麻雀狂 ミダリ   作:かさばる

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第十二話 溶ける。

芽亜里組の二人が対局室に戻ると、ユメミの大ファンであり、ユメミが非常に嫌悪している真能寺がそこにいた。

 

 

「ユメミちゃんっ!応援に参りましたぞっ!」

 

 

「真能寺くん……」

 

 

ユメミは微妙な反応をする。

 

ユメミは真能寺が嫌だろうが、それはそれとして、芽亜里が警告する。

 

「あんた、なに入って来てんの?ディーラーには連絡済みなの?私は聞いてないわよ?何の用があって?」

 

それを聞いて答えたのは、会長や清華ではなく、ユメミだった。

 

「……いいわよ別に。この際だから。大事な勝負だもの。ぎゃあぎゃあ言って壊したくないわ」

 

建前上、一応はアイドルを気取っているユメミにしては随分辛辣な事を真能寺に言い、そして彼の前に近寄って。

 

握手を、求めた。

 

「真能寺くん、応援に来てくれてありがとう。でもね、一応ここは、私の権限がある場所じゃないからね。麻雀をやってる場所なんだから、その辺り、気を付けてね?」

 

「は、はい!大変失礼を致しました!ユメミちゃん!」

 

 

(……………)

 

 

 

妄は、その光景を眺めていた…………

 

 

 

 

点数状況(原点は15000)

 

妄:12900

 

豆生田:19900

 

芽亜里:14300

 

ユメミ:12900

 

 

 

東二局。芽亜里の親。妄は西家。

ドラは、{⑧}。

 

 

みんなみんな、慎重に打っているつもりだった。しかしそれでも、何が起こるか分からないのが麻雀。いや、というかそれ以前の話。極端に偏ったこの麻雀の特性として。

 

 

 

「ツモだ」

 

 

妄。

 

 

 

{34赤5三四赤五③④赤⑤⑥⑥⑥⑦ツモ⑧}

 

 

 

「倍満の三枚付けは10000.14000だ」

 

 

 

妄:12900+24000=46900

 

豆生田:19900-10000=9900

 

芽亜里:14300-14000=300

 

ユメミ:12900-10000=2900

 

 

 

「ちっ……」

 

 

 

芽亜里がなかなかの不機嫌顔をする。持ち点は残り300点だ。

 

 

するとそこで、ディーラーの清華が割って入って来る。

 

 

「はい、ラストです。妄さんのトップ、40000点到達でコールド終了となります」

 

 

 

「……おお、そうか」

 

 

 

一回戦、終了……

 

 

ディーラーの管轄の下、スコアの清算が行われる。

 

 

一着:妄:持ち点46900、端数付けたしで+34スコアに、+40のウマで最終スコア+74

二着:豆生田:持ち点9900、端数切り捨てで-6スコアに、+20のウマで最終スコア+14

三着:ユメミ:持ち点2900、端数切り捨てで-13スコアに、-20のウマで最終スコア-33

四着:芽亜里:持ち点300、端数切り捨てで-15スコアに、-40のウマで最終スコア-55

 

 

妄組のスコア合計+88

芽亜里組のスコア合計-88

 

 

何となく、場の空気からして、少し時間を取って両チーム作戦タイムという事になった。

 

 

 

 

 

別室、芽亜里組。

 

 

「ふう……」

 

ユメミは溜め息をつく。

 

「何してんのよ、元気出しなさいよ」

 

東風戦の打ち手、芽亜里は、ごく涼しい顔をしている。

 

「……何?励ましてるつもり?」

 

「そんなんじゃないけど、勝負はこれからよ?」

 

「……励ましてるじゃない。お世辞はよしてよ」

 

「いやいや、そんなんじゃないわよ。別に?どうとも思ってないし?あたしらが三着四着の沈みでもさ。ほんとに?なーんとも」

 

「……はぁ?」

 

 

 

 

 

別室、妄組。

 

 

「さあ、て、豆生田?どうだった?何か気付いた事はあるか?あたしはあるぞ」

 

「……早乙女は、あれは、あの打ち方は東風戦の匂いがするな」

 

「はあ?そりゃそうだよ。今さら何を」

 

「あ?本当にそうなのか?俺は今初めて知ったぞ。自分で気付いた事を述べただけのつもりだったが」

 

「は……そう言えばそうだな。はっ、めんどくせえ」

 

 

妄は、今回は豆生田の知恵を諦めて、自分自身が先導して語る事にする。

 

 

「芽亜里は東風戦に慣れている。だから今回のルールへの順応も早い。つまり、形式上東南戦でも、配給原点が15000しか無く、更に赤牌の祝儀得点だ。赤牌は、{五⑤5}四枚ずつのうちの一枚ずつ。手に握れるか否かは本当に運次第、非常に大きく偏りが振れやすい。つまり、まるでその闘牌は東風戦に見える様相を露呈させる。鳴き手安手の連続の後に、本質が垣間見える瞬間がある。そして、芽亜里はそういう、瞬間で敗北が決まったり、どうにもならずに時が経つ事に慣れている。つまりそれこそ東風戦だ。今回の東南戦も、芽亜里は恐らく、負けても構わない、致し方無し、一回で逆転できればそこに賭ける。初回などはもう「捨て半荘」にしてしまう事さえ視野に入れる。そうするしか無い状況がもしも三回続いたなら、それまで。今回は負けだと腹をくくる。また逆に言えば、今回の三回戦、あたしらが三連勝しても、それはほぼ実力ではない。運の偏りだ。あたしが強いからじゃない。つまり、芽亜里からしてみれば、あいつはプライドが高そうだが、ある意味そのプライドは傷付かない。負けても自分は悪くないんだから」

 

「なるほど、つまり、あれか、それなら逆に目を向けるべきは」

 

「そうだ。ユメミだ。あいつを、獲る」

 

 

 

 

二回戦…………

 

 

 

「ロン」

 

 

 

それは、いともあっけなく終了した。

 

 

{⑤⑤赤⑤赤567一一七八發發發ロン九}

 

 

「5200は15200(イチゴーニ)

 

 

ユメミが、東一局でトビ終了。北家の豆生田への放銃だった。

 

 

豆生田、トップ、30200。ユメミ、ラス、箱下200。妄と芽亜里は同点のまま終了したが、芽亜里が起家だった為二着となり、西家の妄は三着となった。これだけの事でも、20‐40の20ウマが付くから、+20と-20で、その差は40。40000点相当の成績の差である。

 

 

 

……ギャンブルだ。こんなの。まるで博打、ギャンブルじゃあないか。

 

 

 

 

 

 

――うふふ。

 

 

 

 

妄組、二回戦+35。芽亜里組、二回戦-35。一回戦と合わせて、妄組+123。芽亜里組-123。

 

 

 

 

 

 

 

再び、別室、作戦タイム。

芽亜里組、ユメミ。

 

「もうだめよ……どうしたらいいの……123でしょ?だから、次で私達二人が一着と二着を取って、それで+60、あとは……あと、あと、あと63の負け……つまり63000点だから、親役満で48000と、あと、あと15300は……倍満か親の跳満で……」

 

ユメミは、ひきつった表情で芽亜里に向かい、

 

「ねえ、次はとりあえず、二人とも頑張って、一番簡単な四暗刻を狙うっていうのはどう?」

 

「……本気で言ってる?」

 

「……ううー!」

 

 

 

 

こんなギャンブル、やるんじゃなかった…………

ものの、三十分。

 

 

 

「へっ」

 

……妄組、妄。

 

「ユメミはもう折れただろうな。心の芯が。一旦持たざる者となったらもう逆上の熱量を絞り出せない。南入後はひたすら沈んでゆく。ユメミは、基本的には守備型の打ち筋。しかし、その守備が通用しない、東一局で放銃してのトビ終了は、もう耐えられない。許容できない」

 

「だが、早乙女はそうではない」

 

「ああ、そうだな。だからまあ、せいぜい用心して行こうぜ。敵が一人に減ったとは言え、最後まで……」

 

「……いや、待て」

 

 

戻ろうとする妄を、豆生田が止める。

 

 

「まだ、消えていないぞ、夢見弖は」

 

 

…………

 

 

「は……そうかよ。そう思うか」

 

「ああ、俺はな」

 

「いいじゃねえか」

 

「……そうか」

 

 

 

 

 

まだだ。まだまだこんなものじゃない。ギャンブルの熱、もっともっと深くまで。

 

 

三回戦はきっと、東場を終えて南場を迎える事だろう。

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