WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


143.0087/02/16

「フォボスの到着は3日後だったか」

 

「はい、既に国防軍の艦隊が護衛に就いております」

 

秘書官の言葉にダルシア・バハロは小さく溜息を吐いた。マーズジオン合流後の混乱が目に見えていたからだ。

 

「かといって受け入れぬ訳にはいかん」

 

7年前の敗戦によってジオン共和国は軍備に対し厳しい制限を受けている。運用する艦艇は近代化改修こそ許可されているが設計自体は独立戦争当時のものであるし、戦艦や空母といった大型艦は保有を認められていない。更にMSに至っては近代化改修すら認められていないという有様だ、民間企業であるアナハイムの警備部隊の方が高性能なMSを運用している等という、国家としては笑えない状況に陥っている。故に今後を考えるならばマーズジオンの持つ技術の吸収は必須であるとダルシアは考えていた。

 

「独立の有効期限である100年まで後13年、それまでに状況を整えねばならん」

 

ザビ家を切り捨て連邦と和平を結んだ功労者である事から誤解されがちであるが、ダルシアは連邦からの自主独立を望んでいる側の人間だ。先の大戦における行動もこのまま行けばその可能性が完全に潰えてしまうという結論に基づいた損切りであり、世間で吹聴されているような連邦の犬に成り下がったつもりなど毛頭無い。寧ろ彼に言わせれば勝てない状況で意地を張り続け目的から遠ざかる方が愚かな行為でしかなかった。

 

「経済的な復興は済んだ、人的損害も立ち直りつつある。後は外圧を撥ね除ける武力だが…」

 

技術の吸収は必須、しかし性急に進めることは余計な危険を招くとダルシアは理解している。地球圏の守護者を公言して憚らないUGは、相手が何であれ地球圏の治安を乱すと判断したならば容赦なく制圧に動くだろう事は間違いないからだ。今はまだ金の力で抑えられているものの、こちらが抱き込んでいる議員さえ危険分子と断じて拘束出来るだけの権限を彼等は付与されている。そしてその権限を乱用しないだけの狡猾さを備えている彼等が行動に出る際は、間違いなくこちらが人類の敵として断じられてしまうだろう。

 

「それだけは避けねばならん」

 

何しろダルシア達は一度失敗しているのだ。次の失敗は間違いなく致命のものとなるだろう。

 

「すまんがモナハンを呼んでくれ、十分言い含めておく必要がある」

 

ダルシアの息子であるモナハンは彼と同様に政界へ進んでいたが、その才覚は親の贔屓目を加えても高くない。当人もそれを自覚しているためかダルシアの基盤を引き継げないと考えているらしく、独自の交友関係を構築中だ。尤もそれが真っ当なものならばともかく旧軍の知己、それも社会的には後ろ暗い連中というダルシアからすれば頭を抱えたくなるような面々だから笑えない。恐らく父とは違う方向で協力者を増やそうと画策しているのだろうが、それはリスクの大きい選択である。一礼し部屋を出て行く秘書を見ながらダルシアは溜息を吐いた。

 

「ギレン・ザビとまで贅沢は言わないが」

 

思わずそう漏らし彼は思考を切り替える。力に酔っての暴発などなんとしてでも今は止めねばならない、最早ジオン共和国に人身御供は居ないのだから。

 

 

 

 

「ドミンゴは高性能だけど、専用パーツが多すぎて高コストだろ?だからMkⅡのパーツを流用してコストダウンを考えたんだけど」

 

「いやいや、カミーユ。変形すりゃ良いってモンじゃないだろ?ジェリド少尉達もなんか言ってやって下さいよ」

 

「俺は悪くないと思ったぜ?まあ大分クセが強いから乗り熟すにゃ骨だろうけどな」

 

「俺みたいな凡人としては素直にドミンゴを量産してくれと言いたいね。数を揃えたって戦力に数えられなきゃ意味が無い」

 

「私は新型機を造るくらいなら、MkⅡを強化した方が現実的だと思うわ。高機動パックを強化すれば習熟期間も短くて済むでしょう?」

 

クワトロ・バジーナがシミュレーター室へ入ると、そこでは先客達が議論を交わしていた。聞こえて来た言葉によればどうやら新型機についての意見交換らしい。それもどうやら発案者は子供のようだった。

 

「すまんがシミュレーターを使っても構わないかな?」

 

彼がそう声を掛けると少尉達が慌てて敬礼をする。それに苦笑しつつ答礼しながら、彼は内心の苦々しさをかみ潰した。子供が思いついた程度の機体ですら試しに設計はしてみよう等という事が出来るのは、それだけ軍の予算が潤沢であるという事だ。そして軍にそれだけ予算が回せるだけの税収を地球連邦政府が得ている証左でもある。新型機を設計するかどうかですら十分な検討を重ねねばならないアクシズとは正に雲泥の差だ。

 

「あの、クワトロ大尉!」

 

「君は、カミーユ・ビダン少尉だったかな?私に何か?」

 

「はい、大尉は優秀なテストパイロットだとアレン少佐から聞いています。宜しければ僕の設計した機体を試しては貰えないでしょうか?」

 

「私が?」

 

唐突な願いにクワトロは一瞬戸惑いを覚え、思わずそう口にする。するとカミーユ少尉は屈託の無い笑顔でその理由を口にした。

 

「はい、色々な機体を経験されている方の意見はとても参考になりますから」

 

パイロットとしての技量のみを評価される事に新鮮さを感じながらクワトロは少し考えその申し出を受ける事にする。連邦の試作機を知っていて損になる事は無いと言う建前と、純粋に新型のMSに興味を覚えたからだ。

 

「私で良ければ試させて貰おう」

 

「折角やるんなら模擬戦なんてどうです?大尉の腕じゃあAIは物足りないでしょう?」

 

「おいジェリド!」

 

挑発とも取れる提案をジェリド・メサ少尉が口にすると、カクリコン・カクーラー少尉がそれを慌てて止める。しかしその言葉は愉快そうに応じる別の声に肯定された。

 

「いいね、なら3対3でどうだい?まあ俺達はガンマを使わせて貰うけどな」

 

「アポリー!お前も勝手にっ」

 

クワトロに付き従っていたアポリー・ベイ中尉がそう答え、隣にいたロベルト・ベガ少尉が窘めるが、既に場の空気はそうなる雰囲気になっている。

 

「ふむ、カミーユ君がそれで良いなら私は構わない。期待に添えるかは解らないがね」

 

所詮はシミュレーションであり命に関わるものでもない。ならばレクリエーションを兼ねた所で大きな問題は無いだろう。クワトロが了承したことで話は纏まり、それぞれがシミュレーターへと移動する。シートに着席すると直ぐに管制室から通信が入り、ポップアップしたウィンドウにカミーユが映った。

 

『有り難うございます大尉。データは既に登録済みですから、起動してみて下さい』

 

「了解した」

 

そう言って彼は該当するデータを呼び出す。リニアシートの普及によって連邦のMSはどの機体であってもコックピットのレイアウトが変わらない。これもまた少数故に個の性能を追求せねばならないアクシズでは実現困難な内容である。逸れがちになる意識をアップロードされたデータへ戻し、クワトロはスタティックマニュアルを開いた。

 

「タイプ・ゼータ?」

 

『MkⅥって名付けるのは流石に憚られて』

 

クワトロの呟きにカミーユ少尉が照れくさそうにそう答える。そしてマニュアルを開いたのを確認した彼はクワトロへ説明を始めた。

 

『僕が設計した、なんて言いましたけれど、基本的な部分はMkⅡとⅢをベースにナガノ中尉が構築してくれてますから安心して下さい』

 

「随分と大胆な設計のようだ」

 

基本構造に目を通したクワトロは率直にそう告げた。彼の知る可変型MSはアクシズで製造されたガザとオーガスタのドミンゴくらいであるが、それらと比べてもゼータと名付けられた機体は異質だった。何しろ普通なら重心位置になるはずの胴体が殆ど空なのだ。あるのはコックピットと冷却系くらいのもので、本来収まる筈のジェネレーターやプロペラントタンクが存在しない。それらが何処に行ったかと思えば肩やバックパック、そして大部分は脚部に詰め込まれていた。それだけでクワトロはこの機体が極めてピーキーである事を察する。

 

『大気圏内での運用も想定して空力を考慮した結果です。その代わり運動性は保証しますよ』

 

それはそうだろうとクワトロは喉まで出かかった言葉を飲み込む。機体の安定性と運動性はトレードオフの関係であるから、不安定なほど運動性は高くなるのだ。尤もパイロットが操縦する都合上、当然限界点はあるのだが。

 

「武装はロングビームライフルにビームマシンガン、サーベル。バルカンにグレネードとミサイル…随分と詰め込んだものだな」

 

高速からの一撃離脱、あるいは速度を生かした遠距離砲戦を想定しているのだろう。その思想はクワトロの嗜好と良く噛み合っているように思えた。対MS戦において格闘を多用する事から誤解されがちであるが、クワトロは高速機動からの射撃戦を最も得意としている。格闘戦を行っていたのは、独立戦争当時ゲルググを受領するまで敵MSに対して有効な火砲が存在しなかったという切実な問題故である。マニュアルを読み進めるうちに、彼の口角は自然と上がっていく。

 

『ジェリド少尉はああ言ってましたけど、やっぱり一度は慣らしておきますか?』

 

「いや、大丈夫だ。この手の無茶振りには慣れていてね」

 

そう言うとクワトロはシミュレーションを起動する。基地の演習場を模した仮想空間に機体を立たせると、直ぐ側に2機のガンマ・ガンダムが寄ってくる。

 

『中々精悍ですな』

 

『こいつは外連が利いてますね』

 

ロベルト少尉はゼータの姿をそう評し、アポリー中尉は塗装に率直な意見を述べる。ゼータは全身の装甲が白く塗装されていたのだが、これが光の加減で淡く虹色に輝いたからだ。

 

「エマルジョンコーティングという対ビーム装甲だそうだ。何、多少目立つ位はどうという事は無い」

 

何しろパーソナルカラー等というこの上なく目立つ姿で戦場を駆け回っていたのだ。この程度で躊躇う様な精神は持ち合わせていない。

 

「ほう…」

 

対戦を申し出て来た少尉達の内、ジェリド少尉はクワトロと同じくゼータを選択していた。その事にクワトロは少しだけ闘争心が燃え上がるのを自覚する。

 

「こんな気持ちは久しぶりだ。燥ぎ過ぎんようにしなければな」

 

そう口にしながら開始の合図と共にクワトロはフットペダルを思い切り踏み込んだのだった。




以下作者の自慰設定。

タイプ・ゼータ
M・ナガノ中尉とカミーユ・ビダン少尉によって設計された可変型MS。ガンダムタイプのフェイスパーツを持つ事からMkⅥと呼称したかったものの、ドミンゴが正式採用されたことで正規の開発プランからは外された事から6番目の意味を持つギリシャ文字を代用している。元型はMkⅢのフレームを基礎に可変機構を盛り込むプランであったが、ドミンゴに対しこれと言った優位性を示せずに敗れている。ゼータではパーツの多くを量産されているMkⅡと共用化することで低コストな可変型MSというコンセプトに変更しドミンゴとの差別化を図っている。しかしコストダウンと運動性能を両立させる為ドミンゴよりも遙かに安定性に欠いた設計がなされており量産機でありながら乗り手に極めて高い技量を要求するという本末転倒な仕様になってしまっている。
元ネタはデルタなガンダム。
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