WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


92.0083/09/26

9月も終わり近くとなれば日差しも力強さを増してくる。無数に突き立つコロニーの残骸と赤茶けた荒野をモニター越しに眺めながら、俺は試合開始の合図を待っていた。

 

『アレン少佐、準備は宜しいか?』

 

「問題ない、何時でも行ける」

 

『了解、では開始!』

 

サウス・バニング大尉の宣言と同時に遠距離用レーダーがカットされる。高濃度ミノフスキー粒子散布下での戦闘というシチュエーションだからだ。尤も本当にミノフスキー粒子を撒く訳にはいかないので、機体側のセンサーを停止させるだけではあるのだが。

 

「さて、やりますか」

 

フットペダルを軽く踏み込み機体を前進させる。更にコントロールスティックを操作し反応を見た。良い調子だ、流石ロスマン中尉の整備は完璧である。そんな彼女に内心で静かに謝罪しておく。

 

「ま、全力で相手をしろってリクエストだからな」

 

本当に謝るときはバニング大尉達にも連座して貰おう。そんな事を考えつつ俺は機体を加速させる。発端は昨日の顔合わせが終わり、以降の試験内容についてのスケジュールの話になった時だった。お互いの技量を確認する意味で先ず模擬戦を行おうと言う事になったのだが。

 

「すまん、それは本気でやった方が良いか?」

 

俺の質問にバニング大尉は顔を引きつらせ、コウ・ウラキ少尉とチャック・キース少尉は戸惑った様子だった。そしてラバン・カークス少尉は紅潮した顔で聞いてくる。

 

「それは、自分達が本気を出すまでも無い相手だと言うことでありますか?」

 

その質問にアニッシュ・ロフマン少尉が手で顔を押さえる。カークス少尉の言葉に俺は自分の言葉足らずを認識し補足を入れようとしたのだが、それより先にカークス少尉が啖呵を切ってしまった。

 

「自分達は試験部隊です。少佐殿にご満足頂けるだけの能力を持っていると自負しておりますが?」

 

「あー、いやカークス少尉」

 

「ああ、それとも負けたときの保険でありますか?手を抜いていたなら如何に英雄殿でも多勢に無勢は覆せないでしょうから」

 

おーし、その喧嘩買った。後で知ったのだがカークス少尉は今回の試験に部外者である俺がねじ込まれたことが酷く不満だったらしい。まあ、彼の立場からすればそれも仕方の無い事だろう。それはそれとしてちゃんとマウンティングはさせて貰うが。

 

「見つけた」

 

移動開始から暫くして光学センサーが敵機を捕捉する。ザクⅡの後期生産モデル、サンドブラウンに塗装されたF2型が3機警戒しつつ前進している。相手の編成は4機の筈だから1機はマークスマンとして後方から支援するつもりなのだろう。

 

「じゃあ見せて貰おうかい、試験部隊の実力ってやつをさ」

 

原作において、彼等3人は本物の俺が乗るパワード・ジムに一方的に負けていた。この世界における彼等の実力が如何ほどのものか、俺は試しに火器管制システムを全てマニュアルに変更し先頭の機体に狙いを付ける。MSに搭載された火器管制システムは優秀だが、目標との距離測定にレーザーを使用するため照準された相手にロックオン警報が鳴ってしまう。新兵同士の撃ち合いが意外にも長引くのはこの警報システムと機体の自動回避が優秀だからだが、それに慣れた相手には無警報の射撃というやつが意外とよく当たる。

 

「さて、挨拶…おい」

 

様子見のつもりで放った二発の砲弾はあっさりとコックピットに直撃。撃墜判定を食らったザクはその場で機能を停止する。それを見て残りの2機が慌てて物陰へと退避するが、それぞれ手近な場所に隠れたため、相互に全く連携出来ない位置取りになっている。

 

「新兵かよ、新兵だったわ」

 

ロフマン少尉が動く気配はない、流石に実戦経験者はあのくらいじゃ驚かんようだ。

 

「ま、死なないしな」

 

訓練という安心感がある以上、味方が倒されたくらいで動揺を誘うのは難しいだろう。だから厄介になる前に戦力を削ってしまう必要がある。

 

「…キースはあっちかな?」

 

残っているのはウラキ少尉とキース少尉だと思う。その内でしっかりと隠れて居る方に狙いを定めた。

 

「隠れ過ぎだ」

 

こちらも遮蔽物から飛び出し一気に距離を詰める。もう1機のザクはその動きに気付いて牽制しようとするが、稜線やコロニーの残骸が邪魔で射線を通せない。そして狙った方も遮蔽物で自分の射線を完全に殺してしまっているから、こちらを止められないどころかセンサーも隠してしまっているせいでこちらの正確な位置も把握出来ていない。彼が漸くこちらの位置を把握したのは、俺のビームサーベルが機体に突き立った瞬間だった。

 

「おっと」

 

2機目がやられて流石に隠れて居る場合ではないと考えたのか狙撃が飛んでくる。とは言え使用しているのはマゼラトップ砲だから精度はイマイチだし何より火器管制システム頼りだから避けるのはそれ程難しくない。流石にアムロやララァの様に機体を少し捻って射線を外すなんて芸当は無理だが、予告ありの砲撃に当たるほど間抜けじゃない。とは言えロックされていれば回避を強要されるし、鳴り響く警告音は確実にストレスになって集中力を削ってくる。

 

「妨害手段が欲しいな」

 

ダミーバルーンとは言わないが、そんな事を呟きながら残る前衛へと機体を跳躍させた。平面的な動きよりも三次元的な動きの方が狙撃に対し多少時間が稼げるからだ。更に言えばパワード・ジムは推力に優れる分、空中での動きに制限が少ない。AMBACも併用すれば曲芸に近い動きだって再現可能だ。

 

「MS同士の戦闘で足を止めるな!」

 

こちらが飛び上がったのを見てザクマシンガンで武装した前衛機は足を止めて射撃に専念していた。それも撃破したキース機を援護するために中途半端に前進していたから遮蔽物の無い所でだ。そんな目標を外すほど連邦の火器管制システムはポンコツでは無い。飛び上がった瞬間にマニュアルからオートに戻していたから俺の視線に合わせてマシンガンの銃口が勝手に敵機を捕捉してくれる。地面に向かって真っ逆さまに加速しながら射撃を加えれば、見事にザクは全身をオレンジ色に染め上げた。うん、やはりガンダムみたいにはいかないな。機体を宙返りの要領で脚から着地させて即座に加速、最後の後衛へと迫る。マゼラトップ砲による迎撃を諦めたザクは即座にマシンガンとヒートホークに持ち替えて白兵戦に備えてみせた。だが残念。

 

「俺ぁ殴り合いが苦手でね」

 

マシンガンによる牽制からヒートホークへ集中したのを確認して、俺はバーニアを最大出力で稼働させる。予定通りザクの頭上を飛び越えた俺は、先程と同じ宙返りの要領で機体を半回転だけさせると、まだこちらへ向き切れていないザクに向かってマガジンの残りを全て叩き込む。こうして初模擬戦は俺の被弾ゼロかつワンマガジンで試験部隊全機撃墜という戦績で終了したのだった。

 

 

 

 

「相手がザクと言っても、1対4でこれか」

 

模擬戦をモニターしていたサウス・バニング大尉は思わず唸ってしまった。試験部隊の隊長である彼は他の隊員に比べれば多くの情報に触れる権限がある。例えばディック・アレン少佐が政治的背景に基づき今回の任務に参加していることや、一年戦争における彼のスコアや評価がプロパガンダ用に誇張されている等だ。また少佐の態度も侮ってしまった原因の一つだろう。彼は事あるごとに自身の戦果をガンダムのおかげだと吹聴していた。事実当時ガンダムに搭乗していたパイロットは目覚ましい戦果を上げていて、彼等の経歴を見ればMSが優秀だったと考えてしまうのも無理からぬ事だった。

 

「練度の差を考慮すれば人数を倍にするか、最低でもゲルググを用意しないと話になりませんよ」

 

横で同じようにモニターを眺めていたエディータ・ロスマン中尉がそう評する。元々ジム改はゲルググを仮想敵として設計・調整された機体なのだ。数を揃えたとして、パイロットの技量も機体性能も格下では話にならないと彼女は続ける。

 

「それにしても少佐も調子に乗って!後で文句を言ってやらないと」

 

「それは一体どう言う意味だ?」

 

彼が眉を顰めながらそう聞くと、ロスマン中尉は不満気に答える。

 

「少佐が全力で動かすとあの機体では足回りがついて行けないんですよ。戻って来たら総チェックしなきゃいけません」

 

彼女の言葉にバニングは眉間のしわが益々深くなることを自覚した。彼女の言葉通りならば彼の全力にジムでは追いつかないと言うことだ。そんなパイロットが凡庸だなど冗談では無い。更に模擬戦前に少佐は全力で戦うのかと聞いていた。つまりそれは機体に合わせて操作を加減出来るという意味であり、間違いなく高い技量が無ければ出来ない芸当だ。

 

「聞いていた話と違うじゃないか」

 

「オーガスタには彼を撃墜出来るパイロットがゴロゴロしていますからね。ちょっと本人の感覚もおかしくなっているんですよ」

 

苦笑する彼女にバニングは深々と溜息を吐く。増長気味だったカークス少尉には良い薬になっただろうが、他の新人には刺激が強すぎたかもしれない。特にキース少尉は技量はともかく性格が臆病で消極的だ。一方的に蹂躙されるような経験は更に彼を萎縮させてしまうかもしれない。彼の表情を見てその危惧を悟ったのだろう、ロスマン中尉が笑いながら口を開く。

 

「多分想像しているような事は心配要らないと思いますよ」

 

「それは有り難いが理由を聞いても?」

 

「そっちでも少佐は優秀だからです。もっと酷い部隊を彼は戦争で率いていたので」

 

一年戦争末期に編成された第13独立部隊。ペガサス級母艦2隻と精鋭MS部隊を配した地球連邦軍でも有数の戦力だ。その活躍は有名なものでもソロモン攻略戦における敵巨大MAの撃破、ア・バオア・クー攻略戦においてもドロワの撃沈と語るに事欠かない部隊だ。しかしその内情が寄せ集めも良い所であり、特に中心となったホワイトベース隊では兵役にまだ就いていない訓練生や、それどころか緊急で徴募した民間人が部隊として運用されていた事を知る人間は少ない。伝え聞いた事のある噂話が真実だと知って、バニングは改めて年下の少佐が傑物なのだと理解する。

 

「頼もしい限りだ」

 

「あ、でも過信は禁物ですよ。基本的に彼、精神年齢は子供ですから」

 

思わずそう彼が口にするとロスマン中尉が意地の悪い笑顔でそう付け加える。どうにも厄介な相手だと言うことだけは理解出来たバニングは、再度深々と溜息を吐いたのだった。




軍人がモテる話。
感想なんかにも書いて頂いたんですが、軍人が結婚相手として求められるかと言われれば実はモテます。大抵高給取りで勤め先が潰れる心配も無く、体を鍛えてるので長生き。それでいて普段は殆ど家に居ないと、ATMとしてかなり優良な相手だからです。
つまり彼等がモテると言うのは、金持ちがモテるのと同じ話なんですね。
で、キース君が求めているのは自分を好きになってくれる恋人です。なのでそう言う相手からはモテないよ?と主人公は言ったのです。
以上今回の言い訳でした。
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