WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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コロナ検査で隔離されていたので初投稿です。


7.0079/09/17

『あ、当たった!?』

 

「解らん!良いから撃てっ!!」

 

ホワイトベースの甲板上に陣取った2機のガンキャノンから猛然と砲弾が放たれる。最大発射速度毎秒3発という驚異的な速度で発射される240ミリ砲弾は僅か数秒で機体に搭載された弾薬を撃ち尽くす。射撃修正も何も有ったものでは無い。

 

(あの赤い彗星を一泡吹かせられるなんてな)

 

ルウム戦役で赫々たる戦果を挙げたジオンのエースパイロット。その存在は即座に戦技教本に取り入れられている。尤もその無茶苦茶な行動は一般人に真似できるものではないため、専ら要警戒対象として取り上げられているのだが。そんな自分でも知っているような有名人相手に自分達の作戦が成功した事は、リュウ・ホセイに言いようのない興奮を齎した。作戦自体は極めてシンプルなものだったのだ。囮を使って敵をキルゾーンへと誘い込む、宇宙世紀どころか人類史において狩猟が始まった辺りから用いられているであろう手法だ。それを提案してきたのはガンダム3号機に乗っている少尉だった。

 

「この状況で撤退せずに攻めてくるならば、余程腕に自信がある人物でしょう。少なくとも数的不利を覆すだけの自信がある筈です」

 

そんな相手を囲んでも効果は薄いと少尉は言った。不利であっても想定内の状況ならばプレッシャーは少ない。ましてこちらは数で勝っていても半数以上が技量未熟な新兵である。MS同士の複雑な連携など望むべくもないのだから、ならば策を用意すべきだ。

そうして実行されたのがこの作戦だ。まずスペースポート内でガンキャノンがホワイトベースの甲板上に移動、白いシートを被って身を隠す。そして出港と同時に囮のガンダム2機が発進、敵と交戦する。この時2号機はホワイトベースから一定の距離を保つ事で、予めガンキャノン側の砲弾に時限信管を設定、ロックオン無しに爆発範囲内に敵機を誘い込む。

 

「ガンダムで片付けば良し。そうならなかった際の保険です」

 

「2号機を狙わず、お前の方を狙ったらどうするんだ?」

 

「数が互角ならば、まず動きの悪い方を墜として数的有利を生み出そうとするでしょう。数が多ければ欲を出して鹵獲あるいは撃破後の部品回収を試みると考えます。どちらにせよ被害を抑えるなら腕の悪そうな方を優先して狙います」

 

「どちらにせよリスクは避けられん戦いか。アムロ君、お願い出来るだろうか?」

 

艦には任官権限を持つ人間がいないため、彼は書類上未だ民間協力者だ。艦内の業務に当たって貰っている元避難民の面々も同様の扱いとなる。その為命令ではなく言葉は協力要請という形になっている。

 

「はい、大丈夫です」

 

「…そうか、ではそのように。総員かかれ!」

 

あっさりと頷くアムロにキタモト中尉は少し面を喰らいながらもそう命じ、作戦は実行に移された。

 

『やった!?』

 

「まだだ!確認出来るまで油断するな!」

 

興奮気味に口走るジョブ曹長に対してリュウはそう諫めた。合計80発もの砲弾を撃ち込んだ結果、爆発煙と弾片によって目標周辺はセンサーが利かなくなっていた。だからこその言葉であったが、リュウ自身何処かで油断があった。何せあれだけの攻撃に晒されたのだ。如何にエースパイロットと言っても無事で済むはずがない。

しかし現実は、彼等の淡い期待を容易く打ち砕く。

 

「嘘だろう!?」

 

爆風から身を守るためシールドを構えていたガンダムに向かって、赤いザクが煙を突き破って突進。ガンダムに接近しすぎてしまったために、ガンキャノンのビームライフルは誤射防止のロックが作動してしまう。

 

『うぁあっ!?』

 

咄嗟の状況に対応出来ないこちらをあざ笑うようにザクはその身を躍らせると、MSで戦うとはこうするのだとばかりにガンダムを蹴り飛ばす。

 

「この野郎!」

 

格闘の反動で機体が離れた瞬間を狙いリュウはビームライフルを向ける。しかしそれはザクを捉えきることが出来ず、ビームは空を切った。

 

『リュウ!』

 

フォローするようにジョブ曹長がビームライフルを発砲するがやはり結果は同じだった。だがこれは彼等の腕が未熟だからとは言い難い理由があった。ガンキャノンは中距離からの火力支援を前提として設計された機体である。そのコンセプトは主力MSに随伴して240ミリキャノンを素早く展開することであり、それ以外については有り体に言って控え目に設計されていた。何しろ主力となるガンダムが高額だからこそ、全てをガンダムで揃えるのではなく支援機を用意しようと言う事になったのである。当然コストを抑える事が要求されるし、更に別の問題も存在した。240ミリキャノンの弾薬である。機体上半身の大部分を弾薬庫が占める構造であるガンキャノンは、ガンダムに比べても腕部を駆動させるモーターの設置場所が肩にしか確保出来なかった。コストとの兼ね合いから必然性能を絞ったモーターを選定したために、ガンキャノンはその重量も相まって動きの鈍い機体となってしまったのである。ビームライフルがガンダムのものより長射程のものが採用されているのも、出来る限り腕部の動作量が少ない内に射撃が実行出来るようにと言う考えからである。

 

「ぬおぉおおお!?」

 

苦し紛れにバルカンを放つが流石に威力が過小だった。避ける素振りも無く赤いザクはリュウのガンキャノンへ肉薄すると、左肩を突き出しそのままタックルを仕掛けてくる。回避のタイミングを完全に逸していたガンキャノンはそれを正面から受けて吹き飛んだ。激しく変わるモニターの画像を睨みながら、リュウは背に冷たい汗が浮かぶのを自覚する。自分達が居るのはホワイトベースの甲板。つまりここは艦を守る最終防衛ラインだ。自分達がやられればホワイトベースが沈む。

 

「こんのぉ!」

 

バーニアを噴かして強引に回転を止めビームライフルを乱射する。当たらなくてもいい、少なくとも撃っていれば奴に回避を強要できる。こちらの意図に気付いたのだろう。ジョブ曹長がこちらの射撃と交互になるようにビームライフルを撃ち始める。そして待望の瞬間が訪れた。

 

『そこ!』

 

自分達より若い、少年と言って差し支えない若い声。アムロ・レイの鋭い叫びが通信チャンネル越しに聞こえた瞬間、ビームがザクの左腕を吹き飛ばした。

 

 

 

 

「擦っただけでこれとは!奴らのビームは戦艦の主砲並みか!?」

 

この時シャアは初めて戦場で死の恐怖を体験した。後一瞬機体を捻るのが遅れていたなら、ビームは彼の機体を貫いていたからだ。冷静に考えれば戦艦の主砲を腕に受けるなどという状況であれば余波で機体ごと吹き飛ばされている。だが初めての感情に振り回される彼は冷静な判断が出来ていなかった。

 

「ここまでか!」

 

武器をほぼ全て喪失し、機体も大破寸前。対して相手は3機とも健在だ。技量で優越している事は疑うべくもないが状況が悪すぎる、彼は即座に離脱を決断した。

 

「切り札は用意しておくものだ」

 

リアスカートにマウントされた最後の武器、ハンドグレネードを敵艦の艦橋へ向かって投げつける。自分達への攻撃を防ぐのに手一杯となっていた敵MS達は、この想定外の行動に反応が一瞬遅れた。そしてそれは状況を一変させるのに十分な時間を生み出した。第一艦橋の窓付近に接触したハンドグレネードが炸裂、複数枚の窓を吹き飛ばし、艦橋内の人員が外へと吸い出される。同時に敵MSにも動揺が走った。それを見逃さず、シャアは一気に機体を加速させる。

 

「連邦のMS、これ程とはな…」

 

機体が崩壊しないギリギリまで加速しつつ彼は忌々しげにそう呟いた。軍人、パイロットとして頭角を現わしているとは言え、彼もまだ20を過ぎたばかりの青年に過ぎない。自分が見限った相手である地球連邦軍が、自分の選んだジオン軍よりも優越しているなど容易に納得できるものではなかったのだ。

追撃を警戒して後部カメラをしきりに確認していると、敵艦から後退信号が打ち上がった。それを見て内心安堵の溜息を漏らしつつ。彼は自機からも後退を指示する信号弾を打ち上げる。同時に彼は操縦桿から手を離し強く拳を握り絞めると、カメラに映る敵艦を睨み付けた。

 

「木馬め、このままでは済まさんぞ」

 

 

 

 

「敵が逃げる!」

 

ホワイトベースの艦橋を破壊し、逃げ去っていくザクを見てアムロはそう叫び追いかけようとした。だがそれを止めたのは外でもない仲間の声だった。

 

『ダメだアムロ君!味方の救援が先だ!』

 

言葉通り、リュウ・ホセイ曹長が操るガンキャノン1号機は既に大慌てで周囲に吐き出されてしまった味方の救助へ向かっている。アムロは知らなかったが、宇宙空間における救助は最初の5分で決まると言われている。地上と異なり常に相対的な座標で行動する宇宙において、漂流者の捜索は困難を極める。何せ基点となった存在すら移動し続けているのだ。艦艇サイズならばまだしも、人間のような極小の目標を発見するのは殆ど運頼みと言って良い。5分までならば他の重力やそもそも移動距離が少ないために発見の可能性が高いが、それ以降は急速に難しくなる。特に戦場でミノフスキー粒子が撒かれるようになり、更に多くのデブリが滞留するようになった現在の地球圏ではなおのことであった。

 

「っ!了解です」

 

アムロがそう返事をするのと同時にホワイトベースから後退を指示する信号弾が打ち上がる。それを見て、アムロは漸くこの場に居ない人物の事を思い出した。

 

「そう言えばアレン少尉は?」

 

『多分大丈夫。敵の増援、来なかっただろう?少尉が抑えてくれていたんだと思う』

 

「増援」

 

『ちゃんと今度は沈められるようにって、スーパーナパームも持って行っていたでしょ?それで敵艦が沈んでないって事は、邪魔されたんだと思う』

 

「凄いな、アレン少尉」

 

救助活動を行いながらアムロはそう呟いた。同じ機体に乗っているからこそ、彼はそう強く感じた。確かにガンダムは強力な機体だ。エースパイロット相手に素人の自分が生き延びられるのだから間違い無いだろう。けれどそれが絶対の安全を保障するなどと言う事ではないのを、アムロは赤いザクとの戦いで痛感していた。事前に策を練り、敵が想定通りに動いたというのに危うく自分は殺されかけ、艦も傷つけられてしまったのだ。そんな重圧の中で自分の仕事を全うしている彼に、アムロは憧憬に似た思いを感じる。

 

「本当に、凄い」

 

再び彼の口から漏れ出た、感情のない交ぜになったその言葉を聞き取った者は居なかった。




赤いアンチクショウがそんな簡単に死ぬわけないよなぁ!(意訳:楽に死ねると思うな


脳内設定
240ミリキャノンについて。
本来一般的な時限信管と同じく、対象をロックすると距離を測定して発射時に時間設定をしてくれるのですが、今回は奇襲のためロックオン出来ない状況であった事からこのような事前にキルゾーンを設定しておくという手法をとりました。そんなん出来るのかって?今の兵器で出来るんだから宇宙世紀なら余裕だろ!(思考放棄
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