WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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114.0083/11/01

「連中の拠点はもぬけの殻か。流石コーウェンの子飼いだな、突進ばかりしか能が無いとみえる」

 

戦艦バーミンガムの艦橋で報告を受けたグリーン・ワイアット大将はそう小さく笑った。戦後3年に渡って特定出来ていなかったテロリストの拠点を2週間で発見・制圧した手並みは見事であるものの、肝心の首魁共の逃亡を許していては片手落ちであるし、何より最優先の問題であるガンダム試作2号機の確保が出来ていないのだから作戦そのものは失敗と言えるだろう。

 

「所詮技術屋上がりではその辺りが限界だと言う事だな。さて、そろそろ予定の宙域かな?」

 

「はっ、指定された時間には少々早いですが」

 

そう答える艦長に向けてワイアットは手を組みながら落ち着いた様子で口を開く。

 

「レディを待たせるなど紳士のすべき事では無い。それが例え元ジオンであろうともな。時間があるのなら丁度良い、ティータイムといこうじゃないか」

 

静かに頷き同意する副官を一瞥した後、彼は艦橋を見渡した。バーミンガム級戦艦一番艦、バーミンガム。連邦軍再建計画において艦隊派が文字通りフラッグシップとして建造した艦である。同艦は83年、つまり今年の4月に就役したばかりの最新鋭艦であるが、この就役には多分に政治的背景が含まれていた。その理由の一つが目下騒動の中心となっている改革派のガンダム開発計画である。中間報告において年内の完成が確実となったガンダム開発計画に対し、先んじて実績を打ち立て主導権を維持したい艦隊派は観艦式という国民に対する解りやすいアピールとテログループの掃討による実績獲得を計画する。バーミンガムはその象徴としてどちらへも参加する必要があると考えられた結果、艦隊旗艦としての機能を獲得した時点で未完成のまま就役したのである。実のところ艦隊派と呼ばれる彼等であるが、別にMSが不要であるなどとは考えていないし艦艇でこれを補いきれるとも思っていない。一年戦争の戦訓からMSの存在しない艦隊がどうなるかなどは痛いほど理解しているのである。その上で艦隊の再建・再編を主張したのは、正にそのMSとミノフスキー粒子影響下の戦場に対応するためであった。一年戦争において実施された艦隊再建計画、所謂ビンソン計画において建造された艦艇はあくまで数を戻す事が優先されたため、大半がMS運用能力を持たない従来通りのマゼラン及びサラミスだった。これらにおけるMSの運用は露天駐機による運搬が精々であり、簡易的な補給こそ可能であったが機体の整備や修復などは出来なかった。

当然戦後の艦艇ではこの点を改善しMS運用能力を獲得するべく設計が成されたが、この時参考とした艦艇にも無視出来ない問題があったのである。参考としたのは引き渡されたムサイとザンジバル、そして既に運用されていたペガサス級だったのだが、このクラスの艦艇でMSを運用するのは極めて非効率である事が判明したのだ。従来の戦闘機よりも大型化したMSは当然ながら多くの空間を占領するが、それは補修部品に関しても同様である。それでいてMSの航続距離の問題から母艦も前線に留まる必要性があり、それに伴う装甲・火力の強化も求められる。結果多機能化するには巡洋艦クラスの艦艇では容積が足りず運用機数を絞るか機能を妥協する、あるいは建造費に目を瞑る必要があったのである。艦隊派も本音を言えば、運用する全ての艦をペガサス級で揃えてしまいたいのであるが、そんな事は連邦軍の財布をこの先10年空にしても不可能だ。そこで彼等が着目したのが戦前に計画されていた大型戦艦の開発計画である。この全長400mに達する巨艦の建造は一年戦争の勃発によって白紙に戻されていたが、その設計思想は艦隊派の求めている多能艦であった。本来のバーミンガムはこの巨大戦艦をMS搭載仕様に手直しされたものなのであり、その構造は艦隊旗艦としての情報処理能力と生存性、そして艦隊の直掩機を単艦で集中管理するというものである。尤も、現在のバーミンガムはその艦載機運用能力を欠いた未完成の状態なのであるが。

 

「接近する艦影を確認!ムサイです!」

 

「来たか、定刻通りだな」

 

暫しワイアットが紅茶を楽しんでいると、そうオペレーターが声を上げた。即座にカメラに捉えられたムサイがモニターに映し出され、その艦色から目当ての相手である事を確信したワイアットは口角を上げた。

 

「勝ったな」

 

白旗を掲げつつ接近するMSを見て彼は呟く。それが何に対する勝利であるのか、それを彼に問う者は居なかった。

 

 

 

 

『つまり少佐の予想は観艦式の襲撃だと?』

 

「はい、その前提となる根拠を彼女から説明して貰います」

 

俺はそう言うと緊張した面持ちで待っていたパープルトン女史に視線を送る。彼女は一度頷くと会議室に居並ぶ面々に向かって口を開いた。

 

「奪われた2号機についてアレン少佐から確認頂きました内容は核弾頭の連続使用が可能であるか、というものでした。結論から申し上げますと、2号機には不可能です」

 

「しかしパープルトンさん。連中にはオービルが合流している。そしてMk82弾頭は実のところ入手不可能な物でも無いのだ。確かに設計段階ではその様になっていなくても、改造によっては可能になるのではないかな?」

 

彼女の言葉にシナプス大佐が反論した。もし2号機が大佐の言う通りの機体になっていればその選択肢は非常に多くなる。ルナツーやペズン、コンペイ島といった要塞であっても複数発の核弾頭による攻撃を受ければ甚大な被害が出るし、それは各コロニー群や月面都市でも同様だ。それこそ適当な地上都市へ降下して無差別に発砲するなんて暴挙も可能かもしれない。だが、その懸念をパープルトン女史は否定する。

 

「仰る通り携行弾数の拡張は不可能ではありません。ですが短時間に連続使用する事は不可能です」

 

「理由を聞いても?」

 

「単純にバズーカのバレルが保たないからです。連続射撃などは想定しておりませんから、実行するならば相当な改修が必要になります」

 

シールドによってある程度保護できる本体と違ってバレルは核爆発の衝撃と熱を受けてしまう。故に2号機はアトミックバズーカを分割し、バレルを使い捨てる構造としているのだそうだ。因みに参考としたザクⅡの核バズーカに至っては丸ごと使い捨てだったそうである。

 

「予備を携行するにしても使用前には保護しておく必要がありますし、そもそもバレルを複製するの自体相応の設備と資材が必要です。オービルは確かにガンダムの開発に携わっていましたが、彼はあくまでメカニックであり設計者ではありません。ですから彼によって2号機が、厳密にはアトミックバズーカが改造ないし複製される可能性は極めて低いでしょう」

 

「成る程、つまり最低でも1発毎に補給へ戻る必要があるという訳か」

 

『しかし随伴機などが居れば短時間で再補給も難しくないのではないかな?』

 

「それなのですが、そもそも連中は核弾頭を複数確保出来ていないのではないでしょうか?」

 

グレイファントムから通信で参加してるローランド・ブライリー大佐の懸念に俺がそう応じる。

 

「…確かに、複数発あるのであれば現状は不自然か」

 

賛同するようにシナプス大佐が唸る。それに頷きながら俺は持論を口にする。

 

「仮に複数発を保有しているなら、本拠地を攻撃した我々に向けて使用しなかったのは不自然です」

 

コンペイ島があるL5宙域と戦後接収されたペズンのおかげでL4宙域の掃海はかなり進んでいる。つまり連中からしてみれば俺達が制圧した茨の園は唯一拠点と呼べる場所だったのだ。仮に弾頭が複数あるなら拠点を放棄する前に俺達へ向けて試し撃ちくらいしても不思議じゃない。

 

「そうでなくても連中は核弾頭を最大限有効活用しようと考えていると言う事です。ならば連邦軍に最も打撃を与えられる状況を見過ごすとは思えません」

 

この他に懸念されるコロニーや月面都市への攻撃はあくまで今後も長期的に活動する事が前提だ。連中にその気があるならこんなに簡単に活動拠点を明け渡さないだろうし、失ってしまった現状を打開するには大きな戦果、それもスペースノイドに被害を与えずに危機感を煽る必要がある。となれば手っ取り早いのが連邦軍への攻撃であり、観艦式は非常に大きなチャンスと言える。まあそれも連邦軍が油断していれば、という但書は付くわけだが。

 

『うん、どうだろうシナプス大佐。私としては少佐の意見に賛成なのだが』

 

「同感です。代わりの部隊が到着次第我々もコンペイ島へ向かうべきでしょう」

 

原作通りシーマ・ガラハウがグリーン・ワイアット大将と内通していれば恐らく防ぎ切れるだろうが、確かめる術が無いし一介の少佐が聞いた所で答えて貰える物ではないだろう。ならば最悪の事態に備えるべきだ。問題は防がねばならない事態が二ヵ所で起きる事である。観艦式の襲撃から間を置かずにシーマ艦隊によるコロニー強奪が実行されるが、観艦式の襲撃を防ぐ場合、距離的にこちらは放置することになってしまう。

そして付け加えれば、現状連中の狙いが地球へのコロニー落としである事を知っているのはデラーズフリートの奴らと俺だけなのだ。その上このコロニー落としはフォン・ブラウンの協力があって成り立つ作戦であるなど、それこそ俺のような原作知識でも持っていない限り言い当てるなど不可能だろう。そして皆にコロニー落としを納得させられるだけの情報を今の俺は持ち合わせていない。

 

「どうかしましたか、少佐?」

 

そんな気持ちが表情に出ていたのだろう。バニング大尉が訝しげに俺を見てそう聞いてくる。何処まで話すべきかを悩んだが、この状況で伝えておくべきは観艦式襲撃で連中の作戦は終わりでない事だと俺は考えた。

 

「…いや、少しばかり違和感があって」

 

『違和感?詳しく言ってくれ、少佐』

 

俺の発言にローランド大佐も真剣な声音で問うてきた。

 

「連中は戦後3年にわたって潜伏してきたのでしょう?それもこんな大層な拠点をこしらえてまで。その全てを掛けて挑むのが観艦式襲撃では少々釣り合いが取れないと思いませんか?」

 

「しかし連中はあくまで武装勢力だぞ?連邦軍に打撃を与えるのは十分な成果ではないかね?」

 

「連中がただのテロ組織ででかい花火を打ち上げたいだけならそれまでですが、気になるのはあの演説です。奴らは戦争の継続を主張していましたよね?」

 

「…うむ」

 

俺の言葉に少し困惑しながらシナプス大佐が頷く。

 

「戦争をしようと言うのなら、連中の目的は連邦軍への攻撃ではなくそれより上の戦略目標があるはずです。あの演説通りならジオン公国の復活と独立辺りになるでしょうか。そうだとすれば観艦式を襲撃する程度では全く成果が足りていません」

 

観艦式に連邦軍の全てが集結しているわけではないし、一発の核で集まった艦隊を全滅させられるかと言えばそれも否だ。勿論無視出来ない被害ではあるのだが、地球の半分を占領された一年戦争に比べれば遙かに軽微な被害である。当然その程度で連邦政府は交渉の場など設けないし、一年戦争以上に追い詰めていなければジオン本国がデラーズフリートを認めて戦争を再開するなどあり得ない。

 

「つまり少佐は観艦式への襲撃があったとして、そこで終わりではないと言うのかね?」

 

「あくまで悲観的観測というやつですが。戦争が終わったことも理解出来ない馬鹿共ですから、思いつきで殴りかかってきた可能性も否定出来ません。ただ、」

 

「ただ、なんだろうか?」

 

顔を顰めて続きを促すシナプス大佐に、俺は素直に考えていた台詞を口にする。

 

「あれだけの拠点を構築出来る連中がその全てを掛けて挑んで来たのです。奥の手の一つくらいは隠していても不思議ではありません」




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