WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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遅くなりました、今週分です。


75.0079/12/25

「7小隊の子達がやられたのか!?」

 

敵MSの攻撃を回避しながら、通信に響いた悲鳴にアムロは思わずそう口にした。

 

『死ね!ガンダム!!』

 

そうしている間にも突進してきた青い機体が敵意の籠もった通信を混線させながらビームサーベルを振るってくる。その露骨な態度にアムロは強い不快感を覚える。

 

「戦争に、そんなものを持ち込むから!!」

 

アムロは無自覚であったが、彼の周りには比較的まともな軍人が揃っていた。無論そうでない人間がいることもジャブローで見ていたが、人間はどうしても自身の経験を重視してしまう生き物である。自分の知りうる軍人の多くが良識を持って職務に当たっている人間ならば、そちらが普通の軍人なのだと認識するのは無理からぬ事だった。故に私怨を口にしながら襲いかかってくるジオン兵を、彼はまともでは無い相手と判断する。そしてそうなってしまえば、彼が割り切るのに時間は必要なかった。

 

「はっ!」

 

突き出された腕をシールドで払い、敵機の頭部へバルカンを浴びせる。メインカメラを滅多打ちにされた相手が怯んだのを見逃さず腹部へ膝蹴りを入れて距離を離すと、即座にコックピットへ向けてビームライフルを構える。しかし発射するより先に赤いMSとMAによる邪魔が入った。

 

『下がれラル大尉!一人でどうにかなる相手ではない!』

 

「この声、やっぱりシャアか!」

 

四方から放たれるビームを圧倒的推力で回避しながら、アムロは周囲を確認する。幸いにしてランディ曹長の時のような不快感は無い。更に少し離れた場所でもう1機のMAが損傷し漂流するのが見て取れた。どうもそれは相手も理解しているらしく、アムロへ向かってくる火力の密度が更に上がる。その様子を見て彼は相手を少しだけ哀れんだ。

 

「この敵は戦い方を知らないんだ」

 

部隊の最大戦力である自分を早急に無力化したいという気持ちは解らないではない。だがそのために戦力の大半をつぎ込んでしまうのは悪手だと彼は思った。

 

「先ずは弱い部分から狙うなんて戦いの基本だろうに!」

 

尤もその評価はある意味外れていた。何故ならジオン側もそんな当然の基本が解らないはずが無いからだ。その上でこれだけの戦力を張り付けねばガンダムを止められないと判断したからこその戦力配分であったのだが。

 

『支援します!』

 

その言葉と共にビームガンを構えたジムが2機、MAに向けて攻撃を行う。最初の攻撃で小破したクラーク中尉とアニタ曹長の機体だ。その攻撃によってMAの行動に逡巡が生まれる。ごく僅かなものであったが、アムロにとっては十分過ぎる隙だった。

 

「やぁっ!!」

 

動きの鈍った敵のビーム砲、見えてしまえばアムロにとってそれを撃ち抜くのは造作も無い事だった。続けて放たれた4発のビームが正確にビーム砲を穿ち火球へと変える。このまま押し切る。そうアムロが決断しかけたその瞬間、強烈な殺気を感じてアムロは咄嗟にフットペダルを強く踏み込む。彼の判断の正しさを証明するように、一瞬前まで機体のあった空間をビームの光が通り過ぎた。

 

「新手!?」

 

彼の言葉を肯定するように、9機のリック・ドムが思い思いの武器を構えながら現れる。その中でも特に1機、先頭にいる角張ったバズーカを構えた機体は明確な殺気をこちらへ向けてくる。だが事態はそれだけでは収まらない。更に6機のリック・ドムがアレン達に向かって居るのが確認出来たからだ。装備と技量を鑑みて、まだ倒し切れる数だとアムロは考えた。しかしそこには損傷した4小隊の2人や撃墜されたと思わしき7小隊の生存は含まれない。

 

「どう、する?」

 

敵の撃墜か、味方の命か。唐突に迫られた選択に流石の彼も迷いが生じる。だが彼が決断するよりも早く状況は動き出す。彼の母艦が信号弾を放ったからだ。

 

「白2、青1。撤退命令!?」

 

アムロの言葉を肯定するように、4小隊のジムがゆっくりと後退を始める。アレン大尉達の方も、大尉のガンダムが牽制するように殿を務める中、アクセル曹長のジム・スナイパーⅡが損傷した7小隊の機体を曳航しつつ離脱を始めていた。

 

「逃げるときが一番難しいんだ」

 

戦術教育の際に大尉達が言った言葉をアムロは思い出す。撤退中は支援が受けにくく、さらに負傷した味方を守る必要も出てくる。更に彼等は普段よりも移動速度が落ちる場合が多い。敵の最大火力を奪ったとはいえあの数相手に味方を守り切ることは、アムロであっても不可能に思えた。そんな焦燥感を募らせる彼を救ったのは意外な相手だった。

 

「撤退命令、向こうも?」

 

シャアの乗る赤いMSから同じように信号弾が打ち上がり、敵軍に撤退の命令が下る。それは敵にとっても予想外だったのだろう。明らかに動揺した様子がこちらにも伝わってくる。だがそれが好機である事には間違いなかった。釈然としないものの、アムロ達はこの状況を利用して戦場を離脱することに成功した。

 

 

 

 

『何故撤退するのですか!?あの状況ならば仕留められた筈です!』

 

そう息巻く部下をシャアは厳しい声音で窘める。

 

「あまり敵を侮るな。足枷が居たからこそ奴は大人しく引いたのだぞ」

 

ガンダムの戦闘能力が既に非常識な領域にある事をシャアは痛感していた。手前味噌ではあるが、ジオンの精鋭であるエース2人にNTを交えてすら唯の1度も攻撃を掠らせることすら出来なかったのだ。手負いの味方を守らせながらであれば、あるいは撃墜できるかもしれない。しかしその為には確実にここにいる全員が死ぬことになるという確信がシャアにはあった。

 

「それに我々の任務は敵艦隊の足止めだ。あれに拘って戦力を消耗するのは避けたい、特にシャリア・ブル大尉達を失う訳にはいかんからな」

 

そう言って彼は大破したブラウ・ブロに視線を向ける。シャリア・ブル大尉の機体はそこかしこに破孔が出来ており、放電も起こしている。だが幸いにしてパイロットは無事のようだ。

 

『申し訳ありません、中佐』

 

「君に大事が無ければ良い。ブラウ・ブロはあくまでサイコミュの試験機だと聞いている。アジン少尉とドゥワ少尉も無事だな?」

 

そう謝罪してくる大尉にシャアはそう返事をし、続いてもう1機のパイロットである2人にそう問いかける。

 

『はい、中佐』

 

『問題ありません』

 

そう返事をする2人にシャアは内心ため息を吐いた。フラナガン機関から配属されたNTパイロットであるこの少女達を預かったのはマ・クベ大佐への増援を命じられた直後の事だった。対外的には双子とされているが無論そのような普通の少女達では無い。フラナガン機関が、正確に言えばフラナガン・ロム博士が初めて見いだしたNTの少女。その娘を徹底的に調べ上げるために生み出された複製品の内の一体、それが彼女達の正体だ。

 

(規定の水準は超えているとは、よく言ったものだ)

 

どの様な研究であれ、時間と資金を要求されることは変わりない。彼女達は軍からの資金を得るために準備されたいわば生け贄であり、最低限の労力で済むようにでっち上げられた存在だ。サイコミュの操作と軍人の知識だけを詰め込まれた彼女達をNTとして悪びれ無く引き渡してきたフラナガン機関の研究員を殴らなかった自身の理性を褒めて欲しいくらいだった。

 

「では我々もブラウ・ブロを回収しザンジバルへ戻るぞ」

 

そう言って彼は機体を母艦へと向ける。その間ランバ・ラル大尉が視線を向け続けていた事に、彼は最後まで気がつかなかった。

 

 

 

 

「気密の確認は取れているんだな!?冷却が済み次第コックピットの強制解放!」

 

「救護班来ました!」

 

「大丈夫、ちゃんとバイタルは反応してるから、助けるからね?」

 

大声が飛び交う格納庫のキャットウォーク。艦内用通信パネルを操作して、俺はブライト少佐を呼び出した。

 

『ご苦労だった、大尉』

 

「お忙しいところ申し訳ありません、少佐。状況は?」

 

敬礼をしつつ俺は早速そう尋ねた。シス伍長の事は気がかりだが、あの場で俺が出来ることは精々気休めにもならない言葉を吐き出すくらいだ。そんなことをしているくらいなら、俺は自分の責務を果たさなきゃならない。

 

『第3艦隊から敵と交戦中という連絡があった後、連絡が無い』

 

「まだ戦っている可能性は…無いんですね?」

 

『スレッガー中尉を偵察に出して確認した。全滅だそうだ』

 

「ぜっ!?」

 

戦艦1隻に巡洋艦が4隻、加えて軽空母まで居たんだぞ。艦載されたMSだって最低でも2個中隊だ。それが全滅?

 

『幸いと言うべきかは悩むところだが、敵艦隊は隠蔽していて積極的にこちらを襲撃しようとはしていないらしい。つまり』

 

「逃げるなら今のうち、ですか」

 

『そちらの状況は?』

 

その言葉に俺は頭を掻きむしりながら伝える。

 

「最悪ですよ、敵の新型MAと遭遇しました。最低でも2機です。それに赤い彗星と恐らく青い巨星、更に加えてMSが15機です。一応MAは2機とも中破までは追い込みましたが、正直気休めですね」

 

『言いたくはないが、最悪だな』

 

ブライト少佐の言葉に、俺は頷くしかなかった。艦隊一つを潰せる戦力に、加えてまだそれだけの部隊が残っている。運用されている機体から推察すれば、テキサスコロニーに入港したザンジバル以外にも艦艇が居ると考えるのが妥当だ。対してこちらは2個小隊が戦闘不能と来ている。

 

「逃げられる内に逃げるしかありませんね」

 

これだけの戦力となると流石に無視は出来ない。コンペイ島に駐留する予定の艦隊は最小限に抑えられる筈だから、野放しにした場合コンペイ島を再奪還される可能性すら出てきてしまう。唯でさえこっちは遠征艦隊なんだ。兵站拠点を失ったら立ち往生するのは目に見えている。

 

『ああ、我々は1度コンペイ島に帰還し状況を報告する。その後は、まあ状況次第だな』

 

そう言ってブライト少佐は溜息を吐く。無理もないだろう、恐らくこの部隊の対応は俺達第13独立部隊に一任されるだろうから。




感想欄を見て、

>強化兵が生き残るのが幸福とは限らない。

成る程、そう言う考えもあるのか!(作者は何かをオボエタ)
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