WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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45.0079/10/31

「いや、駄目だろこれ」

 

ガンダム101号機を抱え込んだGアーマーを見上げながら俺はため息を吐く。横にはエリス・クロード曹長と表情の抜け落ちた顔でタブレットを操作するテム・レイ大尉がいる。トビリシ攻略は無事に終了した。というか既に守備隊は引き払っていて、基地は蛻の殻だったのだ。現在は基地の外にホワイトベースを着陸させ、そこで第2軍の先遣隊を待っている。破壊せずに済んだのは僥倖であるのだが、残念ながらホワイトベース隊には爆発物を処理する専門家もトラップの発見・解除を行える様な人員も居ない。駐機場なんかも地雷があってはいけないので現状基地内には踏み込めない状況だ。なら余った時間で実機訓練という流れになったのだが。

 

「シミュレーションでも遅いと思いましたけど」

 

ガンダムの空中ドッキングはベテランになれば4秒ほどで終わるらしい。正直交換しなければ戦えないような状況になったらとっとと後退しろと言うのが現在のホワイトベース隊の共通認識なので、基本的にシミュレーションで遊ぶ以上の意味はない。一方で空中輸送は仮に単独であっても魅力的な能力だから一応検証しようとはなったのだが、問題はこの分離・合体に掛かる時間だ。あくまでGファイターは支援機という位置付けだったので、パイロットの技量に関係なくこれらが出来るように設計されている。つまり完全にオートで実行できるのだが、その結果10秒近く機体がマニュアル制御を受け付けなくなるのだ。MS側は放り出されるだけなので2~3秒で済むが、Gファイター側はそうはいかない。更にレイ大尉がプログラムを確認しながらとんでもない事を言ってくる。

 

「このプログラムだと分離後にGファイターへ移行する際に何方かのパーツを喪失した場合、オート制御から抜け出せないな。相手をロストした際は只管相手を探し続けるようになっているぞ」

 

「…つまりBパーツを喪失した場合、エリス曹長は強制的に直進し続けさせられると?」

 

「センサーにトラブルが出ても同様だな。再構成中に被弾した場合は大人しく脱出するのが賢明だろう」

 

心底駄目じゃねぇか。

 

「重戦闘機として使うのが正しいあり方だな」

 

「後は上に乗せるかだな。見た目は最悪だが」

 

分離合体機構なんて無かった。俺達はそう結論付ける事にする。因みに上に乗るにしても固定部位が何一つ無いので、余程安全運転をしない限り普通に振り落とされる。

 

「背面にグリップを付けてせめて摑まれる様にして下さい。落ちます」

 

「腹も中が空っぽと言うのも無駄だな。何か入れるか」

 

開発チームに居た時のノリでGファイターをどう弄るかレイ大尉と話していると、間に挟まっていたエリス曹長が引いた笑顔で俺達を見てくる。だがそんな視線は慣れたもんだ。

 

「エリス曹長も何かリクエストは無いか?これはお前さんが乗るんだしな」

 

俺にそう振られて彼女は一瞬驚きの表情になった後、愉快に体をくねらせて唸りだす。そして典型的な小動物のような上目遣いと仕草で口を開いた。

 

「その、それでしたら、もう少し対地攻撃をやりやすくして欲しいです」

 

あー。と俺達は間抜けな声を上げる。Gファイターの主兵装である連装メガ粒子砲は機体の上部に取り付けられている。旋回可能な上各砲が独立して俯仰角を取れるが、配置上どうしても俯角方向は取りにくい。

 

「機首に増設するか?旋回機銃ならば大分やりやすくはなるが、そうなるとガンナーが要るな」

 

レーダーとIFFが全盛の時代であればコンピューター任せに出来るのだが、ミノフスキー粒子下では人間の目視が必要になる。無論カメラとコンピューターによる画像認識でも代替出来るが、容易に姿を変更可能なMS相手には目視の方が確実だ。だが当然敵を狙いながら機体を別方向に操るなんてのは障害物の無い高高度ならともかく、近接支援攻撃でやれることじゃない。さてどうしたものかと考えこもうとした矢先にエリス曹長からとんでもない発言が飛び出した。

 

「いえ、増設頂いてHMDにでもして頂ければ大丈夫です」

 

「それだと飛行中の視界が遮られるが?」

 

「大丈夫です。元々私、あまり見て飛んでませんから」

 

「は?」

 

「周りの状況というか、地形とかですかね?何となく解るんです。だからあまり視界に頼って飛んでないんです」

 

だから空間識失調も起こしたことがないんですよ!なんて自慢してくる彼女は笑顔だったがこっちはドン引きである。発言がニュータイプ過ぎるだろう。

 

「そうか、ではその様にしておこう」

 

そんな俺と違ってレイ大尉は躊躇なく承知しタブレットを操作する。多分図面の修正とかそういう事をしているんだろう。この人間CADCAMも大概だな。

 

「いやいや、無茶でしょう大尉」

 

「本人が出来ると言って欲しいと言うなら是非もないだろう。それに応えるのが技術者の務めだ」

 

良い事を言っている風であるがやっていることは無茶な改造である。俺は一度ため息を吐くと、エリス曹長へ向き直り口を開いた。

 

「シミュレーションで問題ないかを十分確認するまでは使用制限だ。信じると言うのは簡単だが、それで死体袋を増やす訳にはいかんからな」

 

ただ贅沢を言えば、オデッサ作戦までには戦力化しておきたい。何せこいつはマッハ2で飛び回れるメガ粒子砲なのだ。機体の強度も踏まえれば、これ程心強い戦闘機は他にいないだろう。

 

「用心深い奴だな、私の腕がそんなに信用ならんかね?」

 

「いえ、腕は大変信用していますよ」

 

腕はね。俺は内心でそう付け足してGファイターを見る。さて、こいつがどう化けるやら。

 

 

 

 

「まったく、あの手この手を良く考えてくる」

 

艦長席に座ったブライト・ノア特務少佐は、頬杖をつきながら不満げに漏らした。バクー基地での捕虜による搦め手はエルジシュでも同様に使われた。そして陸戦隊の用意が整った所でこの肩透かしである。基地のクリアリングが必要な以上陸戦隊が無駄になる事は無いが、トラップ解除などの装備不足から到着が遅れている。

 

「しかしここを抜ければ後はもうオデッサを目指すだけですし、何より第2軍と協同です。孤軍奮闘がこれで終わると思えば悪くはありません」

 

「そう簡単な話なら良いんだがな」

 

楽観的なワッツ中尉の言葉に、ブライトは素直に頷くことが出来なかった。第2軍は陸路でのアフリカ方面への連絡を絶つためにアラビア半島の広域に展開している。第4軍に比べ陸上戦力の占める割合の低かった彼らはオデッサへの侵攻についても助攻という位置づけだった。それはつまりホワイトベース隊と協同する戦力は主力として当てにならないという事に他ならない。同時にそれは味方と言う護衛対象を抱え込む事に他ならなかった。

 

(軍団規模の護衛対象に対し、手札は半端な宇宙艦1隻とMSが4個小隊。笑えん話だ)

 

凡そ2カ月近い時間を付き合ってきたからこそ、ブライトにはホワイトベースの弱さが良く解っていた。良い艦ではあるのだ。同世代の艦艇でこれ程バランスの取れたものは無いと断言できる。だがそれは突出した能力を持たないと言う事でもある。火力で見ればヘビィ・フォークやマゼランに劣り、搭載機の運用能力ではコロンブスに劣る。建造コストまで考慮すればホワイトベース一隻でマゼラン数隻分だと言うのだから更に安価な陸上戦艦とでは勝負にならない。だがそのバランスのおかげであらゆる艦艇の代役を求められるのがペガサス級という艦だった。

 

「機動力を封じられている以上、ホワイトベースに出来るのは他の艦艇と同じく殴り合いに耐える事だ。しかしそれには火力が心もとない」

 

その為のMS運用能力だと言うだろう。しかし護衛対象が自分達よりも遥かに多い状況では、防衛の為にそのMSも広く配置せねばならない。幾ら戦車よりもMSが優速であると言っても瞬間移動出来る訳ではないのだから。

 

「しかし第2軍はあくまで助攻でしょう?こちらから積極的に仕掛ける事は無いのでは?」

 

ワッツ中尉の言葉にブライトは苦々しい表情で口を開く。

 

「2回だ」

 

「え?」

 

「連中はたった2回で此方への対策を変更した。全ての基地に対して出した命令なら相当な労力を払っているのにだ」

 

「それは、こちらが対策をしたからでは…」

 

「なぜ3度目で対策が整うと解る?人間は労力に見合うリターンを求めるものだ。ならば作戦が失敗するまでは続けたくなるものだろう?なのに連中は2度成功させているにもかかわらずやり方を変えてきた。しかもこちらの手が無意味になるように」

 

そこでブライトの言わんとしていることを察したワッツ中尉が顔色を変える。

 

「まさか、スパイですか?」

 

「どの程度なのかは解らないが、少なくともホワイトベースの動向は筒抜けと考えていいだろう。そして俺達が配置されるのは友軍戦力の少ない戦線だ」

 

額を押さえながらブライトは続ける。

 

「まだあるぞ、仮にこちらから攻勢に出ないにしてもだ。他方面から圧迫された敵がオデッサを放棄するような場合にはどこを突破しようと思う?」

 

連邦軍は包囲殲滅を行うために、ジオン最大の宇宙港であるバイコヌールを先に攻略した。バイコヌールまでの回廊地帯が残っていれば、ジオンにはオデッサ失陥後も東南アジアへの撤退と言う選択肢も存在し、戦力は分散したことだろう。しかし現在東方への撤退には第4軍の主力を突破する必要がある。

対して陸路でアフリカを目指すなら積極的に攻撃を仕掛けられない第2軍を突破すればよい。

 

「また、他方面が突き崩せない場合、第2軍が最後の一押しとして使われる可能性は高い。何しろここには突破力に一等長けた部隊が居るからな」

 

その言葉にワッツ中尉は状況を完全に理解して頬を引きつらせる。つまりどの様な状況になったとしても、ホワイトベース隊が激戦に放り込まれることは確定しているのだ。

 

「増援はありますかね?」

 

「あったとしてもそれは第2軍の援護だろうな。こちらは独力での解決を求められるだろう」

 

ガルマ・ザビの殺害に続き、連邦内でも有名なジオンのエースである黒い三連星をホワイトベース隊が撃破した事はプロパガンダとして喧伝されている。これが心理的圧迫になってくれれば良いが、同時に敵愾心を煽る事は簡単に予想出来る。そんな部隊が前線に現れれば、集中して狙われるのは間違いないだろう。

 

「不確定な要素に期待するよりもMS隊の連中が十分休養出来るように計らってくれ。一度始まってしまえば、彼らは休む暇もないだろうからな」




勢いでラルと黒い三連星ぶっ殺したら尺が余った件。
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