WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


79.0079/12/27

デブリの中を縫うように、青い噴射光の尾を引いてガンダムが駆け抜ける。溺れる程撒かれたミノフスキー粒子のせいでレーダーは殆ど頼りにならないと言うのに、信じられない速度で先行する2機の後を必死になって追っていく。どっかの赤いヤツが体を使うのはニュータイプでも訓練しなければ条件は一緒なんて嘯いていたけど、あの前提多分間違ってるわ。広範囲を視覚に頼らずに認識出来るということは、それだけ次の行動の予定を立てやすくする。ついでに言えば常時そうした情報処理を行っている彼等の脳は、凡人よりも遙かに高速でそれらを処理する訓練を何時も行っているようなものだ。だからデブリの中を、正気を疑う様な速度で移動しながら的確にスナイパーにビームを叩き込む様な芸当が出来るのだ。俺?言っただろ、ついて行くのも一苦労どころか順調に距離を離されているよ!

 

「なんで俺まで一括りかね!?」

 

浮遊していたデブリを機体の彼方此方にぶつけながら、俺は思わずそう泣き言を漏らす。だが艦隊司令から命じられては嫌とは言えぬ、すまじきものは宮仕えである。

 

『ガンダムは敵本隊を捕捉し強襲せよ』

 

滅茶苦茶である。だが命じられてしまった以上可能な限り応じる義務が俺にはあって、ウチの出鱈目な部下達はなんだかんだそれが出来そうな雰囲気を醸し出していた。だからつい聞いてしまったのだ。

 

「アムロ准尉、ララァ少尉。悪意が一番強い場所は解るか?」

 

肯定の言葉が返ってきてしまえば否応無い。取りあえずそいつらを潰してこいという命令が秒で下り、俺達は仲良くデブリの中を敵へ向かって突撃することになった。

 

『見えた!』

 

そんな言葉が通信に響くと同時に先行していた2機が左右に別れる。その動きに追随して俺も翡翠色のガンダム、ララァ少尉の方向へ機体を移動させた。間髪入れず元いた場所をビームの雨が通り過ぎる。

 

『遅いのよ!』

 

ララァ少尉がそう言いながらビームを放つ。敵の数は4個小隊12機、その全てがゲルググだ。間違いなくこの部隊が敵の切り札だろうことを確信して、俺は頬を吊り上げた。

 

「残念だったな、それじゃ届かんぜ」

 

精鋭と呼ぶに相応しい動きで懸命にガンダムを追うが、足りない。宇宙世紀において恐らく最強のパイロットと現時点で用意しうる最高峰のMSを相手取るには、全てが全く足りていない。先頭のゲルググがシールドで初弾を防がされる。許容値を超えるエネルギーを受けたシールドが耐えきれずに爆発し、一瞬敵小隊の視界を遮った。そしてその時間があれば、後続の2機を墜とすなど彼女には造作も無い事なのだ。視界が回復するより先に放たれた2発のビームが、ゲルググの胸から上を吹き飛ばす。誘爆こそしなかったものの、視界と上半身を失った事による急激な質量変化に制御が追いつかなくなったそれらは不格好に回転しながら戦闘不能に陥る。その頃には最初の1機は90ミリガトリングによって蜂の巣にされていた。この間に30秒も経っていない。

 

『そこだ!!』

 

アムロ准尉の迎撃に向かった部隊はもっと不幸だ。何しろ今の彼にはシールドを構えても意味が無い。正確に守れていない部分を巴戦の最中に狙撃され瞬く間に数を減らしていく。

だが艦隊の防衛はその精鋭部隊だけではない。二人の戦いに浮き足立った直掩機達が吸い寄せられるようにこちらへ向かって来た。しかしザクとリック・ドムで混成されたそれは装備も技量も先のゲルググ達に比べれば遙かに劣っているのが一目で解る動きだった。

 

「正気かよ!」

 

派手に動く2機に完全に気を取られているのか、俺に対して無防備に敵機が突っ込んでくる。思わずそう叫びながらミサイルを放つと面白い様に被弾し、瞬く間に3機が火球に変わる。このタイミングで漸く相手はこちらが2機では無く3機である事に気がつくが、残念ながら遅すぎたとしか言い様がない。

 

「貰ったぁ!」

 

連装ビームライフルでMSを牽制しつつ、バックパックのキャノンを放つ。標的にしたムサイは艦橋と主砲にそれぞれ対艦用砲弾の直撃を受け、内部から膨れるように歪むと火を噴きながらゆっくりと漂流を始めた。

 

「次!」

 

近付いてきた敵機に残りのミサイルを撃ち込みながら次の艦を狙う。視界の端ではミサイルに回避を強要されたザクが、ララァ少尉の放ったビームに撃ち抜かれて爆発していた。これをゲルググと戦いながらやれるのだから、敵からしたら正に悪夢だろう。まあ味方の俺には関係の無い話である。コンバットボックスを組んだ敵艦隊の中央に位置するチベ、恐らく旗艦と思われるそれに向かってトリガーを引きつつ、俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

人間とは余りにも理不尽な状況に追い込まれると、寧ろ笑えるのだとマ・クベは理解した。切り札であった選抜部隊。預けられた貴重な転換訓練済みのゲルググ部隊がたった2機のMSに翻弄、否圧倒されている。

 

「3機目が賑やかしのように見えるが、違うな」

 

重武装の3機目も十分強い。恐らく選抜部隊の1個小隊を差し向けても勝てるかは難しいところだ。だがそれ以上に残りの2機が規格外過ぎる。

 

「戦場を個人の武が支配するか、まるで神話の世界だな」

 

この作戦にマ・クベは用いることの出来る全てをつぎ込んだ。古来より戦いとはその場に至るまでにどれだけ準備を整えていたかによって決まるものである。火砲が発達し一個人の膂力が陳腐化した現代において、その価値観は決定的なものになっている筈であった。

 

「エースパイロットか」

 

MSは確かに戦場の様相を一変させた。高度な通信網と電波探知を封じられ退化した世界に最適化された巨人は、同時に懐かしい存在を戦場へ連れ帰る。突出した技能によってより多くの戦果を上げる者、即ちエースパイロットと呼ばれる種類の人間である。MSの特性上その復活はある程度予測出来ていた事であるし、ジオンではそれをプロパガンダとして積極的に用いてきた。その能力をマ・クベも疑ってはいない。戦場の支配者であった戦艦をただ一人の人間が操る機動兵器が沈めるなど、費用対効果という言葉を口にするのも馬鹿らしいほど効率的であると言えるだろう。だがそれでも軍全体が上げた戦果から言えば多少の差でしかなく、その多少の差で戦局が覆るなどと言うのはあり得ない事だった。今日までは。

 

「ヤツは最も新しい神話になるだろう」

 

たった3機のMSが、その個の力だけで戦場を支配してみせる。NT兵などという眉唾を欠片も信じていないマ・クベであったが、現実として目の当たりにしてしまえば認めざるを得ない。数を並べるだけの戦争は終わりを告げ、これからはエースパイロットと彼等に応えられる強力な機体を揃える事に重きが置かれる戦争となるだろう。自分達は今、その始まりを体験しているのだ。

 

「残念だ」

 

マ・クベは視線をサイドテーブルに置かれた青磁に向ける。自分は伝説の一部、最初の敗北者の一人として歴史に名を刻まれる。そして彼等が居る以上、最早ジオンに勝つ術は残されていない。

 

「これも、良いものなのだがな」

 

悠久の歴史を歩んできた青磁を自らの敗北に付き合わせてしまう事に申し訳なさを感じながら、彼はビームの閃光に包まれた。

 

 

 

 

『もっと丁寧に飛んでくれよ!スレッガー中尉!!』

 

「喋っていると舌噛むぞ!黙ってスコープ覗いてろっての!」

 

激しく暴れる機体を慎重に操作しながらスレッガー・ロウはカイ・シデン軍曹にそう怒鳴り返した。暗礁宙域での戦闘ということで再び留守番となる筈だった彼は今、コンペイ島防衛の要としてコントロールスティックを握っていた。

 

(簡単に言ってくれるよ、全く!)

 

防衛戦力が釣り出されているこの機会を敵が逃すとは思えない。アレン大尉の言葉は間もなく敵MA隊の発見という形で真実となる。そして対応出来る戦力は事前に覚悟を決め、艦隊の中央で温存されていたホワイトベースのみであった。

 

「間に合ったのは601だけだ、602も急いで用意するが期待しないでくれ」

 

「603はそのまま使うのかい?レイ大尉」

 

「あっちは我々がしっかりと手を入れたからな。急造品とは違うのだよ」

 

スレッガーの質問に自慢げな表情で答えるレイ大尉。それを乗っている本人に言ってしまうのはどうなのだとスレッガーは内心頬を引きつらせるが、今はそれよりも優先すべき事を実行する。

 

「そんで、こりゃどう使うんで?」

 

対艦ミサイルの間に強引にくくりつけられているのは202号機、カイ・シデン軍曹のガンキャノンだ。本来ならば装備しているはずのバックパックの武装は全て外されて懸架されている。

 

「いいか中尉、君の仕事はガンキャノンを射点まで運ぶことだ。対艦ミサイルは弾頭を不活性化させたもので初期加速に使う、燃焼を終えたら切り離してしまえ。後はとにかく加速して敵に追いつく。後はガンキャノンの仕事だ」

 

計算上は問題ない。そんなどう聞いても不安になる言葉と共に発艦した後の道中は中々に刺激的だった。運ばれているカイ軍曹は全く楽しめなかったようで、先程から不平不満が止まらない。

 

『ピザの配達だって今日日もっとましな運び方だぜ!?』

 

「男がごちゃごちゃ騒ぐんじゃないよ!見えたぞ!」

 

敵の噴射光を発見したスレッガーはそう叫ぶ。徐々に近付いていくと、それは濃緑色に塗装された菱形のような機体だった。先程までの騒ぎようが嘘のようにカイ軍曹は黙り込み、そして間を置かずトリガーを引いた。

 

「ほっ流石」

 

放たれたビームは最後尾を飛んでいた機体を正確に貫き一瞬で爆発させる。その爆発で先行していた残り2機がこちらに気付くが、その動きは対照的だった。

 

「迎え撃つつもりか!?」

 

『私が抑えます!!』

 

先頭の機体が反転してこちらを向く。敵機との距離が見る間に近付く中、僚機のエリス・クロード准尉がそう叫び敵に向かってロケット弾を発射する。

 

「頼む!」

 

敵の火力は未知数だが片方が足止めに残ったと言うことは、単機でも十分な損害を与えられると踏んでのことだと判断したスレッガーは即座にエリス准尉の提案を承知する。即座に彼女は巴戦に移行し、スレッガー達を狙おうとする敵機を妨害する。こちらが追撃していることを理解した最後の1機が懸命に機体を振って射線を躱そうとするが、それは残念ながら徒労に終わる。機体のサイズからすれば十分機敏ではあるが、それでもMSに比べれば遙かに鈍重なそれを、カイ軍曹が捉えられない訳がないからだ。再び無言で放たれたビームが推進器を貫き、推進剤に引火したのかMAが大爆発を起こす。

 

『ビグロが、こうも簡単にっ』

 

そう口惜しげな台詞と共に、最後の敵もエリス准尉の手によって屠られる。

 

「恨んでくれるなよ?あんたらだって殺そうとしたんだ、殺されもするさ」

 

目を焼いた敵機の爆発光にスレッガーは呟き、そして一度目を閉じる。再び目を開けた彼は、普段の陽気な声音で口を開く。

 

「よし、上出来だお前さん達!帰ったら俺が一杯奢ってやる!」

 

『俺ら未成年ですよ、スレッガー中尉』

 

「ばっか野郎、そこは気分でしょうが。ほら帰還するぞ!」

 

後の連邦軍に大きな意識の変化を呼ぶ事になるテキサスゾーン海戦は、こうして連邦軍の勝利で幕を閉じる事となった。




ちょっとスランプしてまして、暫く更新が滞ります。
筆休めでスランプってなんだ(哲学:配点10)
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