WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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36.0079/10/17

「そんな!?我々だけで基地の攻略を続けるのですか!?」

 

艦長席に座ったブライト・ノア特務少佐は第2機械化混成大隊司令部からの通達に思わずそう叫んだ。

 

『第4軍と通信が途絶して2時間以上経つが、復旧する見込みがない。そしてフラックタワーの排除が成されていない以上、誰かがやらねばならん。つまり我々だ』

 

「…まだ敵のMS部隊は残っていると言うのにっ」

 

『戦場において想定外の事は起こりうる。だが、最大限対処するのが軍人の責務だ。健闘を祈る』

 

「簡単に言ってくれる!」

 

それだけ言うと通信は一方的に切られた。ブライトは思わず受話器を叩きつけるように戻すとそう叫んだ。敵の艦砲射撃で混成大隊のガンタンクは2機が喪失、1機が砲身を損傷し射撃不能になっている。加えて先ほどのホバーMSの襲撃で1機を失っている。火力的には半減に近い。そしてホワイトベース隊の戦力も無傷ではない。艦砲射撃に巻き込まれた第4小隊は全機大破。砲撃が止んだために救護班を向かわせはしたが、先に送られて来た報告から戦線への復帰は不可能だろう。

 

「観測ドローンは後どのくらいある!?」

 

「残り4機です。また現在1機を回収して充填中、1時間で復旧可能とのことです!」

 

「こんな事なら砲術科の人間も要求しておくのだったな」

 

直接照準を行うメガ粒子砲と比べ、実弾兵器は熟練を要する装備だ。勿論火器管制システムの恩恵を受けられるため、大昔のような職人芸程では無いが、それでも素人が気軽に撃って当たるものでもない。

 

「ドローンを2機上げろ、それから第2機械化混成大隊とのデータリンクが復旧次第タンク部隊と協同して統制射撃を実施する。MS隊は前進し警戒ラインを構築。ホバー機の再襲撃に備えろ!」

 

「艦長!ガンダム102号機から補給要請です!」

 

「無事なコンテナは無いか、許可する。但し急げと伝えろ!」

 

そう言い終えるとブライトは溜息を吐きそうになり慌てて堪えた。自分がホワイトベースの艦長である事を自覚しているからだ。

 

「ミノフスキークラフト、出力安定。高度+20に変更します」

 

ミライ伍長がそう口にして、ホワイトベースが静かに上昇する。そして船体が停止して直ぐにオスカー曹長が声を上げた。

 

「データリンク、来ました!」

 

「よーし、砲撃開始。艦首ミサイルにもデータ入力、出来次第順次発射だ!」

 

固定砲台ならば画像認識方式のミサイルは十分役に立つ。ミノフスキー粒子下でも運用できるようにシールド処理を施したミサイルは値段が跳ね上がるため費用対効果は最悪だが、現場の人間としては知った事ではない。無茶を押し付けるならば、相応の対価が必要になるものなのだから。

 

 

 

 

「マッシュの魂よ、宇宙に飛んで永遠に喜びの中に漂いたまえ」

 

そう静かに哀悼を捧げると、ガイアはドムに握らせたバズーカを操作した。態々トリガー操作に設定されたドムは静かに引き金を引き、重い金属音を鳴らす。

 

「すまんな、マッシュ。こいつの弾は貴重でな。奴の死に様を送り火にしてやるから、今は許してくれよ」

 

初期型のジャイアントバズーカは連邦軍の砲弾を転用する為に製造された急造兵器だ。液体装薬をドムの腕内に通されたパイプから供給する構造のため、ドム専用の武装になってしまっている。当然同機を配備していないバイコヌールには砲弾も装薬も備蓄されていない。

 

「大尉殿、補給完了いたしました!特務遊撃隊も完了との事です!」

 

機体から降りると、オルテガを除けば唯一の生き残りとなったガイア小隊の兵士が駆け寄ってきてそう報告をしてきた。まだ少年と言っても通用する部下を見てガイアは一度頷くと、自分の機体を見上げながら口を開く。

 

「フレデリック軍曹、貴様の機体は特に問題は無いな?」

 

「はっ!大尉殿。問題ありません!」

 

そうか、とガイアは呟き、振り向くとフレデリック軍曹の顔を見据えて命じる。

 

「今回の戦闘でバイコヌールの戦力はかなり低下した。連中は押し返せるだろうが、その後となると心もとない。よってフレデリック軍曹、貴様はオデッサへ帰投し現状を報告しろ。そして増援を出すように伝えるんだ」

 

その言葉にフレデリック軍曹は驚愕の表情を浮かべる。彼の駆るドムは基地の重要な戦力であり、現在たった6機しか無いからだ。

 

「そんな!大尉殿、自分も戦います!連絡ならば基地の航空機を使えばよいではありませんか!」

 

フレデリック軍曹の訴えにガイアは頭を振って否定する。

 

「ここが攻められているという事は、オデッサまでの道中で敵に出くわす可能性が高い。連絡機では不安だ、この情報は確実に届けねばならんからな。ドムならば速度も出る。そして今ここにいるドム乗りで一番未熟なのは貴様だ」

 

ガイアの言葉にフレデリック軍曹は唇を噛み締める。ガイアの言葉に嘘偽りがない事は彼自身も良く解っているからだろう。

 

「なあに、心配せんでも基地は俺達が守っておく。だからお前はしっかり援軍を連れてこい」

 

そう言ってガイアは笑いながらフレデリック軍曹の肩を叩いた。基地への砲撃が再開されたのは、フレデリック軍曹がバイコヌール基地を発って10分後の事だった。

 

 

 

 

「っ、了解しました。MS隊は前進し、警戒ラインを構築します」

 

観測員を排除して陣地まで戻った俺に伝えられたのは第4小隊の壊滅とルヴェン少尉のKIAだった。至近距離で受けた砲撃の断片が、運の悪い事にコックピットを直撃したらしい。アクセル軍曹の機体は脚部が大破、アニタ軍曹の機体は右腕とバックパックがやられてしまっている。パイロットは幸いにして軽傷との事だが、ルヴェン少尉の戦死で戦意を喪失しているとの事だった。どちらにせよ乗せる機体も無いからと二人はホワイトベースに戻されている。

 

『お待たせしました、アレン中尉』

 

そう言って近くに補給を済ませた102号機が寄ってきた。アムロ軍曹に動揺は見られない。軍人としては良い傾向だ。

 

「いや、問題ない。悪いな諸君。本来なら仕事を終えて一休みといきたい所だが、オーダーが変更された。暫く前から第4軍との通信が途絶しており、復旧の見込みが立たない。大隊司令部は第4軍が壊滅したものと判断し、独力での基地攻略を決定した」

 

『『……』』

 

俺の言葉に通信は沈黙を保つ。尤も誰も声を発さなかっただけで、唸り声や息をのむ声はしっかり聞こえてきたが。俺は努めて明るく言葉を続ける。

 

「とは言うものの、基本的な流れは変わらない。地上部隊の目標はフラックタワーの破壊。その担当も機械化混成大隊のガンタンクとホワイトベースだ。俺達の仕事は変わらず、敵MS部隊の迎撃になる。ただしダブデの間接射撃から友軍を保護するため、我々は15キロ程前進し警戒ラインを構築する。全員マップを確認しろ」

 

手早くパネルを操作し、データを共有する。開かれたマップにはバイコヌール基地を中心に赤いラインが引かれていた。

 

「このラインはフラックタワーからの地上攻撃範囲を示している。こいつを踏み越えん限りは奴からの砲撃は考慮しなくていい。但し、あくまで地上での話だ。不用意に飛び上がれば保証の限りじゃない、死にたくなければ地べたを這いずり回れ」

 

更にパネルを操作して先ほど撮影したドムを映す。

 

「既に交戦済みの諸君には今更だが、敵はホバータイプの新型MSを投入している、この“スカート付き”は高速かつ重装甲、重火力の厄介な機体だ。基地へ撤退した部隊に加え、第4軍の状況を考慮すれば、まだ相当数が残存していると想定される。馬鹿正直に正面から来てくれれば助かるが、余程の馬鹿でない限りは正面から通常のMSで、そしてこいつらで迂回攻撃を仕掛けてくるだろう。よって隊の両翼に202号機(キャノン)301号機(タンク)を配置する。タンクの直掩は引き続き501号機及び502号機、キャノンには俺が付く。102号機、アムロ軍曹はジョブ准尉の指揮下に入れ」

 

そこまで言い切ると一度大きく息を吸い俺は命じる。

 

「見ての通り既にホワイトベースは元気よく攻撃中だ、ジオン共がキレて出て来るのは直ぐだろう。全機前進、一つ目野郎共を生かして帰すな」

 

俺が前進を始めれば、呼応するように全機が前へと進む。すぐ横でスナイパーライフルを抱えて走るグレーのガンキャノンから個別の通信が入る。

 

『中尉、連中まだ来ますかね?』

 

少し疲労の感じられる声音に、俺は素直に応じた。

 

「残念だがこっちが諦めない限りは来るだろうな。バイコヌール基地の失陥は連中にとって痛すぎる」

 

絶対に逃げられない敵と戦うなんてどんな罰ゲームだよ。そんな愚痴がせり上がって来るが、強引に吞み込んだ。

 

『こんな事ならアニタ軍曹に観測ドローンの扱いかたを習っておくんでしたよ』

 

アニタ軍曹は非常に多芸でMSからドローンを操作するなんてことまでやれていた。だが居ない奴を当てには当然出来ない。

 

「次までの課題だな。今回は自分の目を頼るとしようや」

 

そんな益体もない会話を続けるうちに想定されていた警戒ラインに到着する。とは言っても何があるわけでもない、砂埃の舞うただの荒野だ。遮蔽物が無いのは砲撃能力に優れる俺達の隊にとって歓迎すべき事だろう。だがすぐにその光景に変化が訪れる。

 

『来た!』

 

隊の中央に陣取ったジョブ准尉がそう短く口にしてライフルを構える。直ぐ隣でテイラー曹長の機体も射撃体勢を取ると即座に発砲した。

 

『近づかれる前に、数を減らします!』

 

通常のMS、つまりザクの相手を担当するのは主に二人の役割だ。勿論俺達も射撃を行うが、お世辞にも濃密な弾幕などと言えるものは用意できない。何しろドムが後何機いるのか解らないのだ。最悪1機でも逃げ切られれば、また陣地を転換する必要がある。それだけならまだマシだが、万一砲兵に損害が出れば攻略は更に難しくなる。とは言うものの。

 

「数が多いっ」

 

思わず俺はそう呻いてしまう。目の前に迫るザク共はどう見ても大隊規模だ。想定通りドムが含まれている様子は無いが、つまりそれは増強大隊規模の戦力が残存している事になる。

 

『そっちか!』

 

『あ、アムロ軍曹!?』

 

目の前に向けて射撃をしていたアムロ軍曹が唐突に動きを止め、そう叫ぶや東へ向かって機体を飛ばす。動揺したジョブ准尉がそう呼びかけるが、彼は飛び跳ねるように東へと向かってしまう。

 

「目の前の敵に集中!カイ兵長!左翼の警戒は解いていいから目の前の敵機に全力攻撃!」

 

そう叫びながら俺はアムロ軍曹の後を追う。

 

『ちょっと、アレン中尉!?』

 

「軍曹のバックアップをする!マッケンジー中尉はこのまま隊の指揮を!」

 

『ああ、もう!後で奢りなさいよね!』

 

そんな文句に背を向けながら、俺はアムロ軍曹を追った。




唐突なアムロ覚醒回。
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