね。新兵がベテランの操る量産機に勝てる機体と言うだけで十分上出来なんですから、貴女が深刻な顔をする必要は無いって事です。それ以上入れ込むのはおすすめ出来ません」

 

「ですが、私はあの機体の設計者です」

 

そう言い返すとロスマン中尉は涼しげな顔で手を振りながら言い返してくる。

 

「そんな責任感を民間人に軍は求めませんよ。民間へ委託するというのは、つまりそうした責任は依頼した軍人が負うと言うことです。どうしても責任が取りたいというならせめて軍属になってからにして下さい。第一ですね」

 

「第一、なんでしょうか?」

 

売り言葉に買い言葉ではないが、些か感情的な声音でニナが聞き返すとロスマン中尉は変わらぬ表情で言葉を続ける。

 

「軽々しく責任なんて言ってますけど、戦場に出る以上あの機体は人を殺しますし、撃墜されればウラキ少尉は死にますよ。そんな責任を貴女がどう取るんです?」

 

モニターの中では1号機が押し始め、パワード・ジムへ被弾判定を与えている。アレン少佐との模擬戦で1号機の教育型コンピューターが急速に学習を進めている結果だ。そして遂には動力部への命中判定を出し、一回目の模擬戦終了のアナウンスが流れる。ニナは何も言い返せず、モニターを見つめ続けた。

 

 

 

 

「お忙しい所申し訳ありません、エイパー・シナプス大佐」

 

「いえ、それは問題ありませんが、その、一体どの様なご用件でしょうか?」

 

アポイントメント無しに訪れたアナハイムの職員を艦長室に通したシナプスは困惑した声音でそう問い返した。クレナ・ハクセル、アナハイムエレクトロニクスが保有するドック艦ラビアンローズの艦長であり、同艦を開発拠点とする開発チームの責任者でもある人物だ。そんな人物が突然押しかけてきたのだから困惑するなという方が難しいだろう。

 

「実は大佐にお願いしたい事がありまして」

 

「…それはアナハイムに対し内密に、と言うことですかな?」

 

一縷の望みをかけてそうシナプスは問うが、答えは首肯だった。急速に痛み出す腹部に手を伸ばしながら、彼は質問を続ける。

 

「内容は今、お聞かせ頂けるのですかな?」

 

「…はい、実は弊社の人間を一人、保護して欲しいのです」

 

「保護?」

 

そんなものは軍に、それも作戦中の部隊に願い出るものではない。そう言いかけた所で、そんな当たり前のことは目の前の女性とて当然理解しているだろうと思い直し言葉を変える。

 

「本艦は作戦行動中です。それを頼るほどの理由がおありですか?」

 

「はい」

 

「伺っても?」

 

シナプスの言葉にクレナは再度頷くと口を開く。

 

「2号機強奪の件で、我が社に調査が入っている事はご存じかと思います。まだ容疑者は絞られ切っていませんが、特定される前に手土産と共に逃げる可能性があると懸念しております。そしてそれが遠くない未来であるとも」

 

一般的な監査部門ならばともかく、情報部が抱える後ろ暗い部隊のことを知っていれば当然そうした反応も起こるだろうとはシナプスも理解した。

 

「それと民間人の保護がどう繋がるのです?」

 

「その人物が手土産そのものなのです」

 

一瞬彼の脳裏にニナ・パープルトンが思い浮かぶ。彼女は優秀なエンジニアであるから、そうした人物を欲する組織も少なからずあるだろうと考えたからだ。だが、彼の想像は悪い方向で裏切られる事になる。

 

「…私の部下にペッシェ・モンターニュという元ジオンパイロットの者がおります。彼女は戦中、NT部隊に所属していた経歴を持っております」

 

その言葉にシナプスは目を見開いた。公的な記録には特殊な装備を運用する実験部隊として記載されているが、その実態が特別な人員とその能力を応用した兵器を運用する部隊であることは一定以上の階級を持つ軍人にとって公然の秘密だったからだ。つまりペッシェという人物は、最悪一人で艦隊と戦える戦闘能力を持つ人間だと言うことだ。そして非合法な手段を用いれば人間を容易く操る事が出来ることもシナプスは理解している。

 

「書類上はニナと同じく出向とさせて頂きます。ですが…」

 

安全が保障されるまで然るべき場所で保護して欲しい。言外にそう要求されシナプスは内心頭を抱える事になる。何故なら本来あり得ないそんな伝手を、今の彼は持っているからである。

 

「…確約できるのは、本艦で預かるまでですぞ」

 

彼女が帰り次第胃薬を処方して貰おう。そう決めながら彼は何とか言葉を絞り出すのだった。




アレンが乗るペガサス級艦長の胃はいつも痛い。

ペッシェ可愛いですよね。GP計画は何機0号機造ってんだって感じですが。
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