WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今月分です。


82.0079/12/30

「同じ手を何度も使うとは舐められたものだ」

 

敵艦隊を観測中のモニターを眺めながら、ギレン・ザビはそう皮肉気に頬を吊り上げた。

 

「予定通り衛星ミサイルを発射しろ。キシリア、残敵掃討をお前の部隊に任せる。出来るな?」

 

「はい、兄上」

 

連邦軍の要塞攻略兵器であるソーラ・システムはコストパフォーマンスに優れた兵器と言える。何しろ原理自体は大量の鏡を並べているだけなのだ。たとえその数が数百万枚であろうとも価格でいえば戦艦1隻と大差ない。それでいて要塞に大打撃を与えられるというのだから実に効率的な兵器に見えるだろう。だがソロモンの戦闘詳報を読んだ時点でギレンはその問題点を即座に看破した。

 

「衛星ミサイル、予定通りに起爆!」

 

「命中まで3、2…今!」

 

「光学観測にて命中を確認!37%の損傷を与えました!」

 

「他愛もない。暢気な道具を使うからその様になる」

 

そう言ってギレンは鼻で笑う。ソーラ・システムの根幹である鏡は姿勢制御用のバーニアしか持たないため運動性は絶望的だ。更に構造やその運用思想上装甲化されている訳もない。故にそれなりの速度でデブリをぶつけてやれば簡単に無力化出来る代物だ。ソロモンでは展開までの発見が遅れたことに加え新兵器でありその性能が看破されていなかったが故に手痛い損害を受けたが、事前に露見しているならばその対処は容易い。

 

「目標損傷率50%を超えました!」

 

「戦線を押し上げる。キシリア」

 

「はい、NT部隊を出撃させい!」

 

そうキシリア・ザビ少将が命じるとスペースゲートの一つが開き、そこからゆっくりと足のないMSが出撃する。更に赤いゲルググとリックドムが続き、その後ろから群青に塗装されたMA、エルメスがゆっくりとその身を虚空へと進める。

 

「数が少ないようだが?」

 

その様子を見たギレンはキシリアにそう問いかける。事実NT部隊として軍に登録されている戦力からすれば、半数近くが出撃していなかった。その質問にキシリア少将は事も無げに答える。

 

「残敵相手ならば全力出撃させるまでもないでしょう。まだまだ敵は居ります故」

 

「随分と余裕だな。公国の興廃はこの一戦にかかっているのだがな?」

 

ギレンの皮肉にキシリア少将は一瞬目を細めるが、変わらぬ調子で口を開く。

 

「では、もう少しだけ余裕を持たせましょう。おい、例の機体も出撃させろ」

 

「は、しかしパイロットの調整が…」

 

「構わん。あの程度の敵ならばそんなものは必要ない」

 

「り、了解しました」

 

強い口調でキシリア少将がそう断じ、慌てた様子でオペレーターが出撃を指示する。その様子をギレンは愉快そうに眺めていた。

 

 

 

 

「クスコ少尉、エルメスは運動性に欠けるから前には出すぎるな。ルロイ曹長とフレデリック曹長は私と共にエルメスの直掩に当たれ」

 

『はい、中佐』

 

『『了解です』』

 

部下達の返事を聞きながらシャア・アズナブルは思考を巡らせる。今の所木馬発見の連絡はない。しかしこの戦いは連邦軍にとっても決戦と呼んで差し支えないものである、ならばそこに連中が現れないとは考えられなかった。連邦軍のNT部隊と目されている木馬と対峙するのは自分達の役割であるが、これは奇貨なのではないかとシャアは考え始めていた。

 

(腐敗した組織と見限ったつもりだったが…)

 

ザビ家打倒のために地球連邦軍へ入隊するという選択肢もあった。だがそれは、父ジオン・ズム・ダイクンの子として連邦政府の操り人形になることがわかりきっていた上、家族を滅茶苦茶にしたザビ家へ直接手を下せないという問題もあった。故に別人にすり替わってまでジオンに潜り込んだのだが、その先で目の当たりにしたガルマ・ザビとドズル・ザビの死に対し、何も感じていない事に彼は気がついてしまった。否、寧ろ木馬をガルマの仇とすら考えている自分がいることにシャアは自身の弱さを自覚してしまった。彼は自らが思っているほどには冷酷でも合理的な人間でもなかったようだ。

 

『中佐?』

 

「なんでもない。動きの速いMSの相手は負担が大きいから、オールレンジ攻撃は艦艇を狙え。MS単独ではア・バオア・クーは落とせんからな」

 

そう口にはするもののジオンの敗北は決定的だろうとシャアは考える。この一戦を凌いだとしても人的資源が払底している以上、次に耐える事は出来ないだろう。対して連邦はこの一戦に負けてもやり直す体力が残っている。そこから導かれる答えは明白だ。ジオン公国に対して欠片ほどの忠誠心も抱いていないシャアにしてみれば公国の興廃などどうでも良い事であるが、そこに部下達の命が関わってくれば気楽に投げ捨てることなど出来はしない。何よりNTという解りやすい異能を見せつけた彼等にシャア自身も魅せられていた。

 

(隙を見て連邦へ投降するか?)

 

装備を見る限り連邦側はNT研究がジオンよりも後れているのは間違いない。ならば自分達の部隊に同道しているフラナガン機関の研究者の身柄や研究資料、NT用MSを手土産とすればそれも可能に思えた。しかしそれはNTである部下達を実験動物として差し出すに等しい行為だ。NTを信望しているはずのスペースノイドですらそうなのだ、アースノイドにしてみればモルモットが自ら解剖台の上に飛び込んでくるようなものだろう。特にアジンとドゥワのようなNTのクローンなどという存在は最初から倫理観が破綻している。そんな彼女達に対して真っ当な扱いが期待出来ると思える程シャアは楽観的ではなかった。

 

(ならば、理想は連邦のNTをこちらに引き込むか)

 

連邦でもジオンでもない第3勢力をこの土壇場で立ち上げる。ザビ家を打倒するキャスバル・レム・ダイクンとして行動すればそれも可能なように思える。だがその覚悟を決めるには最後の一歩が彼には足りていなかった。そんな彼の元に更なる厄介ごとが降りかかる。

 

『シャア中佐、マレーネ中尉が出撃するとの事です』

 

「何?彼女はまだ調整中だと聞いているぞ」

 

オペレーターからの連絡にシャアは眉を顰めた。だがそれで状況が変われば苦労はない。

 

『その、キシリア少将から直々の命令でして』

 

責める様な彼の口調にオペレーターは言葉を濁しながらそう伝えてくる。

 

「彼女の機体は襲撃に向かん。ラル大尉」

 

『何かな、中佐殿?』

 

「マレーネ中尉が出撃するから護衛を頼む。ドロスまで前進し砲撃支援に当たってくれ」

 

『ひよっこ共のお守りはどうする?』

 

その返事にシャアは溜息を堪える。兵士も足りていないが指揮官の不足は更に酷い。部隊を小分けにしたくてもその部隊を指揮する人間がいないのだ。

 

「連れて行けそうなら彼女の護衛に、無理ならブラウ・ブロと共に待機だ。シャリア・ブル大尉、済まないが留守を頼む」

 

『承知しました』

 

本来ならば護衛対象である者に指揮を任せねばならない現状に、どうして皆がまだ戦えると盲信出来るのかシャアには理解出来なかった。

 

 

 

 

「こ、こんなのどうすれば!?」

 

「やることは変わらん!とにかくMSを撃て!」

 

原作よりもEフィールドの戦力が増強されているためか、Sフィールドの攻撃はアムロ達が待機していても順調だった。だが要塞に近付くにつれてそちらからの支援砲撃が厚くなり始めると友軍の損害が増大、進撃速度も鈍化してしまう。そこに極めつけが現れた。

 

「もう弾が無いよ!?」

 

宇宙空間において遠距離で戦おうと考えた場合、必然的にその選択肢は実体弾になる。ビームライフルは強力であるが距離減衰のせいで有効弾を得にくい上に、携行弾数も少ないからだ。尤もフィフティーンキャリバー程度の豆鉄砲でこいつがどうにかなるとも思えないのだが。

 

「オプションの展開を許可する!」

 

俺の宣言と同時にバックパックに接続されていたボールが切り離されて好き勝手に動き始める。唐突に迫ってきたボールに驚くザクは迎撃の間もなく内蔵火器にされていたビームガンの餌食となった。だが敵の圧力はその程度では弱まらない。前線にまで出張ってきたドロス級空母のドロワが次々にMSを吐き出しているからだ。損傷機も直ぐに逃げ帰れる上にドロワの砲撃で友軍艦隊が抑えられてしまい、こちらの支援が薄くなっているせいだ。

 

「大尉!アレを何とかしないと!」

 

ゲルググをオプションで追い回しながらレイチェル特務曹長がそう叫ぶ。何とかといわれてもなあ、俺はNTでもなけりゃスペシャルでもないんだが。

 

「無茶するぞ!しっかり掴まっていろ!マッケンジー大尉、頼んだ!」

 

そう言って後のことを大尉に丸投げすると俺は機体をドロワへと加速させる。他の連中のMSと違って俺は回避と防御に専念出来るし、何より脅威になるのが主砲だけだ。

 

「レイチェル!カチュア!MSを牽制!」

 

ドロス級空母はその図体に相応しい大火力と高耐久を誇る。それこそ普通に殴り合うなら連邦軍の一個艦隊ともやり合える程だ。更にMSを多数搭載する事で直掩も備えているから小回りの利く要塞の様なものである。だが流石に直掩を突破して近距離から火砲を叩き潰す相手なんてものと戦う事は想定されていない。そりゃそうだ、あの防空と直掩に突っ込んでいこうなんて馬鹿はそうそういない。

 

「はい!」

 

「りょーかい!!」

 

対空砲をシールドで防ぎつつ、俺も連装ビームライフルで適当に射撃を行う。それでもしっかりとFCSによって補正された射撃はドロワ右舷の主砲群を片端から破壊していく。正に教育型コンピューター様々である。二人の援護と相まって肉薄からほんの数十秒でドロワ右舷の砲を全て平らげた。

 

「そしてさらば!」

 

離脱に移った瞬間、左サイドスカートに接続されていたミサイルランチャーを自立式で切り離す。即座にミサイルが四方八方へ飛び回り、追撃していた敵機は咄嗟に回避行動を取ってしまう。当然そんな隙を二人が逃す訳もなく行きがけの駄賃とばかりに敵機を墜とす。

 

「ホワイトベース、こちらW101号機。弾薬補給の為一度帰還する」

 

アムロと違って接近戦で戦い続けられるほど俺は器用じゃない。弾薬無しではでくの坊もいいところなのだ。

 

『ホワイトベース了解、準備をしておく』

 

光学センサーによる簡易マップでは艦隊が徐々に前進を再開していた。ドロワの火力が下がった隙に戦線を押し上げるつもりだろう。ホワイトベースへ戻る途中、アムロ達とすれ違う。どうやらドロワへ止めを刺すつもりらしい。

 

『代わります!』

 

『後で話がありますからね!』

 

そんな事をいいながらアムロとララァはドロワへ向けて突き進んでいく。防空もそこそこ混乱していたからあの二人を止めることは出来ないだろう。ひょっとすればドロワを二人だけで沈めてしまえるかもしれない。だからこそ俺は一言余計なことを言う。

 

「デカブツは艦隊に任せておけ!徹底してMSを叩くんだ!」

 

ドロワが沈んでも敵のMSが特攻でも仕掛けてくれば艦隊に被害が出る。というのは建前で、艦隊が手こずる様な敵をたった二人で沈めたなどとなれば余計な警戒心を上層部に植え付けかねない。すでにドロワは艦隊戦で片付けられるのだから無駄なリスクは極力減らすべきだ。

 

『『了解!』』

 

元気の良い返事を聞きながら、俺はホワイトベースへと向かった。




ア・バオア・クーはナレ死させれば良かったと後悔なう。
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