WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


81.0079/12/30

「ブラウ・ブロは要塞の直掩に回す。シャリア・ブル大尉、ジオングは使えそうか?」

 

「はっ、アジン少尉とドゥワ少尉用にサイコミュの調整をしております。30分程で出撃可能とのことです」

 

「頼む。ラル大尉、MS隊の様子はどうだろう?」

 

「酷いもんだよ中佐殿、あのゲルググ乗りは数合わせにもならん。リックドムの方はソロモンの連中だからまだマシだが、数がな」

 

「部隊の他の者はゲルググに乗り換えられないか?」

 

シャアの言葉にランバ・ラル大尉は眉を顰めながら返事をした。

 

「無茶を言うな中佐。どいつもこいつもお前さんの様に器用な訳じゃない」

 

ザンジバルのMS隊は地上からの撤退時に臨編された者達がそのまま宛てがわれていた。彼等は地上でドムを操縦していたためリックドムへの転換が短期間で済んだが、コックピットのレイアウトすら異なるゲルググではそうはいかない。この問題は他の部隊でも発生しており、ベテランと呼ばれるパイロットの多くは機種転換が間に合わないままア・バオア・クーの防衛に就いていた。

 

「仕方あるまい。ゲルググはブラウ・ブロと共に要塞直掩に当てよう。となると打って出られるのは我々の中隊とジオングにエルメスか」

 

「中佐!私も出撃させて下さい!」

 

考え込むシャアにそう叫ぶ声が届いた。見ればアジン少尉達によく似た少女が、真剣な面持ちでこちらを見ている。

 

「ペッシェ・モンターニュ少尉、もう良いのか?」

 

「問題ありません。ですから私も!」

 

その後ろでは彼女の保護者とも言えるアシュレイ大尉が、不安そうな面持ちで彼を見ていた。シャアは顎に手を当てつつ、懇願してくる少女に率直な評価を伝えた。

 

「ペッシェ、君にはNTとしての素養がある。しかしそれが軍の求めている水準に達していないことは君自身が良く解っている筈だ」

 

グラナダにおいて実施されていたサイコミュ兵器の稼働実験。ペッシェ・モンターニュは一度としてそれを成功させていない。そしてそんな彼女がこの部隊に送られてきている意味もシャアは大凡察しが付いていた。故に彼は彼女の願いを却下する。

 

「それはっ、今度こそ成功させて見せます!」

 

「言葉は実績が伴って初めて説得力が生まれる。そして君の実績を鑑みた上で私の判断は任せられないだ。ここは試験場ではない、君の失敗が誰かの死に繋がることを自覚した上でそう言っているのかな?」

 

辛辣とも思える言葉に、ペッシェ少尉は俯き肩をふるわせると格納庫から飛び出していく。アシュレイ大尉はこちらに向けて一度敬礼をするとそれを追いかけていった。それを見送っていると、横にいたランバ・ラル大尉が鼻を鳴らした。

 

「お優しいことだな、中佐殿」

 

「ラル大尉はお守りをしながら戦うのが好みかな」

 

肩を竦める大尉を横目に見ながら、シャアはこの後をどうするべきか考えていた。ガルマとドズルを葬った木馬には思うところがあるものの、既に彼の心はジオンから完全に離れていた。サイド3の独立は不可能と思える時点まで状況は行き詰まっており、その指導者達は父の謳ったNTを優秀な殺し合いの道具に名付けて戦場へ投げ込んでいる。そしてこの瞬間に至っても未だ相互の不信を乗り越えるどころか肉親を謀殺し、徒に傷口を広げ続けるザビ家は人類にとって無用の存在だと彼は考える。

 

(問題は、この状況でどう始末をつけるかだ)

 

排除するとしても、今殺せば良いと言うような単純な話ではない。何しろ連邦軍へ既に攻撃を行っている。この瞬間に殺してしまえばジオン軍が混乱することは必至であり、そうなれば多くのスペースノイドが彼等の道連れにされるだろう。

 

「厄介な事だな」

 

「ああ、だがジオンはまだ負けておらん」

 

思わず出た言葉に、見当違いの返事をするラル大尉に思わずシャアは苦笑する。ダイクン派であるこのランバ・ラル大尉ですら、この状況もギレン・ザビならば打開出来ると信じている。逆を言えばギレンが死亡した場合、誰一人としてその後を引き継げる者がいない。サイド3を国家としてまとめ上げるために、一個人に異常なまでの権力を集中させた弊害だった。

 

「とにかく、あの鏡をどうにかしてからの話だな」

 

ソロモンを焼いた連邦の新兵器。彼にはその破壊が命ぜられていた。

 

 

 

 

『既に第1及び第2連合艦隊は戦闘を開始、ソーラ・システムの露見によって敵部隊はNフィールドに移動しつつある。我々はこの隙を突いてSフィールドの突破を図る』

 

狭苦しく感じるコックピットの中で、俺はワッケイン少将の演説を聞いていた。

 

『敵の卑劣な罠により我々は多くの戦友を失った。だがその様な行いは我々の成すべき事に些かの陰りも与えるものではないと私は確信している。総員戦闘配置、地球連邦軍軍人としての責務を果たせ』

 

その言葉を皮切りに、周囲の艦艇が次々と増速しア・バオア・クーへと進撃していく。先陣を切るのは今回もパブリク突撃艇だ、ソロモン戦で半数以上を損耗したというのに、彼等は恐れること無く再び突撃を敢行する。

 

『MS隊発進準備!』

 

命がけの帚星達を見つめていると、俺達にもお声がかかる。とはいえ俺はする事が無い。何せ装備でデカくなりすぎた俺の機体はペガサス級のカタパルトで射出が出来ないため、事前に船外待機をしていたからだ。

 

『想定よりも敵防衛部隊が前面に出ている。第1攻撃部隊はこれを排除、突入隊の進路を開鑿せよ!』

 

「聞こえたな?W101より各機へ、全機前進し敵部隊を叩け!」

 

『『了解!』』

 

俺の指示に応えて4小隊と5小隊の機体が次々と発進する。更に2小隊のガンキャノンがホワイトベース周辺に展開した。

 

『またお供させて頂きます』

 

『この編成も大分慣れたな、案外相性が良いのかもしれん』

 

そう言って俺の後ろに付いたのはウェンライト中尉とフェン少尉だ。グレイファントムの方では1小隊分の欠員が補充されないままなので小隊を再編したらしい。本来彼等はララァ少尉と小隊を組んでいるが、はっきり言って俺と同じく技量がかけ離れすぎていてお荷物にしかなれないと言うのが実情だ。その為ララァ少尉とアムロ准尉はペアで戦ってもらっている。二人ともなんとも微妙そうな顔をしていたが、仲良くやって欲しいものだ。

 

「前衛を叩いちまえばこっちのもんだ!徹底してMSを狙え!特に新型、ビーム持ちを優先しろ!」

 

俺はそう指示を出しながら機体を前へと進ませる。ゲルググのビームが脅威ということもあるが、それよりも重要なのはゲルググの方が墜とし易いからだ。オデッサ作戦以降の連邦軍はとにかく速度重視に作戦を行っていて、ジオン側の態勢が整わないよう動いている。その結果最新鋭機であるゲルググがロールアウトしているにもかかわらず、多くの兵士が機種転換を終えられずに前線に張り付いたままなのだ。だから今この戦場に居る大半のゲルググは数合わせの新兵や学徒兵が搭乗している。そして数が減ってしまえばベテランの乗る機体は数で圧殺出来る。実に胸くそ悪い判断であるが、戦場に出ている以上容赦などしない。それで死ぬのは味方だからだ。

 

「レイチェル!カチュア!」

 

「「はい!」」

 

突貫作業のため、ボールの火器管制は俺のシートからは出来ないようになっている。流石に接続時にブースターとして使えるとの事だが、攻撃中はレイチェル達がボールそのものの角度まで操作してしまうから危なっかしくて使えたものじゃない。なので素直に諦めてただのガンポッドとして運用しているがその火力は中々侮れない。フィフティーンキャリバーの砲弾はMSが運用している100ミリや90ミリよりも連射性能に劣る反面、弾速・威力共に優越しているからだ。問題はボールの制御システムが追いついておらず、射撃に大幅な制限がかかっていたことだろう。量産機に採用された低反動砲と違い、既存の武装から流用された同装備は、ボールという機体が運用するには些か過大な武装だったのだ。だがそれもガンダムと言う母機と教育型コンピューターによるバックアップがあれば問題ない。

 

「この程度の相手なら!」

 

「墜ちちゃえっ」

 

俺の指示した通りレイチェル達は積極的にゲルググを狙う。そしてその攻撃は俺の予想した結果と違わず、次々と敵機に突き刺さる。

 

『ひっ、わぁぁ!?』

 

自機が被弾している状況で冷静な行動が取れる人間は少ない。当然素人に毛が生えた程度のパイロットにそんな事が出来る筈もなく、撃たれたゲルググは統制を欠いてそれぞれ好き勝手な行動に出る。その場でシールドを構える位は可愛いもので、逃げようと慌ててバーニアを思い切り噴かし、味方に衝突する機体まで現れる。衝突によってオートバランサーが強制的に起動してしまったそいつらは、仲良く友軍の火線に絡め取られ爆発する。

 

「次!」

 

「下手っぴ!丸わかりよ!」

 

肉体を強化されている彼女達は反応速度も常人のそれを上回る。それこそNTでもなければ彼女達の射撃を躱すことなど不可能と言ってもいい。オプションから吐き出される砲弾が次々とゲルググを襲い、あっと言う間に3機を撃墜、更に3機を友軍機と共同撃墜する。

当然そんなことをしていれば機体の異様さも相まって滅茶苦茶目立つ。何せ部隊の先頭で敵機を墜としまくっているのだ、それも新兵ばかり狙っているとなれば敵意も一入と言うやつだろう。まあ、それも想定内な訳だが。

 

「っと!」

 

攻撃されていなかったリックドムがこちらに向けてバズーカを放ってくる。ジャイアント・バズと呼ばれるこの武器は、ビーム兵器が登場した現在も極めて強力な携行火器として運用されている。本来ならガンダムであっても回避が推奨される威力を持つが、俺は敢えて左手のシールドで受け止めた。激しい閃光と衝撃が機体を襲う、しかしそれだけだ。

 

「お返しだぜ!」

 

ガーディアンシールド。ジム・ガードカスタムと呼ばれる防御に特化したジムの派生機用に開発されたこの装備は艦砲の直撃にも耐えられる。当然ジャイアント・バズ程度の攻撃ならば余裕で防げる性能だ。そして取り付けられた90ミリバルカンはNT-1の腕部に搭載されているものを長砲身化したものだ。取り回しは悪いがMSを相手にするなら十分な火力を持っている。フィフティーンキャリバーとは比べものにならない発射速度で形成された弾幕に攻撃を仕掛けてきたリックドムが晒され、ボロ雑巾の様にズタズタに引き裂かれた。それを見てしまったゲルググが錯乱したようにビームライフルをこちらに向けて乱射してくる。だがそれらも全てシールドに阻まれてしまう。

 

「上出来だ」

 

攻撃が集中するということは、それだけ他が自由になるということだ。そしてそんな隙を逃してやるほど連邦軍はお人好しじゃない。案の定俺への攻撃に意識を持って行かれた奴らを筆頭に、多勢に無勢となった連中も次々と撃破されていく。

 

『こちら37MS小隊!我Sフィールドを突破しつつあり!』

 

威勢の良い言葉と共にジムやボールが突撃していった。楔を打ち込まれた場所から戦火が野火のように広がっていく、ア・バオア・クー攻略戦は確実に激化していった。

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