WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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ガンダムMkⅣのコックピットの中で、カチュア・リィス准尉は不満げに頬を膨らませた。モニターには大写しになったコロニーとその周辺に浮かぶジオン残党の姿が見て取れる。

 

「もー!さっさと突撃してババーっとやっつけちゃえば良いじゃない!」

 

その言葉に呆れた声音で応じたのはメインパイロットを務めているレイチェル・ランサム少尉だった。

 

「だから言ったでしょう、増槽がトラブルで使えないって。この子は重いから方向転換だけでも大騒ぎなのよ?通り過ぎて肝心な所で役立たずになってたら少佐に笑われるわよ?」

 

「それにMkⅣは大きいから突出すると友軍の射線を邪魔してしまう。ちゃんと足並みは揃えるべき」

 

そこにオペレーター席に座ったシス・ミットヴィル准尉が更に突っ込みを入れる。彼女の言う通りガンダムMkⅣは全高40mに達する大型のMSだ。そしてその見た目に違わず運動性能は低いため、最悪敵機の隠れ蓑にされてしまう可能性もあった。尤もそれはMkⅣの射線上に身をさらす事を意味しているので寧ろ撃墜されやすいのだが。

 

「でもあんなのと並んでいるのは落ち着かないよ」

 

カチュア准尉がそう言って横へと視線を送る。その先にはジービッグ・ザッムが待機していた。あちらもMkⅣが気になるのか、しきりにサブカメラが動きこちらを見ている。

 

「確かにあれと一緒に戦うとは思っていなかったけれど」

 

ホワイトベース隊にしてみればビグ・ザムは因縁のある相手だけあり、改修された味方機と言われても内心は複雑だ。そんな相手を横に侍らせてのんびりとコロニーを待ち続けるのは確かに良い気持ちではない。かといってシス准尉の言う通り突出するのは不味いし、何よりも目標まではまだ距離があり過ぎた。画像が鮮明なので感覚が狂うが、倍率からすれば通常のMSで確認している状況と倍近い開きがある。これは大型化に伴い光学センサー類も大型で高性能なものに置き換わっているためだが、少し問題になりそうだと後で報告すべき事柄としてレイチェルは内心に書き留めた。

 

「気持ちは解るけど我慢して。焦らなくても直ぐに出番は来るよ」

 

何しろ相手はこちらへ向かってきているのだ。嫌でも数分後には交戦距離に達し戦う事になる。寧ろその数分を惜しんで前進などすれば、相対速度が高まり寧ろ交戦時間は短くなる可能性の方が高かった。

 

「それにこの子は拠点防衛用なんだから、待ち構えて戦う方が向いているよ」

 

MkⅣのコンセプトは単純にして明快。ビグ・ザムをMS、更に言えばガンダムで再現するというものだ。問題点であった稼働時間と近接防御能力は内装系の充実とMSを大型化するという荒技で乗り切っていたが、大質量化に伴う運動性能の低下だけは完全に解決する事が出来なかった。尤も標準的なMSの倍以上、実に6倍の質量に達する機体で一年戦争当時の機体とならば同等の運動性を発揮しているのだから十分規格外ではあるのだが。

 

「そーうーだーけーどー!」

 

「待って!」

 

なおもそうカチュア准尉が不平を口にしようとした瞬間、シス准尉が鋭く叫んだ。その言葉にレイチェルとカチュア准尉は即座に兵士の顔になるとモニターを確認する。

 

「増速した?」

 

「全部じゃないよ、…聞いてた例の部隊だけっぽい」

 

敵艦隊の妙な動きに彼女達はその意図を推察する。

 

「裏切りがバレた?」

 

「それだったら別の部隊があんなに悠長にはしていないんじゃない?」

 

「逃げている、というよりは敵艦隊の矢面に立とうとしているように見える」

 

「じゃあ、寝返るのを止めたとか?」

 

「この状況で逆ならまだしも、そちらはあり得ない」

 

状況はどう見ても連邦軍が圧倒的に有利なのだ。そうなる様仕向けた彼等をこの土壇場で翻意させるだけの条件が残党に提示出来るとは考えられない。周囲を確認すれば他の友軍も彼女達と同様に敵艦隊の動きに困惑している様子だった。そうこうしている間にも事態は進行し、前進した艦隊がMSを展開し始める。それらは事前に知らされていた通り、両肩をオレンジに塗装したゲルググだった。

 

「どういう事?」

 

レイチェルが呟いた瞬間、彼女の疑問に答える様に部隊が動き出す。戦闘開始の信号弾がザンジバル級から打ち上げられると同時に艦隊が増速しつつ反転を開始、更に展開していたMSは敵艦隊の中央に陣取っていたグワジン級へ向かって突撃し始めたのだ。

 

「味方だ!」

 

そうと解ればレイチェルの判断は早かった。友軍機が敵艦隊の内部に潜り込んでしまった以上、艦砲による支援砲撃は慎重にならざるを得ない。ならば友軍の射線を気にする必要は無く、寧ろ直接火力支援を行えるMkⅣは積極的に前に出るべきだ。こちらの意図を察したのか、ジービッグ・ザッムも前進を開始する。

 

「カチュア、オプションの火器管制任せる!」

 

「りょーかい!」

 

ガンダムMkⅣはその見た目に反してコンセプトは非常に単純だ。開発者の弁によれば、ガンダムに拠点防衛用MAの能力を付与しただけの機体である。事実大型化し、固定武装を充実させてはいるものの、その機体特性は一年戦争時にホワイトベース隊にて運用されたFAガンダムのそれと大差無い。それこそパイロットの負担を減らすために3名が乗り込んでいるものの、複数搭載されている教育型コンピューターの補助を受ければパイロット一人でも十分に動かせるようにはなっている。だが高火力で同時に多目標を攻撃可能という性能を最大限発揮しようとするならば、やはりコンピューターの補助だけでは限界がある。何故なら最終的に攻撃を判断し実行するのはパイロットの役目だからである。武装の内、頭部の連装ビーム砲とバックパックの6連装ミサイルポッドの使用権限が即座に委譲され、既に準備を終えていたカチュア准尉がその火力を解き放った。

 

「いっちゃえ!」

 

6連装4基、合計24発の対艦ミサイルが盛大な噴射炎と共に次々とランチャーから飛出し、不運にも艦隊の前衛を担っていたムサイ級達に殺到した。友軍の突然の裏切りに混乱していたのだろう、碌な反撃も出来なかったムサイへミサイルが突き刺さり、その弾頭に込められたエネルギーを存分に開放する。瞬く間に攻撃を受けた3隻の内2隻が火球へと変わり、残る1隻も船体の大部分を失って漂流する。しかしそれをレイチェルは許さなかった。

 

「これで!」

 

言いながら彼女はMkⅣの正面へムサイを捕らえる。すると胸部の装甲が展開し砲口が現れた。そして即座に砲口からビームの奔流が放たれる。戦艦の主砲を切り詰めて搭載したそれは砲身が短くなった分集束率と弾速が低下しているが、そんな事は撃たれた側には何の慰めにもならなかった。何せ元が戦艦の主砲なのだ。艦隊戦の距離から敵艦へ有効打を与えられる兵器が多少性能が下がった所で脅威である事に代わりはないし、何よりもガンダムMkⅣはMSの対艦戦闘距離でそれを放ったのだ。当然のようにビームは船体を貫き、船内を暴れ回ったビームは武器弾薬や推進剤を燃焼させた。崩壊しかけたムサイがその誘爆に耐えられるわけも無く、三つ目の火球となって虚空に消える。瞬く間に艦隊の五分の一を失った敵部隊は慌ててMSを迎撃に差し向けるが、そこで更なる絶望が彼等を襲う。

 

「まだ抵抗するなら!」

 

レイチェルが叫び、MkⅣがその手に携えていた武器を構える。ガンダムMkⅣ専用ビームマシンガン。機体サイズの問題から専用装備となるのは当然のことであるが、問題はこの武装が対MS戦を前提とした火器だという事だ。従来のビームライフルに比べ遙かに太いシルエットの銃身部分には6門分のユニットが収められており、これが順番にビームを発射する。エネルギーは本体からの供給に加えマシンガン本体にもMSと同様のジェネレーターが内蔵されており、極めて高い連射性能と射撃継続時間を実現している。そして何より重要なのが、この射撃の1発毎がRX78が運用していたビームライフルと同等の威力を持つ事だ。一撃でMSを撃破可能な威力の弾幕という理不尽をMkⅣは迫る敵機に向けて解き放つ。それは正に致死の暴風であり、絡め取られたMSは皆同じ末路を辿った。

 

『後れを取るな!』

 

敵が怯んだのを見て取ったのだろう。高揚した声音が通信に響き、ジービッグ・ザッムが更に前進する。胴体中央に据えられたメガ粒子砲が閃光を放ち、敵艦隊の右翼に展開していたチベ級が直掩のリックドム諸共爆発する。更に戦果を拡大しようとしたのだろう、爆発の近くにいたムサイ級に向けてジービッグ・ザッムが背中のキャノンを向けたその瞬間、ビームがMkⅣとジービッグ・ザッムへと降り注ぐ。そして僅かな間を置いてジービッグ・ザッムのキャノンに巨大なアームが取り付き、弾倉を握り潰した。

 

『これ以上はやらせん!』

 

混線した一般回線に男の声が響く。レイチェルが見上げたそこには緑色の巨大なMAが頭上から迫っていた。

 

「新型!?」

 

その姿に思わずレイチェルは驚きの声を上げる。事前に受けた報告ではデラーズフリートに真面な生産設備は無く、戦中に持ち逃げした装備とジャンク品をつなぎ合わせてでっち上げたMSモドキ程度しか戦力を有していないという事だったのだ。観艦式を襲撃したMAの様に既に建造されていたらしいものならばともかく、目の前の機体はデータベースに存在しない完全な新型である。しかも見る限り問題なく稼働している。少なくともジャンク品で作り出せる様な代物ではない。

 

『こ、この!?』

 

自機が損傷して動揺したのだろう。その場で向き直りながらジービッグ・ザッムがメガ粒子砲を敵機に向かって放つ。だがその光は装甲へ届くより前に散らされてしまう。それはまるで不可視の障壁に阻まれたように。だがその光景をレイチェルは良く知っていた。

 

「Iフィールド!」

 

言いながら彼女の表情は益々険しくなる。ジオンも一年戦争中にIフィールドを実用化していたものの、それは試作機に搭載される程度のものだった筈だ。だが目の前の機体が発生させたそれは明らかに出力や安定性が向上している。それは相応の施設と研究機関を持たなければ実現出来ないものだ。

 

「アナハイム?それとももっと別の何かが手を引いているっていうの!?」

 

「後にしなよ!」

 

思わず出た言葉にカチュア准尉が怒りを滲ませた声音で応じる。その叱責でレイチェルの混乱しかけていた思考が持ち直す。そうなれば彼女の行動は早い。

 

「接近戦で行くよ!」

 

言いながら彼女はビームマシンガンからサーベルへと武器を持ち替え敵機へ突撃する。Iフィールド持ちの機体同士では、ビームによる射撃が意味を成さないからだ。だがそれを見た敵は一気にバーニアを噴かせて加速すると、MkⅣの隣をすり抜ける。その先には損傷したジービッグ・ザッムが居た。

 

「拙いっ」

 

改良が施されたとはいえ、ジービッグ・ザッムの基本構造はビグ・ザムと同様だ。そして唯一自分と同等の相手に対抗する為の手段だったキャノンは初撃で失っている。

 

「避けて!」

 

レイチェルの言葉も虚しく、再び敵MAの腕が本体から分離しジービッグ・ザッムへと掴み掛かる。だが今回はそれだけでは済まなかった。

 

「あっ!?」

 

掴んだクローの隙間からメガ粒子の光が漏れる。Iフィールドは境界面の内側に入り込んだビームを無力化出来ないのだ。当然装甲表面に直接突き立てられたビームサーベルは性能通りの力を発揮してしまう。カチュア准尉が短い悲鳴を上げる中、二本のビームサーベルに貫かれたジービッグ・ザッムは装甲の隙間から火を噴きながら沈黙するのだった。

 




以下作者の自慰設定

ガンダムMkⅣ

83年に実施されたガンダム開発計画の競作として設計開発されたMS。拠点防衛用特務機体というコンセプトに対しアナハイムがMSを中心に追加兵装による拡張で要求を満たしたのに対し、MkⅣは機体そのものを大型化する事で要求性能を満たしている。その結果同機の全高は40mに達しており、当然ながら標準的な機体と同様の運用は不可能となっている。主兵装として胸部に戦艦の主砲を転用したメガ粒子砲を1門、その左右に拡散メガ粒子砲をそれぞれ2門ずつ備えている。また腕部には連装メガ粒子砲を備えている。大型化に伴い標準的なMSと武装の共有は不可能となったため携行する火器も同機専用の物となっている。特にMS用のジェネレーターをそのまま搭載した専用のビームマシンガンは一般的なMSが運用しているビームライフルと同等の火力で弾幕を形成出来るなど、建造当時としては規格外の火力を誇っている。また1年戦争時の戦訓からIフィールドを搭載した敵機との戦闘を想定しており、バックパックにサラミス級と同様の6連装ミサイルポッドを4基装備するほか、専用シールドの裏側に380mm多連装ロケットシステムを装備するなど実弾兵装も充実している。
防御面においてもサイズに相応しい重装甲に加えIフィールドを搭載する事でビームに対しても極めて高い性能を誇っている。その一方で稼働時間確保のため機体容積の大部分をジェネレーターと冷却システムが占めているため、運動性並びに機動性は一年戦争当時の機体とほぼ同程度となっており、同時期に開発された新鋭機に対して大きく劣る形となっている。
また本機の特徴として特異な外観に反する操作難易度の低さが挙げられる。これは同機があくまで重武装のMSを拡大した機体であるため機体サイズによる運用の差を除けば、操縦は一般的なMSと大きな違いが無いからである。このため極めて強力な機体でありながらパイロットに特別な能力を一切要求せず更には1名のみでも運用可能となっているが、能力を完全に発揮しようとした場合は火器管制員及びオペレーターを含めた3名が望ましいとは開発者の談である。
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