WBクルーで一年戦争   作:Reppu

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今週分です。


98.0083/10/14

「追撃隊にアレン少佐が参加しないって本当ですかバニング大尉!?」

 

『…ああ、少佐は基地の防衛に回されるそうだ』

 

『マジかよ』

 

コウ・ウラキ少尉の問いかけに返ってきたのは苦々しいバニング大尉の声だった。更にそこへカークス少尉の呟きが重なった。再度行われた敵のミサイル攻撃によって混乱した隙を突き、ジオン残党は見事にガンダム2号機を奪取してみせたのだ。侵入してきた敵戦力の内ドム1機とズゴック2機は撃墜したものの、こちらも守備隊の半数が損傷しロフマン少尉も負傷してしまっている。そうした中で副基地司令の指揮で追撃部隊が編成される事となったが、アレン少佐は基地に残すようにと指示が下ったのだ。彼の実力を理解している試験部隊の面々からすれば納得しかねる命令だった。

 

『少佐がオーガスタの所属だからですか?』

 

『詳しい事情はわからん。ただ追撃部隊に参加しないのは確かだ』

 

部隊内通信に嫌な沈黙が訪れる。既に少佐はリンクから外されている。コウは無性にアレン少佐の軽口が聞きたかった。

 

『あの時、少佐は相手がソロモンの悪夢だって言ってましたよね?ソロモンの悪夢って、あの現代戦史教本にも載ってた…』

 

一年戦争におけるソロモン追討戦で連邦艦隊に甚大な被害を与えたジオンのエースパイロット、アナベル・ガトー大尉に付けられた異名がソロモンの悪夢だった。

 

『本当かどうかは解らん。だが少佐が撃破出来なかったパイロットである事は事実だ』

 

その事実はコウ達に重くのしかかる、少佐の技量は全員が痛いほど理解していたからだ。

 

『ロフマン少尉も負傷で参加は難しい。よってこの隊は4機編成で追撃を行う、弾薬を補給次第出撃だ』

 

「了解しました」

 

そう返事はしたものの、コウの不安は拭えなかった。

 

 

 

 

「ですから言ってるでしょう?オーガスタのシミュレーションで見た動きと酷似していたからですよ」

 

「数百回と繰り返した中でたった数回行ったシミュレーションの動きを覚えていたと?流石は英雄殿だね」

 

副司令から直々に基地に残るよう命令されたかと思えば、俺は速攻で呼び出されて事情聴取を受けていた。

 

「生死不明じゃなく、行方不明のネームドですよ?そりゃしっかり覚えますよ。なんなら機体の参照データを確認して下さい。ちゃんと一致している筈です」

 

「成る程、アリバイ作りも完璧と言うことかね?」

 

何言ってんだお前。

 

「あー、つまり自分は疑われている訳でありますか?ジオン共と繋がっていると」

 

「驚くほど正確な襲撃予想に参加者の看破。疑われるのは無理もないと思わんかね?」

 

馬鹿じゃねえの。

 

「繋がっているなら事前に襲撃の予想なんてしませんよ。それにスパイが自分から怪しい発言なんてすると本気で思っているんですか?」

 

「だが君達がこの開発計画に良い感情を抱いていないのも確かだ」

 

マジかよ。派閥争いの為にテロリストと手を組むなんて本気で…、考えてそうだな。実際取引している上層部は居るんだ、そういう手口が横行しているなら疑われてもおかしくはない。冗談じゃないが。

 

「私達が開発計画に否定的だったのはこの状況を懸念していたからですよ。元ジオンの人間を大量に抱え込む民間企業に戦術兵器の開発を委託するなんて情報を流してくれと言っているようなものじゃないですか」

 

「いや、まだアナハイムが情報を漏洩したとは…」

 

「アルビオンに問い合わせれば直ぐ解りますよ。アナハイムから出向しているニック・オービルの所在を確認して下さい」

 

あの状況で盗み出したとすれば、オービルが乗り込んでいた可能性が高い。それにしてもデラーズフリートの連中は実に短絡的な奴らばかりに思える。やはり既に組織として限界を迎えているのだろう、今回の作戦を成功させた後の事なんて責任どころか展望すら持っているか怪しい。地球の穀倉地帯に打撃を与えてコロニーへの食料依存度を上げる?そんな事をすれば一番最初に困窮するのはコロニー側の貧困層だ。その原因が連邦主導で行われているコロニー再建計画を妨害した上に、補修出来るコロニーを再び弾頭として使用したジオン残党となったなら恨みが何処に向くかなんて馬鹿にでも解りそうなものだが。

 

「とにかく、問題のジオン残党は我が基地の部隊が追撃する。これに関しては理解して貰いたい」

 

俺の立場はあくまで開発計画への参加だからな。本来なら基地の防衛や戦闘に参加するのだって問題だ。今回は緊急的避難措置としてお咎めは無いだろうが、流石に追撃となると話は別だ。

 

「承知しております。ですが一度上官への報告はさせて頂きたい」

 

「通信室を使いたまえ。護衛を付けさせて貰うがね」

 

監視だろ?

 

「問題ありません。なんならご一緒にお聞きになりますか?」

 

「そこまで暇では無い」

 

そう言って事情聴取をしていた中佐は溜息を吐く。確か参謀の一人だったかな?副司令に言われて俺の相手をしているのだろう、この人も大変だな。そうしている内に歩兵装備で身を固めた兵士が入室してくる。それを見て中佐は視線で退出を促してきた。

 

「では失礼します。君、すまないが通信室まで案内してくれないか?」

 

「はっ!こちらです少佐殿!」

 

廊下を歩きながら今後をどうするべきか俺は考える。普通に考えればオービルの一件からアナハイムへの査察や戦術核を奪ったテロリスト捕縛のために連邦軍が動く筈だが、史実ではその動きが極めて緩慢だ。特に派閥間の齟齬が酷く結果としてコロニー落としを許すという失態を晒したのは連邦軍にとって痛恨の極みだ。何よりここで失敗するとワイアット大将が戦死する上にティターンズが発足してしまう。あの組織お題目は正しいけれど、最高責任者が人類粛清を狙うエコテロリストという致命的な欠陥を抱えているから何とかしておきたい。

 

「どうぞ」

 

「有り難う」

 

まあ取り敢えずは星の屑阻止だ。席に座ってコードを打ち込むと、暫くして嫌そうな顔のエルラン中将がモニターに映る。

 

『…その様子だと良い報告ではなさそうだな』

 

「はい閣下、核弾頭を搭載した試作機がジオン残党を名乗る連中に奪取されました」

 

俺の報告に中将は喉を鳴らして笑った。

 

『コーウェンの奴め今頃慌てているだろうな。予算会議であれだけ機密保持は問題ないと嘯いておいてこの体たらくだ。それで、ここから我々はどう動くべきかな?』

 

「先ずはコーウェン中将に協力の打診を」

 

彼の失敗の一つが動員出来る戦力の少なさと交渉能力の低さだ。少なくともワイアット大将辺りと連携出来ていれば観艦式辺りでデラーズフリートの目論見は頓挫していただろうし、動員出来る戦力が多ければバーミンガムとシーマ・ガラハウの密会の時点で星の屑作戦の全容を掴めた可能性が高い。

 

『拒否されたら?』

 

「そうなるとコーウェン中将は冷静な判断力を喪失していると言うことになりますね」

 

派閥争いに目が行って協力出来ないと言うなら遠慮は要らない。既にこちらへ引き込むべき人員のリストはエルラン中将に提出済みだから、ワイアット大将と連携して2号機強奪の責任を追及してこの一件における指揮権を剥奪。そうすれば晴れて星の屑はご破算となるだろう。

 

『受け入れられた場合は?』

 

「率直に申し上げて状況が流動的過ぎます。あちらの要請に応える形になるでしょう」

 

そう言うとエルラン中将は腕を組むと笑いながら口を開く。

 

『君の意見としては?』

 

「現在トリントン基地の部隊が追撃を行っていますが、あまり状況はよくありません。最悪オーストラリアから宇宙へ脱出、そうで無ければ」

 

『なければ?』

 

「アフリカから宇宙へ逃げるでしょう」

 

『ほう?随分と断定的じゃないか』

 

そら史実でそうだからな、でも状況的に俺はそうだと確信している。

 

「基地が襲撃された際、長距離ミサイルによる攻撃と水陸両用MSが投入されていました。おそらく潜水艦を運用している残党が協力しているのでしょう。潜水艦を運用出来てかつ宇宙へMSを打ち上げられるだけの戦力があるとすればアフリカしか残っていません」

 

アフリカは大戦末期に地上に取り残されたジオン兵が多く流れ込んだ地域である。その為他の地域に比べ戦力も潤沢である。こう考えると真っ先に掃討されそうな地域なのだが今まで限りなく放置に近い状態が続いている。というのも連中は逃げ込んだ先で息を潜めて本気で持久の構えを見せているのだ。略奪や連邦軍への襲撃なども無いから活発に動いている別の地域の残党掃討が優先された結果、今日まで相当数の戦力を保持したまま残存している。

 

「それにあそこは戦中資源採掘地帯でしたから、HLVの一つ二つ残っていても不思議ではありません。ジブラルタルのマスドライバーや他の打ち上げ施設を狙うよりは現実的でしょう」

 

『ではその様にするとしよう。やれやれ、いい加減ジオンには大人しくして欲しいものだな』

 

そいつは無理な注文だと思うぜ、中将殿。

 

「それは当分先になりそうです」

 

先の大戦で連邦軍は勝利した。つまりそれは大戦前の状況を維持しただけに過ぎない。つまりジオニストの掲げている格差は何一つ是正されていないのだ。ならば彼等が武器を置く筈が無い。尤も、格差の存在しない社会など人間には生み出せないのだから、たとえ彼等が言うとおり人類全員がニュータイプになろうが宇宙へ移民しようが新しい争いは起こるだろう。

 

『嫌な予言をしてくれる』

 

そう言ってエルラン中将は心底嫌そうな顔で通信を切ったのだった。

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