WBクルーで一年戦争   作:Reppu

129 / 156
83編エピローグ


129.0085/某日

「新型の調子はどうだ?モンシア大尉、ウラキ中尉」

 

「良い感じですよ少佐。ただ俺達にはちぃとばかし物足りませんがね」

 

「ジムカスタムの上位互換といった感じですけど、確かに大尉達みたいなベテランの方からすると鈍く感じてしまうと思います」

 

模擬戦を終えてハンガーに固定された機体を見上げつつ、俺は新型機から降りてきた二人に声を掛けた。そうしていると別のテストを行っていたメンバーも次々と戻って来て、格納庫は一気に騒がしくなる。

 

「もうちょっと反応は良くならんかい?」

 

「まだテストなんですよ大尉、我慢してください」

 

同じ様に不満を漏らしているのはアルファ・A・ベイト大尉だ。モンシアやウラキはガンダムに乗っていたし、ベイト大尉もギリギリまでチューニングしたジムカスタムだったからな、一般向けのデフォルト設定ではそう思っても無理はない。

 

「今週の動作テストが終了すれば各人に最適化も行える。それまでは我慢したまえ」

 

そういいながら近付いてきたのはテム・レイ少佐だ。彼は何となく恨めしげな目で新型機を見上げる。

 

「また少佐の予言が当たってしまったな」

 

いやいやいや。

 

「何を仰います。ちゃんとガンダムが量産されたじゃないですか」

 

そう言い返せばテム少佐は不機嫌そうに鼻を鳴らして口を開いた。

 

「少佐も目があってブレードアンテナがついていればガンダムと言い張る口かね?」

 

テム少佐の物言いに俺は苦笑しつつ同じ様に新型機を見上げる。量産型ガンダムMkⅡ。ユニバーサル・ガードの主力MSとして配備が決まった機体だ。2年前のテロ事件後、治安維持部隊として発足したユニバーサル・ガード――通称UG――は、当初選抜された部隊がそれぞれ保有していた機体をそのまま運用していたのだが、その状況に難色を示したのが発起人のワイアット大将その人だった。

 

「UGは象徴なのだよ。相応の品格が必要だ」

 

そんな訳で限りなく凍結に近い扱いを受けていた次世代MS開発計画が再始動、最も標準的な仕様だったMkⅡを量産出来る水準に仕立て直したのがこの量産型ガンダムMkⅡである。当然ながらあの馬鹿みたいな性能は発揮出来ないが、それでも一般的な量産機であるジムⅡに比べれば遙かに高性能である。まあそれに、

 

「そのガンダム顔が重要なんでしょう?実際大した威力ですよ」

 

大抵のジオン残党や反政府組織にとってガンダムは恐怖の代名詞だ。治安出動でホワイトベース隊が動いた際には、相手がガンダムの集団を見て逃亡するなんて事も頻繁に経験している。

 

「むう…」

 

「まあ納得のいく機体の用意は今後の宿題という事にしておきましょう」

 

今のところUGによる治安維持活動は好意的に受け入れられていて、原作のティターンズとエゥーゴのような分裂も今のところ表面化していない。だが気になる事も幾つかある。

 

「宿題ね、それはいずれ私の納得のいく機体が必要になると言う事かな?」

 

「断言はしませんよ、俺は神様では無いですからね」

 

だが、治安維持の為に独立した行動権を持つUGと呼ばれる組織の存在。そこに俺達ホワイトベース隊を含むアルビオン隊が所属している事、更にジーン・コリニー大将の派閥からバスク・オム大佐も加わっている。そこに嫌な予感を感じるのは俺が本来の歴史に毒されているからだろうか?

 

「…そういえば来月だったかね?バスク大佐の火星討伐は」

 

「治安維持活動ですよ」

 

「最新の戦艦とMkⅢをあるだけ引っ張り出しておいて良く言う」

 

最新の戦艦とはバーミンガム級の2番艦の事だ。名前こそ違うがはっきり言ってドゴスギアである。単艦で増強一個大隊のMSを運用出来る現時点で最強の艦である。慣熟訓練を終えた同艦は輸送艦を含む艦隊でテム少佐が言うとおり来月火星での治安維持任務に就く。

 

「サイド3や月からは随分と逃亡した人員が出たようだね」

 

「UGとしては有り難い話ですよ。後ろ暗い奴らが自分から出て行ってくれるんですから」

 

発端は半年ほど前の事だ。UGによる治安維持活動が規模を拡大し各サイドへ駐留部隊を置くようになったのだが、その辺りからアングラで噂が流れ始めた。曰くアステロイドベルトに逃亡したジオン残党が火星の開拓に成功し人員を受け入れている。あの事件においてアクシズへの追求は議会からの介入もあって有耶無耶になっている。当初は亡命してきたシーマ中佐の証言を掲げる軍側が優勢だったのだが、物的証拠が無いとして議会がサイド3へ抗議文を送るだけで終わってしまった。アナハイムも関係を疑われたが、取調中だった容疑者のオサリバンが急死した事でこちらも捜査は難航している。UG発足時の演説で所謂浮動層なスペースノイドのジオン支持は原作より少ないようだが、一方で過激派はより先鋭化しているようにも思えた。その中で流れたこの噂は居場所を無くしかけて居た過激派の希望となったのだろう。少なくとも数千、場合によっては万単位の人間がアステロイドベルトへ向かったのではないかという事だ。今回の火星派遣はそうした情報に対する実態調査と万一の際の治安維持活動である。

 

「まあ、火星の件をバスク大佐に丸投げするのは不安ですけどね」

 

UGは現在、コンペイ島を根拠地とした宇宙部隊とここオーガスタを根拠地とした地上部隊に分かれている。組織内で人員の交流はあるが基本的に異動は無い。そして地上部隊の規模は殆ど変わらず宇宙部隊は増強され続けている。

 

「地上部隊にはペガサス級3隻に加え一年戦争以来の精鋭が多数在籍している。地球に潜伏する残党の規模を考えれば十分な戦力だ」

 

そう言われれば反論は難しい。地球には陸軍も展開していて残党の動きも少ないし、俺達が出動する際も残党などでは無くMSで武装した犯罪者だったなんて事はざらにあるのだ。対して宇宙では小規模ではあるが政府に対するデモなどが起きている。無論届出の出された合法的な行為ではあるのだが、その頻度は確実に増加していた。UGが各サイドへの駐留を決定したのもその為だ。

 

「第1軌道艦隊と第3軌道艦隊は今回の件に好意的だと聞くが」

 

コリニー大将の退役後に第1軌道艦隊を引き継いだのはジャミトフ・ハイマン少将だった。そこに副司令としてブレックス・フォーラ准将が配属されたのは、因果を感じずには居られない。そう言う意味では超タカ派の第3軌道艦隊よりは第1軌道艦隊の方が意見が纏まっていないと見るべきだろう。ただその意見の対立がどうにも嫌な予感を想起させるのだが。

 

「失礼します!」

 

そんな事を話していたら後ろから声を掛けられた。振り返るとそこにはピカピカの新人が3人程立っていた。

 

「本日よりホワイトベース隊に配属となりました、エマ・シーン少尉であります!」

 

「同じくジェリド・メサ少尉です」

 

「カクリコン・カクーラー少尉であります」

 

「おう、ホワイトベース隊のMS部隊を預かっているディック・アレンだ、よろしく頼む」

 

初対面だが良く知っている3人に向かって俺は答礼をしつつそう笑いかける。すると彼らの後ろをヨナ達が駆け抜ける。多分シミュレーターでまた遊ぶのだろう、最近MkⅡ以降の機体が解禁されたからその性能チェックに彼らは夢中なのだ。まあ対戦の強ユニット探しをしているとも言うが。

 

「早くしろよカミーユ!シミュレーターが取られちゃうぞ!」

 

ヨナの声にジェリド少尉が振り向き、そしてカミーユを見て呟いた。

 

「なんだ、男か。…てかなんでこんな所に子供が?」

 

因みにカミーユはびっくりするくらい耳が良い。ジェリド少尉の言葉に急ブレーキを掛けるとこちらへ向かってくる。

 

「アレンさん。誰ですか、この人?」

 

なんで君達はいきなり友好度マイナスから人間関係が始まるんです?

 

「こちらは新しくホワイトベース隊に配属になったジェリド・メサ少尉だ。そんでこっちはフランクリン・ビダン中尉のご子息でカミーユ・ビダン君。このオーガスタのトップエースの一角だな」

 

俺の紹介に双方が目を見開く。ホワイトベース隊は精鋭部隊として名を馳せているから、当然配属されるのは優秀な人材だ。そしてそんな部隊が所属している基地のエースだと子供を紹介されればジェリド少尉のような反応にもなろうというものだ。そんな二人に俺は笑いながら話し掛ける。

 

「人を見かけだけで判断するのは早計だぞ二人とも。ほら、ヨナが待っているぞカミーユ」

 

俺がそう促すとカミーユは少しむくれたままシミュレーター室の方へ走っていく。ファーストコンタクトにおける最悪の事態は避けられただろうか。

 

「あの、少佐殿。彼らは…」

 

カミーユの姿が見えなくなったのを見計らってエマ少尉が問いかけてくる。それに対して俺は隠さずに伝えることにする。

 

「オーガスタでNTの研究を行っているのは知っているだろう?彼らはその候補生だよ」

 

「先程トップエースの一角と仰っていましたが」

 

そこに戸惑った声音でジェリド少尉が加わって来た。

 

「ああ、ホワイトベース隊も含めて基地のパイロットは合同でシミュレーション訓練をする事があるんだが、彼はここ半年トップ5から落ちた事がない」

 

因みに1位と2位は入れ替わりが激しいがそれぞれアムロとララァが取り合っている状態なのでシミュレーターの最高成績は3位だったりする。まあ実はその辺りも固まりつつあるのだが。

 

「それ程ですか、NTってのは」

 

黙って聞いていたカクリコン少尉がそう唸る。それに対して俺は笑いながら口を開いた。

 

「ああ、だから大変だぞ。何せ彼らが軍人になるかどうかは俺達の双肩に掛かっているんだからな」

 

少なくとも兵士として使い物になれば年齢なんて関係ないなんて連中に彼らを任せる訳にはいかんのだ。

 

「任せてください。残党なんざさっさと片付けてやりますよ」

 

自信満々と言う様子でジェリド少尉がそう応える。これはまた手が掛かりそうだ、そんな事を思いつつ、俺は彼らの訓練メニューを考えることにした。宇宙世紀0085、俺達は束の間の休息を得ていたのだった。




次はΖ見終わったら書きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。