WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


95.0083/10/13

白亜の巨艦がゆっくりと滑走路へと進入してくる。それを試験部隊の面々と眺めていると、ウラキ少尉が目を輝かせながら口を開く。

 

「ペガサス級の新鋭艦かぁ。やっぱりガンダムタイプの母艦として運用されるんですかね?」

 

「そうだろうな。それにしても羽振りのいいこった」

 

思わずそう皮肉を言ってしまう。何せ今回の競作におけるアナハイム参入は民間企業へMS開発を委託する事で導入コストを抑えると言うのが大義名分だった。なのに新型機の運用に合わせてペガサス級まで発注していてはどう考えてもコストが合わない。原作ではホワイトベースがア・バオア・クー戦で喪失していた為に艦隊再建計画において建造中だった同艦が建造を再開したのだが、この世界でも何故か建造されている。恐らくガンダムとホワイトベースと言う解りやすいプロパガンダ用の部隊を用意したかったのだろう。

問題は今度のガンダムはある程度の量産が想定されていると言うことだ。建造費を考えればペガサス級をガンダムと同数準備する事は現実的では無い。だから他の部隊は既存の艦艇でガンダムを運用する事になるだろうが、そうすると今度はアナハイムが用意しているガンダムタイプの運用に差し障りが出るだろう事は想像に難くない。1号機はともかく、2号機があまりにも特殊過ぎるのだ。なので正直オーガスタの機体がコンペまでに間に合えば負けることは無いだろう。伊達に原作知識チートで人員を集めていない。

 

「にしても、1号機がロフマン少尉なのは解りますけど、2号機が未定ってのは…」

 

手すりに肘をつきながらカークス少尉がそう不平を漏らす。そう、トリントン基地に実機が持ち込まれていると言うのに未だパイロットが指名されていないのだ。

 

「腕利きに声を掛けているらしいが、ちょっと難航してるみたいだな」

 

カークスに対してアニッシュ・ロフマン少尉がそう苦笑交じりで返事をした。まあ現段階で行われているのは身内でやっているコンペ前の評価試験であり、コンペまでは時間があるから慎重に選んでいるのだろう。色々と癖も強い機体だろうしな。

 

「俺はてっきりアレン少佐が乗るもんだと思ってましたよ」

 

キースが俺を見ながらそう笑う。まあ一応ガンダムのパイロットだしな。そう思われてもおかしくは無いか。

 

「政治だよキース少尉。アナハイムとしてはガンダムのパイロットに勝てる機体って売り文句が欲しいのさ。それで乗っているのがロフマン少尉じゃ説得力なんて無いのにな」

 

彼はMS特殊部隊出身のベテランパイロットだ。彼等は戦中あの悪名高い機械化混成部隊と同様に幾つもの新型機を受領し運用している。機体への順応という意味では寧ろ彼の方が優秀かもしれない。

 

「いや、ハードル上げんで下さいよ」

 

「はっはっは、ガンダムを任される重圧を存分に噛みしめると良い」

 

彼はパワード・ジムも乗りこなせていたから特に心配は無い。問題は他の面子だ。原作通り基地襲撃があれば、彼等はザクで迎撃に出る事になる。あのハゲとロン毛が諦めてくれれば良いが、そんな連中なら3年間もテロ活動に勤しむなんて馬鹿はしないだろう。

 

(目下一番危ういのはウラキ少尉か)

 

操縦技能だけ見れば三人とも大きな差は無いのだが、どうにもウラキは思考が攻撃に寄っている。避けなければ被弾するが、今撃てば敵機を撃墜出来る。そんな状況で躊躇無く攻撃を選択してしまうのだ。防御性能に優れるガンダムならばまだしも、ザクでは万一があり得る。ここの所の訓練で幾分改善はされたがそれでもまだ不安だ。

 

「あー、でも一度で良いから乗ってみてぇな!ガンダム!」

 

そんなカークスのぼやきを聞きながら、俺達は着陸するペガサス級強襲揚陸艦アルビオンを眺めていた。

 

 

 

 

「随分と物々しいですね」

 

艦橋から基地を眺めて、ニナ・パープルトンはそう口にした。アルビオンが着陸する滑走路の周辺にはMSが展開して警備に当たっていたからだ。

 

「新型機の受け入れで多少緊張しているのでしょう。気になさる程の事ではありませんよ」

 

艦長席に座ったエイパー・シナプス大佐が彼女の疑問にそう答える。それを聞き彼女はそういうものかと納得した。実際この艦が運んでいる機体は今後連邦軍において運用される――と彼女は確信している――重要な機体である。杜撰な警備よりは遙かに良いと彼女にも思えた。

 

「着陸します」

 

操舵手の男がそう言うと、艦が僅かに揺れ動きを止める。艦橋にいるクルー達の緊張が僅かに緩んだように彼女は感じた。

 

「艦内各部チェック、問題が無ければスケジュール通りだ。パープルトンさんも宜しいですかな?」

 

「はい、それではあの子達の確認をして参ります」

 

「よろしく頼みます」

 

笑顔で会釈をし彼女は艦橋を離れる。だから彼女は険しい表情で窓の外を見るシナプス大佐に気が付かなかった。

 

 

 

 

「何かあったのですか?」

 

到着の報告を済ませホーキンズ・マーネリー准将と核弾頭受領の為に貯蔵施設へ向かう途中エイパー・シナプス大佐はそう問いかけた。民間人であるニナ・パープルトンへははぐらかしたが、トリントン基地は明らかに第2種戦闘配備を行っていた。これは何時でも戦闘に移れる状態での待機であり、平時の基地では異様と言えた。

 

「少々嫌な話を聞いてね」

 

「嫌な話、ですか?」

 

あくまで全てが最悪の状況に進んだならばであるが。そう前置きをして准将は話し出す。

 

「ジオン残党に君達が運んできた2号機の情報が伝わっていて、それがこのトリントンに運び込まれる意味を連中が理解していた場合にだ。この基地が襲撃される可能性があると私は考えた」

 

「は、いや、しかしそれは…」

 

准将の言葉にシナプスは言葉を濁す。確かに最悪の状況に備えるのは軍人の務めである、だが准将の想定はあまりにも敵にとって都合が良い条件が揃っているとシナプスは考えたのだ。それに対して准将は溜息を吐きながら言葉を続けた。

 

「言いたいことは解る。私の想定は敵に都合が良すぎると言いたいのだろう?だがな大佐、考えて見たまえ。2号機は何処で誰が建造した?」

 

その言葉に彼は返答に窮する。彼が運んできたガンダム試作2号機は月のフォン・ブラウン市、そこにあるアナハイムエレクトロニクスにて設計製造された。そしてアナハイムエレクトロニクスは元ジオン公国の企業であるジオニック社を買収、多くの従業員もそのまま雇用している。当然身辺調査などは行っているだろうが、戦後復興において元軍人というだけで雇用を拒否する事などは不可能だ。そして科学技術が発展した今日においてもその人物の本心を知る術を人類は持ち合わせていない。つまり旧ジオン系の従業員が全員潔白である事など誰にも証明出来ないのである。

 

「そしてこの基地だ。…極秘扱いになっているが、一年戦争当時、この基地の核貯蔵施設はジオンに襲撃されている」

 

その言葉にシナプスは今度こそ目を見開いた。トリントン基地が攻撃を受けた前例があることこそ知っていたが、ジオンが核貯蔵施設の存在を認識していることまでは知らなかったからだ。

 

「准将、それは…」

 

話を聞いてしまえば、彼に基地の現状を疑問視する思考は消えていた。

 

「でしたら弾頭の搭載も見送られては?」

 

シナプスがそう言うと准将が溜息と共に頭を振る。

 

「却下されたよ。発言の出所がアレン少佐だったのが中将はお気に召さなかったらしい」

 

その返事にシナプスは顔を顰める。本来ならば今回の開発計画はコーウェン中将の下でアナハイムエレクトロニクスが単独で行う筈だった。しかしそれに横やりを入れたのがアレン少佐の上役であるエルラン中将だった。連邦軍内の開発陣と既存の軍事産業が提携すれば開発計画で提示されている要求は達成可能であるとして、開発計画は競作に変更されたのだ。そして開発が遅延している彼等から派遣されてきたアレン少佐がスケジュールに遅延が発生するような提案をしている。時間稼ぎの為の妨害工作をもしかしたらコーウェン中将は懸念しているのかもしれない。

 

「確かに少佐の杞憂かもしれん。だが現場を預かるものとしては無視出来ん言葉だ」

 

准将の言葉にシナプスは同意する。前線に出る兵士は後方よりも遙かに得られる情報が少ない。その中ですらそうした不穏を感じ取れると言うことは、状況がそれだけ顕在化していると言うことだからだ。

 

「成る程」

 

「弾頭の搭載についても立ち会おう」

 

「は、よろしくお願い致します」

 

「…本当は、この封印を解きたくなど無いのだがな」

 

准将の呟きにシナプスは制帽を目深に被り直し沈黙するのだった。

 

 

 

 

「はい、問題ありません。どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

想定よりも遙かに厳重なチェックに内心舌打ちをしつつ、ニック・オービルはエレカを発進させた。折角の地球だから周囲を見て回りたいという彼の要望はあっさりと通ったものの、本来の目的を果たすのは難しい状況だった。

 

「なんだってあの基地はあんなに厳重なんだ?」

 

仕事柄幾つかの連邦軍基地に出向いたことがあったが、何処も弛緩した空気でチェックもあってないようなものだった。だから基地内への潜入の手引きは容易だと彼は考えていたのだが。

 

「…制服も取り上げられちまったし、一度少佐に確認するべきだな」

 

当初の予定では持ち出した連邦軍の制服を使ってアナベル・ガトー少佐を基地内に連れ込む予定だった。しかし他の基地なら身分証の提示だけで済むゲートチェックが、何故かあの基地では車内の確認まで行われたのだ。借りたときから置いてあったと苦しい言い訳で何とか凌いだものの、制服はゲートで没収されてしまったから、予定していた作戦は難しい。何せ荷台が空である事までしっかりと確認されたのだ。適当なシートで身を隠すなんて方法は先ず不可能だろう。

 

「こいつは面倒な事になったぞ…」

 

漠然とした不安を覚えつつ、オービルは合流地点へと急ぐ。星の屑作戦は早くも陰りを見せ始めていた。

 

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