WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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流石にソロモンはナレ死しません。


68.0079/12/23

「ブリーフィングでも確認したがもう一度だ。俺達の任務は陽動、つまりソロモン守備部隊の誘引だ。MS隊は大まかに2部隊に分かれる。パブリク突撃艇を支援する前衛部隊、それと艦隊の防衛に当たる直掩部隊だ」

 

慣れ親しんだコンソールを操作しつつ俺はそう説明を繰り返す。

 

「艦隊直掩部隊の指揮はコリンズ大尉が執ってくれる、次席はマッケンジー大尉だ。前衛は俺、次席がウェンライト中尉になる。ロウ中尉、Gファイター隊は任意に遊撃。ビーム攪乱幕の減衰時間には十分注意すること」

 

年上でてっきり先任だと思っていたコリンズ大尉は、なんと俺よりも後に任官していた。と言っても俺がオデッサ作戦で、コリンズ大尉が俺達がジャブローに着いた頃だから誤差みたいなもんである。だから年齢上なんですしここは年功序列ってことでって提案したらとても良い笑顔で拒否られた。曰く、

 

「アレン大尉じゃねぇと姫さんが言うこと聞かん。頑張れ先任」

 

だそうである。俺の話も聞かない気がするんですけど、どうなんですかね?

 

「アムロ准尉はララァ少尉とペアだ。ビーム攪乱幕が展開され次第好きにして良し。ああ、ただソロモンには近づきすぎるな。対要塞兵器がどんなものかは解らんが巻き込まれたらつまらんからな」

 

前衛として出撃するのはホワイトベースから第1小隊と第7小隊、グレイファントムからはウェンライト中尉の率いている第9小隊とララァ・スン少尉の第12小隊だ。増強大隊規模の中から1個中隊と考えれば少々数が少なく感じるが、これはパブリクの護衛よりも艦隊の防衛が優先されるためだ。と言うよりもパブリクの加速はMSよりも遙かに優れているため、護衛しようにも随伴するにはこちらが先に加速する必要がある。更に搭載している推進剤の量もあちらが遙かに上だから、護衛しようとするならばこちらに速度を合わせて貰う必要が出てきてしまうのだ。加速性はともかく運動性はお察しの突撃艇に速度を落とせなどというのは、それこそ死ねと言っているも同義だ。結果それなりに速度の出るMSを選抜して、退避してくる彼等の殿を受け持つという方向で落ち着いた。

 

「質問は無いな?では出撃だ。バーニアは噴かすなよ」

 

カタパルトからの射出のみ、噴射光を出さずにAMBACだけで姿勢を整える。視線を要塞方向へ向ければ、200隻のパブリクが隊列を組んで突撃命令を待っていた。

 

『宜しくお願いします。大尉』

 

『パブリクの盾にはならんでくださいよ、大尉』

 

グレイファントムから出撃したジムスナイパーⅡ2機が近づいてきて、パイロット達がそう口々に言ってくる。ウェンライト中尉とフェン少尉だ。同じ小隊のランディ少尉は今回も留守番らしい。まあキャノンは遅いからな。

 

「大丈夫だ、今回はフルアーマーだからな」

 

『二人はするなって言ってるのですよ、解らないんですか?馬鹿なんですか?』

 

拝啓コリンズ大尉。ララァ少尉の毒舌が凄いです。これ絶対上官とか思ってないヤツですよ?

 

「ジョークってヤツだ。心配するな、馬鹿はしないさ」

 

極力な。

 

『大尉、集合しました』

 

馬鹿な話をしている間に、アムロ准尉と第7小隊の3人も上がってくる。ガンダムが3機にジムスナイパーⅡが5機。外伝作品でもお目にかかれないような豪華な顔ぶれで出撃の時を待つ。

 

『諸君達は15分だけ持ちこたえれば良いんだ。その間に本隊が対要塞兵器を使用する』

 

『攻撃開始。マイナス8。パブリク各機、3、2、1、0、発進!』

 

ワッケイン少将の念押しのような通信の後、オペレーターのフラウ一等兵がそうカウントを読み上げた。同時に表示されていたタイマーがゼロを通り過ぎて時間を刻み始める。その先の虚空では、巡行用のブースターを切り離したパブリクが一斉にソロモンへ向けて突撃を開始した。

 

「よし、俺達も前進する!」

 

そう宣言して俺はバーニアを噴かす。周囲に展開していた前衛班の機体も次々に加速を始めた。

 

『これは…』

 

パブリクの突撃を察知したのだろう。要塞表面が無数の光を放ち、遅れてビームの線が真空を走る。そしてその光が消えるより先に、幾つかの火球が生まれた。それがパブリクの爆発光である事は誰の目にも明らかだ。

 

「作戦通りだ!」

 

俺は敢えてそう叫んだ。この部隊は今まで散々矢面に立って戦ってきた。味方とは守る相手であって、盾にする存在じゃない。そして何よりもこいつらは良い奴らばかりだから、安全な場所から味方の損害が出るのを黙ってみている事に強い憤りを感じている。特にアムロ准尉やララァ少尉は人の死を感じられる分負担が大きい。だからそこから少しでも気を逸らしてやらなければ、多分彼等は耐えかねて暴走してしまう。

 

「もうすぐ帰ってくるぞ!全機前進!パブリクのケツを守れ!!」

 

言っている間にもM弾頭、ビーム攪乱幕展開用のミサイルを発射したパブリクが大きな弧を描いて離脱に移る。減速するその瞬間を狙ってパブリクへガトル宇宙戦闘機が殺到するのを見た俺は、咄嗟にバルカンを放った。

 

「迎撃しろ!」

 

命じるよりも早く第7小隊の3人が更に距離を詰めてバルカンを放つ。MSの武装としては貧弱な頭部のバルカンも旧式の戦闘機には十分過ぎる脅威だ。事実真っ先に食いついていた3機のガトルは即座に火線に絡め取られて爆発する。

 

『MS!?味方か!』

 

『助かった!支援感謝する!』

 

「そのまま突っ走れ!ララァ少尉!」

 

『はい、大尉!』

 

パブリクは横隊を組んで突撃した為に、ミサイル発射後左右に分かれて離脱していた。俺は向かって左側のパブリク部隊の後方を占位しつつ、逆方向に向かったパブリクの支援をララァ少尉に命じる。いや、実際には声を掛けただけなのだが、それだけで察してくれたララァ少尉とアムロ准尉が即座に移動を開始してくれたのだ。

 

「来るぞ!ここからだ!」

 

言いながら俺は左手に持っているビームサーベルを一度だけ起動する。刀身が散ること無く形成されるのを確認してそれを一度振るった。それだけで察しの良い皆は理解し、ビームライフルを構える。

 

「撃て!」

 

俺もガンダムに連装ビームライフルを構えさせると、押っ取り刀で飛び出してきたザクに向かってトリガーを引いた。ビーム攪乱幕の厄介な所は、効果範囲やその効果がセンサーで確認出来ない事だ。撃った側の俺達は展開範囲と発射時間から大凡の予測範囲が戦術マップに記載されるが、ジオンはそうはいかない。追撃に出ていた連中の先鋒は既に範囲外に飛び出していたのだ。

 

『今更遅いぞ!』

 

『このっ!』

 

『いっちゃえ!』

 

『邪魔っ』

 

ウェンライト中尉がそう言い放ち、釣られるように7小隊の3人も口々に叫びながらビームを放つ。ザクは慌てて回避行動に移るが、その先には俺とフェン少尉が狙いをつけていた。

 

「甘いんだよ!」

 

『1機!』

 

強引な運動によって動きの鈍ったザクはビームに腹を撃ち抜かれて大爆発を起こす。他の機体も4人の射撃によって回避を強要されていて攻めあぐねている。馬鹿共が、そういう時は味方と合流して数で押すんだよ。

 

「レイチェル!スイッチ!!」

 

言いながら俺は使用する武装を素早く切り替える。脚部とバックパックに装備されたミサイルポッドがすぐさま起動し、アイリンクシステムを通して即座にロックされた敵機に向かってミサイルが放たれる。突然のミサイルに対応を強制された敵機は、ほんの少しだけ動きが単調になる。普通のパイロット相手では隙とも言えない僅かなもの。けれど特別に訓練され、アムロ准尉やララァ少尉に扱かれた彼女達には十分過ぎる隙だった。

 

『遅い!』

 

『がら空きだよ!』

 

『墜ちろ!』

 

重なるように声が響き、放たれた3発のビームは吸い込まれるように命中して敵機を火球へと変えた。初動で突撃してきた連中を瞬く間に食い殺すが、流石にそこからは一方的とはいかなくなってくる。こちらを手強いと判断した敵部隊は母艦からの支援を受けつつ包囲しようと動き出したからだ。だが、それこそ俺達が望んだ状況だ。

 

「連携を崩すな!必ず2機以上で対応しろ!」

 

ジオン兵の技量は間違いなく高い。個々の技量を比べれば未だ連邦が劣ると言わざるを得ないというのが俺の正直な感想だ。それこそ連邦で腕が良いなんて評価をされる程度ならゴロゴロしている。けれどそれは軍事的に絶対の優位を保証するものではない。

 

『カチュア、右!』

 

『見えるよ!』

 

連邦軍の兵士に求められるのは、最初に個人の技量ではなく部隊として不足無く戦えるよう全てを一定水準で修める事だ。何故なら連邦には先達が血と屍を積み上げて生み出した戦術が文字通り膨大な量で蓄積されているのだ。それこそ多少腕に覚えがある精鋭程度ならば、凡庸な兵士2人の戦術と連携で対処が出来ると言うほどに。対してジオンは人的資源に劣るという前提から個人の技量に頼らざるを得ない状況だ。だからその連携も極端に選択の幅が狭い。何しろ基本的な方針が、エースを最大限活用する為の連携になるからだ。更に個人の技量を伸ばすのも、苦手を無くすより得意な能力を伸ばす方向で行っているように見受けられる。結果として色つきの様な突出したエースを生み出す事に成功している反面部隊内ですら得手不得手の差が大きく、柔軟な対応が出来ているとは言い難い。

つまりそれは数の優位を十分に活かせないと言うことで、同数以上でぶつかれば余程のイレギュラーを抱えて居ない限りは連邦が勝てると言うことだ。

 

『待たせたな!』

 

『騎兵隊の到着だぜ!!』

 

半包囲を完成しつつあった敵に砲弾が降り注ぐ。通信に威勢の良い声が飛び込んできて、後方からは無数の友軍を示すマーカーが押し寄せてくる。第3艦隊のMS隊だ。

 

「今だ!」

 

言葉と同時にスロットペダルを底まで踏み込む。同時に黒いジムスナイパーⅡ達もそれぞれ狙っていた相手に向かって突撃を仕掛けた。

 

「悪いな」

 

一番良い動きをしていたリックドム、そのコックピットへビームサーベルを突き立てる。エースを最大限活用すると言うことは、エースが失われればその戦闘能力は極端に低下すると言うことだ。そして悪いが並大抵の相手ならば確実に仕留められるだけの技量をホワイトベースのパイロット達は身に付けている。主を失い脱力するリックドムを蹴り飛ばし、混乱の中で突出しすぎた敵母艦のムサイに向けてビームを撃つ。ろくな回避もしないまま、砲塔付近に3発のビームが直撃したムサイは派手な誘爆を起こしながら船体を真っ二つに折り曲げる。最期を見届ける事無く次の敵に向かって照準を合わせようとしたその瞬間、ソロモンが光輝いた。

 

『あれは!?』

 

『焼かれている?あれが対要塞兵器か?』

 

79年12月23日18時50分、宇宙要塞ソロモンへ向けて、連邦軍のソーラ・システムが照射された。




でも内容はこれから考える。

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