WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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遅くなりましたが今週分です。


122.0083/11/11

アルビオン隊がラビアンローズへと向かう中、観艦式を襲撃したデラーズフリートの残存部隊は本隊との合流を果たしており、その中にはアナベル・ガトーの姿もあった。

 

「無事戻ったのだね、少佐」

 

「汗顔の至りです。貴重な戦力を失ったばかりか、作戦を成功に導く事すら出来ず…」

 

旗艦であるグワデンのエレベーター内、極秘裏に接触していたアクシズ艦隊のユーリー・ハスラー少将から掛けられた言葉に、彼は忸怩たる思いでそう答えた。ガンダム試作2号機とMAラングによる二段構えの攻撃、これにガトーは相応の勝算を見出していたのだ。事実ラングは発射点まで辿り着き、もう少しで作戦は成功する筈だったのだ。

 

「連邦の悪魔、その名に相応しい悪運の持ち主です」

 

まがい物のビグザムとの交戦でラングの発射機構が故障、止むをえずオービルはラングから機体を切り離し文字通りの挺身を見せてくれた。しかしそれすらあの悪魔達は阻んだのだ。

 

「オービル見ていろ。貴様の無念も、我々が晴らす」

 

実際にはラングに核弾頭を発射する機能など存在せず、調整を施した整備班達がガトーに心変わりをさせぬよう口裏を合わせていた。オービルは才能のある若者であったが、それを鼻に掛けるきらいがあり、現場の整備員達に尊大な態度を無意識に取っていた事も状況を後押ししていたのだった。勿論そんな事を知らないガトーは、また自分の不甲斐なさが戦友の命を奪ったのだと自責の念を連邦への反骨心に変換している。

 

「その意気ならば、これを君達に託す価値がある」

 

エレベーターが停止し二人がグワデンの格納庫へ出ると、そこには巨大なMAが鎮座していた。

 

「素晴らしい…、まるでジオンの精神が形になったようだ」

 

感嘆の溜息を漏らしながらガトーはMAをそう評した。

 

「AMX-002、ノイエ・ジールだ。少佐ならば使いこなせるだろう、この位しか出来ない我々を許して欲しい」

 

「とんでもありません。助太刀感謝致します。…そして事が成った暁には」

 

「…ああ」

 

コロニー落としの為にデラーズフリートは手持ちの戦力を全て投入した。加えて唯一の拠点だった茨の園も既に敵の手に落ちている。つまり作戦成功後に彼等は戻る場所が無いのだ。その受け皿をデラーズフリートはアクシズに求めていた。ガトーの言葉にハスラー少将はそう頷くと、ノイエ・ジールから視線をガトーへと移し口を開いた。

 

「私はこれで失礼するよ、少佐。武運を祈っている」

 

「ありがとうございます!」

 

そう言って敬礼をしつつ少将を見送ったガトーは気が付いていなかった。ハスラー少将が作戦成功後に脱出する兵士の回収を確約しなかった事を。

 

 

 

 

「連邦の艦隊は追ってきているんだね?」

 

「へい、かなりの大部隊です」

 

「…少し速いね」

 

加速を続けている事を示す噴射光を確認し、シーマ・ガラハウ中佐はそう判断した。デラーズの居る本隊との合流は月での再加速を終えた後である。これは単純にデラーズフリートの台所事情の問題だ。作戦成功後アステロイドベルトまでの逃亡を考えている彼等は出来る限り推進剤を節約したいという思いがある。故に艦隊の全力行動はできる限り短時間で済ませたいのだ。その分シーマ達の負担が増えるのだが、それは今後報いるという実に信憑性の低い言葉で保証されていた。

 

「デトローフ、クルトの奴は出せるか?」

 

「5分頂ければ」

 

その返事に彼女は頷きつつ命じる。

 

「鼻先へ適当に機雷でもばらまいてこさせろ。…今後はお仲間になるんだ、あまり手荒な事はしたくないからねぇ」

 

シーマの言葉で艦橋に笑い声が響く。本気で殺しに来ている相手に加減して戦えなどという命令は滅茶苦茶ではあるが、それを行えるだけの実力が自分達にはあると彼等は自負していたからこその反応だ。

 

「まだ獲物が掛かっちゃいないんだ。ここで捕まる訳にはいかないんだよ」

 

彼等に提示されている寝返り受け入れはエギーユ・デラーズの身柄引渡しが条件として含まれている。連邦軍としてもこのまま奴が再び潜伏する事など望んでいないだろう。尤も、そんな事情は追撃してきている連中には伝えられていないようだが。

 

「デラーズはあれで用心深いからね」

 

連邦艦隊が本気でシーマ達を追撃しなければ、警戒心から内通を疑いかねない。

 

「ヴァル・ヴァロ、出ます!」

 

艦底側のハッチが開き、中から赤いMAが飛び出す。茨の園で修復を受けたヴァル・ヴァロは鋭い弧を描きながら連邦艦隊へと向かう。

 

「これで時間稼ぎは十分、後は月の説得だね」

 

そう口にはしたものの、そちらについてシーマは楽観していた。何しろ月の連中は自らをルナリアンと呼称する程度にはスペースノイドと同じくアースノイドからも距離を取っている。もっと言ってしまえば、自分達の利益以外の事など知った事かというのが連中の姿勢なのだ。故に放置すれば自分達が危険になると言う状況でこちらへの協力を拒む事はまずあり得ない。それどころか余計な危険に晒されたと地球へ損害補てんを請求するくらいはやってのけるだろう。

 

「仕上げの準備もしなくちゃねぇ?お前達、装備の点検はしっかりしておくんだよ!」

 

眼前に迫る月を見ながら、シーマはそう部下達へ命じるのだった。

 

 

 

 

「MkⅡは使えないか」

 

「残念ですがアルビオンの設備では手が施せませんね」

 

ガンダム試作3号機を受領するためにラビアンローズへと向かう途中、俺はアルビオンの格納庫で自機を見上げながらそう報告を受けていた。

 

「寧ろMkⅡだからこの程度で済んだと言うべきですね。ジムだったら今頃死んでましたよ」

 

至近距離で受けた自爆攻撃は俺が思っていたよりも遙かに深刻なダメージをMkⅡに与えていた。姿勢制御用のバーニア関連が損傷しただけだと思っていたのだが、実際にはそれらの可動部が熱で溶着、更には幾つかの燃料排出弁が作動していた。これは機体が異常過熱した場合などに推進剤が誘爆しないように推進剤が膨張するなどして一定の圧が掛かると作動するのだが、メインバーニアのものがやはり溶着してしまっていてバックパック内の貯蔵タンクに亀裂が発生してしまっていたのだ。幸い万一爆発したとしてもムーバブルフレームを採用しているMkⅡはこれらのパーツを全て機体外にユニットとして外付けにしているのでパイロットが危険に晒される事はない。逆説的に言えばセミモノコック方式を用いているMSだったら最悪内部で燃料が爆発し、内側から焼かれて死ぬなんて可能性もある。

 

「まあ、最悪の状況で見つからなかっただけマシかね?」

 

「自爆攻撃なんてそうそう受けないと思いたいんですけどね」

 

どうかな。なにせ残党になる奴なんてのは軍律や交戦条約よりも自分の信念とやらを優先するような連中だ。いつの間にかそれが自分の生死よりも重要になっているなんて奴もそれなりの数になるだろう。何故なら彼等にはもうそれ以上守るべきモノが残っていないからだ。

 

「直らないなら仕方ないな」

 

そう言って俺は隣に駐機してあるパワード・ジムへと視線を送る。

 

「一応アナハイムの試作機を使うって手もありますよ?」

 

ロスマン中尉の提案に俺は頭を振る。

 

「仕様を見たがありゃ特殊過ぎる。俺じゃ乗るだけで精一杯だよ」

 

3号機の本体はともかく性能を最大限引き出そうと言うのなら俺は完全に力不足だ。テストパイロットの経験は長いから乗れない事はないだろうが、あれの特性はMSと言うより極めて煩雑なMAである。確認した限りだと原作通りに単座で運用するようだから、乗りこなせるのは本当にウラキ少尉くらいだろう。

 

「耐G適性が高いのは最低ライン。そこから状況に応じて複雑な操作をMSを介してMAを操作するなんて、これを考えた奴はなんでこれで大丈夫だと思ったんだ?」

 

そしてアナハイムは良くこれに承認印を押したな。事前に送られてきた機体のデータを思い出し、俺は溜息を吐く。ついでに言えば俺達の本来与えられている任務はコイツの性能評価だから放置するわけにもいかない。

 

「…これ絶対MAじゃ予算通らないから、ガンダムの追加装備でゴリ押したヤツですよね」

 

コーウェン中将も途中で確認しなかったのか?こんな仕様じゃどう考えても持て余すだろうに。

 

「任せるとしたらウラキ少尉だな」

 

「そうなると1号機が余りますね、そっちに乗ります?」

 

「いや、1号機はモンシア中尉に任せる」

 

「え?バニング大尉ではなくですか?」

 

驚いた様子のロスマン中尉に、俺は声を潜めてその理由を告げる。

 

「…モズリー大尉から連絡があってな。バニング大尉はMSに乗れる状態じゃないそうだ」

 

その言葉にロスマン中尉は驚いた顔になる。オーストラリアでの怪我は治っていたし、本人はそんな素振りを見せなかったからだ。多分指揮官や年長者としての責任感から来る行動なんだろうが、ドクターストップが掛かっている事を黙っているのはいただけない。

 

「第1小隊の指揮はベイト中尉に執って貰うから、そうなると適任はモンシア中尉になる」

 

小隊の指揮を執りつつあのじゃじゃ馬を扱うのは骨が折れるだろうからな。

 

「なーに、最悪アルビオン隊が使い物にならなくても何とかなるさ、MkⅣも宇宙へ上げたみたいだしな」

 

それに第1連合艦隊の動きだ。コロニーの追撃はヘボン少将が指揮を執っていて、しかも原作通り艦隊の三分の一が当たっている。じゃあ残りはどうしているかと言えば本来の任務に復帰したのが半数。そしてバーミンガムを含めルナツーへ戻ると見せつつ地球軌道艦隊と合流しようとしているのが半数だ。ジービッグ・ザッムも持ち出しているらしいから、コロニー奪還の本番は確実に怪獣大戦争みたいな絵面になるだろう。

 

「第1連合艦隊の動きからして、俺達はコロニー奪還の本命なんかじゃないって事だからな。精々こんなつまらん事で死なない様、程々に頑張るくらいが丁度良いさ」

 

俺は笑ってロスマン中尉にそう言った。

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