その局の、芽亜里の捨て牌
{二一三二東北}
{赤⑤}
芽亜里の最終的なあがりの形。
{六六67} {赤5} {横234} {白白横白} {西横西西}
ドラは{二}だった。
「んん……?」
第一打から、ドラを切り出している。第二打が、ドラ{二}の隣である{一}とある。
「ペンチャン外し……」
配牌からペンチャンを落とす事は、決して珍しい事ではない。しかし、芽亜里がやった事は、ドラ含みのペンチャン外し。そして、{一二}のペンチャンのうち、ドラだったのは{二}の方だ。
だったら普通、外側の{一}から切らないか?
それでもし、一巡後に裏目の{三}を引いてきたら、{二三}で、フリテン受けの両面ができる。それはそれで悪くない。
それを敢えて{二}から切った理由とは?
考えよう。これから戦う相手、芽亜里の特性を看破する為に。
……ホンイツか?確かに芽亜里の捨て牌は、マンズを嫌ったホンイツのように見えるかも知れない。事実、あがった形は、{六六}の雀頭を別とすれば、残りは全て、ソーズと字牌。最終的な待ちもソーズ待ちだった。
でもそれって、待ちがソーズな時に、ソーズのホンイツを見せかけるって、逆効果じゃないか?
あ、いや……
芽亜里の手牌は、三回鳴いた時点でこの形だった。
{六赤⑤北6}
なんとバラバラ!三鳴きしてまだリャンシャンテン!
この手牌に、
{横六}
{六赤⑤北6}
こう引いてきて、打、{北}。
{横7}
{六六赤⑤6}
そしてこう引いてきて、打、{赤⑤}。テンパイに至った。
気になる事がある。
何故、芽亜里は{北}を執拗に手牌に残した?
そしてもう一つ。芽亜里は{赤5}、高目を引きあがってようやく三役になった。何故、どうして芽亜里は、最終的に二役までしか確定しないテンパイを取った?
そして更にだ。どうして芽亜里は、あがった時に点数の申告を間違えた?
芽亜里は、1000.2000ではなく、2000.4000と言った。
つまり、この映像で行われている麻雀のルールは何だったんだ?
また、芽亜里が普段打っている得意なルールとは?
「…………」
妄は、ぶつぶつと呟き、考え事をする。
「東、西……」
…………
「南、北……」
…………
「ドラは{二}……」
…………
妄は校舎内を歩いていた。
すると、とある賭場で、聞き覚えのある声が聞こえた。
「ツモ」
早乙女、芽亜里。
「2000.4000は
あっ……!
「ふ……そういう事かい」
その夜、全員は生徒会室に集合した。
「よく来たわね。妄、芽亜里、そして二人の補佐役、妄の側には楓、芽亜里の側には、ふふ、ユメミ?頑張ってね?」
「…………」
「生志摩」
豆生田が、妄に小声で話しかけてくる。
「何故、早乙女と夢見弖が一緒にいると思う?」
「ん、何か知ってるのか?」
「いや、俺は知らん」
「は?何言ってんだお前」
「……怒るなよ。謎は放置せずに確認した方が良いだろう」
「はあ」
「……会長は知ってるだろう。俺は会長には訊ねないけどな」
「…………」
会長が改めて、全員の前に立つ。
「では、始めるわよ。時間無制限の半荘が三回勝負。今は……十九時になったばかり、ね。それじゃあ、清華?ルールの説明をしてくれる?」
雀卓をふと見てみると、入っている点棒の数が普段と違う。一万点棒が抜かれているように見える。
五十嵐清華は、打ち子四人にルールを説明する。
「アリアリの東南戦が三回勝負。西入は一切ありません。三回合計のスコアを、二対二で競っていただきます。千点1スコアの、ウマが20-40。最初の持ち点、配給原点は、25000ではなく15000です。返し点はありません」
なるほど。やはりそうか。点棒が少ないんだな。
「そして、赤ドラは一般的な、各一枚の三枚投入。この赤についてですが、赤牌は今回、特別な《祝儀牌》と定めます。その意味の説明ですが、簡単な話です。あがった時に、赤牌が手牌に含まれていると、役の数とは別に点数が上がります。その数値は、ロンで5000点、ツモで2000オールの追加点と定めます」
そう言った後、清華は牌を並べて、それを見せて説明する。
{123456赤⑤⑥⑦二二三四赤五}
「これは、平和赤々の三役の手です。これをロンであがった場合、そのあがり点は、3900は
そして清華は、一枚のとある牌を取り出す。
「そして、白ポッチ{白ポッチ}があります。これはツモあがり時限定のオールマイティ牌となります」
「ありがとう清華。皆さん、何か質問はあるかしら?」
そう確認されて、妄は挙手をする。
「積み棒は無いのか?」
「無いわよ」
「連荘は」
「あるわ。あがった時は勿論、流局時のテンパイでも連荘できるわ」
説明は概ね終了した。何か起こった時の裁定は、清華及び会長に委ねる事にする。
実際に対局に入る為に、事の段階は席決めまで進む。
二チームの状態は平等であるべきだ。ゆえにまあ、微細な話ではあるが、リーダーである妄と芽亜里は対面に座る。そして、妄の下家が豆生田、芽亜里の下家がユメミだ。
「お、おい、ちょっと待った」
妄が気付く。
「賭けるものは?」
それに対して、清華が答える。
「三回全ての合計で、勝ったチームに8000万円……」
「そうか、それならいいんだ。ちゃんと前もって決めておくならな。おい、豆生田?金は持ってるよな?」
妄は、ごく当然のように豆生田の財布を当てにする。
「……ああ。ちゃんとある。気にしなくていい」
「……?」
豆生田は、やけに素直だった。
座った席、及びサイコロにより、起家は豆生田。南家が芽亜里、西家、ユメミ、北家が妄となった。
「では、闘牌を開始してください」
東一局、ドラは{五}
(ほう、いいドラだ。本当に助かるいいドラだ。それがまあまあ、この配牌の時ならな)
妄の配牌。
{一九19①⑨東西北五456}
(……ははは)
妄は早速、ジャッジマンに確認する。
「清華、九種九牌は?」
「……無しです」
「あ?ふざけた話だな」
そう言いつつ、半ば分かっていたかのように、妄はニヤニヤと笑う。
……対面の芽亜里を見ると、まるで当然という表情をしている。
そして。
「ツモ」
{二三四六七八八八234④⑤ツモ⑥}
「1300オールだ」
十四巡目でのツモあがり。豆生田だ。タンヤオが付いている手。鳴けばもっと早くあがれただろう。それか、どうせ面前ならリーチと行くべきじゃないのか。
……いや、これでいいんだ。
(そうだ、それでいい)
今、その手で鳴いちゃ駄目だ。きっと、敵である芽亜里もそう思っている事だろう。
「よし、一本場、積み棒は無しだったな」
(そうだ、今回の相手、芽亜里は、芽亜里は)
芽亜里は。芽亜里の打ち筋、庭の中は…………
芽亜里は、東風戦の打ち手だ――――