WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


138.0087/02/02

「望遠カメラにてフォボス、捉えました!」

 

「目標表面に動きありません!艦影も無し!」

 

「前回と同じか」

 

オスカ少尉とマーカー少尉の報告を聞きブライト中佐は小さく唸った。こちらが捉えた以上相手もホワイトベースを見つけていると想定して行動しているのだが、敵は前回のバスク大佐達に対したのと同様にそれらしい行動を起こしていない。

 

「後5分で報告のあった交戦距離です」

 

ワッツ少佐の言葉にブライトは頷くと、彼は指示を飛ばす。

 

「フォボスと相対速度合わせ!艦隊はこのまま対象との距離を維持する」

 

本来艦隊行動の指揮は最先任であるグレイファントムのブライリー大佐が執るのが普通だが、第13独立部隊は少々事情が特殊なため彼が指揮を執っている。それもこれも部隊の最高戦力とMS隊の部隊長がホワイトベースに乗り込んでいるためだ。尤も本当のところはそんな連中が全幅の信頼を置いているブライトに判断を任せた方が良いとブライリー大佐達も考えているからなのだが。

 

「MS各機は当初の想定に従って展開!ミノフスキー粒子戦闘濃度で散布!」

 

ブライトの言葉を補うようにワッツ少佐が細かい指示を出す。彼等の言葉に応じるようにカタパルトの隔壁が開放され、MSが次々と飛び出していく。

 

「さて、どう出る?」

 

緊張に思わず拳を握りながら、ブライトはそう呟いた。

 

 

 

 

「どうだ?何か感じるか?」

 

俺の質問に対する僚機の二人からの反応は率直に言って悪いものだった。

 

『私は何も』

 

『俺もです。寧ろ気味が悪いくらい何も感じません。どうしますか?』

 

アムロ中尉の問いかけに一瞬だけ悩む。相手もNTならアムロ中尉のプレッシャーを無視出来ない筈、そう考えていたのだがどうにもそう簡単にはやらせてくれないらしい。

 

「邪魔をされないならそれはそれでいいさ。砲撃準備だ」

 

『了解です』

 

俺の指示に従ってエリス中尉の操るプロト・ドミンゴからアムロ中尉のMkⅢがゆっくりと手を離すと、素早く姿勢を修正し射撃準備に入る。

 

「まだ動かないのか?」

 

長大なバスターランチャーを構え、MkⅢが完全に攻撃の準備を整えても敵に動きが無い。言いようのない不気味さの中で、バスターランチャーから放たれた閃光が虚空を焼いた。

 

『っ!』

 

その光は真っ直ぐにフォボスへと向かい、直前で見えない壁に阻まれる。それを確認したエリス中尉が息を呑んだのが通信越しに聞こえてきた。オイオイマジかよ?

 

「要塞を丸ごと覆うIフィールドだと!?」

 

その思い切った設計に思わず俺は声を上げてしまった。同じ様なことは連邦軍でも検討されたが、費用対効果が薄いとして見送られていたので無意識の内に更に台所事情の厳しい残党がそんな事をしてくると考えていなかったのだ。成る程、連中が余裕ぶっていたのはこのせいか。

 

「W101よりホワイトベース!目標はIフィールドによる強固な防御能力を有している!支援要請!!」

 

そう言ったものの効果は薄いだろうと俺は考える。何せ俺達は露払いの為に呼び出されたから、本格的な対要塞装備を持ってきていない。そしてそれらを持っている部隊は遙か後方だ。

 

『っ!!この感じ!?』

 

『なんだ!?急に!?』

 

二人の緊張感を孕んだ声音にNTのプレッシャーが急激に増大したのだと察する。だがそれよりも明確な殺意が俺に向かってきた。

 

「レーザーロック!?」

 

警告音に思わず舌打ちをしながら機体を捻るが、予期していたメガ粒子の輝きは襲ってこない。だがその代わりにロック警報は鳴り続け、更にその本数は増え続ける。違う、これは!?

 

「二人とも気をつけろ!レーザー攻撃だ!!」

 

舌打ちと共に叫びながら機体を操作するが警報は鳴り止まない。そりゃそうだろう、状況からして敵の攻撃はファンネルによるものだ。小型無人兵器の反応速度を超えた機動なんて、どんな高性能MSだって出来るものじゃない。

 

「にゃろう!!」

 

ビームライフルに取り付けられたマルチランチャーを周囲に撃ちまくる。最短に設定された時限信管が即座に作動して爆発、周囲に破片がばらまかれるが誘爆や何かが被弾したような様子は確認出来ない。くそ、完全に油断していた!

 

『ミサイルが!?』

 

悲鳴じみたエリスの声に視線を向ければ、飛来していた支援のミサイルが次々と爆発しているのが目に入った。

 

「W102位置を特定出来るか!?」

 

『やってみます!』

 

そんな遣り取りの間にも機体表面の温度が上昇し、システムが警告を告げてくる。宇宙世紀においてレーザー兵器はあまり普及していない。これはメガ粒子砲の方が容易に小型で高威力な武装を製造出来る事に加え、臨界半透膜と呼ばれるレーザー対策が普及していたためだ。特定のエネルギーや波長を持つレーザーを反射してしまうこの薄膜を突破するには、それこそコロニーレーザー並に高出力のレーザーが必要になる。その為艦載タイプの武装からでもレーザーは消えつつあったのだ。そして兵器として戦場に現れなくなれば、当然それに応じた対抗手段も削減される。

現在のMSはその殆どがメガ粒子砲対策の耐ビームコーティングが施される一方で臨界半透膜の処理は行われていない。特に俺達の乗る第2世代と呼ばれる装甲を完全な消耗品と割り切っている機体は部分的にすら行われていない。

 

『くそっ!邪気が渦巻いて!?』

 

『駄目!きゃっ!?』

 

MSよりも動きが直線的なせいだろう、一番最初に損傷したのはエリス中尉のプロト・ドミンゴだった。機体底面側に装備されていたコンフォーマルタンクが破損したのか、彼女の機体は派手に推進剤をばら撒きつつ姿勢を崩す。だがそんな彼女を庇う余裕は俺には無い。畜生、これじゃ完全にお荷物だ!何か、何かないのか!?

 

「あれは!」

 

機体を振り回しながら周囲へ視線を彷徨わせていた俺は、エリス機がまき散らした推進剤が不自然に抉れているのに気が付いた。それは高出力のレーザーが通ることによって加熱された推進剤が吹き飛ばされたのだ。

 

「ならこれでどうだよ!?」

 

タッチパネルを操作して俺はバックパックを緊急放棄すると、即座にビームライフルを撃ち込む。俺の狙い通りバックパックは爆発を起こし周囲へと推進剤をまき散らした。

 

「見えちまえば!」

 

レーザー兵器はその性質上照射し続けねばならないから、射線の確認が比較的容易だ。そして誘導兵器で無い限り本体は射線と同軸に存在するのだから、そちらへ撃ちまくれば。

 

「当たりだ!」

 

隠蔽性を重視した代償かどうやら敵のビットは運動性が高くないようだ。3発目のビームが何も無い様に見えた空間で爆発を起こす。成る程、吸光性の高い塗料で隠蔽してるのか。これは光学センサーによる索敵に重きを置いたMSにとって初見殺しも良い所だろう。尤も仕掛けが解ってしまえば対処出来ない訳じゃないが。

 

「やっぱりそう来るよな!?」

 

ビットの撃墜に呼応したようにフォボス表面に噴射光が確認される。ビットの対策はある意味簡単だ。周辺宙域にスモークでも散布すれば目視出来る。だがそれは同時に視界を塞いだ状態で敵と戦う事になる。無論相手も視界は制限されて居るわけだが、連中が本当にNTならそれは大した問題にならない。そして出撃してきたとならばつまりそういう事なのだろう。

 

「W103!エリス中尉離脱しろ!W102は103をバックアップ!」

 

『逃げるんですか!?』

 

当たり前だよ。

 

「相手の土俵で戦うなんざ馬鹿のする事だ!」

 

高機動パッケージで来て正解だったな。バックパックを放棄してしまったが、まだテールバインダーと脚部のバーニアだけで十分速度が出せる。この小隊の最高戦力は間違いなくアムロだが、だからこそ損傷したエリス機の援護まで出来るのは彼だけだ。つまり俺は何とか独力でこの状況を切り抜ける必要がある。

 

「こちとらおっかないかみさんが待ってんだ!うっかり死ねないんだよ!」

 

不用意に仇なんて生産したら宇宙世紀の特級呪物を製造しかねん。本当は後方勤務なんかの話を受けるべきなんだろうが、ホワイトベースの連中が前線で戦っている内はそうする気にはならない。だってそうだろう?あいつらを戦争に駆り立てた俺が、先に脚抜けするなんてあまりにも不義理じゃないか。

 

「こっち来んな!!」

 

フォボス方向に向かってビームライフルを乱射しながら俺自身もホワイトベースへ向けて移動する。しかしやはり敵の可変型MSは加速性に優れているようで、もう少しと言う所で再びロックアラートがコックピットに鳴り響いた。

 

「にゃろう!?」

 

苦し紛れにダミーバルーンを射出するも警報音は鳴り止まない。どんな手を使ったのかは知らないが、本当に連中はNTの安定供給に成功しているようだ。全く以て嬉しくない情報だ。

 

『少佐!』

 

ビームが来るのを覚悟した瞬間、聞き慣れた声と共にビームが飛来して射撃位置に着いていた敵MSに命中した。オイオイ嘘だろ?

 

『早く!』

 

ララァ大尉に急かされながらも、俺は動揺を隠せなかった。あのMS、ララァの攻撃を避けやがった!

 

「連中をキルゾーンまで!」

 

『解っています!』

 

続けてララァは射撃を行うが、やはり命中はしても撃墜には至っていない。冗談じゃ無いぞ、ガザシリーズなんて作業機を改修した急造品だろう!?

 

『もう少しっ』

 

敵機に追いすがられながらララァ大尉が呟く。もう少しで艦隊の直掩を行っている味方の有効射程圏内、必死に回避機動をとりながらモニターに表示される数字を睨んでいると、その視界の片隅で光が弾けた。白・白・白、それが信号弾の光だと理解した瞬間、色を認識して俺は呻き声を思わず上げた。白3発は戦闘中止を意味していたからだ。




以下作者の自慰設定


プロト・ドミンゴ
ドミンゴの大気圏内における可変時の飛行特性を検証する為に用意された機体。そのため部品や構造は同一ながら可変能力はオミットされている。テスト後は解体される予定だったが、MSへの適性が低いエリス・クロード中尉の搭乗機として改修が施されホワイトベース隊に配備された。装甲材やフレーム材は同一であるが可変機構を完全に取り去っており、一部装甲も空力を意識した流線的なものに変更されている。これによりペイロードがドミンゴよりも増加しており機体下部にハードポイントとコンフォーマル・フューエルタンクが増設されている。

高機動パッケージ
量産型MkⅡのオプション装備の一つ。宇宙空間での戦闘に特化した構成であり、地上での運用は不可能ではないものの基本的には想定されていない。本オプションはアナハイムを退職したニナ・パープルトン技術少尉が主に行っており、彼女が手がけたGPシリーズの構造を多く取り入れている。特に要となる機構のフレキシブル・ブーストポッドやテールバインダーは実機を元にブラッシュアップされたパーツであり、その完成度は高くパイロット達からも高い評価を得ている。
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