WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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26.0079/10/07

「何を考えてんだ!?ジャングルを焼野原にするつもりか!!」

 

何やらエコロジストのような事を喚きながらアクセル軍曹がカイ兵長に食って掛かる。大体同じ心境なのか、ルヴェン少尉とアニタ軍曹も苦い表情である。嘘みたいだろ、こいつら正規軍人なんだぜ。

 

「森が戻るまで、一体どれだけの時間がかかると思ってる!?100年じゃ利かないんだぞ!?それを、お前!!」

 

激昂する彼に、俺は溜息を吐きながら聞いてやる。これ以上は真面目に戦ったカイ達が不憫過ぎる。

 

「アクセル・ボンゴ軍曹。君の仕事はジャングルを守る事か?」

 

違うよな?

 

「我々連邦軍人の仕事は確かに国土の防衛も含まれる。だがそれはあくまで国内から敵を叩き出す事を意味するのであって、森林保全は任務に含まれない」

 

「でもやって良い事といけない事はあると考えます」

 

「そう思うなら軍人なんて辞めて環境省にでも再就職するんだな。一応正気か確認しておきたいんだが、コロニーを落とすような連中が環境を配慮して戦ってくれると本気で思っているのか?それとも自分達だけは守って戦うとでも言いたいのか?」

 

縛りプレイ希望なんてマゾかよ。

 

「悪いがMS部隊長としては聞いてやれん要望だな。ジャングル一つより俺は部下の命の方が惜しい」

 

「地球を、自然を何だとっ…」

 

「馬鹿止せっ!申し訳ありません。中尉」

 

俺に掴みかかろうとするアクセル軍曹をルヴェン少尉が割り込んで止める。隊長だけあって多少は冷静らしい。

 

「この位で許してください、中尉殿。その、こいつらにも言い分があるんです」

 

へえ、面白いじゃないか。

 

「言ってみろ」

 

「……」

 

「どうした?そうしたいだけの、上官に刃向かってでも通したい筋があるんだろ?今ここで言えよ」

 

「俺の故郷は砂漠化で砂に呑まれちまった。俺は連邦軍に入れたけど、歳を食ってる親父やお袋はこれ以上地球が悪くなっちまったら、生きていけねぇ」

 

「…私の故郷はシドニーです、あんな非道な事をしたジオンが許せない。だから例え戦争でも同じになるわけにはいきません」

 

成程ね。

 

「その為にはお前たちは命を賭ける覚悟があるという訳だ。実に傲慢だな?」

 

こいつらやっぱり軍人よりエコロジストの方が向いているな。俺の評価に顔を顰める二人に言い放つ。

 

「そうだろう?自分の都合や信念に、お前達は俺達全員に命を賭けろと言っているんだ。そんな事も解らないのか?」

 

二人を見据えながら俺は言葉を続ける。

 

「ご両親に安心して暮らしてほしい、親孝行なことだな?ところでここにいる連中にも家族が居るんだが知っていたか?ジオンと同じになりたくない?自分の都合で他人の命を秤に掛けている時点で十分同類だよ、その程度の判断も出来ないなら軍人には向いていないな。ルヴェン少尉」

 

「はい、中尉殿」

 

「実力以前の問題だ。俺はお前達がこれっぽっちも信用できない。そんな連中と連携なんて不可能だ」

 

寧ろ今まで良く軍隊として行動出来たな?ビーム兵器用のエネルギー供給システムを備えるホワイトベースで戦うならば武装は必然ビーム兵器に偏る。実弾兵器よりもビームの方が物的負荷が低いからだ。そしてビームは戦闘艦の装甲すら溶融させる兵器である、樹木なんて至近距離を通過するだけでも燃えてしまう。そんな武装で彼らが戦うとして、まともな援護を期待出来るだろうか?レビル将軍はジオンに兵無しと嘯いたが、連邦だって似たり寄ったりなんじゃないのか?こんなのが正規の軍人だなんて冗談にしても笑えなすぎる。

 

「だから貴様の隊は独立して扱う、相互支援も想定しない」

 

だから好きに戦って良いから勝手に死ね。俺はお前達が居ないものとして考える。畜生、同じ独立機械化混成部隊ならユウ・カジマの所でも寄越せってんだ。

 

「さて、俺が言うべき事は以上だ。第一、第二小隊は引き続き慣熟を行うから10分後に格納庫に集合。第四小隊は待機。では別れ」

 

 

 

 

MS隊の訓練報告書を自室で受け取ったブライト・ノア特務少佐はそれに目を通してアレン中尉を睨みつけた。

 

「どうしてこうなる?」

 

「速成教育の弊害でしょう。時間のかかる洗脳教育がすっぱり削られていますからね」

 

たとえ志願した軍人であっても入営まで彼らは平凡な一般人である。当然のように殺人を忌避する精神構造と個々に信念や信仰と言ったものを抱いているのが普通であろう。それらに躊躇なく引き金を引かせる為には相応の手間暇が掛かるものだ。開戦前のカリキュラムならば当然そうしたものも含まれたが、開戦後の繰り上げ任官者や志願者相手のものは大幅に省かれていた。兵士のメンタルケアよりも前線で銃を構えられる人数の方が優先されたためである。そしてMSパイロットの多くは人格や精神性よりも、まず適性の有無で選別された。特に使い捨ての試験部隊などは優先してそういった能力はあっても精神性に問題を抱えた人員が多く回されていて、損害を助長している。だが、軍という組織からすれば十分許容内の損害であった。

 

「何とかならないか?MS1個小隊だろう」

 

「何度か痛い目に遭えば多少は改善するかもしれません。生きていればですが」

 

暗に教育での改善は不可能で、その前に死ぬとアレン中尉は嫌そうな顔で答えた。別に彼だって死んでほしいと考えている訳ではない。だが精神性という目に見えない部分が原因となれば矯正が成功しているかなど判別できないし、それが判明するときは誰かの命が懸かっている時だ。そのリスクを受け入れるだけの価値をアレン中尉は彼らに見出していないのだろう。

 

「彼らの小隊は完全に別けて運用します。ローテーションを組みたいと思っていましたから丁度良いでしょう。贅沢を言うなら後もう1小隊欲しいですが」

 

「その辺りはマチルダ中尉の補給次第だが、あの様子では難しいだろうな」

 

そう言ってブライトは溜息を吐いた。待ち望んでいたパイロットの増員は多分に政治的意図が含まれていて、その上既存の部隊と強い軋轢を早々に生み出している。部隊を預かる身としては正に頭を抱えたい状況だ。

 

「致命的な事にはならんよう頑張ってはみますが、期待はしないでください。何しろ洗脳は受けましたがするのは素人です」

 

その言葉にブライトは再び溜息を吐くと共に頷いた。何故ならホワイトベースに教育が行える人間など一人も居なかったからだ。

 

 

 

 

「くそっ!ガキ共が調子に乗りやがって!」

 

「その辺にしておけ、アクセル」

 

ロッカールームで吐き捨てるように言い放つ部下をルヴェン・アルハーディ少尉はそう咎めた。あの後何とか部下を宥めて彼らの訓練に参加したものの、その結果は散々なものだった。周囲の被害など知った事かというえげつない戦術を乱発する相手に、彼らは手も足も出なかったのである。尤も単純に戦術で負けたのかと言えばそうではない。何度かはキャノンまで肉薄し格闘戦に持ち込めた事もあったのだ。しかしそれでも彼らは10回にも及んだ模擬戦でとうとうただの1機も撃墜判定をもぎ取る事が出来なかったのだ。

 

「でもタイチョ、あのキャノンおかしいぜ!?なんで鈍足デブのキャノンがあんなに格闘が出来るんだよ!」

 

「それこそ彼らが必死に訓練した証だろう。教育型コンピューター搭載機ってのはそういうモンだ」

 

「ここの隊はガンダムがありますもんね。実質こちらの機体の上位互換と訓練をし続けていると考えれば妥当でしょうか?」

 

幾分冷静なアニタ軍曹がそう評する。だが彼女の表情からルヴェンは嫌な感情を読み取っていた。それだけの技量がありながら周囲に配慮しないで戦うのは怠慢ではないか?そう透けて見える彼女に対し、ルヴェンはどう注意すべきか悩んだ。二人共パイロットとしての技量はモルモット隊に選ばれる程度には優秀である。戦意に関しても良好なのだが、軍人としては少々自己制御に難がある。特に今回は特大のそれが最悪のタイミングで発揮されてしまった。その結果があの戦力外通告である。

 

(何とかしなけりゃ、死ぬ事になる)

 

補給と修理を受けるという事は、つまり彼らもモルモットという事だ。そして高性能かつデータ収集に最適な機体が宛てがわれている以上、今までよりも遥かに過酷な戦場に投入されるとみて間違いない。その時に彼らの援護を受けられないのは致命的とすら言える。兵隊としてそれなりに覚悟はしているが、流石にそんなつまらない死に方をするのは御免だった。

 

「なあお前ら。気持ちが解らんわけじゃないが、俺はまず身近な問題を片付けるべきだと思う」

 

意図が解らないのか怪訝な顔をする二人にルヴェンは言葉を続ける。

 

「そもそも貴重な森林地帯でドンパチするのが悪い訳だ。そして中尉の言う通りジオンの奴らは遠慮なんてしないだろう。なら多少の犠牲を払ってでも、早急にジオンを地球から叩き出す事が重要だと俺は考える。そしてその為には、彼等との協力が不可欠だ」

 

「それが必要以上の破壊を伴ってもですか?」

 

「もっと長期的に考えろよ、アニタ。被害を抑える為にジオンへの攻撃を緩めたら戦争は長引く。ビーム一発を躊躇してその後何発の砲弾を見逃すつもりだ?」

 

「…連中はいけ好かねえけど、腕は確かだ」

 

アニタ軍曹よりも先にアクセル軍曹がそう口を開く。ジオンへの嫌悪が理由となっている彼女よりも、生活基盤の維持という喫緊の課題を理由に持つ彼の方が損得への反応は敏感だ。

 

「わかったよタイチョ。あの中尉さんに従う」

 

「二人が決めたのなら、仕方ありません」

 

アニタ軍曹がそう口にしたことでルヴェンは表情を和らげる。一朝一夕でどうにかなるとは思わない。だが人は言葉を交わし妥協点を探る事が出来る生き物だ。彼は破滅の足音が少し遠ざかった事に今は小さく安堵するのだった。




エコロジスト過激派はいつも難しい事を言う(ヘンケン
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