麻雀狂 ミダリ   作:かさばる

10 / 23
第十話 早乙女の箱

その局の、芽亜里の捨て牌

 

 

 

{二一三二東北}

{赤⑤}

 

 

 

芽亜里の最終的なあがりの形。

 

 

{六六67} {赤5} {横234} {白白横白} {西横西西}

 

 

ドラは{二}だった。

 

 

「んん……?」

 

 

第一打から、ドラを切り出している。第二打が、ドラ{二}の隣である{一}とある。

 

 

「ペンチャン外し……」

 

 

配牌からペンチャンを落とす事は、決して珍しい事ではない。しかし、芽亜里がやった事は、ドラ含みのペンチャン外し。そして、{一二}のペンチャンのうち、ドラだったのは{二}の方だ。

 

だったら普通、外側の{一}から切らないか?

 

それでもし、一巡後に裏目の{三}を引いてきたら、{二三}で、フリテン受けの両面ができる。それはそれで悪くない。

 

それを敢えて{二}から切った理由とは?

 

考えよう。これから戦う相手、芽亜里の特性を看破する為に。

 

……ホンイツか?確かに芽亜里の捨て牌は、マンズを嫌ったホンイツのように見えるかも知れない。事実、あがった形は、{六六}の雀頭を別とすれば、残りは全て、ソーズと字牌。最終的な待ちもソーズ待ちだった。

でもそれって、待ちがソーズな時に、ソーズのホンイツを見せかけるって、逆効果じゃないか?

 

あ、いや……

 

 

芽亜里の手牌は、三回鳴いた時点でこの形だった。

 

{六赤⑤北6}

 

 

 

なんとバラバラ!三鳴きしてまだリャンシャンテン!

 

 

この手牌に、

 

 

 

   {横六}

{六赤⑤北6}

 

 

こう引いてきて、打、{北}。

 

 

   {横7}

{六六赤⑤6}

 

 

そしてこう引いてきて、打、{赤⑤}。テンパイに至った。

 

 

気になる事がある。

 

 

何故、芽亜里は{北}を執拗に手牌に残した?

そしてもう一つ。芽亜里は{赤5}、高目を引きあがってようやく三役になった。何故、どうして芽亜里は、最終的に二役までしか確定しないテンパイを取った?

そして更にだ。どうして芽亜里は、あがった時に点数の申告を間違えた?

芽亜里は、1000.2000ではなく、2000.4000と言った。

 

つまり、この映像で行われている麻雀のルールは何だったんだ?

 

また、芽亜里が普段打っている得意なルールとは?

 

「…………」

 

 

妄は、ぶつぶつと呟き、考え事をする。

 

 

「東、西……」

 

…………

 

「南、北……」

 

…………

 

「ドラは{二}……」

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妄は校舎内を歩いていた。

すると、とある賭場で、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「ツモ」

 

早乙女、芽亜里。

 

「2000.4000は2500.4500(ニーゴーヨンゴー)

 

あっ……!

 

 

 

「ふ……そういう事かい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、全員は生徒会室に集合した。

 

「よく来たわね。妄、芽亜里、そして二人の補佐役、妄の側には楓、芽亜里の側には、ふふ、ユメミ?頑張ってね?」

 

「…………」

 

 

 

「生志摩」

 

 

豆生田が、妄に小声で話しかけてくる。

 

 

「何故、早乙女と夢見弖が一緒にいると思う?」

 

 

「ん、何か知ってるのか?」

 

 

「いや、俺は知らん」

 

 

「は?何言ってんだお前」

 

 

「……怒るなよ。謎は放置せずに確認した方が良いだろう」

 

 

「はあ」

 

 

「……会長は知ってるだろう。俺は会長には訊ねないけどな」

 

 

「…………」

 

 

 

 

会長が改めて、全員の前に立つ。

 

 

「では、始めるわよ。時間無制限の半荘が三回勝負。今は……十九時になったばかり、ね。それじゃあ、清華?ルールの説明をしてくれる?」

 

 

雀卓をふと見てみると、入っている点棒の数が普段と違う。一万点棒が抜かれているように見える。

五十嵐清華は、打ち子四人にルールを説明する。

 

 

「アリアリの東南戦が三回勝負。西入は一切ありません。三回合計のスコアを、二対二で競っていただきます。千点1スコアの、ウマが20-40。最初の持ち点、配給原点は、25000ではなく15000です。返し点はありません」

 

なるほど。やはりそうか。点棒が少ないんだな。

 

 

「そして、赤ドラは一般的な、各一枚の三枚投入。この赤についてですが、赤牌は今回、特別な《祝儀牌》と定めます。その意味の説明ですが、簡単な話です。あがった時に、赤牌が手牌に含まれていると、役の数とは別に点数が上がります。その数値は、ロンで5000点、ツモで2000オールの追加点と定めます」

 

 

そう言った後、清華は牌を並べて、それを見せて説明する。

 

 

{123456赤⑤⑥⑦二二三四赤五}

 

 

「これは、平和赤々の三役の手です。これをロンであがった場合、そのあがり点は、3900は13900(イチサンキュウ)。ツモであがった場合は、1300.2600は5300.6600(ゴーサンロクロク)となります」

 

 

そして清華は、一枚のとある牌を取り出す。

 

 

「そして、白ポッチ{白ポッチ}があります。これはツモあがり時限定のオールマイティ牌となります」

 

 

 

「ありがとう清華。皆さん、何か質問はあるかしら?」

 

 

そう確認されて、妄は挙手をする。

 

 

「積み棒は無いのか?」

 

 

「無いわよ」

 

 

「連荘は」

 

 

「あるわ。あがった時は勿論、流局時のテンパイでも連荘できるわ」

 

 

 

 

説明は概ね終了した。何か起こった時の裁定は、清華及び会長に委ねる事にする。

実際に対局に入る為に、事の段階は席決めまで進む。

二チームの状態は平等であるべきだ。ゆえにまあ、微細な話ではあるが、リーダーである妄と芽亜里は対面に座る。そして、妄の下家が豆生田、芽亜里の下家がユメミだ。

 

 

「お、おい、ちょっと待った」

 

妄が気付く。

 

「賭けるものは?」

 

それに対して、清華が答える。

 

「三回全ての合計で、勝ったチームに8000万円……」

 

 

「そうか、それならいいんだ。ちゃんと前もって決めておくならな。おい、豆生田?金は持ってるよな?」

 

妄は、ごく当然のように豆生田の財布を当てにする。

 

「……ああ。ちゃんとある。気にしなくていい」

 

「……?」

 

豆生田は、やけに素直だった。

 

 

座った席、及びサイコロにより、起家は豆生田。南家が芽亜里、西家、ユメミ、北家が妄となった。

 

 

「では、闘牌を開始してください」

 

 

 

東一局、ドラは{五}

 

 

(ほう、いいドラだ。本当に助かるいいドラだ。それがまあまあ、この配牌の時ならな)

 

 

妄の配牌。

 

 

{一九19①⑨東西北五456}

 

 

(……ははは)

 

 

妄は早速、ジャッジマンに確認する。

 

 

「清華、九種九牌は?」

 

「……無しです」

 

「あ?ふざけた話だな」

 

そう言いつつ、半ば分かっていたかのように、妄はニヤニヤと笑う。

 

 

……対面の芽亜里を見ると、まるで当然という表情をしている。

 

 

そして。

 

 

「ツモ」

 

 

{二三四六七八八八234④⑤ツモ⑥}

 

 

「1300オールだ」

 

 

十四巡目でのツモあがり。豆生田だ。タンヤオが付いている手。鳴けばもっと早くあがれただろう。それか、どうせ面前ならリーチと行くべきじゃないのか。

 

 

……いや、これでいいんだ。

 

 

(そうだ、それでいい)

 

 

今、その手で鳴いちゃ駄目だ。きっと、敵である芽亜里もそう思っている事だろう。

 

 

「よし、一本場、積み棒は無しだったな」

 

 

(そうだ、今回の相手、芽亜里は、芽亜里は)

 

 

芽亜里は。芽亜里の打ち筋、庭の中は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芽亜里は、東風戦の打ち手だ――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。