WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今年最後の投稿になります。


40.0079/10/19

「では、ピクシーはアクセル軍曹が担当するんだな?」

 

提出した報告書を確認しながらそう聞いてくるブライト特務少佐に俺は頷いて口を開いた。

 

「はい、適性と隊のバランスを考慮しますとこれが最適です」

 

「適性だけならマッケンジー中尉の方が上のようだが?」

 

というか、単純な適性で言えばアクセル軍曹は大体真ん中だ。彼より下だったのはカイとハヤト、それに彼とチームを組むクラーク少尉とアニタ軍曹である。ただ、彼より上で俺とアムロは既にガンダムのパイロットをしている。最初はセイラ一等兵にと考えたのだが、そうなると4小隊はジムだけで構成されることになる。そして案の定と言うか、A型のジムは懸念した通りに問題のある機体だった。

 

「能力的にはそうなのですが、如何せん補充されたジムが問題でして」

 

「…そんなに悪いのか?」

 

小声で問いかけてくるブライト特務少佐に俺は黙って頷く。ジムのカタログスペックは悪くない。特に推力比なんかは本体がガンダムより軽い分良いくらいだ。但し、そのスペックを正しく発揮出来ればだが。

 

「詳しい事はレイ大尉に聞いて欲しいんですが、はっきり言って陸戦型ジム以下です」

 

地上での運用においては機体の強度が極めて重要になる。何せMSは装備も含めれば50tを超える重量物だ。そんな物を飛んだり跳ねたりさせれば、地面を走り回る車両なんて比較にならない負荷がかかる。構造材の変更で強度の低下しているジムはガンダムと同じように飛んでも、同じようには着地出来ない。そんな問題が動作のすべてに関わってくるものだから、総じて動きが遅くなる。特に衝撃を逃がすための硬直は目に見えて差を感じるほどだ。尤もこの辺りは単純な構造的な問題だけでなく、制御側の処理能力も関わっているから一概に機体だけのせいには出来ないが。ともかく、A型が現状で配備されている汎用機の中で最も性能が低いと言う事実は動かない。

 

「他の隊にA型を持ってくるのは悪手だろうな」

 

唸りながらブライト特務少佐もそう同意してきた。ガンダムとでは連携が取れないし、キャノンとは弾幕形成の能力低下を補えるだけの格闘能力が無い。一番影響が少ないのがマッケンジー中尉の第2ジム隊だが、ここは入れ替えても持ってこれるのが陸戦型ジムだ。乗り換えの慣熟を考慮すれば、使えない隊が増えるだけである。

 

「4小隊にA型をまとめて、ピクシーでフォローするのが無難か」

 

ついでに言えば教育型コンピューターを搭載しているが、ピクシーはその設計も併せて独自といっても過言でないくらいの調整が施されている。困ったことにアムロ軍曹も同じように彼の能力に合わせて制御系がカスタマイズされてしまっているものだから、現状何に乗ってもアムロ軍曹は能力低下を起こす上に、ピクシーは最悪まともに動かせないじゃじゃ馬になってしまうのだ。正直これならガンキャノン辺りを送って貰った方がずっとマシだったように思う。

 

「それで、部隊の様子は?」

 

「悪くありません。皆慣れてきたのでしょう。今は4小隊の慣熟を中心に訓練をしています」

 

ルヴェン少尉はMS隊にとって3人目の戦死者だ。遺体が残って別れが言えただけキタモト中尉やキム兵長よりもマシで、皆も気持ちに整理がつけられていた様に思う。20にも満たないガキが、そんなことに慣れなければならないというクソッタレな現実に目を瞑ればであるが。

 

「なるべく急いでくれ」

 

「次の指示が?」

 

俺が聞き返すとブライト特務少佐は真剣な表情で頷いた。

 

「オデッサ作戦の集結がほぼ完了したらしい。数日中には本格的な設営が始まる。我々は友軍主力の準備が整うまでの間、鉱山や前哨基地を襲撃し敵の注意を引き付けろとの事だ」

 

つまりバイコヌールまでと同じと言うことか。…こりゃオデッサにも確実に投入されるな。

 

「了解しました」

 

「我々の目標はカスピ海西岸、バクー市の前哨基地になる。作戦実施日は4日後の予定だ」

 

無茶を言ってくれる。

 

「4小隊は間に合うか難しいところです。他の隊のみになる可能性が」

 

「解っている。どうせバクーだけじゃない、急がせはしても無理はしなくていい。機体はともかくパイロットの損耗は許容出来ない」

 

ブライト特務少佐の言葉に俺は目尻を下げながら敬礼する。発言の意図がどうであれ兵士を大事に使ってくれるのは大歓迎だ。

 

「最善を尽くします」

 

そう言って俺は踵を返す。今出来ることを精一杯やるために。

 

 

 

 

『ぬわーっ!?』

 

20回目の撃墜判定を受けてアクセル・ボンゴ軍曹が絶叫する姿を見て、外野はそれぞれ好き勝手な感想を述べる。

 

「やー、やっぱアムロ強いわ」

 

「一対一だと手に負えないですよね。ガンダムならもう少し粘れるかと思いましたけど」

 

「でも少しずつ良くなっているわよ?初回よりも倍以上生存時間が延びているもの」

 

「それは解っていますけど、2秒が5秒になってどうなるっていうんです?」

 

クリスチーナ・マッケンジー中尉の好意的な評価にアニタ軍曹がそう困った顔で聞き返す。すると横で同じようにモニターを見ていたニキ・テイラー曹長が口元に手を当てながら意見する。

 

「5秒引きつけてくれれば射撃のチャンスは十分ありますよ。後は多少でも攻撃して隙を作ってくれれば言うことなしですね」

 

「つまり、彼が死んだらチームの責任と言うわけですか。責任重大ですね」

 

温和な声音でそう言うのはクラーク少尉だ。現在彼らのジムはテム・レイ大尉の手によって改修が施されている最中だ。初日の実機を用いた訓練でカタログスペック分すら出せないことが判明したからだ。目下整備員が総掛かりで挑んでいる。

 

「そうなるとビームガンがもっと欲しいわね」

 

再び始まった模擬戦を見つつ、セイラ・マス一等兵がそう口にした。現状最も余裕のあるビーム兵器はビームライフルだ。ガンダム用のものを転用しているが、駆動部の出力が劣るジムで運用する場合、照準までの時間が多少伸びる傾向にあった。待ち構えての攻撃ならばそれほど気にはならないが、咄嗟の射撃、特に今想定されているようなエースとの戦闘においては、そのコンマ数秒が大きな差に繋がる。その点においてマッケンジー中尉が持ち込んだビームガンは良い武装だった。射程と出力は劣るもののMSを撃破するには十分な威力を備えていて発射サイクルも同等、それでいて軽量かつジムでの運用を想定しているためセンサー類の相性も良い。問題はこちらもまだ試作段階で量産の予定が立っていないことだ。

 

「当面はスプレーガンを使うことになるでしょうね」

 

「あっちはもう生産体制が整ってるんでしたっけ?」

 

スプレーガンはジムの量産に併せて製造されているビーム兵器だ。元々は携行弾数の少ないビームライフルのサブとして設計されていたが肝心のライフルの生産が追いついておらず、生産性の高い本器が暫定的に主兵装に収まっている。A型の搬入に併せてホワイトベースにも6丁が配備されていた。カイの質問にクラーク少尉が頷く。

 

「少なくともジャブローの配備機には全機支給されていましたね」

 

「余裕が出来たらキャノンのサイドアームに欲しいです。スナイパーライフルは取り回しが悪くて」

 

「持ち替えてる間にキャノンを撃った方が早いのでは?」

 

「いや、そんな器用なことテイラー曹長しか出来ませんって」

 

喧々囂々、皆が意見交換をしている間に再びチープなビープ音が鳴りアクセル軍曹の被撃墜を告げる。それを見て、クラーク少尉だけは静かに微笑んでいた。

 

 

 

 

「ぬおぉぉ!またかよ!?」

 

アクセル・ボンゴ軍曹は何度目か忘れた撃墜にそう叫んだ。合流当初から負け続きではあるが、以前はこれ程まで一方的ではなかったのだ。それも今は同じガンダムに乗ってこの有様である。少し前の彼であれば、感情に任せてコンソールを殴る位の事はしていただろう。

 

「だが、やっっと見えるようになってきたぜ」

 

最初は始まるとほぼ同時に飛んできたビームに撃墜されていた。開始位置も地形も毎回違うのにである。だが被撃墜が10を超えた辺りからアクセル軍曹も動きが変わる。

 

(いやでもこれ滅茶苦茶難しいじゃねえか!)

 

アムロ軍曹を唯一単独撃墜出来るパイロット。ディック・アレン中尉にアクセルは教えを請うていた。

 

「いつまでも、足手まといじゃ居られねぇんだよ」

 

本当は彼にも解っていたのだ。あのダブデの砲撃を受けたとき、ルヴェン少尉はアニタ軍曹の機体を突き飛ばしていた。少尉が身代わりにならなければ今頃死んでいたのはアニタだっただろう。つまり自分達の未熟さがルヴェン少尉を殺したのだ。だがそれを指摘する者はホワイトベースには居ない。お前のせいで少尉が死んだと責めてくれれば、少しは気も楽だっただろう。だが掛けられる言葉はどれも彼らを気遣う言葉ばかりだ。

それは軍隊教育を受けて居ない者が在籍するホワイトベース独特の空気だった。彼らの精神面への影響を考慮した言動を正規の軍人達も心がけていた為に、自然と誰かの失敗を責める様な言動は少なくなっていたのだ。それが軍人として未熟なアクセルにも良い方向で作用していた。責められないからこそ、自分の罪は自分で清算するしかない。

 

「くぁ!」

 

ビームが盾を吹き飛ばし、体勢を立て直す間もなく飛来した2射目でまたも撃墜される。

 

「くそ、滅茶苦茶難しいじゃねえか!」

 

アムロ軍曹の攻略法。それは言ってしまえば物量戦だ。機体を操作しながら次の一手を大量に思考、それもどれもが本命として考えつつ、その中からランダムに選択する。その量が増えれば増えるだけアムロ軍曹の先読みは精度が落ちる。方法は解ったが、それを実行するのは容易ではない。それでも複数の選択肢を即座に思考する事の有効性は間違いなく彼の生存時間として現れていた。

 

「頭おかしいぜ、中尉さん」

 

そう言いながらもアクセルは笑う。既に5回、彼はアムロ軍曹に二発目を撃たせているのだ。もう誰も失わない。そう心の中で誓いながら、彼は強く操縦桿を握りしめるのだった。




では皆様、良いお年を。
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